FAQ


片側置換型人工膝関節について

どのような歴史があるのですか?

膝関節の関節面が疾病により破壊され、関節の滑りが悪く動かない、曲がるときに痛みがある、体重を支えることが出来ないといった膝関節にたいして人工材料を使って機能を再建する試み、すなわち人工膝関節は1970年代に臨床応用され始め、様々なデザインのものが開発され工夫が重ねられてきた。このような人工関節が膝に応用され始めた初期のころ1976年にすでにOxford型人工膝関節は開発されている。大腿骨と脛骨の関節面がほぼ円運動をしており半月板がその間を埋めるという生体の構造をそのまま表面置換する形式は生理的で膝関節の機能を再建する上で理想的な形式をもっていた。Oxford型はいかなる変形性膝関節症に適応できるわけではなく内側型の変形性膝関節症で人体機能が温存されているものに適応すれば非常によい結果が得られることを見いだしていた。1982年からこのような前内側型変形性膝関節症に用いられるようになって、人体機能が温存されている早期に置換してやれば長期にわたってその他の部分まで進行しないことが分かった。さらに取り出した関節を用いてプラスチック部分の摩耗を測定してみると、年間0.01mmから0.03mmときわめて少なく長期間人工関節の機能が持続することが分かってきた。適応のある症例では10年間問題なく機能する率は98%であり他のどの人工関節より良好な結果が得られている。摩耗が著しく少なく、かつ脛骨コンポーネントには圧縮応力だけが加わりゆるみにすくなく、靱帯バランスが正常で屈曲を自然に行える。内側の片側型の変形性膝関節用に対しの単軸で半月板ベアリングをもつ人工関節が長期間にわたり機能するこことが証明されていると考えられる。
開発以来この基本的な構造に変化はない。現在用いられているものはPhaseIIIと呼ばれている。これは様々な体格の人に適合するようにサイズバリエーションが作られたこと、手術器械を工夫して小切開で手術が行えるように2段階の改良が加えられたことによる。小切開専用の手術器械が開発され、もっとも低侵襲に容易に再現性高く手術操作ができるようになった。屈曲伸展の靱帯バランスを理論的に制度高く獲得できる手術術式と器械があって初めて本手術は期待される成績を得ることが出来るので、適応患者のの正しい選択と手術手技の習熟が重要です。


どのような患者さんに使うのですか?

膝関節の内側の軟骨がすり減ってしまってを痛めているお年寄りです。日本人に多いO脚の膝をもつ場合年令を重ねる内に軟骨がだんだんなくなってきて骨と骨がふれあるようになって痛む場合はもっともこの関節で置換するよい適応です。変形が進行して外側のコンパートメントまで痛んでしまってはいけません。さらに本術式では半月板の働きをするプラスティック部品があることから十字靱帯が機能していることがきわめて重要です。すり減って靱帯がなくなってしまう場合もありますし損傷して切れている場合もあります。前十字靱帯の機能がなくなってしまっている場合半月板の役割をしているプラスチック部品がはずれてしまう可能性があります。関節切開した時に確認することが必要です。MRIで存在をある程度確認できますが、機能しているかはわかりません。 内側側副靱帯機能も重要です。ゆるめないとアライメントをO脚を矯正出来ない場合は適応外になります。骨切りや靱帯の解離によって変形を矯正すれば正常の靱帯バランスを得られなくなるのでプラスティック部品を安定な状態で挿入できないことになるからです。
小切開で行うために屈曲拘縮が強い場合手術操作が難しくなります。全部曲げる必要はありませんが110度の屈曲が必要です。手術器械を小さな切開から挿入して骨切りを調整するためにはある程度の屈曲角だが必要ですし、無理に屈曲拘縮を矯正してまで行おうとすれば四頭筋への侵襲が少なからず必要になることになり小切開の意義がなくなります。
靱帯機能が温存されていることが必要であることはすなわち自然な生体機能を得られることと他なりません。早期に無理なく大きい可動域を得ることが出来ます。年令、体重、活動性によって成績が変わらないことから骨切り術の適応と全く重なることになります。摩耗が少ないことから長期にわたって関節機能が保たれると期待できますし、体重の差によってゆるみなどが起きないことが分かっています。比較的若い仕事をしている方でも理論的には手術しても長期間痛みなく活動して頂けるのではないかと期待しています。


片側型人工膝関節について

それはセラミックですか?

セラミック製の人工膝関節は多結晶アルミナとジルコニアを用いたものが実用化されています。しかし、片側型人工膝関節は小型で厚さを出来るだけ薄くしなければならないので、割れに対する強度を十分考えると金属より少し厚くしなければならない欠点があります。最近はきわめて薄い製品も作られ、遜色なくなってきていますが、金属より優れたものを必ずしも開発できていません。我々の用いているOXFORD型も、セラミックで作ることは可能ですが、摩耗などのセラミックの保つ利点や生体親和性における優位性を十分証明できていないので、安定したコバルトクローム合金を用いています。現在もっとも安定した結果を得られている金属と考えられています。非常に硬い金属で摩耗が生じるということはありません。摩耗する部品はプラスティック(HDP)でできたベアリングの部分です。この部分は年間0.01−0.03mmの摩耗であることが証明されています。1ミリちびるのに100年から30年かかることを意味します。もっとも薄いもので3ミリですから人の一生使える計算になります。


リハビリがつらいのではありませんか?

小切開をもちいないで大きな傷を使っていたときは、つらいリハビリを強制して関節の屈曲角度を無理に得ようとしていたことがあります。しかし、出来るだけ早い時期から無理に我慢をしながら曲げるとかえって痛い印象が頭に記憶されて痛みが持続することが分かってきました。逆に運動しないで筋肉を動かさないで静かにしすぎると今度は静脈のなかの血液が凝固して静脈血栓症が生じる危険がありますので、痛くない程度に少しづつ関節の屈伸を行うようにしています。このようなのんびりした方法でも1週間くらいで90度は曲がるようになります。もうここまで曲がると後は自然に120度くらいは曲がってくることがほとんどです。2−3週間たっても120度程度曲がってこない場合は少し曲げるときに手伝う場合もありますが、ご自身で少しづつ運動をしていけば自然に曲がるようになります。もう痛いリハビリはありません、いえ、痛くてつらいリハビリをしていはいけません、させてもいけません。自信を持って少しづつ力を抜いて曲げていって下さい。必ず曲がるようになります。 手術後の痛みを出来るだけ和らげるために、長時間作動型の局所麻酔剤を創に注射して術後のきつい痛みを出来るだけ和らげるようにしています。痲酔科の先生と協力して手術後も痛くないように持続硬膜外痲酔を行うようにする場合もあります。痛い記憶がない方がリハビリがうまくいくのです。


誰でも小さい最小侵襲手術をしてくれるのですか?

私も1996年頃から少しづつ手術切開を小さくして、片側がた人工膝関節であればどれでも10センチ以下の切開で手術可能にすることが出来ました。もともと、アメリカの歯科医だった人が整形外科医になって人工膝関節をする際に、口と同じ大きさの切開で入れ歯より小さいものを十分挿入できることを見つけて始めたのが始まりのようです。口は引っ張ればさらに大きくなりますが、5−6センチ程度の大きさからきわめて大きな入れ歯を正確にはめ合わせる技術はまさに人工関節を挿入する技術と同じようなものだったのです。
2002年からOxford型片側置換人工膝関節が使えるようになりました。現在の形式がPhaseIIIと3世代目になります。20年以上の歴史のあるこの関節が最小の手術切開で正確に理論どうりに挿入できるように改良されたのです。大きさのバリエーション、手術器械の改良がなされたのです。このことで世界でもっとも小さな切開で正確に手術が可能になりました。それほど難しい操作が必要なわけではありませんので日本のどこの病院でも行われるようになると考えられますが、今のところ限られた病院でしか行われていません。100関節以上の経験のある外科医は今のところ私だけのようですが、どんどん追い上げられているところです。製造元のBIOMETに問い合わせてみて下さい。



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