釘打ち

 どこかでか拾い集めた釘を遊び道具として用いていました。「釘打ち(くぎぶち)」と子供の頃呼んでいたのです。危険とも思わず真剣に遊んでいたのです。親も危ないからとの理由で止めることもありませんでした。五寸釘です。約15センチの大形のものです。これを相手の釘にめがけて突き刺すのです。突き刺し方は、釘の頭を人差し指と親指で押さえて、高く掲げ振り下ろしながら、相手の釘(地面に刺さった状態または下手して倒れている状態)をめがけて、投げつけるのです。その時、自分の投げた釘が、相手の釘が立っているものは倒して立ち刺さり、あるいは倒れているものを弾き飛ばして立ち刺されば、相手の釘がもらえるという遊びです。この遊戯でけがをした記憶はありませんし、相手に傷を負わせた記憶もありません。妙におもしろい遊びなのです。
 今でもそれらしい釘、新品のでなく古い大形のものを見ると、こころが踊ります。振りだけを密かにして見ます。
 つい最近の新聞で釘打ちに興ずる子の写真が載っていました。私の時代で終ったかに見えたその遊びは、どのように今の子供に伝えられたのでしょうか。その新聞では「釘さし」と呼んでいました。
 五寸釘と呼ぶ時、子供のうちでも何か一種の誇りと畏敬の念をもって言葉にしていたのを憶えています。

2001-01-27