POP MUSIC FOR SINGLE LIFE


(ポリドールMOTOWN POCT-1958)

MARVIN GAYE

I WANT YOU('76)

 70年代のマーヴィン・ゲイはこれまで『ホワッツ・ゴーイン・オン』と『レッツ・ゲット・イット・オン』の2枚聴いたことがあります。それぞれのアルバムの趣向は異なるのですがどちらのアルバムも私にとっては非常に重く感じられ、アルバムを通して聴き続けることができません。その理由は1曲目聴いたらもう十分というか、アルバム全体が一つのテーマで貫かれていて、どの曲を聴いても同じに聞こえる、という事が一つ。もう一つはそのアルバムの世界が広がっている、というより出口なし、というか行き止まりというか、閉塞感が漂っていて、聴いていてなんかやるせなくなってくるからです。

 そんな私ですが80年代に入ってからの『ミッドナイト・ラブ』はテクノ・ポップ的な音作り(実際、ギター以外は彼が演奏、プログラミングしているらしい)、全体から受ける明るい印象からよく聴いていたりします。同時代のスティーヴ・ウィンウッドやロバート・パーマーなんかと同類にして捉えていたりします。60年代のタミー・テレルとのデュエット曲なども好み。

 で、今回76年発表の『アイ・ウォント・ユー』聴いてみた訳ですが、一聴した印象はムーディーで大人の匂いプンプン、ブラック・シネマのサントラみたいだ、ということ。彼の声も熱唱ではなく囁くように歌っていて、またコーラスは彼自信の声を多重録音しているらしいのですが、これが非常に厚みがあってリスナーを包み込むようなサウンドになっています。

 ライナーを読んでみると元々リオン・ウェアの作っていたアルバムをマーヴィン・ゲイが気に入ってそのアルバムのトラックに彼のヴォーカルを被せたのがこのアルバムらしいです。サントラの様に聴こえたのにも納得がいきました。また、声を被せただけなのに彼のカラーが強く出ているのにも驚きますが、『ホワッツ〜』や『レッツ・ゲット〜』などに比べると軽く聞き流せるのも事実です。

 しかし、「アフター・ザ・ダンス」の歌入りの方(インストも収録されている)一人で聴かせて貰ってもなあ、空しさが部屋に充満してくるだけのような気もしてきます。このひたすらムーディーでソフトなサウンドに包まれて身を置くことは独身者にはある意味で拷問かも。も、もうたまりません。 

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