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(WEA 18P2-2856)
Strawberry Switchblade
Strawberry Switchblade(『ふたりのイエスタデイ』)('85)

 このアルバムの1曲目「ふたりのイエスタデイ」はほのぼのとしたテクノ・ポップ。気の抜けたホーンのイントロから、エレピが絡み、シンドラのスネアの連打の後、メロディアスでありながらシンドラが目立つ、この頃でしかあり得ないアレンジの曲です。そして二人の女性ヴォーカルがユニゾンになったりハモったりしながら、シャウトする訳でもなく、囁く訳でもなく、淡々と歌っています。そう、晴れていながら霞が棚引いているような、そんな春の空のような世界を連想させる今の季節にピッタリの曲です。因にこの曲は私の通っていた高校では、朝の校内放送のオープニング・テーマ曲として、ある時期には毎日流れていました。確かに会社から帰宅した後聴くよりも、目覚めに聴いた方が合うと思います。

 この曲をヒットさせた、ストロベリー・スウィッチブレイドはスコットランド出身のジル・ブライソンとローズ・マクドゥールの女性ポップ・デュオ。二人ともギターを弾き、元々はエコー&ザ・バーニーメンやロディ・フレイム人脈の中の人達でフォークっぽい曲をやっていたらしいです(ライナー・ノーツ参考)。ジャケット写真の二人のメイク、曲のアレンジ共にかなりドギツい印象を受けますが、そうでありながら同時にホリーな印象も受けるのは、そうしたオルタナ、ネオアコ系出身という根っこの部分があるからでしょうか。

 このアルバムは「ふたりのイエスタデイ」の印象が強すぎて、他の曲の印象が全くなかったのですが、最近聞き直してみてアナログ盤ならB面にあたる一連の曲の流れが気に入って何回も聴き返しています。特に「愛の疑問」〜「ゴー・アウェイ」と続く部分は、スコットランドの森の中をさまよっているような錯角を感じさせるサウンドで、癒しの効果有り。その入り口と出口を「レット・ハー・ゴー」と「シークレッツ」の花畑を歩いている気持ちにさせる軽快なポップ・ナンバーが挟んでいるという格好になっています。何回も書くようですが、個々の音はドギツいのにサウンド全体から受ける印象はナチュラル。それがこのアルバムの特徴であり魅力。不思議なアルバムです。

 すべての曲を彼女達自身が作り、歌っているのですが、曲も素晴らしいですし、歌もサラリと歌っているので何の引っ掛かりもなく聞き流してしまいそうですが、そう思わせる分、実は滅茶苦茶上手いんじゃないかと思ったりもします。

 蛇足ですが「ふたりのイエスタデイ」のシンドラのスネアって本当汚い音していると思います(笑)。

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