第8巻

傍聴記 2002/01/16

 尾張旭市議会議長 殿

           公開質問状

 平成13年第6回(12月)尾張旭市議会定例会における楠木千代子議員の個人質問、「東山町第1種住宅地域の建築基準法違反について」の中で、この地域は癌で亡くなった人が多いと強調し、違反建築と異臭問題とを絡ませて違反者がその原因であることを関連付けることができる発言をした。その後不適切な発言が二件あったと発言取消しをした中で、上記に関しては、証明したデータも無く、またその因果関係の証明も困難であるとのことであった。
 私は傍聴をしていて、この発言取消し前の事柄を知ったとき、尾張旭市にもそのような市民の生命に関わる環境問題が存在していたのかと、非常な驚きを感じました。
 ならば、市民の健康・生命を守る市当局はもとより、特にその地域の住民にとっては放置されるべき問題ではなく、即刻、該当者の業務差し止めの措置ならびに住民健康調査等の対応を迫られる喫緊のことであると思った次第です。
 そこで以下この発言に関する質問をいたしますので、ご回答をお願いたします。

 質問その1.
 癌で亡くなった人(人がどのような原因で死を迎えたかは、本来他人の関知することではなく極めてプライバシーの領域に属することなのに、楠木議員は今回どうして知りえたのか)が多いと、確固たる事実関係を明らかにする調査資料も根拠も提示することなく因果関係を判じることは、単に揣摩臆測であり、風評の垂れ流しであり、住民に生活上の不安を投げかけることであり、扇動でもあり、特に公人たる議員としてはあってはならない行為であると考えるが、市議会としての対応はどうするのか。

 質問その2.
 楠木議員は前述したように発言取消しを願い出て承認されているが、公開の場で発言されたことは議事録上では抹消されても、傍聴者も含め多数の者の知るところであり、その発言の重大さを考えると、当該当者への対応をどのように市議会としては考えるのか。

 質問その3.
 この発言に関して当定例会議長は、「尾張旭市議会会議規則」第55条の1、2、3などによって整理すべきではなかったか。また発言の重大さからいっても楠木議員にたいして発言に関する事実関係の有無を問うなど、職責を全うすべきではなかったか。

 以上の三点につきご回答を願います。
 ご承知とは思いますが、地方自治法の第132条にもありますが、「言論の品位の維持」等を保ち、市議会が公正・中立・正義を発現し権威ある運営がなされ、さらに市民に開かれた場となるように、この機会を捉えて最後にお願いいたします。

 追伸
 傍聴席からも本発言が驚きをもって迎えられたことは、その一瞬のどよめきでも窺い知れますが、本発言に関するさらなる正確さを期す為に、私は本日付で公文書公開請求をいたしました。

                    平成14年1月16
                      足立 巖


「尾張旭市議会会議規則」(発言内容の制限)第55条 発言は、すべて簡明にするものとし、議題外にわたり又はその範囲を超えてはならない。
2 議長は、発言が前項の規定に反すると認めるときは、注意し、なお従わない場合は発言を禁止することができる。
3 議員は質疑に当たっては、自己の意見を述べることができない。
発言通告は建築基準法違反についてであったため、理事者側からの答弁は違法建築に関する状況報告にとどまった。議員本人からの確認では「異臭」に関する発言通告はしていないとのことであった。
昨年(2001年)11月18日に任期満了に伴う市長選挙があり、12月就任のため12月定例会が1月にまたがった。


傍聴記 2002/02/12

               平成14年2月4日
足立 巖 様

              尾張旭市議会
              議長 水野 利彦

        公開質問状の回答について

 平成14年1月16日付けで提出されましたご質問について下記のとおり回答いたします。

               記

質問その1の回答
 事実関係、因果関係を裏付ける根拠、資料も示すことなく発言を行い、発言取り消しをしたものの市民に不安を与えてしまったことは事実であります。
 そのため、本会議最終日において当該議員が反省を含め陳謝を行い、議長としての見解表明により最善の対応を図ったものと理解します。
 なお、議長は、当該議員に会議規則に則り発言するよう厳重に注意したところです。

質問その2の回答
 本会議場で起因したことは、本会議場で善処すべきとの考えに立脚し、本会議での陳謝、議長見解表明により関係者への周知は図られたものと理解します。

質問その3の回答
 議長の職責として議会の秩序維持の観点から、発言の注意、中止をすべきであったと理解しておりますが、発言の推移を見守るうちに注意を促す時機を逸したものです。
 議事進行上、即座の判断は非常に難しいものがあり、今後は、注意していきたいと思います。


中日新聞読売新聞毎日新聞とうめい新聞
公文書公開については別途「傍聴記」にて掲載いたします。



傍聴記 2002/02/14

 「傍聴記 2002/01/16」の関連で、「尾張旭市情報公開条例」に基づき、次の公文書公開請求をした。

 1.平成13年第6回(12月)尾張旭市議会定例会楠木千代子議員の一般質問通告書

 質問事項の「東山町第1種住宅地域の建築基準法違反について」の質問要旨は次のようである。
 ≪現在の用途地域は第1種住居地域で原動機や作業内容の制限はあるが、作業場の床面積が50u以下であれば可能とある。
しかし東山町2丁目14-8の建物は200u以上ありあきらかに違法である。
どのようにして市はこの会社に許可を出したのか。特定行政庁である尾張旭事務所との調整や会社への指導はどこまでなされているのか。(以上原文のママ)≫

 市民の代表である議員が別件逮捕的手段で問題を浮き彫りにするのではなく、質問を通告し直接理事者側の答弁を得ることが必須ではないか。住民の健康・生命に直接影響する環境問題であるとするならば、なおさら調査や資料に基づき冷静に問題提起をし、他を納得させ、協力を得て追求していくべきと考える。無用な軋轢を引き起こすのでは本末転倒であるし、余計な時間を費やすことになる。
 環境問題はブーメランのようにも見える。根本を押さえないと手許に戻るからだ。真正面からの取組みが必要となる所以である。

 2.平成13年第6回(12月)尾張旭市議会定例会の楠木千代子議員の全発言を原本からの公文書公開請求

 本件については、請求時に公文書(原本つまり録音テープから冊子化した意味での)は存在しないため非公開となった。
 しかし公文書としては、条例第2条2項の電磁的記録としてのテープが存在する。当議会は原本と正本を所持する。原本は一部(冊)、正本は複数存在し、閲覧等配布用に処する。この原本には発言取消部分も記載されているが、正本はその部分が伏せ字となる。2001年5月14日に関連公開質問状(「お知らせ」)

 3. 平成13年第6回(12月)尾張旭市議会定例会第3日(1月10日)の楠木議員の発言部分・第5日(1月23日)の楠木議員の陳謝発言部分及び議長見解発言部分の録音テープ

 本件については、2月1日開催の議会運営委員会で協議の結果、原則公開となり、「事務取扱要綱」の見直しをするとのこと。この委員会の傍聴はできなかった。開催の緊急性のせいかどうかは別にして、公開される委員会の開催をどう市民へ周知するか、議会は考えるべきである。


公開された録音テープはデータストリーム化して聞けるようにしました。
個人質問要点・発言取消・陳謝・議長見解に分けました。ただし、個人質問はテープからパソコンに「PCM22.050kHz16ビットモノラル」で記録しても52,594KBのデータ量になり、さらにRealMediaファイルに変換した場合でも14,760KBになるため、指摘の箇所だけにとどまり他は割愛しましたが、WAV形式で全内容を保管してあります。
スピーカの音量をはじめ最低にしておいて、徐々に調整してお聞きください。

個人質問要点
発言取消
陳謝発言
議長見解


傍聴記 2002/05/15

 「傍聴記 2002/01/16」・「傍聴記 2002/02/12」・「傍聴記 2002/02/14」の関連で少し気になるところを整理しておきたい。
 それは「尾張旭市議会会議規則」(懲罰動議)第146条2の前段に、「前項の動議は、懲罰事犯があつた日から起算して3日以内に提出しなければならない。・・・」とある。また同規則(戒告又は陳謝の方法)第148条では、「戒告又は陳謝は、議会の決めた戒告文又は陳謝文によって行うものとする。」とある。今回この第146条2の前段、つまり3日以内に懲罰動議の発議者がいなかったのである。であるから手続き上懲罰は無かったことになるし、第151条の「議会が懲罰の議決をしたときは、議長は、公開の議場において宣告する。」も当然ながら無かったのである。であるが、実質的には第148条でいう陳謝を当該議員はなしているのである。また「傍聴記2002/02/12」での「質問その2の回答」のように本会議での陳謝云々なのである。
 因みに規則でいえば「愛知県議会会議規則」も同様な決めである。さらに地方自治法では、懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならないとし、第十節 懲罰 第百三十五条 「懲罰は、左の通りとする。一 公開の議場における戒告 二 公開の議場における陳謝 三 一定期間の出席停止 四 除名」とある。国会法第十五章 懲罰 第百二十一条 3には「・・・この動議は、事犯があつた日から三日以内にこれを提出しなければならない。」とある。懲罰内容は同上の県議会会議規則と同様である。当市議会の規則から始まって国政レベルまで遡ってきたが、勘違いしないでほしい、当市の規則が国会法に反映されたものでないことを。
 さてわが市議会としては初めての事(無かったんです!)ゆえか、この決着の仕方の善しあしをどう今後に活かしていくのか。経過を傍聴してきたものとしては少々後味の悪さが残る事犯(?)であった。

問題となった臭気の測定結果(平成14年3月22日)