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槍穂縦走記
できたてのホヤホヤ河童橋
![河童橋](42.jpeg)
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梓川と霞沢岳
97/7/18 秦野-新宿-バス
深夜新宿発、上高地直通のバス(さわやか信州号)に乗って、上高地へ。
バスをよく知らない私は夜行バスは全部3列シートでゆったりだと思っていたので、ごく普通の4列シートなのを見てがっくり。
このようなバスでも熟睡できる人でないと翌日の登山はつらいかもしれない。
私たちは酔い止めの薬を飲んで寝たけど、
翌日私がばてた(というよりも非常に眠かった)のがその薬と関係あったかは不明。
梓川上流
97/7/19 バス-上高地-横尾-槍沢-殺生ヒュッテ
前日は大雨で上高地までの道路が通行止めになったそうで、
着いた日(7/19)も早朝は通行止めだった。
そのため、上高地を出発したのは予定よりもだいぶ遅れて8時出発。
横尾に到着し、公衆電話で小屋に予約を入れる。
できることなら槍岳山荘まで登りたかったが、時間が遅くなってしまうので殺生ヒュッテにした。
途中槍沢ロッジで食事を食べたりしながら
「5時までには着いてほしい」という小屋からの返事を守ろうと必死に歩いてなんとか殺生ヒュッテに到着。
しかし、指定時間ぎりぎりに着いた私たちよりも前に到着していたのは一組だけ。
他の人たちなどは私たちよりも遅れているにも関わらず槍岳山荘まで登っているようだ。
上に登る人が多い&連休前日なので小屋はすいており、布団6枚づつになっている空間を個室のように使うことができ、非常に快適。
しかし、この小屋からは夕陽も朝日も見ることができない。
槍沢を登る
97/7/20 槍ヶ岳-大キレット-北穂高岳
翌日早朝に窓から外を見ると朝焼けで山が赤くなっているので外に出る。
日の出は見えないが、赤くなった槍ヶ岳は真正面に見ることができる。
しかし、他の山をのんびり撮っていた私はこの赤い槍を撮り損なってしまった。。。
静かでよい山小屋だとは思うけど、やはり朝夕が楽しめないのはこの小屋の欠点かもしれない。
朝食後槍の肩まで登って景色を見ると朝夕は槍岳山荘で過ごしたいものだと思った。
殺生ヒュッテからの常念山脈(富士山も見える)
![](51.jpeg)
槍の肩から双六、黒部五郎、薬師など
![](52.jpeg)
槍の肩から頂上までは岩場だけど、掴むところはあちこちにあるので結構楽しい。
私の知り合いは頂上まで登る時間を競ったらしいが、その気持ちが分からないでもない。
今まで「360度の展望」と書いてあっても天気が悪かったりして、
なかなか満足できなかった私もやっと運がめぐってきたようで、
本当に全ての方角の全ての山を眺めることができる。
山登りを趣味としながらも日本アルプスの山をあまり登っていない私が、
本ではよーく知っていて日々憧れていた山々が、
今実物となって眼前に広がっている。
南にはこれから歩いていく穂高、手前が今日の宿泊予定地、北穂だろう。
間には楽しみな大キレットが待っているはずだ。
そこから西に向かって笠、その後ろには白山らしい。
三俣蓮華や黒部五郎、白い薬師、立山、剣、鹿島槍、五竜、白馬も見える。
燕、大天井、蝶といったなかで大きなピラミッドの常念を見て、
なぜ山脈の中で一番高くもないこの山が百名山に選ばれたのか分かった気がした。
本当に素晴らしい景色で、どっちの方角を見ているのか迷ってしまうほど。
山登りをしてて本当によかった。
あの見えている山々を全部登り終えるのはいつだろう。
槍ヶ岳頂上からの360度展望(24mm7枚合成)
![](panorama.jpeg)
このパノラマのQuickTimeVR(209K)
(見れない場合はQuickTimeをダウンロード)
槍ヶ岳山頂から笠ヶ岳(手前は巨大な槍岳山荘、後ろは白山)
![槍岳山荘](55.jpeg)
どの本を見ても「非常な混雑」とかかれている槍ヶ岳の頂上だけれど、
連休が始まっていない&朝食後で槍岳山荘に泊まった人はもうでかけているらしいので、かなりすいている。
実際、誰にせかされるでもなく気が済むまで30分ほど頂上にいて、今までの山行の中でも最高の景色を満喫して肩まで降りた。
縦走路から天を貫く槍を望む
山荘でジュースを飲んで縦走路へと出発。
南岳までは何度か3000mのピークを越えながらの楽しい空中散歩。
ピークで振り返る度に槍ヶ岳が見えるが、どこからみても絵になる山だ。
南岳の山小屋でジュースとミカンの缶詰を買って、
横のピークの上で殺生ヒュッテの弁当を食べる。
大キレットらしきものが見えるけど、大変なようでもあり簡単なようでもあり。。。
今回の山行には私たち夫婦以外にもう一人初級者(私たちが中級者かどうかは非常にあやしい)が同行していたので、大キレットから先はその人を間に挟んで一カ所、一カ所をこなしていった。
時間は多少かかったかもしれないが、本などにも書いてあるように鎖などがしっかりついているので恐怖こそあれ落ちそうになることはなかった。
難しさや恐さという面では次の日の北穂から涸沢岳の方が間違いなく上だと思う。
大キレットを通過し、
北穂の小屋に着くとどこからあふれてきたのかたくさんの人が休んでいた。
どうやら連休が始まって初日に一気にここまで登ってきた人たちらしい。
みんななかなかパワフル。
布団はだいたい二人で1枚程度で、
夕食も小屋の予想以上の混み具合らしく3回戦のローテーションがうまくいっていないところがあり、
「先に到着した人間が先に食えないとは何事だー」などと怒っている人もいた。しかし、何はともあれ噂通り食事はとってもおいしい。
月光の雲海(北穂小屋から常念山脈方面)
夜中はただただ熱気で部屋中が暑く、
Tシャツ、短パン、布団無しでもあまり寝ることができなかった。
夕方から夜に欠けての天気は雨は降らなかったけど、
槍ヶ岳はほとんど雲で隠れ続けいていた。
笠ヶ岳と月
97/7/21 北穂高岳-涸沢岳-奥穂高岳-涸沢
次の日の朝は最高の天気(そもそも4日も歩いてこんなに晴れ続けるなんて、本当に天気に恵まれていた山行だった)で山小屋裏にある北穂の頂上に登る。
日の出前から明るくなり始めた常念方向の空、斜光で照らされる槍ヶ岳と大キレット、月を抱える笠など見ていて飽きることがない。
刻々と表情を変化させる槍ヶ岳、後立山連峰
北穂頂上でのご来光
朝日を浴びる大キレット
北穂から大キレットへ向かう登山者
朝食をとってから北穂の裏の雪渓を慎重に越えながら奥穂高をめざす。
この雪渓では私たちが通過する30分ほど前に滑落事故があった。
その内容にはふれないけれど、
それほどの危険がこのすばらしい時間と常に対になっていることを忘れてはいけない。
涸沢岳までの縦走路は大キレットよりも難しいと思う。
初級者を同行していたので、自分の分以上に気を使って大変だった。
私たちは他人を同行した山行をほとんどしないけれど、
いつも他人を引率している人たちを正直尊敬してしまう。
途中の岩場(ずっと岩場だけど)で上の方から「カラカラ」という
音が聞こえてきたので見えあげると小さな石が数個落ちてきた。
慌てて「落ちてきた!」と叫び、大きな事故にもならなかったが、
その私の声を聞いた落石の主が小さい声で
「すいませーん。だいじょうぶですかぁ」と答えてきた。
本などでは山のマナーなどがうるさく言われているけれど、
実際落石の際の声に関してはみんな小さな声で「あーー」と言うだけで
下の人に聞かせようとする人はほとんど見たことがない。
途中休憩もままならないようなところなので、
その様子を写真におさめていないのが残念。
次の機会には是非迫力のある写真を撮ってみたい。
しかし、3000m峰に数えるか、サブピークとみなすかの違いはいったいどこにあるのだろう。なるほど、槍ヶ岳などに比べると間の山は貧弱かもしれない。
しかし、涸沢岳などは穂高の仲間に入れるのもおしいくらいすばらしい山だと思うのだが。。。
奥穂山頂への大渋滞
予定よりもだいぶ遅れて穂高山荘に到着すると奥穂方面の斜面に人の行列が見える。登っている人も見えるのだが、ほとんどの人は同じ場所に立っている。
どうやら鎖・梯子の交互通行による渋滞らしかった。
山荘前で弁当を食べ終わっても、行列はほとんど進んでいなかった。
しかし、ここまで来て奥穂に登らないわけにはいかない。
行列の後ろに並び、座って順番を待つことにした。
順番を待っていると時々その行列を休んでいるものだと勘違い(あんな不便なところで休む人なんかいるわけないのだが彼らはそう言っていた)して行列の先に歩いていこうとする。
すると誰かが「行列の最後に並ぶんだよ」と教える。
最初に言う人は本当に偉いものだ。
私も続いて同じように事情を説明して後ろに並んでもらった。
しかし、一人のおじさんが行列の最後から再び抜かそうとし始めた。
「なんで先に行くんですか?」と私が聞くと
「俺は岳沢まで行く予定なんだ。このまま渋滞を待っていたら間に合わなくなるから、縦走者は優先してくれねぇかな」というのが彼の言い分。
「私は縦走ではありませんが、この後横尾まで降りなければいけませんし、
大きな荷物を持っている人たちがほとんどですが、彼らは当然縦走でしょう。
事情はみんな同じなのだからダメですよ」というと彼は私の後ろに平然と割り込んでしまった。他の人たちも一緒になって言ってくれればいいのになぁ。。。
奥穂高岳山頂
梯子を抜けたところから奥穂までは意外と遠い。
奥穂の頂上は広々とした感じで頂上自体は槍、キレット、涸沢岳などに比べるとインパクトが薄いと思う。
しかし、ジャンダルムなどが見える西穂方面は「いつか」という気持ちを呼び起こすには十分な景色だ。
ヘルメットをかぶった集団はそっちから来たのかな。
穂高山荘に下ろうとすると、再び梯子付近で渋滞。
しかし、登ってくる人がいないので登りの時よりはずっとペースが早い。
にもかかわらず再び追い越しをかける人間が出現する。
後ろの方からおじさんが「おい、そこの!追い越しは禁止だぞ」と言っても
「はいはい」とつぶやきながら登山道からはずれた岩場を彼は降り続ける。
「あぁあぁ、あんなに言われても止まろうとしないよ。
当然あのまま(道じゃなくて)岩の中を降りるつもりなんだろうね」
と私が聞こえよがし(最初に注意したおじさんに比べると姑息な方法だ)に言うと止まって行列に入ろうとしたので
「おいおい、途中で入っちゃだめだろう。ずっと岩の中歩いてくれないと」
と言うとうつむいて何人か通り過ぎるのを待ち始めた。
彼としては十分に待ったつもりだったらしく、私の前で行列に加わろうとするので「まだだよ」と私が言うと私たちの後ろに入った。
それでもかなり追い越したことになるのだが後ろの人たちが黙っているのでしかたがない。
行列に参加していた人たちは数十人もいるのだが、実際に注意するのは数人程度。
もう少しみんなで注意して欲しいものだ。
穂高山荘について彼はどこかの学生の集団のところにいって
「よぉ!」ってな感じ。集団の連中は「あれぇ?どうしたの?」
という感じで驚いていた。
彼はそんなことのために追い越ししていたわけ?
もっと彼なりに深刻な急用を期待していた私はさらにがっくり。
穂高山荘から横尾に下ろうとしたが、同行初級者が疲労していたために、
涸沢小屋に宿泊。
更衣室を転用してくれたために個室同然の部屋を与えてくれた。
連休最終日前日の宿泊とはいえ山の上に泊まっている人が多いらしく、
涸沢はどこも空いていたようだ。
前日は頭と足を交互にするほど混んでいたらしい。
97/7/22 涸沢-横尾-上高地-バス-新宿-秦野
最終日は家族連れの小学生と一緒に話をしながら横尾まで下り、
明神池を観光しながら上高地まで帰った。
横尾で梓川を渡る登山者 / 明神池
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