平成21年(行ウ)第13号 違法公金支出金返還請求事件
原告 足立 巖
被告 尾張旭市長 谷口 幸治
第1原告準備書面
平成21年5月7日
名古屋地方裁判所民事9部B1係 御中
原告 足立 巖
第1 被告の平成21年4月28日付答弁書(以下「被告答弁書」という)第2の4の請求原因
4項に対する反論
1 被告答弁書第2の4のアの同(1)の主張は、争うに対する反論
理由: 本第1原告準備書面の第1の2、3及び甲第15号証(違法性の認識)による。
2 被告答弁書第2の4のイの同(2)の被告の主張は、否認する。
理由:甲第1号証に記載してあり、被告は事実を知る立場にあった。
3 被告答弁書第2の4のウの同(3)の被告の主張は、否認する。
理由:平成20年11月19日付被告宛の原告の「レジ袋の有料化に関する公開
質問状」に記載してあり、被告は事実を知る立場にあった。(甲第14号証)
4
被告答弁書第2の4のエの同(4)の被告の「その余は否認ないし争う」の主張に対す
る反論
理由:根拠法の無いことは、被告が不知とし否認された被告答弁書第2の4のイの同
(2)、第2の4のウの同(3)、また本第1原告準備書面の第2の7、第3での示した被
告作成の公文書である甲第15号証でも、その違法性の認識は明らかである。したがっ
て、被告の主張する「その正規の時間内に、その職務として」は、否認する。
レジ袋、有料化の各()書きは、被告作成の公文書である甲第15号証によるものであ
る。
被告主張の「「レジ袋有料化」に伴う聴き取り調査等」の内容は、「9月以降にはス
ーパーなどの店頭や市民祭などのイベントでマイバッグ持参運動とレジ袋削減につい
てのちらし配布やのぼり旗による啓発を展開するとともに、市民への簡単なアンケー
ト調査を行っていきたい」(平成20年7月22日開催「平成20年度第1回尾張旭市マ
イバッグ持参運動ネットワーク」議事録)であって、この会議の以前から法律又は市条
例の根拠の無いレジ袋の有料化を目論むものであり、既成事実化へと向かう行為を推
し進めていたのである。
5 被告答弁書第2の4のオの同(5)の主張は争うに対する反論
理由: 本第1原告準備書面の第1の2、3及び甲第15号証(違法性の認識)が裏付け
るように、市の施策としてレジ袋の有料化の根拠法が存在せず、レジ袋の有料化を推
しめる行為は違法となり、制限的に列挙し職務に専念する義務を免除する「尾張旭市
職員の職務に専念する義務の特例に関する条例」にも「尾張旭市職員の職務に専念す
る義務の特例に関する条例施行規則」にも該当しない作為なのである。
6 被告答弁書第2の4のカの同(6) の主張は争うに対する反論
理由:直前の5の理由から同じく導出されることである。
全体の奉仕者としての職員が担保されるのは、法規の枠内で法を具現する者として
住民に対することであり、それが一部の奉仕者でないことの証なのである。「職員は、職員としては、法律、命令、規則又は指令による職務を担当する以外の義務を負わない」(国家公務員法第105条)のである。地方公共団体の職員である環境課職員にも当てはまることである。したがってレジ袋の有料化の一連の行為は非正規で特異なものとなる。
7 被告答弁書第2の4のキの同(7)の被告の「認める」の余に対する反論
理由: 本第1原告準備書面の第1の2、3及び甲第15号証(違法性の認識)から明ら
かである。訴状第2の4の(7)の金額は正当な請求である。
8
被告答弁書第2の5の請求原因5項の「不知」に対する反論
理由:財務会計行為に先行して行われる原因行為に違法事由が存する場合には、住民
監査請求をなしうることを、「職員の昇給決定が違法あるいは不当に行われたとしたなら、そのことにより将来当該職員が退職するにあたり不当な額の退職金の支給がなされることが退職手当に関する条例上予測される場合もその是正措置の住民監査請求をなしうる」(昭49.7.11行実)と、例示している。
また、最高裁判所大法廷判決(昭和46(行ツ)69 行政処分取消等 昭和52年07月13
日)は、「公金の支出が違法となるのは単にその支出自体が憲法八九条に違反する場合
だけではなく、その支出の原因となる行為が憲法二〇条三項に違反し許されない場合
の支出もまた、違法となることが明らかである」としている。
第2 被告答弁書第3被告の主張に対する反論
1 被告答弁書第3の1の(1)の被告の「いわゆる「レジ袋」とは、小売店舗において、
小売業者等が、消費者(顧客)に対し、当該店舗で消費者が購入した商品の包装用具と
して配布する袋(ポリエチレン製等)である」との主張は、不知。
2
被告答弁書第3の1の(2)の被告の「その「レジ袋」の有料化とは、従前、小売事業
者等が消費者に対しサービスとして無料で当該袋を配布していたのを中止し、その配
布を求める消費者に対しては有料で売却交付する行為をいうものである」との主張は、
不知。その余は否認する。
理由:「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第八十四条では、「会
社の販売及び一般管理業務に関して発生したすべての費用は、販売費及び一般管理費
に属するものとする」とされ、費用の把握、認識が為されているのである。
つまり、総原価+利益=販売価格である。総原価には販売費及び一般管理費が含ま
れているのである。したがって消費者 (住民)は、レジ袋の費用込みの商品価格で購
入しているのであって、無料ではないのである。また、事業者がこのレジ袋費用を直
接的、個別的に対応し、各商品にその費用を配賦しているならば、尚更の事である。
被告は、「消費者として当該レジ袋を事業者から交付を受けるに際し当該レジ袋の
対価として特別の金銭を支払うとかその他売買と目される外形行為がないことをも
って「無料」であったと評価されているものを」とするが、消費者は、「無料」と評
価しているのではなく、これまで長きに亘り消費者(住民)と事業者間で均衡を取り
合いながら相互の便益を満たしてきている中にレジ袋(「レジ袋、三十年ほど前から
定着」崎田参考人:第164回国会 環境委員会)はあるのであって、商品と一体化し、
当該商品価格に織込み済みとして当然視された双方の事実としての行動様式が深く
浸透し日常化し根付いて受け入れられている、と理解すべきなのである。
したがって、尾張旭市の施策として取り入れレジ袋の有料化を計るのであれば、一
部の奉仕者でないことの証としても、根源的に無料の意味が問い直されることは当然
となる。現に、「レジ袋の収益金はわずかだからといったことではなく、収益金の定
義や規模等のデータがないのに議論ができるのか疑問である。レジ袋削減運動の根柢
のことだと思う」「レジ袋断ったお金はどうなるのかが問題で、どこに行くのかが不
透明で市民にわかりにくい」(会員の発言:平成20年11月26日開催 平成20年度第
4回尾張旭市マイバッグ持参運動ネットワーク会議)と、最終回の会議の場で指摘され
ているのである。
レジ袋の有料化を推進するに際しては、「そのレジ袋交付時に事業者と消費者(顧
客)間で売買契約が締結されその取引が行われることを指して「有料化」というもの
に過ぎない」、とは簡単に片付けられないのである。住民に対しての合理的な説明責
任が被告には要請されているのである。
3 被告答弁書第3の1の(3)の被告の主張は、否認する。
理由:尾張旭市が施策としてレジ袋の有料化を推進することについての根拠となる
法律又は条令等の無いこと及びその該当しない環境課職員の行為を違法としたもので
あり、被告の主張は、施策としての尾張旭市のレジ袋有料化の法的根拠等の無いにも
かかわらず長年の間に培われた商慣習に行政が容喙することについての矛盾を無視し、反面の論理を主張したに過ぎない。「小売業者が判断し実行するものである」との被告の主張は、却って行政の不介入を主張し、協定書方式の違法性を曝け出すものである。
4 被告答弁書第3の1の(4)の被告の主張は、否認ないし争う。
理由:現実売買で、買い物商品の引渡し・代金支払が同時に行われたとき、そこにレ
ジ袋が在るという長きに亘る商売上の慣わしが存在していたなら、
(1)相手方(消費者)の正当な期待・信頼を裏切らないよう販売事業者に誠意をも
って行動(レジ袋の供与)することを求めることはできるのではないか
(2)(1)には住民が消費者として振舞うときの既得権益は認められるのではないか
(3)(1)法律行為は慣習に従って為されることがあるので商慣習も補充基準となる
のではないか
(4)以上のことは倫理的・道義的な社会規範つまり正当な信頼関係を基準にして公
平・妥当な解決策を見ようとするものであるから、既に法益の範疇ではないの
か
公権力が介入して住民の日常生活に直結し、その生活を規定するものについては、
民主主義を統治の根本とするわが国では法律の根拠を要すると解すべきである。
地方自治法第1条の2
は「地方公共団体は、住民の福祉の増進図ることを基本とし
て、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとる」と規
定する。住民の福祉の増進は、住民に身近な行政として住民の日々の生活等に密接な
関わり持つものとして立ち現れる行政の究極の在り方を示すものである。そして自治
行政の基本原則として、この法の第2条14項で重ねて「地方公共団体は、その事務を
処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果
を挙げるようにしなければならない」と念を押すのである。更に16項で「地方公共団
体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、
当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない」とし、法規制の中に
存することを命じるのである。17項では「前項の規定に違反して行つた地方公共団体
の行為は、これを無効とする」のである。
地方自治法の第14条2項は「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限
するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」
とした。「義務を課し、又は権利を制限する」は、改正前自治法が「行政事務の処理
に関しては、法令に特別の定があるものを除く外、条例でこれを定めなければならな
い」(旧地方自治法14条2項後段)としたものである。
住民に対し、例示すれば、権利義務に関する書式・受付窓口等の手続き処理等を為
さないから、義務を課し、又は権利を制限することで無いとはできない。尾張旭市の
施策としてレジ袋有料化を推し進めることは、被せ網の如くに住民の日常生活に影響
を及ぼすのである。住民が生きる為に必然的に組み込まれている消費(生活)行動の基盤
に踏み込んでいるのに、何らの法的根拠も無しに作為することは、上述した地方自治
法の原則である住民の福祉を無視し、悖るものである。
既得の選択肢を住民から奪い、「レジ袋無料の店舗を選択することを妨げられないとは、住民の福祉を志向する行政の言うべきことなのだろうか。被告の住民(消費者)に対する排除の論理は、法令適合の原則、住民福祉の原則を忘却した振る舞いとしか映らない。
確かにマイバックの購入費用(「不利益」)等の発生は負担となり、マイバックの持参は「不便」である。この不利益、不便等が尾張旭市のレジ袋の有料化を推し進める施策に存するから、「「義務負担」ないし「権利侵害」」などと住民福祉の原則、法令適合の原則の観点から問われるのである。
5
被告答弁書第3の2の被告の主張は、(1)国の法令など、(2)尾張旭市の条例などの
説明をするが、被告の趣意、レジ袋有料化については、否認する。
理由:「レジ袋有料化」の法的根拠になる法令等でない。
6 被告答弁書第3の3の (2)の@の被告の主張は、否認する。
理由:尾張旭市が作成した「尾張旭市マイバッグ持参運動ネットワーク」の議事録か
ら判断できることは、被告は尾張旭市の会議公開の原則に背き、過去4回の開催で3
回までを議事録非公開、会議非公開で進めてきたのである。最後の4回のみを指摘さ
れて公開したのである。果たして斯様なことが「自主的、自発的な参加と協働を前提
としたシステム設計を必然的に求められるところである」を実現したと言えるのであ
ろうか。
協働の対象としての住民の日常生活に義務を、負担を強いることなのに、肝心の住
民は蚊帳の外に放置されているのである。既成の特定の住民団体と尾張旭市内では大
手のス―パー等で構成し、全体を行政が仕切り、レジ袋有料化の既成事実を策動した
のである。住民無視と言っても過言ではない。
担当部署の市民生活部環境課は事務局と称して(尾張旭市マイバック持参運動ネッ
トワーク会則に事務局の規定は無い)、レジ袋有料化への道筋をつけたのである。つま
り、3R(リサイクル・リデュース・リユース)の達成手段の検討もせずに、事務局は、
第1回の会議の席上にて「無料配布の中止は4月1日を予定している」とし、その後は
既定路線を直走りなのである。特に反対の意を唱える会員もいない上に、「安い金額だとマイバッグ持参の効果はないと思う」(尾張旭市マイバック持参運動ネットワークの2回目の会議録)と消費者側の会員が、予定する一枚5円のレジ袋について、心配する始末である。最終回になってようやく代理で出席した会員によって本格的な議論を為される始末であるが、時遅しである。
環境的条件の背景は理解したとしても、レジ袋の有料化、マイバック等は普く一律
に住民に費用の負担を強いるものであり、住民に対し憲法に定める財産権の侵害とな
る。
「地方公共団体が、権力(命令)的、規制的手段でその施策の実施を行うことを相当
とするものではない」と主張するが、被告の主張する中の「容器包装リサイクル法」
では、権力と規制的手段が組み込まれているのである。例外はレジ袋の有料化を明文
化しなかったことである。その代わりに「尾張旭市におけるレジ袋削減・無料配布中
止に関する協定書」と称し、目的を達成しようと推し進めているのである。
7 被告答弁書第3の3の(2)のAの被告の主張は、否認する。
理由: 住民の直接選挙によって選出される議員で構成される議会に条例が提案され
議決されれば、その自治体の法となり、公平性を担保されることになり、根拠が整備
されることになる。
尾張旭市が作成した「尾張旭市レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例原案」(甲
第15号証)見ても、決して「其の内容は市民や事業者等に対する努力義務を課す性質の
ものとならざる得ず」という判断にはならないし、「条例化の意義、効果及び必要性は乏しい」という結果にはならない。住民福祉の公平・均一ならざる在り方は議会を通すことによって問題の所在も含めて、住民の共通認識になるのである。
8 被告答弁書第3の3の(2)のBの被告の主張は、否認する。
理由:一般論を展開しているのでなく、尾張旭市の施策として取り上げ住民に負担や
義務を課す本件については法令等の根拠が必要であるとするのである。
9 被告答弁書第3の3の(2)のCの被告の主張は、否認する。
理由:自主的な参加を標榜しているが、原告の主張の要点は飽くまでも日々の生活を
営む住民(消費者)の視点からの公平性の担保であり、議会を経ることによる住民へ
の保障である。
「事業者」、「市民団体」(市民の代表ではない)及び「尾張旭市」が協定の当事者と
なり、住民の日常生活に影響を与える施策を遂行することは異常である。議会軽視と
も言える。
10 被告答弁書第3の3の(2)のC「Dの誤記か」の被告の主張は、否認する。
理由:近隣自治体と同様の手法というが何の意味も無い。そのことを挙げるなら、平
成20年12月26日に佐渡市は「佐渡市レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例」を
制定し、平成21年4月1日から施行していることを指摘しておく。(甲第16号証)
11 被告答弁書第3の5の(1)の主張の趣意は、否認する。
理由:「レジ袋の有料化」に関しての一連の行為は認めるが、本件業務行為の適法性
については争う。その論拠は既述した。
12 被告答弁書第3の5の(2)の主張は、否認ないし争う。
理由:行政の真の目的は、住民の福祉の増進であり、向上である。住民の福祉を置き
去りにして、「行政目的に合致した適正な職務範囲に属する業務である」とはいわない。
13 被告答弁書第3の5の(3)の主張は、否認ないし争う。
理由:違法であるレジ袋有料化の既成事実化を計る行為の手段として用いられ、尾張
旭市の一方的な支出でもあり、認容することはできない。
第3 被告答弁書第4の主張は、否認ないし争う。
尾張旭市の人口81,505人そして32,233世帯(平成21年3月末現在)の生活に影響すること
なのである。
ごみ減量への何ら根拠ある見通しも無く、つまり、<レジ袋有料化に伴うごみ減量の
効果>と<マイバック他のごみの増量>の比較(トレードオフ)できる資料も無く、温室
効果ガスである二酸化炭素の排出量の削減は謳うものの、その実何らの検証可能な資料
も持ち合わせなく、説明できないのである。
政策とは誰の為にあるのか。住民の福祉のために策定されているのではないか。地方
自治の本旨には住民自治が存しているではないか。住民参加による地方自治の維持・発
展こそ望むべき姿なのではないのか。その為には行政の積極的情報公開、批判の受け入
れこそが肝心なのではないのか。
本件の場合は、政策論争ではないのである。政策の実現過程の手段の違法性が問われ
ているのである。手段の違法性を問うことが果たして政策論争等になるのか。目的の為
に手段のシワ寄せだけを住民に押し付ける其の手法の違法性が問われているのである。
被告は、平成20年10月28日から11月14日の間、市民に対し尾張旭市ホームペー
ジ上等を通して「尾張旭市レジ袋有料化等の取組みの推進に関する条例(案)」(甲第15
号証)の意見募集をしたのである。結果的には提案を見送ってしまったが、条例制定の
必要性を意識したものであり、地方自治法の第14条2項に照応した証左である。
第4 求釈明
1 被告答弁書第3の1の(1)で、「いわゆる「レジ袋」とは、小売店舗において、小
売業者等が、消費者(顧客)に対し、当該店舗で消費者が購入した商品の包装用具とし
て配布する袋(ポリエチレン製等)である。」とするが、尾張旭市の公文書である「尾張
旭市レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例原案」の定義を用いない理由を明らか
にされたい。
2 被告答弁書第3の1の(2)で、「その「レジ袋」の「有料化」とは、従前、小売事業
者等が消費者に対しサービスとして無料で当該袋を配布していたのを中止し、その配布
を求める消費者に対しては有料で売却する行為をいうものである」とするが、尾張旭市
の公文書である「尾張旭市レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例原案」の定義を用
いない理由を明らかにされたい。
3 住民に負担を掛けながら、被告答弁書第3の1の(4)の被告の主張、「それは法的な
「義務負担」」ないし「権利侵害」などと論じうる性質のものでもないし、後記のとお
り、法令ないし条例を要する種類のものでもない」との根拠を説明されたい。
4 被告答弁書第3の4の主張「当該事務を担当し必要な業務を行っている」の中身を
明らかにされたい。
5 被告答弁書第3の5の(1)の「聴き取り調査」と「市民への簡単なアンケート調査」
との差異を明らかにされたい。
第5 原告の主張
1 原告の意見陳述
原告が、最初に尾張旭市のレジ袋有料化計画のあらましを知ったのは、「中日新聞な
ごや東版」の朝刊(2008年9月27日付)からであった。
レジ袋の有料化、其処から得られる収益金を初めて知る「尾張旭市マイバック持参
運動ネットワーク」という組織に拠出すること、市内のレジ袋有料化が来年4月1日
に予定されていること、既に第3回の会合を持ったこと。
疑問が湧いた。
そして原告は、
10月6日 1回目の住民監査請求を提出、
11月9日 被告宛にレジ袋の有料化に関する公開質問状を提出、
11月11日 尾張旭市レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例原案への意見書提出、
平成21年2月2日 二回目の住民監査請求を提出、
だが、疑問は深まるばかりであった。
原告は常日頃、尾張旭市の議会、市の公開された会議を傍聴している者である。議
会でレジ袋の有料化の発言も過去に何度か耳にしている。
市民全体に及ぶ施策が非公開にて推し進められるとは思わなかった。
急遽、全容を把握するために情報収集を始めた。そこで判明したのは何とも根拠の
不明瞭な事実であった。所管元の市民生活部環境課を始めとして、愛知県環境部資源
循環推進課一般廃棄物グループ、環境省にも直接問合せ(11/18)をした。
得られた結果は、レジ袋を有料化する法の根拠が無いこと、裏づけとなる数値は検
証が不可能であることなどであった。
愛知県と環境省は同じ様な答えであった。レジ袋の有料化ではない。ごみの減量で
ある、と。尾張旭市は、他市がやっているから等、曖昧で説明責任は果たせなかっ
た。
原告は、知り得た県、国の情報等はもとより佐渡市(何度か電話をし、条例の内容、議会の動きを教えて頂いた)の状況、環境省のメルマガから得た各自治体の最新のレジ袋有料化の進み具合、レジ袋大手メーカーへの問い合わせ(失礼とは思ったが、率直にメーカーに尋ねた。「レジ袋削減の影響で会社は潰れませんか」と。後日送付された資料では、営業売上は右肩上がりを保っていた)の内容など、市の環境課に即メール・口頭で伝え、情報の共有化を図ってきた。
所管元には、会議の公開や議事録のホームページでの掲載を求めた。
議事録から読み取れることは、ただレジ袋有料化へのことだけで、その有料化も本
質的な検討はなされておらず、市民への説明など欠落した内容で、環境という名の下
に押し通し、ごみ減量等の前後の検証する資料も無く、マイバック持参率80%の目標
を掲げることとし、それっきりなのである。
協働というが、事業者は実態の情報は開示せず、事実を市民は知りえない。ただ市
のアンケート結果(12社17店うち5社は公表しない)の数値から分かることは、事業
者は、年間で39,077,100円(9,531,000枚×平均購入単価4.1円/枚)のレジ袋に関
し、経費節減となる。この他に有料化分(理論的にはアンケート資料等から算出可能)が加わるのである。1円を競う業者にとって、大変な金額のはずだ。この金額が拠出されないことは、事務局の会議の発言で分かった。
尾張旭市の可燃ごみ組成調査(平成14年度)は、レジ袋は全体の重さの約1.2%であ
ることを示す。レジ袋は基本的にはリサイクル資源であり、先述したメーカーでは、
スーパーと協力して、リサイクル化に取り組んでいる。
だが、近い将来、マイバック(エコバック)というレジ袋の2倍の資源を使ったゴミ
で、悩まされるのではないかと危惧する。現在、店頭には色とりどりのデザインのマ
イバックがレジ場近くに商品として置かれている。
尾張旭市では、今年4月中旬頃から新たに可燃ごみ用の小型の指定ごみ袋、10リッ
トル・20リットルの袋が出回ることになった。
原告は思う。掛け声だけで裏づけも無く、もし在ったとしても情報が公開されなけ
れば、真の知恵は出ないし、更なる悪環境に陥るだけではないかと。確実に実効性の
挙がる施策を住民も行政も考えなければならない。其の為には、施策を遂行する前に、その施策の及ぼす影響の全容を把握することが肝要である。つまり、トレードオフをしっかりと考慮しなければならない。
俯瞰する知恵を身につけなければ、と思う。環境問題は正に人間自身が作為し背負
い込んだ問題であって、他の生物に責任を転嫁することは決してできない。
新聞で知って以来、持ち続ける疑念を裁判官に聞いて頂きたく、また思いを伝えら
れるように、本人訴訟で臨んでいる。
2 原告の主張
原告の主張は訴状において述べた通りである。
(1)
被告の答弁書からは、目標を忘却し単に事務処理をするだけの姿しか浮かんでこ
ない。日頃、一市民としても、尾張旭市の職員と接する機会の多いほうであると、
思っている。市井の者から見るに、偏にそれは顔を上に向けて呉れる筈の目標の喪
失と考えられるのである。
では、全体の奉仕者としての目標とは何か。民間企業で糊口を凌いだ人間が考え
るのである、的外れを恐れずに言えば、法規の遵守である。民間の立場からすれば、
態々探し捲くることもなく、理念が与えられているのである。あとは実践あるのみ
なのである。青臭い意見かもしれないが、人は大きな希望の中では快適に過ごせる
ものである。
(2) 地方自治法第1条2は、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本
として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとす
る」と規定する。行政全体が、つまり、個々の政策が「住民の福祉の増進を図る」
ところに帰するのである。住民に身近な行政として計画された施策を実施する段階
において、羅針盤としての法規範の欠如は、地方分権の進展する中、市政に恣意性
帯び住民不在の糸切れ凧のようになる。
つまり、個々の政策は住民のものなのである。其の政策に住民が異論を挟むのは
至極当然のことなのである。複雑な権利関係の社会で行政の無謬性という時代錯誤
の考え方を被告は表してきている。羅針盤の喪失である。
被告答弁書第3の3の(2)の@で、「レジ袋の「無料化」「有料化」の判断主体は
あくまで事業者であり、その営業の自由に関わることであるので、地方公共団体が、
権力(命令)的、規制的手段でその施策の実施を行うことを相当とするものではな
い」と主張する。では執行機関である被告は手を拱いていたとでも言いたいのだろ
うか。そうだとしても、画策の本人が自作の脚本の中で、傍観者を演じているよう
なものである。
ここでも負担側の住民への配慮はないのである。住民は魚網の中で、手厳しい言
葉が投げかけられるのである。つまり、「なお、消費者はレジ袋無料の店舗を選択
することが妨げられない」(被告答弁書第3の1の(4))と。レジ袋有料化が拡大し
ていった暁までに想像力が及ばないのである。現状維持としても、住民福祉からは
既に遠のいている考え方である。
一方事業者には漁獲を得させ、旨みが無くなれば、去るのである。現にレジ袋有
料化による売上の低迷で、有料化を中止した例が他市にある。レジ袋有料化の再開 は難しい、とする。その程度の施策だったのか。
環境負荷軽減の施策について、選択の多様性を放棄しては、生物環境の頂点に存
在する生活者としての人間を、困窮させる結果となるだけである。経済的負担によ
る環境の保全は、結局新たな環境負荷を発生させることになり、悪循環となるだけ
である。
被告は答弁書第4の中で、「レジ袋削減・無料配布中止に関する啓発運動やマイ
バック持参運動に関し、それらの活動等につき条例化されていなければ、当該活動
等をすることは違法な行為となり、あるいは職務外の業務と法律上評価されるか否
かでありこの論点に関する法的判断である」とする。
が、この視点からでは住民の存在は視野に入らず、入ったとしても、一方的な被
害者或いは搾取される側の立場でしか現れない。なぜ条例化が必要とされるかの思
考を停止しているからである。其処に負担や義務や制約が住民へ生じているか否か
なのである。住民に接する身近な政府が無意識、天真爛漫の振る舞いで抜き身の刀
(権力)を弄ぶのでは、住民として日々の生活が落ち着かないのである。住民への
負担や義務が生じる或いは予定される場合、執行機関としては住民の代表機関であ
る議会に最終的決定を委ねるべきではないのか。執行機関としての長や委員会等は、
あらかじめ議決機関としての議会が決定した意思を実現するための機関なのであ
る。
施策の実施に際し、住民視点の判断が機能しなかったら、住民は単に草刈場と化
すのである。
(3) 被告答弁書第3の3の(2)のC「Dの誤記か」「この方法は、名古屋市(乙6)、愛知
県(乙6)などの近隣自治体と同様の手法である」と主張するが、地方分権の進展の
中、他市の例を引き出すのでなく、自らの判断で住民に説明責任を果たせるように
すべきである。
平成19年(行ウ)第10号 公金支出差止め請求事件の判例は横並びの脆さを証明す
る。
第6 書証の成立の認否
1 乙第1号証の成立は、認める。
2 乙第2号証の成立は、認める。
3 乙第3号証の成立は、認める。
4 乙第4号証の成立は、認める。
5 乙第5号証の成立は、認める。
6 乙第6号証の成立は、不知。
7 乙第7号証の成立は、認める。
8 乙第8号証の成立は、認める。
9 乙第9 号証の成立は、認める。
10 乙第10号証の成立は、認める。
11 乙第11号証の成立は、認める。
以上
証拠方法
甲第14号証 平成20年11月19日付 レジ袋の有料化に関する公開質問状
甲第15号証 尾張旭市レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例原案
甲第16号証 佐渡市レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例
附属書類
1 第1原告準備書面 1通
2 甲第14号証〜甲第16号証 各1通
被告準備書面
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