谷口 市長 殿

 

有事法制下における住民保護について

 

2004226

                                     足立 巖

尾張旭市XXXXXXXX

電話/ファックス xxxx-xx-xxxx

Email:np9i-adc@asahi-net.or.jp

 

今国会(第159回)に政府は有事関連で7法案を提出予定です。これらの法案が可決された場合、地方公共団体にも甚大な負担が待ち受けています。就中に、住民の福祉の増進を図ることを基本とし、身近な政府として直接住民と接し、地域における行政を自主的に担うものとしての地方公共団体は、新地方自治法でその役割分担として、国際社会における国家としての存立にかかわる事務から退けられた観があります。しかしながらこの戒厳令が布かれるにも等しい法案から考えて、その想定する武力攻撃から住民の生命・財産を守るには地方自治体として、国(政府)の指示を待ち、国の役割と突き放しているには余りにも住民保護の観点から消極的でかつ座して死を待つに等しいことであります。地方自治体としても生き残りを賭けて策を考えなくては、本来の役割が果せません。

 

さて、武力攻撃事態対処法制に関連して今国会に提出を予定している条約があります。それは「1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書T)(仮称)」と「1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書U)(仮称)」です。日本は当然のことながら現在、第一追加議定書、第二追加議定書の両議定書に加入しておりません。米国も両議定書に加入しておりません(2003年12月末現在)。1949年のジュネーブ四条約と1977年の追加議定書を中心とした様々の条約等の総称が、それぞれの立場によって「国際人道法」、「戦争法」、「武力紛争法」と呼ばれています。日本赤十字社は国際人道法と称しています。

 

これから日本も締約国になるであろう第一追加議定書(国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(第一議定書))の前文には、「締約国は、人民の間に平和がゆきわたることを熱烈に希望することを宣明し、国際連合憲章に基づき、各国が、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の主権、領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎む義務を負っていることを想起し、・・・」とあります。日本国憲法の9条の定めに酷似しております。この議定書の第48条には、基本原則として紛争当事国の軍事行動は、軍事目標のみを対象とする、とあります。51条で文民たる住民全体及び個々の文民は、攻撃の対象としてはならない、とあります(略)。58条は攻撃の影響に対する予防措置を定めております。

 

前置きが長くなりましたが、本題は第59条(無防備地域)のことです。この条の1項には「紛争当事国が無防備地域を攻撃することは、手段のいかんを問わず、禁止する。」とあります。そして続く2項には「紛争当事国の適当な当局は、軍隊が接触している地帯の附近又はその中にある居住地で敵対する紛争当事国による占領のために開放されているものを、無防備地域と宣言することができる。無防備地域は、次のすべての条件を満たさなければならない。

(a)すべての戦闘員ならびに移動兵器及び移動軍用設備が撤去されていること。

(b)固定した軍用の施設または営造物が敵対的目的に使用されていないこと。

(c)当局または住民により敵対行為が行われていないこと。

(d)軍事行動を支援する活動が行われていないこと。

これらの条件を当尾張旭市は満たし(満たしている)、紛争当事国の適当な当局となり、無防備地域と宣言し、出来る限り明確に無防備地域の境界を定めかつ記述し、敵対する紛争当事国に通告するのです(条例化後に、国際連合事務局・国際連合加盟国・ジュネーブ条約追加議定書締約国に英訳等の翻訳内容を送付するなどして周知してもらい効力を発生させる)。

この適当な当局には自治体がなっても不都合は生じないと考えます。むしろ文民たる住民及びその民有物に対する尊重及び保護のために、積極的に条例化を図り、軍事目標との識別可能なようにすることは偏に地方自治体の役割であると看做されます。是非国会並びに政府の動きを注視していただきながら、また他の自治体とも連携をとり、この有事体制の中で、人々の不安を解消する対応を見つけるようご努力を願う次第です。この「無防備地域宣言」に関しても選択肢の一つとして、当局の詳細なる検討と可能性への道筋を付けていただくよう願います。

以上

参考資料:

2004年2月25日夜中 首相官邸のホームページ「法制に関する御意見・疑問点を受け付け」に出した内容を添付。

 

【注1】

 参考資料は、傍聴記2004/02/26をご覧下さい。

【注2】

法案提出予定とあるのは首相官邸ホームページの現在(2月26日)表示によります]

【注3】

 原文「今国会に提出予定している条約」を、本ページでは「今国会に提出を予定している条約」に訂正しています。

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