映画横丁10丁目

「恋する惑星」

恋が終わってしまうってのは辛い。恋をして恋を失った方が一度も恋をしなかったよりマシだって誰かが言った。冷静に考えるとそうだけど、打ちのめされてるときは冗談じゃないって感じ…って書くと、え、失恋したの?なんて言われそう。じゃなくて、これはスクリーンの中のお話。香港映画ってアクションばっかじゃないと知った、ウォン・カーファイ監督の「恋する惑星」。失恋は不思議な恋の始まり、始まり。

ところで失恋したときの対応も人様々。金城武の場合、落ち込むのはダサイから平気のふりして、まいったよ、俺が失恋するなんて、ったく世の中どうなってんの?ってカッコつけてみる。でもやっぱぽかんと穴のあいた気分。とりあえず知ってる女のコ全部に電話する。中には日本人もいるなんてさすが。「久しぶり、どうしてる?え〜っ、結婚しちゃったの?」下手な鉄砲も数打ちゃ当たるはずが、ことごとくハズレ。そして物語は思いもよらない方向に。金髪の女、サングラス、雨、すれ違う時間、鳴り続けるベル、放り投げた言葉、交錯する空間、ストップモーションの色彩、これぞウォン・カーファイ監督の世界。

だけど、この話より好きなのがフェイ・ウォンの片想いの物語。失恋してめちゃ落ち込んでるお巡りさんを好きになってしまう、お総菜屋の女のコ。
お巡りさんの恋の痛手は大きい。なんたって一緒に暮らしてる彼女が出ていったので、へこむ、凹む。ひとりごとまで言ってるもんね。ヤバイよ、ほんと。石鹸に向かって、「お前もこの前まではまるまると太ってたのに、今はこんなにやつれちゃったなあ…」笑える〜!(他人事だから?)部屋にあるものすべてが彼女を想い起こさせる。もとカノはスッチー。香港の街すれすれに飛ぶ、手を伸ばせば届きそうな飛行機がますます悲しい。

こんな暗いヤツ、なんで好きになるかなあと思うけど、好きなものはしょうがない。フェイはなんとかお巡りさんを元気づけしようとする。それもとんでもない方法で!偶然もとカノから入手した部屋の鍵を使って、お巡りさんの部屋をお掃除お片づけ。犯罪だよ、それ〜!おまけに仕事中にやるか?店のオヤジさん怒ってるよ。「電気代払うのにいつまでかかってるんだあ。店はてんてこ舞いなんだぞー、早く帰ってこい〜っ!」「だって今すごい雨降ってきちゃって…帰れないんですぅ…」おいおい、それシャワーでしょ?おまけによそんちの。この臆病なくせに大胆なフェイが初々しくてかわいい。ベリーショートヘアとカジュアルファッションにも注目。

部屋がだんだん明るくなる。もとカノの物がいつのまにかフェイの趣味に変わってく。でもお巡りさんは上の空で、ち〜っとも気づかない。なわけないだろ、気づくよ、フツー。でも気づかない。そしてある日、この悪事がバレてしまう。ま、トーゼンですよね。気持ち悪〜っ!こんなストーカー、ぜったいヤ!ところが、お巡りさんの反応は…はあ?すっとぼけてるよなあ。そしてこれからこの二人は?えっえっ?ここにきて、そーくるかあぁぁぁ???

キャンバスに自由に絵筆を滑らせるように、想像力の翼は天高く飛ぶよ。恋は誰の恋も行方知らず、この先どうなってしまうのやら?あてのない恋心と途方もない夢を乗せて、いつまでもくるくる回る恋する惑星。


戻る

Last update: 2001/12/16