様 17 監 第3 1号 平成17年5月17日 尾張旭市監査委員 下 山 靖 史 尾張旭市監査委員 谷 口 丈 夫 住民監査請求に基づく監査の結果について(通知) 平成17年3月24日付けで受理した住民監査請求について、地方自治法第242条 第4項の規定に基づき監査を行いましたので、その結果を次のとおり通知します。 第1 請求の受付・ 1 請求人 氏名 住所 2 請求書の提出 平成17年3月24日 3 請求の内容 (1) 主張事実 @ 先ず地方財政運営の基本として第2条1に、「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぽすような施策を行ってはならない。」の法文中、「他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならない。」の観点から述べる。 尾張旭市が現職警察官を派遣させ、本市のみの防犯対策等に従事させることは、派遣を受け入れることのできない同じような悩みや施策を抱える他自治体(住民)にとっては、不公平を増大させるものである(愛知県の市町村(2002年4月1日現在88 2006年3月末67中日新聞2005年3月18日朝刊)。生活課は法を遵守するものとして、他自治体の財政状況等を配慮せずに自己本位の施策を執行しようとしているのである。 A 如何なる目的の為に新たに11,000千円の額を必要とするのか不明である。職 . 員の派遣を定めた地方自治法第252条の17の趣旨からいっても、事務処理の能 率化、合理化つまり、目的と手段の兼ね合いの説明が要求される。地方財政法第3条の「地方公共団体は、法令の定めるところに従い、且つ、合理的な基準によりその経費を算定し、これを予算に計上しなければならない。」とあるに抵触する。 B このように見てくると、現職警察官の派遣理由の合理的な説明が益々必要とされるのである。地方財政法第4条1で「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」に触れる。 C 生活課職員に如何なる計画の下で、派遣期間が何年度まで続くのかの説明を求めても確とした答えは得られなかった。このことは地方財政法第4条の2に「地方公共団体は、予算を編成し、若しくは執行し、又は支出の増加若しくは収入の減少の原因となる行為をしようとする場合においては、当該年度のみならず、翌年度以降における財政の状況をも考慮して、その健全な運営をそこなうことがないようにしなければならない。」に抵触する。 (2) 措置要求 生活課においては、平成17年度予算で違法な予算計上をしたことになり、その最終確定(平成17年第1回(3月)尾張旭市議会定例会日程3月17日)した県派遣職員人件費負担11,000千円を執行しようとするため、そのような執行がなされないように必要な措置を講ずるよう請求する。 4 請求の要件審査' 本件請求は・地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条所定の要件を備えてい るものと認めた。 第2 監査の実施 1 監査対象事項 県派遣職員人件費負担が、法第242条第1項に規定する違法な「公金の支出」に当たるのか否かについて監査対象事項とした。 2 監査対象部局 市民部生活課. 3 請求人の証拠の提出及び陳述 地方自治法第242条第6項の規定に基づき、請求人に対して、平成17年4月22日に証拠の提出と陳述の機会を与えた。 請求人は、平成17年4月22日に陳述を行った。なお、新たな証拠の提出は行わなかった。 第3 監査の結果 本件請求については、合議により次のように決定した。 本件請求は、理由がないものと認める。 以下、事実関係の確認、監査対象部局の説明及び判断理由について述べる。 1 事実関係の確認 @ 地方財政法第2条第1項の規定 地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならない。 A 地方財政法第3条の規定 地方公共団体は、法令の定めるところに従い、且つ、合理的な基準によりその経費を算定し、これを予算に計上しなければならない。 B 地方財政法第4条第1項の規定 地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。 C 地方財政法第4条の2の規定 地方公共団体は、予算を編成し、若しくは執行し、又は支出の増加若しくは収入の減少の原因となる行為をしようとする場合においては、当該年度のみならず、翌年度以降における財政の状況をも考慮して、その健全な運営をそこなうことがないようにしなければならない。 2 監査対象部局の説明 @ 地方財政法第2条1項について どの自治体も限られた財源の中で、どの施策を優先、選択するのかを判断し、予算編成をしているものと考えます。 本市で、本市の現状から、現職警察官の派遣を受けることを選択したもので、他自治体との不公平を論ずるような問題ではないと考えます。 A 地方財政法第3条について 地方自治法第252条の17第3項の規定により、派遣を受けた地方公共団体が負担する人件費相当額を予算計上したものであり、地方財政法第3条第1項の趣旨に則ったものと考えます。 B 地方財政法第4条第1項について 現職警察官の派遣を受けて春日井市の犯罪件数、あるいは全国的な犯罪の状況にかかわらず、本市で犯罪が多発し、市民に不安が広がっている状況の中で、現職警察官の派遣を受け・防犯施策をさらに推進することを選択したものです。そのために地方自治法第252条の17第3項の規定により、派遣を受けた地方公共団体が負担する人件費相当額を予算計上し、支出しようとすることは、地方財政法第4条1項の趣旨に則ったものと考えます。 C 地方財政法第4条の2について 今回の派遣期間は2年間となりましたが、その後も引き続き派遣を要請することになるかは、現時点では分かりません。また、実際に引き続き派遣要請をするか否かは、その時点での派遣の必要性と財政状況等を勘案して決めることになると考えます。 したがって、派遣期間中の予算措置は必要となりますが、現時点で将来に渡って財政負担が継続して必要となると決まったものではありません。 3 判断 @ 地方財政法第2条第1項について 「他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策」とは、1の地方公共団体の施策が必然的に他の地方公共団体についてその経費の増加若しくは収入の減少をもたらし、又はそれらの団体をして経費の増加若しくは減少を伴うような施策をとることを余儀なくせしめる等正常な財政運営に支障をきたしめるような地方公共団体の施策を言う。 地方自治体は、憲法によりその自治権を認められ、行財政に関する自主性・自立性を有する。しかしながら、財政に関する自主性といっても無制限に許されるものではなく、一定の限界があるが、本件については、その内容及び程度が法律の趣旨を逸脱するものではないと考えられ、当該事業が他の地方公共団体の財政に累を及ぼす施策とまではいえない。 A 地方財政法第3条について 地方財政法第3条は、地方公共団体の財政運営の中枢となる予算について、その編成に際しての基本原則を定めたもので、予算の編成をその実体的側面において把握し、その一般的通則を示したものである。 「法令の定めるところ」とは、法律、政・省令のほか条例・規則の規定を指し、そのよるべき基準を定める個別の実体的法令の定めるところによるべきとしている。「合理的基準」とは、法令の規定が必ずしもよるべき基準を与えず、一般的基準にとどまる場合が少なくないので、行政内容の具現である経費の算定は、合理性に基づき、効率性によって貫かれるべきであり、その基準は、個別の社会的・経済的事情に応じて定められるべきものである。 このことから・本件が地方財政法第3条に抵触するとまではいえない。 B 地方財政法第4条第1項について 「必要且つ最少の限度」の判定基準は個々の経費について個々具体的に判定され、判定に当たっては、広く社会的、政策的ないし経済的見地から総合的になされるものである。 したがって、本件が地方財政法第4条第1項に抵触するとまではいえない。 C 地方財政法第4条の2について 本条は、長期的視野における地方公共団体の財政運営に関する原則を定めた規定である。予算の編成・執行は、後年度の財政運営に配慮を払わなければならないことはいうまでもない。 「支出の増加若しくは収入の減少の原因となる行為」とは、財産の処分、権利の放棄、負担付寄付の受納などが考えられます。 このことから、本予算が地方財政法第4条の2に抵触するものではないと考えます。 |