日本でいえば高倉健かなあ。ロバート・デ・ニーロはヒーローだった。彼とジョディ・フォスター、そしてマーティン・スコセッシ監督を一躍メジャーにのし上げた衝撃作。デニーロが少し背中を丸めてジャンバーのポケットに手をつっこんで歩くこの映画のポスター、見たことある人いるかも。今回はノスタルジックな映画「タクシードライバー」
タクシーのフロントガラス越しの夜の街。運転するデニーロの顔に映るネオンの色がゆるやかに流れ、サックスのけだるい音が重なる。印象的なファーストシーン。
人との出会いって不思議。何度タクシーに乗っても、いくら運転手と話しても、それはただの通りすがり。また会おうとは思わない。でもなんかこの人違う、と思った客…政治家の下で働くバリバリのキャリアウーマン。自分の周りにいる人達とは、感性も考え方もライフスタイルもまったく違う。そのくせ言ってることがマトをえている。不思議。どんな人なんだろう。二人は朝のカフェでおしゃべりして、お互いもっと知り合いたくなる。
ところがファーストデートはとんでもないことに。彼女はきれいなブロンドに似合う真紅のロングドレスでやってくる。ドレスアップした彼女を、彼はなんとポルノ映画に連れて行く。どっひゃ〜っ!何考えてんの、コイツ?でもでもでも、きっとなんか意図するとこがあるんだ。彼はフツーの男じゃない、私が惹かれた男性なんだから。と、気を取り直して彼女は同行する。
ところが彼はただデートをしてるだけで、つまり彼にとってはふつーのデートだった。それを知った彼女は激怒する。怒髪天を突くってやつ。あームカツク、ちょームカツク!なんで私がこんなとこにいるわけ?あんなヤツに何かを期待した私が馬鹿だった。あ〜っ、やってらんない〜っ!とっととその場を立ち去る。
これがデニーロには解らない。いや彼女がMAXに怒ってるのは解る。自分が地雷踏んじゃったのも解る。でもなんでそこまでに怒るわけ?機嫌を直せよ。帰っちゃうなんてガキじゃないんだからさあ。せっかくお互い時間作って楽しみにして、それで会ってるわけじゃん?君の気に入るようにやり直そうよ。
ここまで極端じゃないにしても、こーゆー気持ちのすれ違いはままあることで。このまま別れてしまうカップルもあれば、なんとか歩みよっていくカップルもある。この二人は前者だった。
ここで余計なことを書いちゃうと、男って下心があるけど、女にはない。少なくともファーストデートでは。ただデートを楽しみたいだけで、女の下心というのは相手の男性によって作られていく。わかってあげましょう、デニーロさん。(そーいや私、デートっつーの苦手。恋愛モードで会うのってめっちゃめんどくさい。そんなヤツがデートについてあーだこーだ言えないか。)
話が思いっきり横道にそれました。ごめんなさい。とにかくこの二人はそれっきり。デニーロのほうは関係を修復しようと努力したけど、彼女の腹はおさまらない。逃がした魚は大きい。この場合、どっちのことを言うんだろう。
ところで、デニーロはただのスケベじゃなかった。ジョディ・フォスター演じる幼い娼婦と出会い、彼女を救おうとする。下心なしで。(どうしてかな。痛ましくて見てられなかったのか。)こんなこともちろん誰も知らない。ねえ彼女、こんな人を振っちゃっていーの?
・・・え?タクシードライバーってこんな話だっけ?ううん、全然違う。ここまではほんのプロローグ。ここからが本編。デニーロは目覚める。こんな、ほんの小さな子供が、あっさり娼婦になってしまう世の中って一体なんなんだ!義憤。(これってもはや死語?)そして彼は…当時の若者は彼の行動にショックを受けた。今、どうなんだろう?茶髪にピアスのイマドキの若者の瞳に、彼はどう映るんだろう?彼は過去の人なのか、それとも今でもヒーローなのか?観てね。