谷口 市長 殿

  2005818

足立 巖

尾張旭市監査委員に対する措置申し入れ書

 

貴職は地方自治法第196条に基づき監査委員を選任いたしました。その監査委員の「尾張旭市市民部生活課職員措置請求書」(平成17324日付)に対する17監第11号平成17年5月16日付住民監査請求に基づく監査の結果について(通知)」を精査したところ、住民の信頼を裏切るような監査の判断であることが判明いたしました。

 その内容は後述いたしますが、地方自治法第197条の2にも該当すべきではないかと判断いたします。また、地方自治法第198条の3監査委員は、その職務を遂行するに当たつては、常に公正不偏の態度を保持して、監査をしなければならない。」にも抵触すると考えられます。

監査委員に対する措置と今後の対応について回答を求めます。期限は2005928日迄といたします。尚、本申し入れ書は尾張旭市議会議長にも一部提出いたします。

 

17監第16 平成1761 公文書公開決定書(公開日 平成1761)による「住民監査請求に基づく監査の結果について(通知)」の文書から、 「第3 監査の結果 3判断」の監査委員の判断文章について、「『地方財政法逐条解説』石原信雄 昭和55756版発行 発行所 株式会社 ぎょうせい」の文を引用し、その理由を明らかにする。

 

監査請求人は監査委員の判断文章を読む中に、内容の不明瞭、論理の不透明性等に疑義を生じた。その後判断文の出所を探ると、上記の『地方財政法逐条解説』に在った。なお、この著作は、『地方財政法逐条解説〔四訂〕』(平成61210日発行)もある。

 

監査委員の職務権限は住民の請求を受け、地方公共団体の財務管理・行政運営に関する事務・事業を批判的に観察してその正否・適否または当否を判定することであると理解されるが、以下に分析するように、判断内容は監査委員自身の文ではなく、明らかに著作権法にも悖る剽窃行為の結果であり、住民の委託を受任するものとして、住民に対する背信行為にも等しいものである。その出所を明示もせずに監査委員の権威ある公文書として監査請求者に対するは、監査請求者を誤った方向に導くものであり、また請求者の情報アクセスへの手助けともならず、情報に接する機会均等を著しく損なうものでもある。

 

著作権法32条の「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」に反し、また、2項「国若は地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。」にも違反する。2項は、今回のように、公文書請求がされた場合、違法な文書(文)が、堂々と転載が自由となるからである。これは原著者に対する著作権の侵害となる。同法48次の各に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。とあり、引用の要件を定め、122条で48条又は第102条第2項の規定に違反した者は五十万円以下の罰金に処する。」とある。

では以下に比較対照文を挙げ具体的に見る。対比の都合上引用は意味の纏りに亘った。

「第3 監査の結果 3 判断」については【】で括り、『地方財政法逐条解説』については《》で示す。【】内の は監査の判断結論部分である。《》内の文の太字部分が判断文として剽窃されている部分である。()内頁は四訂のものである。下線はいずれも監査請求者による。

 

@地方財政法第2条第1項について

【「他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策」とは、1の地方公共団体の施策が必然的に他の地方公共団体についてその経費の増加若しくは収入の減少をもたらし、又はそれらの団体をして経費の増加若しくは減少を伴うような施策をとることを余儀なくせしめる等正常な財政運営に支障をきたしめるような地方公共団体の施策をいう。

地方自治体は、憲法によりその自治権を認められ、行財政に関する自主性・自立性を有する。しかしながら、財政に関する自主性といっても無制限に許されるものではなく、一定の限界があるが、本件については、その内容及び程度が法律の趣旨を逸脱するものでないと考えられ、当該事業が他の地方公共団体の財政に累を及ぼす施策とまではいえない。

 

《四 地方公共団体は、憲法によりその自治権を認められ、行財政に関する自主性・目律性を有するのであるが、国家組織の一環としてその活動が一国の発展繁栄に結びつかねばならないものである以上、その財政に関する自律性といっても無制限に許されるのではなく、一定の限界のあるのは先述したとおりである。これが第一項において財政の健全な運営への努力とともに国家政策に反する施策、国及び他の地方公共団体に累を及ぼすような施策の禁止を定めているゆえんである。

「国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策」とは、一の地方公共団体の施策が必然的に国又は他の地方公共団体についてその経費の増加若しくは収人の減少をもたらし、又はそれらの団体をして経費の増加若しくは収入の減少を伴うような施策をとることを余儀なくせしめる等正常な財政運営に支障をきたさしめるような地方公共団体の施策をいう。21(25)

 

A地方財政法第3条について

【地方財政法第3条は、地方公共団体の財政運営の中枢となる予算について、その編成に際しての基本原則を定めたもので、予算の編成をその実体的側面において把握し、その一般的通則を示したものである。

「法令の定めるところ」とは、法律、政・省令のほか条例・規則の規定を指し、そのよるべき基準を定める個別の実体的法令の定めるところによるべきとしている。「合理的な基準」とは、法令の規定が必ずしもよるべき基準を与えず、一般的基準にとどまる場合が少なくないので、行政内容の具現である経費の算定は、合理性に基づき効率性によって貫かれるべきであり、その基準は、個別の社会的・経済的事情に応じて定められるべきものである。

このことから、本件が地方財政法第3条に抵触するとまではいえない。

 

《【解説】一 本条は、地方公共団体の財政運営の中枢となる予算について、その編成に際しての基本原則を定めたものである。予算の編成の根拠とその形式・手続に関しては、別に地方自治法中の財務に関する章において規定が設けられており、本条は、予算の編成をその実体的側面においては握し、その一般的通則を示したものということができる。

二 第一項は、経費に関する規定である。「法令の定めるところ」とは、法律、政令及び省令のほか、当該地方公共団体の条例及び規則の規定を指す。予算編成に関する形式的直接規定は、地方自治法に規定されているが、本条においては、さらに地方公共団体に対し経費支出の義務と責任を課し、あるいはそのよるべき基準等を定める個別の実体的法令の定めるところによるべきものとしている。

「合理的な基準」によるべきことが法令の規定の遵守とともに要求されるのは、法令の規定が必ずしもよるべき基準を与えず、まだ示すとしても一般的基準にとどまって具体性を欠く場合が少なくない以上、その規定する行政内容の具現である経費の算定は、合理性に基づき、効率性によって貫かれるべきことが、財政の健全性を確保するゆえんであるからである。その基準は、個別の社会的・経済的事情に応じて定められるべきものであって、一般的原則を求めることは困難ではあるが、例えば、普通交付税の基準財政需要額の算定に用いられる単位費用の積算基礎、国の予算の積算基礎等は、その基準を定めるに当たっての一つの指針となるであろう。また自治省が作成している類似団体別財政指数表も大いに参考とさるべきであろう。》2324(2728)

 

B地方財政法第4条第1項について

「必要且つ最少の限度」の判定の基準は個々の経費について個々具体的に判定され、判定に当たっては、広く社会的、政策的ないし経済的見地から総合的になされるものである。

したがって、本件が地方財政法第4条第1項に抵触するとまではいえない。

 

《【解説】一 本条は、予算の執行面における基本原則を定めたものである。従来の地方公共団体の財政運営が、ややもすると、予算の編成に重点をおき、その執行面における配慮は必ずしも十分でなかったことにかんがみ、設けられたものである。

二 第一項は、経費の支出に関する規制である。地方公共団体の経費は、法第三条第一項の規定に基づき、「法令の定めるところに従い、かつ、合理的な基準により算定」され、予算に計上されるものであるが、本来歳出予算は執行機関に支払いを可能ならしめ、かつ、支出の最高限度額として執行機関を拘束するものであって、支出額自体を定めるものではないのはもちろんである。そこで、本項は、予算の執行においても、その目的達成のための必要かつ最少の限度をこえて支出してはならないとするものである。「その目的」とは、個々の経費の支出目的を指す。予算編成後の情勢の変化により、当初定めた額に満たない額をもって目的を達することができる場合もあるであろう。すなわち、予算の執行に当たっては、個々の具体的な事情に基づいて判断し、最も少ない額をもって目的を達するように努めるべきことは、執行機関に課された当然の義務である。なお、本項の規定は、地方自治法第二条第十三項に掲げる「最少経費による最大効果」の原則を、予算執行の立場から簡潔に表現したものということができる。また、「必要且つ最少の限度」の判定の基準は、個々の経費について個々具体的に判定されるべきであって、抽象的に基準を設けることはできないが、その判定に当たっては、広く社会的、政策的ないし経済的見地から総合的にこれをなすべきである。2526(30)

 

C地方財政法第4条の2について

本条は、長期的視野における地方公共団体の財政運営に関する原則を定めた規定である。予算の編成・執行は、後年度の財政運営に配慮を払わなければならないことはいうまでもない。

「支出の増加若しくは収入の減少の原因となる行為」とは、財産の処分、権利の放棄、負担付寄付の受納などが考えられます。

このことから、本予算が地方財政法第4条の2に抵触するものではないと考えます

 

《【解説】一 本条は、長期的視野における地方公共団体の財政運営に関する基本原則を定めた規定である。第二条の財政運営の基本に関する規定は、必ずしも年度間の財政運営に関する考慮を含んでいないとは解されないが、本法制定当時の地方公共団体の財政は、多くは単年度における収支の均衡維持にその全精力を費すのが漸くであった実情にもより、あえてこのような趣旨の明文の規定を設ける配慮に欠けていたといえよう。しかしながら、地方財政が、ようやくその日暮しの時代を脱し、長期的安定を指向すべき時期に入ったことと、本条に先立って、すでに年度間の財政調整に関する規定が設けられていたことにかんがみ、第二条の精神を補完する意味で、昭和三十二年に、本条が新たに設けられたものである。

二 予算の編成又は執行を通じて、後年度の財政運営に関する配慮を十分払わねばならないことはいうまでもない。例えば、一時的な財政状況の好転により職員給与の引上げを図り、又は将来の償還能力を考慮せずに地方債を発行して財源に充てること等は、その悪例であり、また、しばしばみられるところであるが、歳入が歳出に不足するために行ういわゆる事業繰越・支払繰延、また、実質的な定数減を伴わない退職手当債の発行などは、単年度の収支のつじつまは合わせえても、将来において漸次その累積をみ、あるいは、予算執行上の悪循環をきたすなど、後年度の財政運営に混乱を招くおそれの多いものである。また、継続費や債務負担行為については、とくに後年度の財源の見通しや財政負担の限度等を考慮して決めるべきものであって、安易に財源の不足をしのぐ目的から設定すべきものではない。

「支出の増加若しくは収入の減少の原因となる行為」としては、例えば、財産の処分、権利の放棄、負担付寄附の受納等が考えられるが、たとえその金額が少額であっても、無定見な運営は、本条の趣旨に反するものである。

なお、地方公共団体が長期的観点に立って健全な財政運営を行うために、中長期財政計画を策定することも有力な手法であり、検討に値することといえよう。》2728(3132)

 

以上のように監査の結果判断とその出所とを対比してきたが、監査委員の判断は、『地方財政法逐条解説』の著者の文章を剽窃、撮み食いしたのである。それは全判断に及んでいて、監査を実施した者自身の判断を欠いた上、狡猾にも自分の都合のよいように文章の繋ぎを施し、監査結果を捏ち上げたのである。原著者をも冒涜した不正確な「逐条解説」を施し、監査をしたと見せ掛けた代物である。著作権法第20条にいう同一性保持権をも侵すものである。不誠実な上に、知的怠慢の謗りを免れない。監査請求人は地方財政法の逐条解説を請求したわけでなく、監査請求趣旨について、地方財政法等に違背するのではないかを問うているのであるから、請求趣旨と監査対象部局の言い分を捉えて較量し、その上で監査の判断経過を述べ、結論へと導くものではないのか。

裁判に例えるなら、判決理由ともいうべき判断根拠が他人の著書の剽窃であった。そもそも原著書は地方財政法の逐条解説をしたものであり、その解説自身が請求趣旨の直接の判断理由とはならないのである。現実に監査請求のなされた趣旨に沿ってこそ、真摯に監査されるべきであり、その結果を法の目指すところに則り結論すべきなのである。判断の根拠が無いのに判断ができる訳ないのである。

著書の解説から撮み食いした内容で、どうして二重線下線の判断のような論理的帰結が導き出されるのか不可解である。これは単に他人の言葉を無断で使い、適当に都合よく並べ、尤もらしくその場を取り繕った代物で、監査判断などといえたものでない。頬被りを決め込んだのか、はたまた本来監査委員としての資質に欠けるのか、いずれにしても監査の請求をした住民を侮辱する内容であり、信頼を裏切る行為である。

更にいえば、逐条解説を素直に理解したならば、監査請求者の趣旨がより正しさを益してくることになる。そのため、この判断結論部分は判断理由としたものと逆の関係になっているのである。請求理由がないものと認めた判断理屈付けが上述した内容であるため、監査がなされたとは到底いえない。不備な状態である。

このようなことでは、人格が高潔で云々つまり、「識見を有する者」という地方自治法第196条1項の選任要件を満たさず、さらに冒頭で挙げた同法第1972  1 「又は監査委員に職務上の義務違反その他監査委員たるに適しない非行があると認めるときは、議会の同意を得て、これを罷免することができる。」に該当するのではないか。

 

以上

《桃》文庫へ

 

 

参考資料として下記文書内容を付して置く。これに対する何らの回答もない(200581日現在)

 

監査委員事務局長 殿

 

貴文書「17監 第11号 平成17516付住民監査請求に基づく監査の

結果について(通知)」は判断理由が不明のため、請求者(足立 巖)には不備

であると結論し、監査のやり直しか、若しくは資料(通知も含めて)補充を求め

ます。従って、本通知は手渡しの上返却いたします。請求趣旨にのっとった判断

理由を求めます。

足立 巖

 

受理印 尾張旭市監査受付印 17.5.17 31