好きな作家と本


NiftyのFADVで好きな作家と本の投票があり,その時に選んだものです.いろいろ年とともに好みは変わっていきますが,ここ数年はこんなものでしょう.

好きな作家

大石英司

出版されれば即買う作家の二人のうちの一人.もう一人はディック・フランシスなんですが,ちょっとかけ離れているかなぁ.出版された本は文庫での再版を除き,ほとんど持っているはず.最初に読んだのは『原子力空母(カ−ル・ヴィンソン)を阻止せよ』.図書館で借りました.これで気に入ってずっと追っかけ状態です.最近では『環太平洋戦争シリーズ』がお気に入り.

船戸与一

ちょっと前までは見ず転買でしたが,貧乏になってハードカバーを買えなくなってしまい新刊を買えなくなってしまいました.読みはじめたのは結構古く,『非合法員』以来です.あれは確か巣鴨の駅のそばの本屋で買った記憶があります.十年以上前,はるか昔のことでした.
主な登場人物は大体死んでしまうのがパターンなので,主人公に感情移入してしまうとそこで読むのをやめてしまうことがあります.そのため途中下車の本が何冊かありますが,気に入らないわけではないので,いずれ読むことになるでしょう.

丸谷才一

主にエッセイを読みます.文藝春秋で『食通知ったかぶり』を連載してるのを読んで以来,ひいきにしています.雑学に満ちた雑談が余裕を持ってゆったりと書かれているのが好きですね.この頃贈与論と御霊論とカーニバル論が鼻につきますが,テクニックは衰えていない.うまいものです.

小林信彦

『大統領の密使』を読んでファンになった.その後,ミステリマガジンの連載の『パパは神様じゃない』でエッセイに目覚め,ヒッチコックマガジンを集めたりしました.ガンブーム,ジャズブームの頃のヒッチコックマガジンは今読んでも面白い.いい雑誌を編集してくれました.
私にとってのベストは『大統領の晩餐』.日本の冒険小説の中でベスト10に入るのではないかと密かに思っています.

ディック・フランシス

学生のとき古本屋で『興奮』『大穴』『血統』の三冊のポケミスを一冊120円位で手に入れ,まず,『興奮』から読みはじめたのですが,当然,一気読み.読み終えたとき,まだ手元に二冊もあるという幸福にうっとりとなったのでした.もちろん,徹夜で全部読みました.以来,全部買っています.
『興奮』『大穴』がいいのは当然なんですが,私の好みは『度胸』.あとは『飛越』『利腕』『反射』ってところかな.変わったところでは『追込』が結構好きです.

デズモンド・バグリィ

昔,ポール・ニューマン主演の『マッキントッシュの男』を見て原作を読んだのがはじまりでした.主演女優はドミニク・サンダでしたっけ.きれいな人でしたが,もうおばあさんかなぁ.
やっぱりベストは『高い砦』でしょうか.何回も読んでいます.あとは『黄金の手紙』(実はマヤに行ったことがあります)『ハリケーン』『マッキントッシュの男』『砂漠の略奪者』が好きですね.
そういえば,『敵』は翻訳が出るのが待ちきれなくて,ペーパーバックで読みました.辞書なんか引かないで読んだのでストーリーがぼんやり分かる程度だったのですが,私の英語力でよく読み通せたものです.つまり,それくらい好きなのさ.

ロス・トーマス

大学のとき立風書房から結構出版されていたのですが,そのころはお金も無いこともあって知っていたのは名前だけでした.その後,『冷戦交換ゲーム』を読み,なかなか面白いともったのですが,ほんとに好きになったのは30歳を超えてからです.
ロス・トーマスは登場人物が最大の魅力ですね.したたかで,頭がよくて,ちょっと悪で,しかも憎めない.特にアーティ・ウーがお気に入り.

イァン・フレミング

大人用の冒険小説はフレミングから始めました.多分最初に読んだのは『ロシアから愛をこめて』だったかと思います.
第二次世界大戦後,イギリスが世界に貢献したものの一つとして『007シリーズ』が上げられると思います.ちなみに他のものは,ビートルズとミニスカート.
ずっと以前のミステリマガジンにフレミングのエッセイがのっていて,丸谷才一がどこかで引用しているんですけど,これが傑作でした.多分,007増刊号だったかと思います.
そういえば昔,フレミングの評伝が出版されましたが,手に入れそこないました.残念.心残りです.


好きな本

傭兵たちの挽歌 大藪春彦

大藪春彦の集大成といえるのではないでしょうか.好きな場面はたくさんあるのですが,特にライフルの試射を行うところがすばらしい.他の凡百のもの,例えば『ジャッカルの日』と比べてください.
この作品は野生時代に一挙に掲載され,加筆後出版しているのですが,私はオリジナルの野生時代版が好きです.(でも掲載号がどこかに消えてしまった.悲しい)

伝説なき地 船戸与一

南米三部作のうちの最後の作品.舞台はベネズエラで,希土類を巡っての殺し合いが展開される.殺し合いの後での最後のシーンのイメージがよろしい.その後のさらに凄絶な場面が想像される.
FADVでは『猛き箱舟』の方が人気があるようですが,私はこちらのひいき.熱帯の夜の濃密な殺し合いを楽しんでください.

羊をめぐる冒険 村上春樹

うってかわって,こちらはあっさり系.あっさりしているけれど,意外に中身は濃いぞ.場面場面のイメージがすばらしいし,切り替えが鮮やか.村上春樹のベストだと思うんですが,FADVでは『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の方に人気がある.不思議なものですね.

薔薇の名前 ウンベルト・エーコ

奇跡的にうまくできたミステリ.エーコって『フーコーの振り子』で分かるように,決してうまくはないんですが(伝奇小説だったらやっぱり半村良でしょ),こいつはよく出来ています.ホームズ役のウィリアムがいいですね.それに所々にある軽いくすぐりが私の趣味に合う.何年かに一回読み返してみたくなる本.



サンダーボール作戦 イァン・フレミング

グリーン,ル・カレ,アンブラーとかいますけど,スパイ小説はやはり007でしょう.何といいますか,華を感じます.何よりも細部がよろしい.飲む酒,着る物,食べ物,小道具,ちょっとしたことが他と違います.フレミングは『私の教育は金がかかっている』と語っていたそうですが,金だけじゃありませんね.
近年,ジョン・ガードナーが新007シリーズを書いていますが,まったくダメです.オリジナルの風合が感じられません.ガードナーともあろう人がどうしたのでしょう.もしかしたら,名前だけ貸しているのかも...


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