足立 巖 様

 

18 監 第33号

平成18927

尾張旭市監査委員 吉村 正義

尾張旭市監査委員 良知 静夫

 

 

平成1882日付で受理した住民監査請求について、地方自治法第242条第4項の規定に基づき監査を行いましたので、その結果を次のとおり通知します。

 

第1 請求の受付

 1 請求人

氏名     足立巖

住所     尾張旭市

 2  請求書の提出

平成1882

1   請求の内容

(1) 主張事実

@ 地方財政法は予算の執行に関して、第4条第1項で「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」としている。地方自治法も同じで、第2条第14項「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と定め、公金支出の必要最小限の原則を旨としている。これは自治運営の基本的な事柄である。

また平成1877日に施行された「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」第1条においても、公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る改革を実施するためとしている。

尾張旭市企画部秘書広報課(以下、「秘書広報課」と記述する)は上述の法の趣旨に反し、広報誌を一新するとして外部委託を図り、予算ベ一スで年間約600万円のコスト高になる歳出をするものである。

A 秘書広報課職員からの聴き取り調査によると、第一義的には恒常的な担当職員の残業廃止を目論んだものであり、従来の広報「尾張あさひ』を特に変更をしなければならない差し迫った用事はなかった。

1

B 特に歳出に関し、住民に対する説明責任を果たすためには、最小の経費で景大の効果を上げることが強く要請されるところである。それには、事務作業の徹底した調査分析に基づき、その作業の意図する効果実現の費用・多岐に亘る選択肢の検討がなされた上で、決定されるべきであることが、説明責任の担保となる。聴き取り調査では代替案等の検討の経緯は無い。また、庁内に亘っての工夫も見られず不明な効果の理由を以って理屈付けをし、歳出の増を為したのである。

(2) 措置要求

秘書広報課においては、平成18年度予算で、外部委託に伴う約600万円増の不当な予算を計上し、執行する為、当該行為を事前に防止する必要な若しくは事後的に是正するに必要な措置(新規歳出になる事務事業に付き最終決定に至る複数案検討過程作成手順書等の作成を含む)を講ずるよう請求する。

2 請求の要件審査

本件請求は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条所定の要件を備えているものと認めた。

 

第2 監査の実施

1 監査対象事項

広報誌発行に伴う外部委託費用が、地方自治法第242条第1項に規定する不当な公金の支出に当たるのか否かについて監査対象事項とした。

2 監査対象部局

企画部秘書広韓課・

3 請求人の証拠の提出及び陳述

地方自治法第242条第6項の規定に基づき、請求人に対して、平成18年8月18日に証拠の提出と陳述の機会を与えた。

請求人は、平成18年8月18日に陳述を行った。その際、請求人から新たな証拠の提出があった。

 

第3 監査の結果

本件請求については、合議により次のように決定した。

本件請求は、理由がないものと認める。

以下、事実関係の確認、監査対象部局の説明及び判断理由について述べる。

1 事実関係の確認

@ 広報誌(印刷製本費)改訂に伴う変更点

 

2一

 

 

平成18年度

平成17年度

予算額

23,000,000円

17,000,000円

予算単価

1.55円

1.21円

印刷部数

31,000部

30,000部

仕様

1日号 2色刷り

 15日号 カラー刷り

2色刷り

その他

編集・レイアウトを含む

 

 

A 一般会計()総務費()総務管理費()広報広聴費()需用費(細節)

印刷製本費の予算は、前年度に比べ600万円増加している。

B その他変更点

臨時職員(1名)の配置の取り止め

 2 監査対象部局の説明

平成16年度のまちづくりアンケートによると、広報誌を読んでいる市民の割合は、9割を超えているものの情報提供の満足度では、満足でも不満足でもないどちらでもないと答えた市民が7割に上がつている。こうしたことから、今後の広報誌に求められる機能は、「よりわかりやすく」「興味を引き」「情報に濡足できる」ものにしていかなければならないこと、最近の出版物や行政文書は、横書き左綴じが多く、写真を多用し、視覚に訴える要素が多くなってきていること、今までの職員の手作業による編集、デザイン、レイアウトでは、時間をかけて行っても見劣りが否めず「横書きの方が見やすい」などの声も寄せられるようになっていたことなど従来の広報誌を改訂する時期にきているものと判断し、広報担当としては、市民に正確かつ効果的な情報を提供する手段としての広報誌を見やすく、分かりやすく提供する責任があり、市政への説明責任、情報公開、情報提供の媒体となる広報誌の役割はますます重要性が高まっていくものと考え、広報誌の全面改訂を行ったものである。広報誌の改訂に関しては、編集作業を外部委託するものとし、最小の経費で最大の効果を上げるため、「横書き左綴じへの変更」「紙面レイアウト、デザインの業者発注」「ページ数の固定化」「カラーページの導入」「提案型業者選定の導入」についての検討を重ね、平成18年度から実施できるように準備をすすめた。

また、平成17年度においては、正規職員3名と臨時職員1名で広報広聴業務を担当しており、その業務における課題は、記事の増加に伴い編集に要する作業量が増大していることである。特に各課の情報提供は広報誌によるところが多く、事務事業評価の成果指標に広報掲載回数などとしている事業課が目立っている。また、編集スケジュールについては、印刷会社や広報配達等の物理的な要因に加え、市の広報誌としての性格上、できる限り最新の情報を詳しく伝える必要があるため、締

3一

 

切り、校正等のスケジュールに制約される事務処理渉毎号繰り返されている状況が

ある。

平成18年度予算編成にあたっては、広報誌の全部改訂による検討を行った。即ち、発行部数の自然増加とぺ一ジ数の増加や印刷経費の増額により現状のままで広報誌を発行しでも約140万円が増額となること、また、広報など本来の事務の円滑な遂行を行うためには、職員の恒常的な超過勤務や休日出勤、年次休暇め未取得、担当職員の健康状況を考慮して職員を1名増員する方法、そして最大限コストを縮減しながら、民間でできることは民間に委託する方法などを比較し、外部委託を選択することにより、超過勤務手当の削減、臨時職員の雇用抑制、広聴など本来の業務の円滑な遂行などの効果を検討している。

3 判断

本件事案は、広報誌の発行にあたり、平成18年度から仕様を改訂するとともに、当該職務に伴う職員の超過勤務や休日出勤の過多1年次休暇の未取得などによる担当職員の健康状況を考慮し、その編集作業を平成18年度から外部委託したものである。広報誌の発行は、政策判断で行われる市自らの事務であり、秘書広報課が、広報誌の役割を再検討しこれを改訂したことは適切であり、また広報誌の編集作業を外部委託したことについては、市の裁量の範囲であり、委託に至った事情は適当であり、また、経済性の観点からの配慮や事務処理も妥当であることから、当該支出が不当であるとは認められない。

請求人が違法又は不当の根拠としている地方自治法第2条第14項の「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で叢大の効果を挙げるようにしなければならない。」及び地方財政法(昭和23年法律第109号)第4条第1項の「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」との規定は、地方公共団体の事務処理又は予算執行の基本原則を定めたもので、事務処理に当たって準拠すべき指針又は予算執行に当たって努めるべき義務であるとされている。また、個々の経費執行に当たっての「最少の経費」及び「必要且つ最少の限度」の具体的な判断については、広く社会的、政策的、経済的見地から総合的にこれをなすべきであり、社会通念上著しい妥当性を欠き、行政庁の裁量権の範囲をこえるような場合を除いてその裁量に任せられているものとされている。

以上のとおり、請求人が主張する地方財政法第4条第1項及び地方自治法第2条第14項の違反については、それぞれの条文に照らしてこれを認めることはできない。

なお、「公共サービスの改革に関する法律」は、本件事案の契約締結後の施行で

4一

あるので、監査の対象とはしない。「(新規歳出になる事務事業に付き最終決定に至る複数案検討過程作成手順書等の作成を含む)を講ずるよう請求する。」については、監査対象とする違法又は不当な財務会計上の行為についての個別的、具体的な特定がなされているものと認められない。よって、当該部分については、法第242条に規定する住民監査請求の要件を欠き、不適格なものと判断する。

また、監査結果は以上のとおりであるが、今後行政評価制度を進めることにより、事務事業の見直しが実施されるが、その場合、見直しの目的、手法等について、見直しの目的を踏まえ、市民に的確に説明されるよう望みます。

5一