大企業のベンチャー成功の条件
日経ビジネス2000/7/24号 より抜粋
富士通は9割のベンチャーが黒字化
問題点さえクリアできれば、大企業のベンチャーには独立系では望めない様々な利点がある。例えば早くから2つの問題点をクリアしていた富士通。94年にベンチャー支援制度を採用した同社では、当初から年齢に関係なく起業させ、かつ起業家側が51%以上の株式を取得できる制度を導入していた。それから6年間で11社のベンチャーが設立されたが、そのうち10社が2000年3月期までに黒字化している。来年には3〜4社が株式を公開する見込みだ。
富士通の社内ベンチャーの1つであるソフトウェア会社のアルファ・オメガソフト。設立から5年目の2000年3月期の売上高は5億2000万円で、純利益は1000万円に達している。
東京・港区にあるアルファ・オメガのオフィスの入り口に立つと、まず目に入ってくるのが、社名の上に冠された「FUJITSU」という大きなロゴ。名刺にも同じように2つの社名を併記してある。「当初は自社ブランドだけを使っていたが、実際にビジネスを始めてみると、世界的に通用するブラントのメリットを痛感した」と佐々木隆仁社長は理由を説明する。
大型コンピューターのソフト技術者だった佐々木社長は、高い技術力を武器に次々と海外の有力ソフトメーカーと提携。協力して世界初のソフトを商品化している。韓国のベンチヤーとは、コンピューターウイルスなどで破壊されたデータを複元するソフト「Final Data(ファイナルデーダ)」を共同開発。イスラエルのベンチャーともウソ発見ソフトの「Truster(トラスタ一)」を生み出し、どちらもヒットした。今期は海外進出も計画しており、売上高で20億円、純利益で2億円に急成長する見込みだ。
多くの独立系ベンチャーは知名度や信用力を高めるのに苦労する。だが、企業のブランドを利用すれば、他信頼も得やすく、提携戦略も円滑に進むというわけだ。