Fair Competition?
妥協の産物か?(96/11/2)
科学雑誌Nature9/19号ではヘルペス(皮膚系疾患)の原因となるヒト・サイトメガロ・ウイルスの増殖に関係している蛋白の構造解析の報告を掲載しました。それ自体は不思議でも何でもないのですが、異例なことに同じ蛋白の構造解析の結果が同じ雑誌に三報も掲載されています。いずれも製薬会社の報告で一報目はベーリンガー・インゲルハイム、二報目はスミスクライン・ビーチャム、三報目はモンサントが報告しています。
一般に科学の世界では最初に論文として発表したグループが第一発見者と認められ、それ以降に同じ結果を出しても全て二番煎じと見なされ著名な雑誌に掲載されることはほとんどありません。同時期に全く独立したグループが同じ結果にたどり着く、というケースは実はよくあるのですが、そういった場合違う雑誌に掲載されるのが普通で、同じ雑誌に似たような結果が連続して三報も載るのは極めて異例です。それぞれの会社の圧力にNature編集部が押し切られたのか、同じ様な時期で甲乙つけ難かったのか、と邪推してしまいます。投稿日と受理日を比べて見ると一報目が5/9と7/25、二報目が5/20と7/25、三報目が5/20と7/29となっています。
ただ結果をよくよく見ると、それぞれ報告されている構造が微妙に異なっています。要するに結果の解釈にまだ議論の余地が残されているということでしょう。そういう意味では編集部としては判断を読者にゆだねるという形をとったのかもしれません。いずれにせよ論文のプレゼンテーションに各々の個性が出ており、非常に参考となる号ではありました。
もう一つ面白いのは一番実験に貢献し、かつ論文の主要部分を書いた人(論文のトップに名前が載っている人、いわゆるファーストオーサー)が全部の論文において中国系の人だということです。最近は理系の分野では中国、韓国系の科学者の台頭がめざましく、多数の論文にその名前が見られます。以前スタンフォード大学の在学生名簿を見たらKimさんParkさんが山ほどおりました。そのへん白色系のアメリカ人が脅威を感じているという話も聞きました(規制の動きもあったようです)。
Copyright (c) Jun Honda
Back to front page