平成18年4月19日 尾張旭市議会 議長 佐藤 信幸 殿 足立 巖 尾張旭市議会集中改革プランを住民に示すことについての申し入れ書 はじめに 現在当市においては「尾張旭市集中改革プラン(平成17年度〜21年度)(以降「改革プラン」という。)」を策定し、鋭意努力されているところです。本改革プランは行政改革の取組として、具体的な改革事項を挙げ、改革の概要、年度、数値目標(効果)、実施所管部署を市民に明示し、不退転の決意のもと抜本的な改革を推し進めているものです。 住民としても、身近な政府である地方自治体を取巻く厳しい種々の環境を見詰めるとき、行政と協働し如何に難局を乗り越えていくかを、考慮せざるをえません。 尾張旭市は既に高齢化社会を過ぎ高齢社会(平成18年3月31日現在 16.3%)に入っております。超高齢化社会も視界内(平成26年22.4%推定、25%超えた場合超高齢化社会といわれている)に入って来ています。 到来する高齢者の増加する社会だけとってもみても、どう対応するのか、つまり、高福祉自治体を実現するのか、中途半端な不満の多い超薄福祉を振り撒く自治体を選択せざるを得ないのか、それとも高齢者に自己責任を迫る苛酷な自治体に進むのか、あるいは住民と共に新たな福祉を目指す自治体を創造するのか、問題、課題は山積みです。 当市の平成16年度の未償還元金は一般会計、特別会計を合わせて、約278億4千万円になります。元利の償還額は約46億4千4百万です(借換え債の自転車操業、本来なら債務不履行でしょう。まぁ当市だけのことではないですが)。また、一般会計予算対比で、88.2%強(平成17年度予算、平成16年度の未償還元金)分の地方債を抱えています。財政の弾力性を示す経常収支比率も60%台(1980年台)から現在の85.2%(2004年度)と高い数値を占める傾向になり、既に財政構造の弾力性が失われております。これは人件費・扶助費・公債費(借金の元利償還金)等の経常支出に地方税・地方交付税・地方譲与税など一般財源がどれだけ費消したかをみるものですが、別な観点からすれば、経常支出が十分に考慮され適正に配分されていれば、弾力性が失われたからといって、必ずしも批難されるべきものではありません。 しかしながら企業に例えれば、固定費の増大であり、原価高を齎し、結果的には企業競争力の低下を招きます。その結果、将来に対応した研究投資や施策を繰り出す余裕が無くなり企業自身の存続が危ぶまれる状態に陥ります。自治体とて例外ではありません。自治体の破綻法制が検討されるところです。 自治体が破産状態に陥った場合、「地方財政再建促進特別措置法」により申請し準用再建団体になりますが、其の時には市議会の役割は事実上無きに等しいでしょう。また当然のことですが、最後の附けは住民に届きます。 尾張旭市は改革プランでも述べているように、昭和60年以来行政改革に取り組んで来ている訳ですが、ここにきて地方分権制度の流れの中、三位一体改革、公務員削減など政府の矢継ぎ早の政策は自治体を直撃して来ており、当市もその改革を実り多いものにしなければ、大きなうねりに飲み込まれてしまいます。 市は改革プランの進捗状況を公表し、PDCAの各過程で住民の厳しい判断を受けようとしています。 さて長い前置きでしたが、本題はこれからです。総務省は平成17年3月29日 総務省事務次官名「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策定について(以下、「策定」という。)」で、「命により」通知しております。平成16年12月24日の閣議決定「今後の行政改革の方針」に基づく「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針(以下「指針」という)」です。 策定の中で「議会においても、改革推進のためにその機能を十分に発揮することが重要である。」としています。そして地方自治法第二百五十二条の十七の五 に基づき助言として、指針が示されています。 指針「第2 行政改革推進上の主要事項について」の「8 地方議会」(1)の後段で、議員の定数や報酬に対することが挙げられています。(2)では、執行機関に対する監視機能を高めることと、議会として住民の意見集約・反映の取り組みか挙げられております。 しかしながら尾張旭市議会においては、現在に至るも指針に基づく議会としての施策(例:執行機関の改革プラン)が示されているかどうか、寡聞にして存じません。若し議会改革計画等がありましたらご教示を仰ぎたいと願うものです。 自治権の最高機関を構成する両輪の一方の執行機関が改革プランを掲げ実施しているのですから、他方の議会が自ら何を計画し実施するのか問われるのは理と同時に、住民等に説明する責任が生じます。議会だけが孤高を持する訳にはまいりません。議会人として、執行機関の監視に及ぶ訳ですから、執行機関の改革プランに成果を期するには先ず「隗より始めよ」です。そうすれば一層行政改革は拡大伸展するでしょう。なお蛇足ですが、改革プランには教育委員会の行政部署も加わっております。 そこで以下一住民として市議会の改革の一助になればと非力を省みず提案させていただきます。認識不足等ありましたらご容赦の上、ご教示いただくか直接の論議をさせていただければと思います。 議会改革プランへの提案 1 市議会の議員定数を現在の24人から12人に半減 市町村の議会の議員の定数は条例で定めることになっています(地方自治法第91条第1項)。当市は第2項六に該当し、30人の数を超えない範囲内で定めなければならないとなっています。つまり、一人から三十人の範囲内です。「尾張旭市議会議員の定数を定める条例」の定めで、現在は24人です。 定数を決める基準は特にありません。削減を検討するとき、類似団体とかを比較したり参考にしたりしますが、余り意味がありません。なぜなら本来議員(議会)の役割(機能)は、地方自治法第二節権限 第96条以下の定め果たすことです。この機能が公正に遂行されれば、敢えて言えば数人の議員でもかまわない訳です。法も従って上限しか決めず下限についての定めを置きません。 議会の活性化は議員の活性化をしなければ何も始まりません。企業も遊休資本、遊休設備、遊休人員を再構築(リストラ)し生き残りを掛けています。長らく本会議、常任委員会等を傍聴していますが、例えば一回の本会議での質問者は平均すると14〜15人です。この傾向は各委員会へも引き継がれます。つまり、現在の半分程度でいいのではと考えます。質問、質疑の内容から言えば、更に減数して問題意識を持った数人程度でも十分です。 次の選挙には新減員定員数になるでしょうか。 2 議員報酬の日額制の導入 地方自治法第203条1項に議会の議員に報酬を支給しなければならないとされています。働いたら報酬等を受け取るのは当然のことです。同条の5項を受けて「尾張旭市議会の議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例」定めています。 しかし地方自治法には議会の権限の定めはしても、常勤の定めはありません。極端な例を引きますと、議員に当選して4年間丸々議会に出て来なくても、報酬は支払われることになりませんか。民間では考えにくいことです。別な言い方をすれば、一般職の公務員は職務に専念する義務を負っています。同じ全体の奉仕者であっても方や常勤で、一方は自由勤務体系です。ですから、民間企業に勤務しながらでも合間に議員活動が可能なのです。 議員報酬についてもその額を加減する時、他市を横睨みしたりしますが、これはどうでもよいことです。要はその自治体が決めることです。それが自主的な自治体なのです。 政府も比較となる民間給与の比較範囲対象をどう捉えるかで、行政改革の重要方針(平成17年12月24日閣議決定) で、「(エ) 比較対象事業所規模の見直し等 民間企業における雇用・組織形態の変化等を踏まえ、比較対象範囲を拡大する方向での比較対象事業規模の見直しや比較対象とする民間役職員の部下数(正社員)要件の見直しを行う。」としています。徐々に変わっています。各自治体の環境を重視した方向に流れています。 以前計算したことがあります。議会は会期が年間83日(実際は委員会も含めて定例会は10日ほど、臨時会は1日であるから42日である)です。83日として日額9,900円を乗じると821,700円/議員、この金額に24議員(現状)を乗じると19,720,800円/年額です。特に必要な経費は実費支弁すればよい。平成18年年度予算に議員報酬、議員期末手当合わせて175,892,000円計上されています。ほぼ一割で済みます。 そんなことでは優秀な人材の議員が集まらない等などの反論があるかも知れません。しかし考えて見てください。議員の存在は必ずしも住民の意向ではありません。法の定めがあるからに過ぎないのです。法の定めは改めることができます。現状の上記のような計算などを示したら、肯定する住民は少ないでしょう。元来、市政は住民のものです。 優秀な人材については一言述べます。現在当市でも住民の参加する附属機関、懇談会等、行政委員会が合わせて35あります。中には大学教授も参加しております。専門家あるいは専攻する学問の研究者といってよいでしょう。その人たちと公募の住民をも交えて当市の問題や課題を話し合っています。懇談会等では専門家でさえ半日額の6,400円ではないでしょうか。それどころか、無償で参加している例もあります。 将来に法改正があって、議員が不要(選挙費用も浮く)または議員を支える税収入も危ぶまれる時(自治体破綻=破産)は、それに代わる機関が認められるようになれば、行財政の専門の大学教授等と公募の住民が、直接予算、決算、条例等を審議するようになるでしょう。これなど費用対効果としては抜群です。ムリ・ムダ・ムラを省くことが肝要です。 地方自治法の目的に、「地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、」とあります。また同法第1条の2では、住民の福祉の増進を図ることと地域における行政の自主性を定めています。徹底的に無駄を省いて住民福祉に寄与するのです。 3 政務調査費の廃止 地方自治法第100条13項、14項に基づき「尾張旭市議会政務調査費の交付に関する条例」で交付されています。平成18年度では3,600,000円(12,000×12月×24人)が 予算化されています。 13項の定めは「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。」となっていて、交付しなければならない訳ではありません。 もとより「その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として」(地方自治法第100条13項) ですが、調査研究の成果の程が住民には一向に見えてきません。例を挙げれば、「WHO健康都市連合のみちのりとこれから」(平成16年11月15日〜17日沖縄県平良市他 参加者6人 費用720,279円) との名目で、沖縄まで行く必要があったのか無かったのか、検証する必要があります。確かある会派の議員が本会議で一言二言触れたとの記憶がありますが、それだけのことでした。 全面廃止はできないとしたら、インターネット等で現地に行く前に徹底的に調査し、また資料の取り寄せ等をして、本来の調査の目的が出張せずに達成されないのかどうか検討すべきです。 「百聞は一見に如かず」は、美景や芸術に触れるにはお似合いの諺かも知れませんが、住民に説明するような政務調査では、合目的的な論理的帰結を導くような内容が必要とされます。それが公費(税金)使う者の義務であり、また執行機関の監視役としての面目です。 4 議員であることによる別報酬受取りの廃止 一般の公務員が先に挙げた委員会や懇談会に出席しても条例で定めがありませんので、報酬は支弁されておりません。 監査委員を例にとります。地方自治法第196条1項に「議員のうちから、これを選任する」となっています。当市は一名の議員がなっています。地方自治法第203条1項に基づいての「尾張旭市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例」により月額34,600円が支払われています。 疑問は、議員であるについては既に議員報酬を得ている訳です。議員という条件があっての監査委員の地位です。公募では監査委員になれません。であるならば、報酬が加算されるのでなく、当然の受任義務として議員になるに当たっては議員報酬内に含まれていると考えるべきです。 次についても検討してみて下さい。尾張東部衛生組合議会議員、尾張旭市長久手町衛生組合議会議員、公立陶生病院組合議会議員、瀬戸旭看護専門学校組合議会議員、尾張農業共済事務組合議会議員、都市計画審議会委員、土地開発公社理事です。 5 常任委員会等は全員参加ですべきである これは定数削減後を想定しているのですが、各議員は等しく予算の審議等に関与すべきであると考えます。これには現在の定数の半分程度がよいのです。例えば今ある議員をとってみると、議会運営委員会、建設経済委員会、予算特別委員会(市議会だより編集委員会は省きます)六委員会の内の半分の審議に関与できるだけです。これでは全体の奉仕者として又市民の代表として、発言の機会を失っているのに等しいのです。 議員として日頃の活動で住民の要望を数々収集していると自負するなら、余計に残念なことです。今後予算特別委員会を以前の方法に戻すわけですから、特に各委員会に出席し質疑すべきなのです。そして各委員会は質疑、討論までとし、表決は本会議の場ですべきです。つまり委員会の場は徹底的に質疑の場とすべきなのです。緊張感が醸成されます。 6 代表質問は不必要
会派の代表が一身に背負って多くの項目を多岐にわたって質問していますが、印象としては冗長的でメリハリが利かず単調である上に、聴くもの者に飽きを起こさせています。また120分の時間を有効に使う質問技術も拙劣でオウン・ゴールです。 それよりか質問項目を各議員に配分し絞ったのが準備も整え、質問・再質問等も的確になっていくのでないでしょうか。それには情報の共有化が必要ですし、戦術、戦略も必須です。議場は議員にとって乾坤一擲の見せ場であるとの覚悟くらいしてもらいたいのです。 7 会派室は廃止すべき 住民にとって会派など無意味です。会派の部屋は廃止して大部屋で一堂に会して常に侃々諤々市政の在り方や行く末を論じるべきです。是々非々主義でやるべきです。個々の議員の意見、信念、判断は尊重されるべきです。傍聴していると、明らかに挙手すべき案件でも挙手できないなど不自然な光景も見受けられます。「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として」います。これを理解しなくては議員活動も無意味です。そのための方策に各議員が鎬を削ることが期待されているのです。各派に纏まっていては、尾張旭市議会としては会派分だけの意見しかないことになります。これでは議会活性化など夢の夢です。正々堂々と活動すべきです。 会派について市議会のHPは、「市議会内では、市政について同じ考えや意見を持っている議員が集まって、それぞれグループをつくっています。これを「会派」といいます。」と説明しています。例えば、議員が私は別な会派ですから、その件については反対しています、と何かを要望する住民の前で言い切れるのでしょうか。疑問です。 8 執行機関に会派は無い ジョブ・ローテーションで各部署の知識と実務能力を練磨せざる得ない行政側は当然ながら会派に合わせて仕事をしていないのです。 地方自治法第138条の3の2項「普通地方公共団体の執行機関は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、執行機関相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。」とあり、謂わば、総力戦で行政を運営しています。 しかしながら、監視機関である議会は会派などという蛸壺の中から外部を覗くようなことをしています。一体して協力できる体制を作るべきではないでしょうか。 9 情報の共有化 情報の共有化とは何を意味するのでしょうか。例えば、掲示板に貼り紙がしてあるとき、それは「連絡・お知らせ」の類で殊更情報とは言いません。それは回転食卓の料理を各人の皿に取るのに似ています。 情報の共有化とは、各議員の持つデータを交換し、調整し、統合することです。例示します。A議員のa、B議員のb、C議員のcがあるとし、英小文字はそれぞれが持っている情報(データ)とする。共有とは、A議員のaについてB議員、C議員が知り、B議員のbについてA議員、C議員知り、C議員のcについてA議員、B議員が知ることで、情報としての価値を調整し一つの意味ある新情報を拵えることです。 更に具体的に言えば、このようにすれば各議員間の似たり寄ったりの質問は消失します。理事者側にとてもウンザリするような決まり文句は重ねて吐かなくとも済みますし、何よりも二度と取り戻せない貴重な資源である時間が有効に利用できます。 10 議長室・会派室はオープンにする せめて会派室が廃止できないならオープンにしたほうがよいでしょう。市長室はオープンという形式をとっています。 11 議会事務局に法制担当職員を置く 議会が活性化される条件として、自立権に基づく条例だけでなく、住民からの課題を逸早く把握して政策的な条例を議員条例として提案することが必要です。それには条例を作成する能力が議会に求められます。議会事務局には儀典に通暁するばかりでなく、法制度に詳しい者を配置することが肝要です。 12 議員活動は住民の意見を代弁しているのか、市公開の会議を傍聴すべきである 議会だけが議員活動の場でない、という議員の方もいるでしょう。当然のことです。しかし、議会が本命なのです。傍聴している時、「市民の目線で」とか「市民にとって」などの言葉を聞くとき一抹の不安を覚えます。その不安は、市民と議員とは違うという意識が何処か片隅に転がっているからではと勘繰ってしまいます。こんな枕詞は不要なのです。余計な修飾語も要りません。本質を掴んだ質問や質疑をしてもらいたいのです。とくに何か質問や質疑の意味を勘違いしていて、学校で生徒が先生に聞くようなことをしている議員もいます。 さて議員の議会外の活動ですが、別に議員に限らず、ボランティア活動している人たちも含めてそんなにその差は無いと思います。若しあるのでしたら、出来るだけ説明してもらいたいと思います。例えば、議員が何か依頼されることは間々あることでしょう。その中には無理難題もあるかも知れません。が、無理難題は議員にとっても無理難題だと思います。特別な魔法のランプ持って事を処理するとは、住民も期待はしていないと思います。もし特別なルートで行政に働きかけて事を為したとしたら、それこそ不公平な措置の謗りを免れません。問題です。とすると、行政との連絡役が主ではないかと推測します。 そこで総務省の指針「3 定員管理及び給与の適正化等(1)A団塊の世代の指摘です。退職後身近なところの「いこいの家」などで市政の相談・連絡係りになってもらうことです。行政を知悉した方がいてくれれば、高齢者にとっても心強いものです。 市政を知るには市の公開している会議等を傍聴することが大いに裨益します。今そこにある問題が語られるのです。住民と行政がぶつかり行政の立場や悩みが顕になる時もあります。議会では見られない一面です。傍聴者としても問題意識を持たされます。議員がこんなに情報の溢れている場所を覗かないとは不思議です。傍聴すれば深まった質疑や質問も発することができるのです。それとも何でも承知していると思い込んでいるのでしょうか。 議員の仕事もまともにやっていたら、他の仕事の合間という訳にはいきません。問題点、課題点を分析し纏めなければ監視の初歩も成り立ちません。一夜漬けては化けの皮が剥がれます。 13 議会は執行機関と張り合うべきだ 議会の姿勢が問われるところです。法の定めは定めとしても、このままでは住民からも行政からも見放され、孤立し、厄介者としてしか認識されなくなります。現代は住民への情報が事細かにHP等を通じて流される電子政府の時代に突入しているのです。住民と行政は情報でも直結してきているのです。議員が先に知ったとしても殆ど時差無く住民にも情報は伝わります。 例を挙げます。パソコンのオペレーティング・システムやアプリケーション・ソフトを設計・製作しているマイクロソフトは、ベータ版とか称して完成前のソフトウエアを全世界に条件を附けてばら撒きます。つまり、希望者はダウンロードできるわけです。これは賢いやり方です。只で全世界の人を使ってデバッグ(不具合を発見し直すこと)できるのです。物によっては千億近い開発費を投じて作るものです。その膨大な仕様を全部自社でチェックするのは不可能です。 このことから学べるのは、行政も情報公開を推し進めれば、それも24人の議員にだけでなく、全住民に向かって情報を公開すれば、各種のチェックが入り見返りも多く行政事務作業等の完成度が高くなることです。また住民の満足度も高まることでしょう。 谷口市政は「谷口市長へe-対話」で住民からの情報を得ています。内容は苦情等も含めて様々でしょう。それゆえに市政にとっては羅針盤の役割を果たします。先述したデバッグ効果です。 議会は何を持って議会の針路を決めるのでしょうか。若し議会が向こうを張って、例えば「議長へG=住民 対話」を実施したとき、議会の質の変化が起きると思っています。量が質を生むのです。どんどんやったら良いと思います。自ずと住民からの訴えも議会に対しては違うものが出てくると考えます。その先にはしっかりと両輪が回ることを見ることになります。 行政の細分化、専門化は行政担当者も特定分野の知識や技術を日々身に附けるために研鑽しなければなりません。そこで議員も汎用と専門という一見相反する能力を養成し、常任委員会に望まなければなりません。そのための議会人として、学習を組織的・計画的に実施する必要があります。他市も悩んだ上の決断をし、先進都市というか生き残りをかけているのです。漫然と政務調査をしても得るところはありません。 先ず問題を議員全員でブレーン・ストーミングでもして、纏め上げたらいかがでしょうか。何よりもその与えられた権限を十分に活用するためにです。目標が定まることでしょう。 14 意思決定のスピードアップを 例えば議会運営委員会など傍聴していると、取り決め事項の結論に時間がかかるのが気になります。会派の意向などの取り纏めのこともあるのでしょう。が、それよりも意思決定が延びても誰もが痛痒を感じないような事を論議しているからかも知れません。単なる議会内のことで、どう転ぼうが、住民の生活に直接影響も無いまた住民の与り知らない、極々些細なことで、風が吹いても桶屋も儲からないようなことなのかも知れません。 何かをシューレーションしたら、その結果を即検証し次回に反映させるなど、ここでも明快にして速度感あるPlan Do See Checkのサイクルをして欲しいと思います。 15 情報公開請求を利用して宝の山(執行機関)を掘る 情報公開が施行されて久しくなります。行政は情報に溢れています。執行機関が気付かずに処理しているのも多々あります。 何らかの課題に対応する場合調査・資料収集・分析・総合と経て解決策を見つける方法を採ります。特に資料収集は豊富な解決代替案を得るのに非常に大切なものであります。大量に集められ・整理され・いつでも必要な時に取り出せる資料として、公的機関のデータベースの公開は、問題解決・課題発見の前進的論証には不可欠の条件ともいえます。 情報公開は私たちが同一化された判断資料を持つことにより、為すべきことへの認識の共有化も計れるのではないでしょうか。また、課題等への取り組みの参画も容易になり、同じ目的達成への歩みが可能になるのではないでしょうか。逆に意図的に隠された資料が在る場合や作為的資料で在る場合には、私たちの生存環境を不可逆的な誤った方向に誘導することにもなります。これは運命共同体に在る総てのものにとって不幸な事であります。共同体の当事者としての私たちは対等に情報を得て、山積する問題に共に力を合わせ対処するときであると考えます。 情報公開請求を単に行政に対する追及手段としてだけ見るのは狭隘と考えます。優れて人類に与えられた知の宝庫・問題解決等の鍵と見るべきでしょう。情報は万人に用いられてこそ生きます。 是非、情報公開請求を利用することによって、宝の山からキラリと光るものを見つける議員内での競争をしてもらいたいと思います。 まとめ これまで述べてきたのは、国会や国会議員を想定していません。地方自治体でも市レベルでのことです。谷口市政がいつまで続くかは別にしても、対話の行政が進化して行けば、執行機関としての重きは更に深化します。住民にとっても直接執行権限を有する者との対話は歓迎すべきことです。 その一つの良い例に「交通問題懇話会」が挙げられるでしょう。議会では中々進展しなかった課題を住民と有識者と行政が漕ぎ着けたのです。その活発な議論、問題意識、試行錯誤の解決能力はどれをとっても、評価に値するものです。このような同一目標に向かう姿には会派は存在しません。住民・行政との協働する見本となるでしょう。福祉関係にもその兆候が伺われます。 民間企業には価値分析(Value Analysis)という手法があります。議会に当て嵌めれば、議会の価値を、それが果たすべき又は果たしている「機能(議会の権限)」と其の為にかける「コスト(議会費)」との関係で把握していただき、議会の「価値」の向上を計る必要があります。 《桃》文庫へ |