悲しい恋物語から始めよう。なんたって水無月亜夜のフリーペーパーなのだから・・・。
という訳で「ビッグ」。今じゃトム・ハンクス主演の映画というより、日本のミュージカルの方が知られているのかも?(だけど、ミュージカルというのは音楽やダンスを楽しむものだから、「ビッグ」のような悲恋の物語をミュージカルなんかにしちゃダメだ!と思うのはSueだけ?ううん、ミュージカルが悪いとは言ってない。ミュージカルの「ビッグ」はそれはそれでとても面白い。ミュージカルファンにはぜひオススメ。)
さて、主人公はジョシュ。小学校の高学年くらい。あるカーニバルの日、砂浜にぽつんと忘れられた魔法のボックスに尋ねられる。「一つだけ望みが叶うなら、何を望むか?」若くなりたいと答えたキミはもう若くない。ジョシュは迷わず答える。「大人になりたい。」
そうだよ、大人になれば、早く寝なさい、ピーマンを残すんじゃありません、部屋を片づけなさい、文句言うんじゃありません、と叱られることもない。お金だって持ってるからゲームもやり放題、コーラもポテトもいっぱい買える。で、彼は大人になってしまう。(映画だから簡単。いいなぁ!夢が叶って・・・)
望み通り、こわいもん無しの大人の生活?めいっぱい満喫して、もういいや子供に戻ろ、と思ったが戻れない。あ〜、こういう事ってあるよね?こんなはずじゃなかった、ってやつ。
大人っていいことばっかじゃないみたい、働かなくちゃいけないし、だいたい一緒に遊ぶのにノリが悪い。それに家族にも会えない。ママは心配してるだろうな。そして何よりも、自分は周りの人と違うというひとりぼっちの感じを、誰にもわかってもらえないのが辛い。
昔の友達ビリーに会いに行く。初めは怖がって全然信じなかったけど、二人しか知らない話をしてやっと信じてもらう。やっぱ持つべきものはマブダチだ。うれしくてソフトクリームをべろべろ食べるジョシュにビリーは言う。「きったね〜!大人のくせに。」
トム・ハンクスがうまい。さすが未来のフォレスト・ガンプ。おもちゃ屋ででかいキーボードを踏んづけて弾く。楽しくてたまらないって感じで。それをおもちゃ会社の社長に見初められ、入社。そこでスーザンと出逢う。
お待たせしました。やっとラブストーリーになってきた。スーザンは子供のような心を持った(当然でしょう、子供なんだから…)ジョシュに心を寄せる。あるとき、ジョシュの部屋を訪れる。
まるで子供部屋のように、おもちゃだらけ。こんな変な部屋に住んでるなんて、よっぽど変わり者なのね、と普通は思うが、スーザンは違う。なんて素敵な人だろう、今までこんな人に会ったことがない。勇気を出して言ってみる。「帰りたくないの。」「いいよ。2段ベッドがあるんだ。僕は上だから、君は下でいい?」え?え?こんな展開アリ?袖にされたってこと?と大人のスーザンは思う。でも同時に、やっぱりこの人は違う!とますます惹かれていく。恋って不思議。
しかし、当然のことのように、別れの日はやって来る。ジョシュが子供に帰れる、ジョシュにとってはうれしい日。スーザンのことは好きでも、結局、自分は小学生。相手になれるわけがない。
最初のシーンと同じ砂浜。魔法は解け、すべてを知ったスーザンの前に、ほんの子供のジョシュがいる。
どうすればいいんだろう?こんなとき。何て言えばいい?
タブーの恋なら二人で試練を受け入れよう。不倫なら離婚すればいい。トシの差があろうが同性だろうが、愛さえあれば乗り越えられる。
そして、嫌われたなら、死んじゃったなら、諦めもつく。思い出に生きよう。
でも。。。こんな場合はどうすればいい?彼は存在しないのだ。
不条理を飲み込んでスーザンは去る。車に乗って・・・。子供に戻ったジョシュは砂浜に佇んでいる。
世の中に悲恋はいろいろあっても、こんな悲しいラブストーリーに会ったことがない。どうしようもない、切ない恋のお話でした。戻る