尾張旭市レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例原案について

コメント結果

 

平成201111

 

「ニュースを問う」の「緑区のレジ袋有料化1年」(中日新聞 平成20112)から抜粋する。少し長くなるが、引用する。

――――――――――――――――――――――――――――――

反論はある。レジ袋製造大手の福助工業名古屋支店の石川豊課長代理は「レジ袋がバッシングされているが、本当にマイバックがいいんですか」と言う。それだけの資源が新たに使われているからだ。半面でレジ袋の強度を保ったまま、この十年で三割薄くしている企業努力はあまり知られていないという。

同支店によると、レジ袋を有料化した地域では生ゴミを入れたり、家庭のゴミ箱の「内袋」として使うための小さなポリ袋の売れ行きが伸びている。「だから全国的にポリエチレンの使用量は変わっていない」と話す。)

――――――――――――――――――――――――――――――

「尾張旭市レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例原案」(以下「条例案」という)の目的に謳う、「ごみの削減と二酸化炭素の削減等により、環境にやさしい街づくりの実現に寄与すること」に異論は無い。

 しかしながら、その手段として、なぜ「レジ袋有料化その他これに準じたレジ袋の使用を抑制」なのかについては、突っ込んだ説明が為されるべきと考える。

冒頭に掲げた引用で、「レジ袋がバッシングされているが、本当にマイバックがいいんですか」は、直接の事業者の声として貴重である。

幾重にも「環境」という全体を俯瞰することのできない呪文に掛かり、目的と其の手段の齟齬をも無視し、今や検証無きレジ袋有料化の運動は燎原の火のごとく全国に拡散し、国民運動化し、立ち止まり再考することも無い。

「だから全国的にポリエチレンの使用量は変わっていない」。つまり、此の事業者の声が事実なら、条例案にいう「ごみの削減と二酸化炭素の削減等」は実現せず、「環境にやさしい街づくりの実現に寄与する」ことなどは画餅に帰することである。

市民(国民)はごみの削減と二酸化炭素の削減等に寄与する訳でも無く、却って将来に向かって新たな重荷を環境に背負わせることにもなり、めぐり巡って更なる増幅された予測不可能な結果を地球環境に齎すことになる。そして市民生活へ新たなる制約が課せられることになる。

今次の条例制定は、地方自治法の第十四条二項「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」に沿うものであり、市・市民・事業者の責務を明らかにし、「環境にやさしい街づく

り」の実現に向かうことは、一歩前進と考えられる。

しかしながら条例の目的を達成する手段等については不明な点がある。今次の条例制定について以下疑義の点等を述べる。

 

1.環境的条件の背景を理解したとしても、レジ袋の有料化、マイバック等は普く一律に住民に費用の負担を強いるものであり、斯様なことが環境保全の下に為されることに付き、レジ袋に焦点を当てた理由と其の根拠は何かを住民に説明する必要がないか。会員(各市町村)宛の「ごみゼロ社会推進あいち県民会議(19ごみゼロ県民第22号平成191122)」の内容について、県は各市町村に強制することなのか、を聴き取り調査(930)したところ、強制ではないとの回答を得た。よって市が自らの施策の一環として、付和雷同でなく選び取ったのであるから、その事業遂行の責任者として、施策の根拠となる裏付け資料は明確にすべきである。

 

2.事業者に「レジ袋有料化等計画書」で、レジ袋の有料化を迫ることは、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)にも規程は無い。この件に関し、愛知県環境部資源循環推進課 一般廃棄物グループ(以下「県」という)は、「レジ袋の有料化は、法律での義務づけではなく、容器包装廃棄物抑制の取組手段として、事業者の裁量に委ねられたもの」としている。したがって事業者へ環境的背景を行使し、事業者の責務として、条例を以ってレジ袋有料化を迫ることは、長年の間に培われた商慣習に行政が容喙することであり、本来民主主義を標榜するわが国においては、経済的自由権を侵すことにもなるのではないか。

 

3.レジ袋の「無料配布中止」を謳い、また無料と説明しているが、果たして現在各スーパーマーケット等で住民が買い物時に当該店から入手する袋は無料なのだろうか。例えば、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第八十四条では、「会社の販売及び一般管理業務に関して発生したすべての費用は、販売費及び一般管理費に属するものとする」とされ、費用の把握が為されているのである。つまり、総原価+利益=販売価格である。総原価には販売費及び一般管理費が含まれているのである。したがって住民(購買者)は現在レジ袋の費用込みの商品価格で購入していることになる。また、事業者がこのレジ袋費用を直接的、個別的に対応し、各商品にその費用を配賦しているならば、尚更の事であり、無料ではないのではないか。

 

4.レジ袋有料化は「誰にでも取り組めるごみの発生抑制のひとつの手段として、広く取り組まれている」と県はいうが、レジ袋有料化で、市民(住民)は本来負担している有料のレジ袋を殊更に無料と思い込まされ、レジ袋に代わるマイバックの負担もさせられるという多重の責務を負うことにはならないか。

 

5.「サービスでいただくものは無料と思っている方もおられることから、このような表現となっていると思われます」()というが、レジ袋が無料ではないと考えるから、買い物時に消費者は当然の如くに利用している、とは考えられないか。

 

6.3.で述べたように、事業者は本来商品価格に含むレジ袋経費の削減ができるだけでなく、消費者がこれまで再使用していたレジ袋に代り、単独商品化(引用記事参照)も可能となり、事業者には利益を得させ、最終消費者である住民には満遍なく負担を強いることにはならないのか。

 

7.県は《レジ袋一口知識》に関し、「環境省等の関係機関のデータを基に推計した数値をあげたもので、あくまでレジ袋削減のための参考値と考えています」と、始めにレジ袋に焦点を絞ったのであり、マイバック持参後の環境へのトレードオフは説明できなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――

《レジ袋一口知識》 (愛知県の「レジ袋辞退率50%以上を目標とするレジ袋削減取組店に登録しましょう」のリーフレット)
☆国内のレジ袋使用量(日本ポリオレフィン工業組合による)
年間約313億枚
国民一人当たり年間約300(乳幼児を除く)
☆レジ袋に使用する石油の量
レジ袋1枚(10g)当りの原油の量 23ml(材料と製造エネルギーを原油換算)
☆レジ袋の値段
1枚の単価 約4円 全国では 4()x313()=1,252億円
☆二酸化炭素(CO2)発生量
1
10gのレジ袋を製造し廃棄すると、CO260g発生。
家庭で1年間に1,000(13)のレジ袋を捨てれば、60kg発生。
これは家庭で発生するCO2 5,500kg/年の1%に相当。
(
京都議定書では1990年の6%削減を目標にしているので、1%は大きい!)
☆野生生物にもレジ袋の被害が発生
自然界で分解が進まないレジ袋は動物が餌と間違えて食べ、窒息死する被害がでています。

――――――――――――――――――――――――――――――

しかし、条例案での目的、実効あるごみの削減と二酸化炭素の削減等を目指すなら、マイバック持参後等の環境について、市・市民・事業者別にトレードオフ(レジ袋廃棄量対マイバック廃棄量の関連等)を追跡し、検証をすべきではないか。「もぐら叩き」になっては正に悪循環である。計画・実施・評価は欠かせない。

 

8.当市だけでも、例えば、レジ袋有料化後に代用した物、つまり、マイバック等の価格・入手方法を消費者(市民)に聴き取り調査(アンケート)し、素材については製造または販売者から得るなど、実態調査をしないのか。県は「千差万別で統計的な数値を得ることは困難」として、レジ袋とマイバック等の比較をすることを避けた。何らの根拠ある説明責任も果たさずに、斯様に施策を進めていることは、県・市行政として、住民を無視した行為であり、住民への説明責任の放棄となり、怠慢の謗りを免れないと考えるべきである。

 

9.施策の事業として取込んで、事業者の費用負担を削減し、最終消費者である住民に投網を打つように負担を強いるのである。また本条例案に関すると推察されるが、「尾張旭市におけるレジ袋削減・無料配布中止に関する協定()(以下「協定」という)において、「レジ袋の無料配布中止により、収益金が生ずる場合」を想定(当然に益が出ることになる)し、尾張旭市マイバッグ持参運動ネットワーク(以下「マイバッグネット」という)に協力金として事業者に拠出を迫るのである。3.で精しく述べたように、マイバックの負担も合わせ、住民は逃れることの出来ない多重の負担を強いられることになるのであるから、収益金の使途も含めて、マイバッグネットを、例えば、地方自治法第2212項の定めを適用し、長の調査権等を及ぼすことにはしないのか。マイバッグネットの目的(「レジ袋の縮減を図ることにより、次世代の子ども達によりよい地球環境を引き継ぐ」)からすると、一過性のものとも思われない遠大なものである。条例案では、事業者に対しては、計画書等の公表・指導及び助言・立入調査・勧告を行うことが明記されている。

 

10.マイバッグネットについては条例案に特に規定してないが、第15条 「この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める」に委ねたのか。

 

11.マイバッグネットの会則には運営会費の定めが無いが、協定による「レジ袋収益金」に依拠するのであれば、事業者のレジ袋収益金の経費計算は如何なるものなのか。例えば、「レジ袋のお断り率80%」で、これまで15,000/日を客に渡していたケースでは、3,000/袋日になるのであるから、12,000/日の経費節減になる。節減の如何ほどを拠出させるか。尚、80%は協定に書かれた目標であるが詳細は不明である。極端な例で、ある時点で100%になった場合、つまり、買い物客が総てマイバッグなどを持参しレジ袋を辞退した場合、拠出は100%に一定の係数を掛けて、将来に亘ってマイバッグネットに拠出するのだろうか。それともマイバッグ等が常識になった場合、つまり、100%になった時点で拠出は止まるのだろうか。非公開で進められた会議の記録(後日HPで議事録は掲載された)に審議の痕跡はない。

 

12.条例案の目的達成には市民の協力が必須であるからにして、会議の公開・情報公開・事業計画への公募市民の参画等は必要なのではないか。これまでのように非公開で事を進めては、杞憂かも知れないが、明朗さに欠け市民は疎外感を抱くようになる。

 

13.この条例案を端的に云えば、事業者には利益を得させ、そして収益金の分配をマイバッグネットに協力金として拠出する仕組みといえる。つまり、事業者のレジ袋費用を消費者(住民)に負担させ、レジ袋の有料化で上がる収益をマイバッグネットという民間組織に協力金として拠出するということになる。市の音頭取り(行政指導)で造られた、市・事業者・マイバッグネットのトライアングル構造といえる。したがって、碌に住民に説明もせず、都合のよい使い回しの資料を以って、 住民(消費者)を煽動し、負担を強いるのではなく、此の三者の取引(協定)を明白にし、市民の監視に耐えられる管理運営が強く求められのではないのか。

 

14.謂わば事業者に対しては拠出のための収益を予定するため、先々住民にとっては、生活の不安材料となる。高齢社会から超高齢社会(尾張旭市平成209月末日現在18.4%)への過渡期にある当市にとり、環境税にも匹敵するレジ袋の有料化の推進は、加えて消費税の負担増が政治課題になる中、日々の生活に負担増となる応能税を逸脱することになり、将来の生活に不安となる。安心の確保は格別の事ではないのか。議事録(11.)及び他の例で知る限り、一律に近いレジ袋の有料価格を想定しており、不当な取引制限となる恐れもある。また「安い金額だとマイバッグ持参の効果はないと思う」との発言も議事録に見受けられる。統制の効かない賦課とならないよう事業者間の差異化を容認すると共に、情報公開を促進する必要はないのか。

 

15.環境の重大性は認識するとしても、環境負荷軽減の施策について、選択の多様性を放棄し、経済的負担による環境の保全は、二酸化炭素(CO2)の排出権ビジネスを生んだように、絶対量の二酸化炭素の排出量削減には結びつかず、環境を食い潰しているだけで、結局新たな環境負荷を発生させることになり、悪循環となる。レジ袋の有料化も新たなビジネス、つまり、他の商品に変化しただけではないのか。「だから全国的にポリエチレンの使用量は変わっていない」ことになり、ゴミの量も削減できないことになる。環境省もマイバックについて、「マイバッグデザイン画部門」とかをホームページに掲載し、経済効果を煽っている。しかし付けは最後に市民(住民)に回される。

 

16.会員(各市町村)宛の「ごみゼロ社会推進あいち県民会議(19ごみゼロ県民第22号平成191122)」の内容について、県は「愛知県のレジ袋削減取組はレジ袋有料化自体を目標としているのではなく、このことを第一歩として1人1人が環境配慮を持った生活がおくれるように意識改革を促すことを目指したものです」と言う。つまり、ゴミ削減の方法論は会員である市町村に委ねられているのである。したがって、本市は本条例案で謳うような、レジ袋有料化取り組みを推進するのではなく、他の選択肢を再検討する考えはないのか。「レジ袋がバッシングされているが、本当にマイバックがいいんですか」の問いを真剣に考えねばならない。我々は新たなゴミを創出しているだけかも知れないのである。

 

17.条例案では規定されていないが、協定では収益金が生じた場合、事業者はマイバッグネットに拠出することになっているが、9.でも述べたように市民全体に及ぶ施策であり、そして其のための条例なのである。市民の責務である努力規定を超えた環境税にも等しいのであるから、公金として扱うべき性質のものではないのか。事業者・マイバッグネット間で財産の取得、管理、処分を予定するだけでは、住民に義務を強い賦課することになり、住民の財産権(権利の制限)を侵すことにもなることに関し、意識が低すぎる。尚、条例案第8条にいう報告書の内容に記載されたとしても、公金の私的処分が為されたことになる。 (特定)財源と把握し将来を見据えるべきである。其の為の条例でもある。「条例の考え方と主な内容」で述べる「市は、レジ袋有料化により事業者等に収益金が生じた場合、その使途については、当該事業者の自主的判断を尊重するものとする」では無責任である。

 

18.「レジ袋の使用を削減するには有料化が有効なため、多くの事業所及び市町村で取組が進んでいるところである」()というが、最終消費者である市民に有料化を押し付ける前に、上流でのレジ袋使用がなぜ止められないのか、事業者の実態を調査すべきではないか。例えば、有料化しなくとも、販売店が積極的に取組めば容器包装リサイクル法での排出抑制の効果を上がるのではないか。「繰り返して使用することが可能な容器包装の使用」(容器包装リサイクル法)を事業者の独自色(当市でも再使用に耐える袋の提供をしている店が見受けられる)を出させて取り組みをさせることである。つまり、事業者の創意工夫の余地を考慮せずに、安易に有料化し消費者に負担させるなどは、金さえ出せば、の風潮を生み、問題の解決を遠のかせる。要は上流を何とかすることである。その過程で消費行動の変化を見るのである。エンドユーザーとしても、無い物は使用できないし、捨てる事もないのである。ゴミは上流から流れて来るのである。シワ寄せで地球環境は改善できない。また消費者ニーズというが、殆どのニーズが売る側から儲ける為に掘り起こされたものである。つまり、微細に亘って欲望を掻き立てられた結果のゴミなのである。

 

19.「平成186月に改正された容器包装リサイクル法で、国が事業者に対し、レジ袋等の発生抑制のための取り組み実施状況について報告を求め、取組が不十分な業者に対しては勧告・命令等の措置ができることとしました」()。条例案でも、11条から14条に謳った。有料化の前に18.で述べたことを踏まえ、これらの条項を主体とした行政の活動に主眼を置き、尾張旭市環境基本条例にいう事業者の役割、「事業者は、資源及びエネルギーの有効利用並びに廃棄物の発生抑制等により、環境への負荷の低減に努めなければならない」を全うさせるべきではないのか。尾張旭市環境基本条例の理念を担保する位置付けとして、本条例案を見直すべきである。

 

さて、久しく環境の悪化が叫ばれる中、経済システム等の相互関係上、「もぐら叩き」の様相を示し、これぞという決め手の対策を持たず、末節を弄って、更なる悪循環の罠に嵌り、止まる所を知らない次第である。

経済システム等の相互関係上とは、一方の廃止は他のニーズを創出し、儲け話に繋げるという市場の原理に基づいていることである。このようの中で、確実に実効性の挙がる施策を住民・事業者・行政も考えなければならないのである。

其の為には、施策を遂行する前に、その施策の及ぼす影響の全容を把握することが肝要
である。つまり、トレードオフを考慮することである。一つの方向が他の大いなる重荷となって現出することにもなるからである。

採用した施策が環境に更なる悪影響をフィードバックしては元も子も失うことになる。現下に置かれた環境への対応は正に時間との勝負であり、誤魔化しでは済まず、リセットの利かない不可逆変化の要因を扱う極めて洞察力を要することである。

現環境の状態は、大袈裟に言えば、生物環境の頂点に立つ人間其のものの存在価値が疑問視されることである。「地球に優しい」とかの標語のオブラートで、人間のどうしようもない性、平たく言えば、全てを食い潰しあらゆる悪性の毒を廃棄する存在としての醜い姿を、包んでいるうちは本質に迫れないのである。

環境問題は正に人間自身が作為し背負い込んだ問題であって、他の生物に責任を転嫁することは決してできない。環境問題のどれ一つとっても、人間の業の現われである。畢竟環境問題は人間同士の争いの結果なのである。

闇雲に突っ走っては崖に向かうが如くで、取り返しのつかない状況に陥いる。事実に基づいて全体を俯瞰し、環境への負荷を軽減する方策を市民・事業者・行政共に考え行動していかねばならない。

人間の為した始末は人間の知恵で。
                     氏名 ○○○
                     住所 □□□

 

参照資料

STOP THE 温暖化 2008 環境省

平成2028 京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する最終報告について(お知らせ)

exclusive:The methane time bombTHE INDEPENDENT

『環境問題はなぜウソがまかり通るのか3』The life of an Environmental Problem 3

武田邦彦著 2008/10/17初版発行()洋泉社

「温暖化防止交渉で「抵抗勢力」になった日本 COP13・「気候変動枠組み条約」締約国会議」岡田幹治『週刊金曜日』2008.2.8(689)