谷口 市長 殿 2004年3月29日 足立 巖 尾張旭市XXXXXXXX 電話/ファックス xxxx-xx-xxxx E−mail:np9i-adc@asahi-net.or.jp
「町内会に加入しましょう」について
広報 尾張「あさひ」(2004年4/1 No.1008)「町内会に加入しましょう」の記事は誤解をまねく恐れがあります。少なくとも私(町内会会長を体験済)には奇異に映ります。以下其の点について述べます。
まず基本的に町内会・自治会等は何らの法的強制力も持たない任意の組織(団体)であるということです。つまり、住民に対して強制されている訳ではありません。しかしながら広報では、地域の交流活動・生活環境の向上・災害に備えての三点を挙げて、「・・・町内会に入ることを強くおすすめします。」としております。町内会の役割を否定する積もりは毛頭ありませんが、今日の生活環境の中では、町内会だけが住民にとって広報で掲げる三点の唯一の選択肢ではありません。
例えば、特に災害という角度から考慮したとき、先ず順序としては、救助(安否確認)の対象として自己自身でありその家庭内の救助であり、他に向かう余裕は無いと考えます。次の段階としてはじめて身近な範囲(半径数百b)の相互救助に関心が向かうことにおそらくなるでしょう。そしてやや落ち着きを取り戻して来た段階で、多様な活動組織が動き出すということになるのではないだろうか(これらの過程が重層的に進行する場合でもこのように想定される)。この過程で町内会の組織に加入しているとか、加入していないとかはどんな意味があるのだろうか。喧嘩している中だからといって、普段挨拶も交わさない中だからといって、また見ず知らずの人だから等という理由で、直ぐ傍らで苦しむ人に声を掛けることを、救助の手を差し伸べることを控えるのだろうか。むしろ行政が特定の団体を推し進めることによって、いざという時に機動性に富んだ救助活動の妨げや差別化を助長するようなことを結果的に推し進めていないかを省みてもらいたいと思う。行政は縦型組織でなく、横連携型の個々の市民が自己救助・相互扶助に直面した場合に必要な条件整備をむしろ積極的に図るべきではないだろうか。その中で町内会のような組織も多様性の中の一つの選択肢として位置づけたらよいのではと思う。
現今の多種多様性溢れる生活形態の中でのコミュニケーションの存在と緩やかなそして柔軟性のある各種ネットワークの中での助け合い等その住民相互の結びつきは広範囲かつ多面に渡ります。特にインターネット・携帯電話による通信網の発達は迅速な連携を各グループ間にもたらし、相互に親密で身近な情報を活発に交換することが可能になっています。例えば災害の種類またその度合いにもよりますが、このような結び付きによる相互の安否確認・救助等が多大な貢献をすることは論ずるまでもないと考えます。
行政を担当する職員としては、憲法十五条二項 「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」(地方公務員法第三十条)という趣旨を良く理解していただきたいと思います。つまり、反語的に極端な例を挙げるなら、町内会(自治会)に加入していなかったら、災害時に当局から何の救助も連絡(情報)もないのだろうか。そのようなことがあってはならないのは当然のことでしょう。町内会には加入したくない、という考えが存在しても何ら差し支えないし、そのような住民が加入を強いられることはないし、憲法の定める基本的人権の享有を妨げられることはないと考えます。今回の記事はある意味では町内会への加入を強要するに近いものであり、公共団体の役割の提供をひとしく受ける権利を有する住民への差別化につながるものとなります。行政はむしろ市民全体にどのように役割の提供を遍く行渡らせるのかに腐心すべきであって、それが住民の自由意志に基づいた参加(参画)・協同を俟つのでなく、条件付けた記事の中での、強くおすすめでは、この言葉が独り歩きをし、「入らなくてはいけない」になっていき、各町内会レベルでは未加入者への強制となり、軋轢を生じる可能性も大であります。
行政には特に多様な存在を認めた住民参画・協働という柔軟性に富む実質的な住民本位の災害等に備えた体制づくりを企画・側面援助するように望みます。各種のボランティアグループ・NPO・NGOなども視野に入れたら良いのではないかと思います。強要は常に硬直したものとなり、所期の目的や効果を得ることが困難になるのではと考えます。
参考資料:尾張旭市 自治会加入世帯数・加入率
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