映画横丁2丁目

「ラン・ローラ・ラン」

 さて、前回はかなり古い映画の話だったので、新しいヤツいきましょう。とびきり生きのいいの。
 え〜、音楽にも文学にも流行りがあるように、もちろん映画にもありまして、ここ数年、単館系では、金城武の「恋する惑星」とかの香港映画から、ユアン・マクレガーの「トレインスポッティング」などイギリス映画ときて、去年は「ムトゥ、踊るマハラジャ」インド映画のロングラン。
 で、今年はというとドイツ映画!中でも極め付きは「ラン・ローラ・ラン」。原題はシンプルに「LOLA RENNT」。
 ここで文字の限界を感じてしまう。真っ赤っかな髪のローラが、古い石造りの街をタンクトップで息せき切って駆けていく絵が欲しい。それだけで強烈なインパクトがある。何、何、何事?何が起きた?
 ストーリーは単純。字幕無くてもわかるんじゃないかと思うくらい、画で見せてくれる。  ローラの彼氏マニから電話。「なんで来なかったんだよ。お前のバイクが無いせいで、ひでーことになったんだぜ。」マニはヤバイことに関わってて、なにやら怪しいお金を運ぶ役だったらしい。それを電車に置き忘れ、おまけにその場にはホームレスがいた。ネコババされたに決まってる。「あぁ、もうダメだ。あと20分で俺は殺される!」
 もう時間が無い。どうする?ローラ!大金なんか無い。頭の中をかけめぐる顔、顔、顔。誰に頼めばいい?パパだ!!真っ赤な受話器が宙に放られる。スローモーションで。  緊迫感を加熱させる、ジャーマンテクノの音楽。映像はアニメになっている。回り階段を駆け下りるローラ。母親は電話中。階段の途中には犬。駆け下りてドアを開ける。実写に戻る。そして古風な通りを駆け抜ける真っ赤な髪のローラ・・・
 とにかくアイデアに満ち溢れてる。
 例えば、タイトルクレジット。扉を開けるあのバタンの感じで、キャストの名前がスクリーンに張り付く。(言葉じゃうまく言えない。見るっきゃない。)
 走ってるとき、すれ違う人々。すれ違う人生。これは一つの選択。それぞれのその後の姿がアルバム風に、アップテンポで展開する。通りを横切る大きな硝子、割・れ・る!ほらほら、ついてこないと置いてくよ。
 銀行の渋い建物の中、スーツのパパは不倫の相手とシリアスモード。どうなってんの?なんかうまくいかない。どこかで歯車が狂ってしまい、悪い方へ悪い方へ縺れ込む。やだよ、こんなの。こんな風な終わりかたなんて・・・。なら、もう一度、リプレイ。こういうとこゲーム感覚。
 あぁ、こんな映画を作っちまって、この先どうするんだろう、この監督は・・・?と心配になるくらいの傑作。遊び心いっぱい、それでいてシンプルでわかりやすい、共感できる、面白い。
 ハッピーエンドは待ってちゃくれない。走って、追っかけて、強い意志で掴み取ろう!キミも映画館に走れ!元気になるよ!!戻る


Last update: 2000/10/23