≪市民参加条例の提案≫

   谷口 市長 殿

 

                         2002年1月30日

足立 巖

住所省略                

                          

 

 任につかれまして日も浅く、何かとご多忙中とは推察いたしますが、貴職の積極的な市民との対話への切望に励まされまして、一市民としても、知恵を絞り、私たちの住む尾張旭市がさらに充実した都市になるべく、提案をさせていただきますので、よろしくご検討いただきますようお願いいたします。

 

 さて最初に確認しておかなければならないことは、私たちを取り巻く生存環境は私たち自身が決定していかなければならないということです。その決定にこれまで、必ずしも市民・議会・執行機関としての行政が手を携えて来たとはいえません。言い換えれば、それはお互いが同一運命共同体の構成員であるという意識が薄められているためではなかろうかと思う訳です。今私たちの置かれた状況(環境等)に視点を向けたとき、知恵を絞って解決しなければならない問題が多くあります。
 私たちが何らかの課題に対応する場合、調査・資料収集・分析・総合と経て解決策を見つける方法を採ります。特に行政が持つ資料は豊富な解決代替案を得るのに非常に大切なものであります。それゆえに私たちの尾張旭市も情報公開条例が施行されていることはご承知のことと思います。

しかしながら、この情報公開は物事の緒であって、素早い対応しかも根本的な解決を迫られる現状況下にあっては、どちらかといえば、後手にまわっています。つまり、市民から請求があって公文書公開では貴重な資料ではありますが、遺跡の発掘に似ています。

そこで物事の源流から、つまり、計画段階から、物事の発生段階からの市民の参加が枢要なこととなってきます。

貴職の公約の一つである対話をとってみても、その対話を担保するためには、仕掛けが必要でございます。気まぐれに実施し、多忙を理由に中座し、いつの間にか立ち消えでは何のためかわかりません。

ご承知のように行政という組織体に継続的な業務を遂行させるためには実施規則が必要です。その規則を作るためには関係条例が基となります。

そこで「尾張旭市市民参加条例」の策定を提案いたします。おおまかなスケッチを次に述べます。

 

尾張旭市市民参加条例の提案

 

 

市民参加条例の概念

市民と市行政が協同して、現状の課題や問題に取り組むことによって、地域社会の発展と市民福祉の充実と向上を図ることをその目的としています。その理念を達成するために市民参加の基本的な事がらを定めることによって、市民参加の機会を作り、市民は市のあり方に自ら責任と役割を自覚し、そして市行政は、市民参加の積極的な機会の提供と行政情報の公開に努めることを規定します。

委員の市民公募

 基本的な考え方として、行政の役割はすべて市民に向かうのでありますから、当事者としての市民が参画することは必然であります。したがいまして先ず公募ありの基本原則が先立ちます。附属機関の委員を任命する中で、委員の資格を「市民」とする場合は、公募により選考するようにします。 これは、市行政の意思形成段階から市民の意見が反映される機会を設けることで、市民参加の一つの保障となるものです。

会議の原則公開

市では公文書の公開はすでに「尾張旭市情報公開条例」で制度化していますが、会議の公開を情報公開の対象として定めます。市の附属機関の会議は規則で定める場合を除き、公開するようにします。

 

 

「尾張旭市市民参加条例」(素案)

 

 (目的)
第1条 この条例は、市民参加の基本的な事項を定めることにより、市行政と市民が協働し、地域社会の発展と市民福祉の充実と向上を図ることを目的とする。

 (定義)
第2条 この条例において「市民参加」とは、市行政の意思形成の段階から市民の意思を反映することであり、市行政と市民が協働することをいう。
2 この条例において「協働」とは、市行政と市民がそれぞれに果たすべき責任と役割を自覚し、相互に補完し、協力することをいう。

 (市民参加の基本理念)
第3条 市民参加は、市民のもつ豊かな社会経験と創造的な思考を通して、市行政と市民が協働して地域社会の発展と市民福祉の向上を図ることを基本理念として行われるものとする。
2 市民参加は、地方自治の本旨である住民自らの意思と責任に基づき運営されなければならない。


 (市長の責務)
第4条 市長は、市民自らが地域社会の発展や福祉の向上について考え、活動することができるように市民参加の機会の提供に努めるとともに、市民参加を円滑に推進するための行政情報の公開に努めなければならない。

 (市民の責務)
第5条 市民は、市民参加にあたり、自らの責任と役割を自覚し、市行政と積極的に協働し、よりよい地域社会の形成と福祉の向上に努めなければならない。

 

 (会議公開の原則)
第6条 市の執行機関に置く附属機関の会議は規則で定める場合を除き、公開する。

 

 (委員の市民公募)
第7条 市の執行機関は、市民の資格において附属機関の委員を任命しようとする場合は、その全部の委員を公募により選考する。

2 各委員会等は過半数を公募の委員によるものとする。

3 前項の公募の方法については別に定める。

4 公募の結果定数がみたないときについては別に定める


 (委任)
第8条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

 附 則
この条例は、平成○○年△△月□□日から施行する。


**** 追加提案 *****

口 市長 殿

                         2002年2月12日

                      足立 巖

                  住所省略

                          

 

毎々ご配慮をいただきまして感謝いたします。

さて、本年1月30日付をもってご提案させていただきました尾張旭市市民参加条例」の件につき、下記条文の追加提案をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

なお本提案は「対話」の双方向性を保証するものであると考えます。対話とは一方通行ではなく、互いの自由意志の上に成立するものであります。したがって市民からその機会を設けること、つまり参加の場を要請することは自然なことであります。

市長の言われる「対話」からは非常に多くの示唆を得ることができます。ぜひ積極的にご推進していただけますよう衷心からお願いいたします。

 

 

 市民の会議開催要求

 

 市民と市行政が協同して現状の課題等に取り組むことは、地域社会の福祉の向上と発展に不可欠の条件です。市民生活を営む過程で把握された解決すべき事柄の中で、住民自治を目標としながらも、団体自治としての協議の場で措置したのが適切なものもあり、結果的には全体の福祉に寄与し、地方自治の本旨にも沿うことにもなります。問題や課題の発見は厭うものではなく、発展への道筋と考えるべきです。解決すべき事柄について市民自らが提案し、協議に参加するために、行政と対話の場(会議・委員会等)を要請することは早期対応を図るため、また住民合意を得るための要件ともなります。市行政から見れば説明責任を充分に果たす場ともなります。

 

 

 (市民の会議開催要求)
第8条 市民は、公益上の事柄に関して市長に会議の開催を求めることができる。

2 市長は、会議開催の要件を満たしていると判断したときには速やかに会議開催要求者及び各関連行政所管元に連絡し、会議の開催を通知するものとする。

3 前項の会議開催の要件については、別途定める。

4 会議開催の要件を満たさない場合は会議開催要求者にその旨を通知するものとする。

5 会議開催要求者は、その会議に出席し発言することができる。

6 会議では第三者等の意見を聴くことができる。

 

≪備考 1月30日付の第8条は9条に、繰り下げます。

≪備考 1月30日付の第2条に、3項を以下のように追加します。

 (定義)
第2条 この条例において「市民参加」とは、市行政の意思形成の段階から市民の意思を反映することであり、市行政と市民が協働することをいう。
2 この条例において「協働」とは、市行政と市民がそれぞれに果たすべき責任と役割を自覚し、相互に補完し、協力することをいう。

3 この条例において「会議」とは、地方自治法(昭和二十二年四月十七日法律第六十七号)第百三十八条の4で置かれたもの、市行政内部の打合せその他の会議をいう。

 

 

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