2005325日 新聞記事 2005518日 新聞記事

 

尾張旭市市民部生活課職員措置請求書

 

1.                    請求の要旨

 

 地方財政法は地方財政運営の基本として、第2条1に「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。」としている。予算の編成に際しては、第3条で「地方公共団体は、法令の定めるところに従い、且つ、合理的な基準によりその経費を算定し、これを予算に計上しなければならない。」としている。また、予算の執行に関しては、第4条1で「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」とある(地方自治法も同じ趣旨で、第2条14「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と定め、公金支出の必要最少限の原則をいう。)。そして、地方公共団体における年度間の財政運営の考慮として、第4条の2に「地方公共団体は、予算を編成し、若しくは執行し、又は支出の増加若しくは収入の減少の原因となる行為をしようとする場合においては、当該年度のみならず、翌年度以降における財政の状況をも考慮して、その健全な運営をそこなうことがないようにしなければならない。」とある。

 また尾張旭市予算規則1条「この規則は、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第173条の2の規定に基づき、法令その他別に定めるもののほか予算の編成及び執行について必要な事項を定めるものとする。」とある。

 

 警察法は目的として、1条に「この法律は、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するため、民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障し、且つ、能率的にその任務を遂行するに足る警察の組織を定めることを目的とする。」とし、また警察の責務として、2条「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。」としている。2では「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」としている。そして都道府県に置かれた都道府県警察は、第36条2「当該都道府県の区域につき、第2条の責務に任ずる。」とあり、続いて経費について、第37条2は「前項の規定により国庫が支弁することとなる経費を除き、都道府県警察に要する経費は、当該都道府県が支弁する。」と定めている。

 

 尾張旭市市民部生活課「以下、生活課」は、本会議(平成17年第1回3月)直前に至っても合理的な説明責任を果せず、ただ防犯等のためとの趣旨で「現職警察官」の派遣を受ける予算(平成17年度愛知県尾張旭市一般会計予算書及び予算説明書 総務費 総務管理費 地域安全対策費 負担金、補助金及び交付金 県派遣職員人件費負担金 11,000千円)を組んだのである。また予算編成(査定)段階で審議された経過も無く、他の経費との金額的調整(当初提示額 12,000千円)がなされたに過ぎない。授益的行為であるためか安易に歳出予算が組まれたと判断できる。平成17年度施政方針にもある、「安心安全のまちづくり」は、最重点施策であるゆえに歳出を計るのではない。最重点施策だからこそよくよく検討し、選択肢を広げその中から合理的な手段を採るべきなのである。

 

 では冒頭の法にしたがい請求の趣旨の詳細を述べる。先ず地方財政運営の基本として第2条2に、「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。」の法文中、「他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。」の観点から述べる。元来、警察法からいっても、公共の安全と秩序を維持することは警察組織の目的なのである。警察の責任と義務として個人の生命、身体及び財産の保護に任じられているのである。この目的を達成するためには更に法の根拠が必要なことは論を俟たない(警察官職務執行法等)。つまり、この責務を果すために、不偏不党且つ公平中正であらなければならないのである。その組織も能率的にその任務を遂行するに足らなければならないのである。「能率的な任務の遂行」は、組織の合理化による経費の節約をも併せて意味するものであって、民主的な要請に沿いつつ、少ないコストで能率よく任務を遂行することが、国民に奉仕する警察の理想である(『警察法解説(新版)』警察庁長官官房 編 平成7年11月10日初版2刷発行)。旧警察法下における国家地方警察及び市町村自治体警察を廃止して、都道府県警察に一元化し、組織の合理化と能率化を期するとともに、併せて経費の節約を図るものとしたこと(同上)。

 尾張旭市が現職警察官を派遣させ、本市のみの防犯対策等に従事させることは、派遣を受け入れることのできない同じような悩みや施策を抱える他自治体(住民)にとっては、不公平を増大させるものである(愛知県の市町村(2002年4月1日現在88 2006年3月末67 中日新聞2005年3月18日朝刊)。生活課は法を遵守するものとして、他自治体の財政状況等を配慮せずに自己本位の施策を執行しようとしているのである。また生活課の説明の中で、現職警察官派遣で何らかの便宜性を望んでいる口吻であるが、このような考えこそ根底において、警察責務の遂行に当っての不偏不党且つ公平中正を、更に阻害するものであることを深く認識すべきである。次に述べる点から考えると、派遣以外の要請をむしろ為すべきである。

 警察法は経費について、37条2に「前項の規定により国庫が支弁することとなる経費を除き、都道府県警察に要する経費は、当該都道府県が支弁する。」と定めている。この経費の主なものとしては、「地方公務員たる警視以下の警察官その他の職員に要する人件費、被服費及び一般犯罪の捜査に関する経費、防犯活動に要する経費、交通警察に要する経費、庁舎に要する施設費、車両維持費のようなものがある(『警察法解説(新版)』警察庁長官官房 編 平成7年11月10日初版2刷発行)」。

 

 現職警察官の派遣要請に関しどのような検討がなされ、その結果如何なる合理的な基準で経費が予算計上されたのか。生活課職員はその説明において、現職警察官が必要な合理的な根拠、派遣要請し希望しているのは警察官(長官を除く。)の階級で、警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査とある中、警部であることの論理的必然性やなぜ警部なのかの合理的説明もできていない。また、交通・防犯との計画の関連性及び合目的性、派遣期間についても明瞭でなく、公文書公開で「愛知県警察本部職員の派遣要請について(伺い)」を入手して派遣要請期間が2年間であることが分かる始末である。更に地方自治法第252条の17の3派遣される「職員の身分」の理解も不十分であり、説明できていないのである。この身分の件は人事課も同様に理解を欠いていた。本請求者自身は愛知県警察本部に直接問い合わせて確認(2月25日)を得たのである。

 さらに文書での説明を生活課に求めた結果、その説明文書(H17.2.25)からも上述の疑義点は全く解消されず説明責任を果たせない。単に職員1名を増員するというのでなく、専門的経験豊かな警察職員の派遣を要請する「特別の必要があると認める」合理的根拠の説明は一切無い。

 後で詳述するが、例を挙げれば、犯罪発生件数を下げると言うが、尾張旭市刑法犯発生状況は平成15年2,364件、同16年2,008件と356件の減少なのである。これについて生活課は、「皆さんの取り組で犯罪発生件数が減少」と分析したのである(広報「尾張あさひ」2005年(平成17年)3/15 No.1031 同広報では平成16年の重要犯罪件数が18件と平成15年の9件から倍になっているが、本請求者が愛知県守山警察署生活安全課から直接入手した資料では平成16年度は7件である。)。地域住民との協働が功を奏したのであるなら、特に専門的経験豊かな警察職員の派遣を要請しなくても、つまり工夫次第で、多額の歳費を費消しなくても今後の推移を期待できる筈である。この点について、警察職員の派遣要請理由に「安全で安心なまちづくり」の「更なる推進」に資するため、としている。平成17年度施政方針で市長は、「限られた財源で最大限の効果を発揮できるよう、各経費間の優先順位の厳しい取捨選択を行うとともに思い切った施策の合理化・効率化を重視する観点から、行政評価システムを用い、企画(PLAN)-実施(DO)-評価(SEE)のプロセスを通じて、すべての事務作業を必要性・効率性・有効性などの視点から検証を加えることにより、行政資源の有効活用を進めてまいります。」と述べている。では警察職員の件はどのような検証が加えられたのか。少なくとも生活課は検証、特に企画段階における検証(特に「更なる推進」の内容)の説明ができていない。派遣要請の伺いの参考資料3の主管(警察職員)の分担事務を見ても、なぜこの事務事業が現在の生活課で可能でないのか理解に苦しむ。つまり、如何なる目的の為に新たに11,000千円の額を必要とするのか不明である。職員の派遣を定めた地方自治法第252条の17の趣旨からいっても、事務処理の能率化、合理化つまり、目的と手段の兼ね合いの説明が要求される。地方財政法第3条の「地方公共団体は、法令の定めるところに従い、且つ、合理的な基準によりその経費を算定し、これを予算に計上しなければならない。」とあるに抵触する。

 

 生活課職員は先の説明文書と共に『尾張旭市第四次総合計画』を示し、犯罪発生件数の成果指標(目標値)を説明する。その中で前期目標値(平成20年度)人口千人当たりの犯罪発生件数34件としている。平成20年度の正確な人口は別として、79,246人(平成17年月末現在)から推測すると、平成16年尾張旭市刑法犯発生状況は2,008件であるから25.3件と既に後期目標値(平成25年度 33件)までも大幅に達成していることになる。もう一つの指標である「治安がよく、安心して住めると思う市民割合」については、事実証明書に添付の「(治安の悪化なしの「安全神話の崩壊」)」、「壁を高くしても子供は守れない」、「日本の治安必ず復活」を参照されたい。むしろ事実をどのように伝えるかの広報課題である。

 次に説明の中で引き合いに出された春日井市は、自他共に認める安全なまちづくりの先進市である。平成4年度から平成16年度の長期に亘り現職警察官(平成14年度は退職警察官とのことだった)の派遣を受け入れてきた。詳細は添付の「春日井市安全なまちづくり協議会」・「春日井安全アカデミー」を参照していただきたい。先述の人口千人当たりの計算を春日井市で試みると、人口299,002人(平成16年10月1日現在)とした場合、平成16年中の資料で8,109件(平成15年9,138件)であるから27.1件である。この点からだけ尾張旭市と比較判断すると、現職警察官の派遣は直接犯罪発生件数の増減とは関係ないように見える。「地域の安全のために」(春日井警察署他)の小冊子を見ると、春日井警察署の犯罪発生状況(過去10年間の犯罪発生の推移)は平成5年から平成15迄平成14年を除いてグラフは右肩上がりである。また春日井警察署のホームページ(平成17年3月21日現在)には、「春日井市内では、自動車盗が508台と全国警察署別ワースト第3位(昨年は第1位)と多発しています。」と記載されていた。

 平成十六年版の犯罪白書(法務省)は概説で「平成十五年における刑法犯認知件数は、三百六十四万六千二百五十三件(前年比四万七千六百七十五件減)、一般刑法犯(交通関係業過を除く刑法犯)認知件数は、二百七十九万四百四十四件(前年比六万三千六百十七件減)であった。これらの認知件数が減少したのは九年ぶりであるが、戦後全体を通じて見るとなお高い水準にある。罪名別に見ると、窃盗が十四万一千六百四十四件(六・〇%)減少しており、これが全体を減少させた大きな要因となっている。」としている。

 このように見てくると、現職警察官の派遣理由の合理的な説明が益々必要とされるのである。地方財政法 第4条1で「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」に触れる。公金支出の必要最少限の原則である。

 その目的とは何か。生活課職員は先進市である春日井市とはその方策を異にする、というが、説明はできていない。少なくとも警部クラスであるならば、人口約30万の春日井市と同額に近い財政負担をするわけである。尾張旭市の特徴を備え春日井市を超えるような計画も説明されていない。

 

 前述のように春日井市にあっては十年を越えて「安全なまちづくり」施策を実施している。生活課職員に如何なる計画の下で、派遣期間が何年度まで続くのかの説明を求めても確とした答えは得られなかった。このことは地方財政法4条の2に「地方公共団体は、予算を編成し、若しくは執行し、又は支出の増加若しくは収入の減少の原因となる行為をしようとする場合においては、当該年度のみならず、翌年度以降における財政の状況をも考慮して、その健全な運営をそこなうことがないようにしなければならない。」に抵触する。どのような施策をいつまでにどの様な手段で成すのかを明確にし、費用対効果(目的との権衡)を検証しながら行政運営に携わるのが当然なのである。市の平成17年度施政方針に述べるようには、事務事業全般について徹底的に見直しを図られていないのである。例えば、現職警察官の代替案等を検討した経緯が説明されないのである。民間であれば、その目的を果すのにはどのような方法があるのか、費用と較量して妥当なのか、期間はどれほど必要なのか等詳細に検討されるべきなのにされていない。単年度主義の弊害を取除くためにも、次年度以降の見通しを立て、極力財政構造の硬直化を防ぎ弾力性をもたせるためにも、経費の節減を細部に亘って検討すべきなのにされていない。日進市の警察官OB配置や長久手の県警OBの防犯嘱託員のような方策等を検討したのか。説明は無い。この先累計でどれ程の経費が必要とされるのか不明な事務事業なのである。

 

以上のことから生活課においては、平成17年度予算で違法な予算計上をしたことになり、その最終確定(平成17年第1回(3月)尾張旭市議会定例会日程 3月17日)した県派遣職員人件費負担11,000千円を執行しようとするため、そのような執行がなされないように必要な措置を講ずるよう請求する。

 

2.                    請求者

 

住所 〒xxx-xxxx xxxxxxxxxxxxxxxxxxx

 職業 xxxx

 氏名 足立 巖(自署)

 

地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。

 

平成17324

 

 

尾張旭市監査委員 殿

 

 [事実証明書]

 

1.「地域防犯施策の推進計画(平成17年度)」生活課作成説明資料 1部

2.愛知県警察本部職員派遣に関する書類16人第126号 1部

 (請求受理日 平成17218日 尾張旭市情報公開条例に基づく公開請文書)

3平成17年度 予算規模及び事務事業の一覧 尾張旭市 34ページ抜粋

4平成17年度愛知県尾張旭市一般会計予算書及び予算説明書 95ページ抜粋

5平成17年度施政方針 1部

6春日井市安全なまちづくり協議会 小冊子 1部

7.安全なまちづくり協議会だより パンフレット 1部

8地域の安全のために パンフレット 1部

9春日井安全アカデミー パンフレット 1部

10.新聞切り抜き 中日新聞 夕刊 平成16年10月13日

 (河合幹雄著『安全神話崩壊のパラドックス』よりの抜粋部分も含む)

11.新聞切り抜き 中日新聞 朝刊 平成17年1月5日

 (「健康のまち」具体化)

12.新聞切り抜き 中日新聞 朝刊 平成17年2月3日

 (重要犯罪9年ぶり減少)

13.新聞切り抜き 中日新聞 朝刊 平成17年2月15日

 (尾張旭市 健康安全事業に重点)

14.新聞切り抜き 中日新聞 朝刊 平成17年2月16・27日

 (日進市が警察官OB配置へ) (より安全な町へ町営交番♀J設 1日から長久手

15.新聞切り抜き 中日新聞 朝刊 平成17年2月26日

 (日本の治安必ず復活)

16.『週刊金曜日』 2005年.3.4(547号) 9・10ページ抜粋

 (壁を高くしても子どもは守れない)

17.「インターネット資料」 1部

 (刑法犯概況)

  (http://cl.rikkyo.ac.jp/cl/2004/internet/tunen/hogaku/araki/keijigaku_2.html)

18.尾張旭市刑法犯発生状況グラフ

 (守山警察署生活安全課の資料からグラフ化)

19.平成81月〜1412窃盗犯手口別パレート図(%

(守山警察署生活安全課の資料からグラフ化)

 尾張旭市の平成8年から平成16年迄の刑法犯発生件数で窃盗犯の占める割合は全体の手口全体90%である。例:90%にこのパレート図の各数値の%を乗じれば、犯罪率の減少目標が得られ、その達成方法も検討しやすくなる。

20.春日井警察署ホームページ 1/3・2/3

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