結果

 

尾張旭市情報公開条例の一部改正(案)について

 

平成201015

 

大量請求について、第1回尾張旭市情報公開懇話会議事要旨(平成12年3月22日)から抜粋する。

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大量請求を恐れるのではなく、ファイリングシステムを整備して解消していくのが筋だと思います。結果的に大量請求になるのは、それが必要な文書なら仕方がありません(委員発言)

処理できる範囲であれば、たとえ時間をかけようと公開します。大量というのは、延長、特例でも処理できないほど多くて、時間的に不可能なときのことです.請求の段階で請求者と相談しますが、相談にも応じないような請求のときです(文書係長)

 「電子化、ファイリングをしっかりやれば、大量請求には対応できます(委員発言)

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当市は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(以下「法律」という)(平成11514)の後を追い、「尾張旭市情報公開条例」(以下「条例」という)が施行(平成134月日)された。条例制定に先立ち「尾張旭市情報公開懇話会設置要綱」に基づく、「尾張旭市情報公開懇話会」(以下「懇話会」という)(平成12222日第一回会議から629日の第5回会議迄の期間)が開かれた。

 つまり、冒頭に懇話会の審議内容から引用したように、大量請求に関しては既に論議されていたのである。此の論議は具体的には、条例の第21条「実施機関は、その保有する情報が適時に、かつ、適切な方法で市民に明らかにされるよう、情報提供の総合的推進に努めるものとする」更に第22実施機関は、文書目録その他公文書の検索に必要な資料を作成し、一般の閲覧に供するものとする」に収斂される。

今次の条例改正の主眼は「情報公開制度をとりまく背景」で言及しているように、大量請求かと推量する。以下疑義の点等を述べる。

 

1. 如何に効率よく、速やかに、低廉なコストを以って文書公開請求者に応ずるかは、条例の目的にも合致する。したがって、条例改正に際しては、足かけ八年の間に実施機関が取組んできた「情報提供の推進」、「公文書の検索資料の作成等」がどのようなものかを説明すべきではないか。手数料のみで抑止しようとしても、事業者による営業目的の場合には何ら解決にはならない。抑止力を手数料に依拠すれば、広く市民に対する過重な負担となって跳ね返り、条例目的に違背することになる。

2. 「集中改革プラン」(平成17年度〜21年度)を見ても、「電子自治体の推進」は有っても、情報公開の電子化による行政コストの削減、情報提供の迅速・軽便化は無い。つまり、実施機関の情報公開に対する継続的取組がなされていないのである。尾張旭市第四次総合計画書の「情報化の推進」でも、情報公開を対象とした施策は見当らない。つまり、公文書公開に組織的な手段を講じていないのである。これでは大量請求云々以前に、大量の公文書抱えた実施機関の日常業務を持つ担当職員に大きな負担を強いることになる。公文書の公開の重要性を考慮すれば、上述の観点からの説明も必要である。法律では、地方公共団体の情報公開として、第二十六条「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない」としている。

3. 1.2.で述べてきたことは、市民が税金で負担することになる行政コストとしても把握される。公文書公開に掛かるコスト把握は、偏に其の一連の作業から抽出される。つまり、時間と人数の積としての工数が分れば、後は職員の時間当たり単位金額を掛ければよいのであるが、前提として作業分析がなされ、標準的な数値が提示されなければ、「なぜ、条例の改正をするのか?」でいう「特定の利益を受ける人に費用の一部負担」の説明がなされていないことになる。また其の一連の作業の何処に隘路があるのかも不明である。行政コストとして取り上げた場合、更に不服申立て(H19年度28件請求中12)に伴い「尾張旭市情報公開・個人情報保護審査会」に諮問されることになるので、委員に対しての報酬 (日額 9,900/一人×5)が行政コストとなる。公文書公開請求者に受益者負担を求めるのであれば、統計的数値を示し説明すべきではないか。特に今回実費負担(コピー代)という公文書公開請求者の負担概念を超えた部分での費用でもある。法律第十六条二項では「手数料の額を定めるに当たっては、できる限り利用しやすい額とするよう配慮しなければならない」とあり、その判断の資料ともなる。

4. さて大量請求に関してはその定義も無い。強いて言えば、文頭に挙げたようになる。(大量請求)(当該実施機関の受容能力)になった時、当該実施機関の通常業務に支障を生ずることになる。つまり、(平常業務)(平常の市民へのサービス業務)と考えるなら、この権衡が崩れることは、市民へのサービスの低下となると見做している。ここで公開請求者は「公文書は公開請求者だけに公開されるため、特定の利益を受ける人」とされ、バランスの範囲内外で、平常の市民サービスから外されることになり、地方自治法第十条二項「住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う」に触れる。では例えば、体育館等の施設の使用料負担はどのように考えるかであるが、此の場合、全面的に其の施設に付随する業務が其の特定の使用者に対応しているのであるから、受益者負担も首肯できることになり、また施設の受容人数まで受付処理がされることも了解事項である。このように考えると、公文書の公開業務は通常業務で熟すのか、或は専従職員を置くべきなのか、が問われるところである。尾張旭市の現状は通常の業務範囲で為されているとみる。因って語弊があるかも知れないが、情報公開に伴う作業は片手間なのである。片手間ゆえに今回の「情報公開制度をとりまく背景」にあるのは通常業務で溢れた部分についての対策をどうするかの苦渋の選択であると思うが、1.2.3.で述べたように説明も無く、手数料を弄るだけでは問題の解決には程遠い上に、市民と共に育てる情報公開制度に一抹の不安を覚える。つまり、大量請求でも通常業務内で処理できれば、手数料徴収は不要なのかが不明である。

5. 「特定の利益」というが、公文書の公開は特定の利益を受けることなのだろうか。条例の目的の部分「市の保有する情報を公開し、もって市の市民に対する説明責任を全うするようにする」、つまり、市民に対する説明責任を全うしてもらうのに、換言すれば、説明不足があるから公文書の公開請求をするのに、手数料等を徴収するのは本来主客転倒ではないのか。事業者の大量請求に対しても、現状では、同様としか言いようが無い。条例で利用者の責務は置くが、知り得た公文書からの情報を如何なる目的に使用するかは別段の定めはない、請求時に問われることも無い。また問うてはならないことである。「公正で開かれた市政の推進」を妨げることにもなっていない。情報を以って、知るだけを超えて何らかの価値創造へと向かうことを、妨げる理由は何も無い筈である。当然、市民を尾張旭市民だけに狭く限り、情報鎖国するなど論外である。目的に云う市民は広く国民と理解すべきであるし、インターネットの世界観からいえば世界市民と理解すべきである。米国の情報自由法(FOIA:Freedom of Information Act)ではアメリカ国民は言うに及ばず全世界の人々がアメリカ政府の公文書の公開を求めることができる。しかしながら、市民側の説明責任に対する必要性は様々である。したがって特定の利益を受けると擬制されることになる。市民全部が情報公開の請求をすると仮定すれば、公文書公開センター、或は情報公開課などを設置し対処しなければ追いつかない。つまり、現在は公開請求者が圧倒的に少数者のために起きている問題ともいえる。件数で云えば請求は僅か28/年である。4.の関連で、図書館司書のような専門職を情報公開担当として養成する必要があるのではないか。「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」(平成20229日内閣官房長官決裁)で、公文書の意義を「民主主義の根幹は、国民が正確な情報に自由にアクセスし、それに基づき正確な判断を行い、主権を行使することにある」、「過去・歴史から教訓を学ぶとともに、未来に生きる国民に対する説明責任を果たすために必要不可欠な国民の貴重な共有財産である」とし、公文書管理システムの構築を前向きに述べる。市民が自由に扱えてこそ、情報は生きるのである。情報公開には高邁な理想と其の実現の為の緻密な計画が必要である。各自治体が個別に大量請求の対処に悩むのでなく、大量請求に低コストで短時日のうちに対処できる管理システムの構築に意を注ぐべきである。例えば、全国市長会でシステム構築の重要性を訴えるなどすべきではないのか。例規集のシステムのように全国ベースでほぼ同一仕様・操作で利用できるシステムである。請求される前に公文書を公開しておくことが最も肝要なことであり、個人情報の類は例外処理をしておけばよいのである。

6. 大量請求への条例での措置は限られている。その限られた措置をどのように実施機関は用いたのだろうか。公開請求の拒否、公開決定等の期限、公開決定等の期限の特例(公文書が著しく大量の場合)1.で述べた公文書の検索資料の作成等の方策を用いて公開請求者への助言による適切・効率的な公文書公開へ導く手段しかないのである。しかし、実施機関として悩みがあることも現実である。例えば、閲覧などの公開請求をしたまま放置するなどについては、決定通知書において開示の有効期限設ける制度も有効かも知れないが、公開請求手数料200円を支払い公開請求しっ放しには対処方法無しである。例示として、Aに関する文書、という請求を受けた場合、絞込みが実施機関、請求者の間でなされないと膨大な資料に膨れ上がることもある。其のためにも検索システムの充実が望まれるのである。尾張旭市の情報公開の現状を総括する必要がある。全世界から情報公開を請求される米国の場合(2007年度請求件数 DOJ:52,260,FDA:12,320,EPA:11,820,DOT:17,894,WH:140件等である。各HP)、件数からだけでも、如何に公文書が電子化され効率化されて処理される必要があるかが分かる。日本国の行政機関への開示請求件数(平成18年度)49,930件である。其の中で法務省が16,376件を占める。情報法公開制度の仕組みからみても、大量請求に耐えうる電子化対応能力を付けることは避けて通れない。例えば、閲覧に個人情報の開示回避処理をして、モニター画像閲覧で公開請求に対応するなどの手段を講ずることは、尾張旭市のみの課題でなく、全国自治体の課題でもある。大量請求ばかりか件数の増加にも対応可能でなければならないのである。要は情報公開に対する理念の在り方が問われているのである。大量請求に焦点をあてて情報公開制度を萎縮、或は退廃させては元も子もない。情報は其れ自身広く行き渡ることを欲するものである。公開請求で得た公文書情報と事実を照合してこそ、条例の目的に沿った建設的な議論もできるというものである。

7. 公文書開示請求者からみて、公文書、例えばA4サイズのコピー紙1枚を10円で入手するのではない筈である。紙だけなら1/10程度で今なら購入できる。紙という媒体に記載された内容(情報)に着目しているのである。この観点からすれば、閲覧のみの公開請求が無料であったのは情報公開に係る行政サービスとしては好ましいことかも知れないが、情報そのものに主眼を置けば不均衡の是正が必要である。今次条例改正では情報の価値に力点を置き改善し、1.6.までを別にすれば、一応の評価ができる。3.で述べたように、行政コスト(市税の掛かり具合)を、受益と言うことでは異論はあるが、情報提供コスト=公開請求手数料+公開実施手数料という式で表現されたのである。しかしながら、情報の価値に主体をおけば、例として、情報提供コスト=公開請求アクセス・相談料+公開実施手数料とすべきではないか。つまり、改正点の「例1 A公文書40ページの閲覧の場合」を当て嵌めるなら、情報提供コスト(300)=公開請求アクセス・相談料(200)+公開実施手数料(100)となる。同様に「例2」では、情報コストは450円になる。つまり、公開実施の前に公開請求される文書を回って、公開請求者・実施機関との媒介をし、効率的に公開請求者の初期目的が達成されるようにすることである。条例でも第二十一条に謳われているように、情報提供を全うすることになる。なお改正で情報提供を事前に十分にし、説明していれば、黒塗りの不用な文書を開示しなくても済む筈で、公開請求(尾張旭市情報公開規則 第三条に規程の第1号様式を以って請求した時)の前であれば、公開請求者にとり、公開請求手数料・公開実施手数料の無駄な出費は無いことになる。検索機能の充実(文書の概要把握、非公開情報の掲載の有無と其の程度・種別等)が俟たれるのである。

8. 今私たちの置かれた状況(環境等)に視点を向けたとき、知恵を絞らなければならない焦眉の解決を要する問題が多大である。「情報公開」は優れて人類に与えられた知の宝庫・問題解決等の鍵と見る。真に開けられたパンドラの箱に最後に残った希望なのである。市民が知ることに無関心であることは、糸の切れた凧(自治体)を見るが如くであって、条例の目的にも添わないし、国民主権の理念を強化することにもならない。

 

                            氏名 ○○○

住所 □□□