第三章 タレって誰のたーめ

    閑話休題ー日本だけでなく韓国でも、飲食店の社会的地位は、かなり低く「暖簾」を守るという
         意識もかなり低い。このため、例えばおいしいと評判がたち繁盛すると、主人は調理
         場を離れたり、仕事を代えてしまう。調理人なら条件次第で店をどんどん変えていき
         ます。また、自己中心的な味付けをする傾向があり、いつも同じ味というわけにはい
         きません。

 第一節 タレの分類

     モミタレー肉用としては、醤油を基本として砂糖・胡麻油・胡椒を混ぜ合わせ、味の基本ベー
          スを作ります。関東と関西では、大雑把に言って濃口醤油と薄口醤油というように
          基礎原料が違います。さらに、果物を入れとろみ的な感覚を関西は出してます。
          内臓用としては、味噌味が基本となります。味噌については、それこそ各地いろい
          ろあります。名古屋は当然、赤味噌の八丁味噌であったりします。

     ツケタレー 本場韓国では、普通これはありません。サンチュやケンニプ(エゴマの葉)等の葉
          物に包んで食べるか、葉にご飯やナムルをはさみ肉と一緒に食べます。
           なぜ、日本独特のツケタレができたのかは、諸説あります。韓国風の混ぜ合わせて
          食べるという習慣が日本では定着していかなかったため。熱い肉を冷ますため。モ
          ミタレに漬け込んだ肉が黒く古い肉と見なされたのを嫌ったから。味を混ぜ合わす
          のではなく、いろんな味を一つ一つ楽しむため。決定打はありません。
           ツケタレは、関東と関西では結構違いがあります。関西は、牛肉文化圏のため和牛
          を如何に美味しく食べるかということに一日の長があり、出汁のきいたサッパリ味の
          物が好まれます。関東は、豚肉文化圏のため、シッカリ肉を焼いたり、甘みを強調し
          た濃い口の物が好まれます。
           焼肉店の売れ筋のベストスリーにはいるタン塩用に提供されるレモンタレもありま
          す。たしか、これを最初にやったのは、叙々苑だったと思います。   

 第二節 焼き肉のタレ(家庭用)

     焼き肉のタレが急速に成長したのは、昭和42年エバラ食品工業が「肉を焼いて食べる新しい
    肉の食べ方」の徹底的なPRを行ったことに起因する。商品販売政策としては、肉を売るための
    商品という位置付けをして、都内の肉屋を中心に試食販売をして浸透をはかっていった。当時は
    関東マーケットを意識した醤油味(甘い)で行き、だんだんと「とろみ」を重視したフルーツベ
    ースの新製品を投入し牛肉文化圏の関西でも受け入れられ、これが関東でも売れ出し、焼き肉=
    牛肉が定着していった。これが昭和53年。
     そして、昭和54年モランボンが「生パック」のタレを発売する。製品コンセプトは「朝鮮料
    理の本物の味をそのまま家庭へ」ということであった。それまでの焼肉のタレは、主にツケタレ
    としていたのに、モミタレであることを強調していた。
     エバラ食品は、対抗上日本の味としての焼肉のタレを打ち出した。「和風味」や「おろし焼肉
    のタレ」を開発するとともに、CMでも「日本のお母さん」というキャッチフレーズで売った。
     現在、エバラ・モランボン共々この分野では、大メーカーであり、家庭料理の中に「焼肉」を
    定着させることに努力してきている。これは前章でも触れたが、牛肉自由化で輸入牛肉が安価に
    買えることができたこと、国産牛がこれに連動して値段が下がり、バブル崩壊で黒毛和牛の価格
    も下がってきていることも要因でしょう。  

第三節 タレの科学的特性

     モミタレは、肉に味を付けてなじませ、日本人が好む味にするのが目的である。そのため、肉
    が持つイノシン酸に醤油の持つグルタミン酸が、強いうま味を醸し出してくれる。これに熱を加
    えた時に香りの良いメラノイジンを発生させ、食欲を増進させる目的もある。メラノイジンは、
    肉に糖分を加えて焼いたときに香ばしい香りと、褐色のこんがりした焼き色を発生させ、食欲を
    そそる物質です。
     内臓肉用の味噌タレは、タンパク質を多く含み、特有の風味を持っている。クセのある材料に
    使うと効果を発揮するのは、タンパク質が匂いを強く吸着する性質があるからです。また、味噌
    は、甘みや辛みを加えると、クセのある味を隠す力が、倍加する特性があります。
     ツケタレは、焼いた肉の味を引き立てることが目的のため、モミタレの塩分を和らげること、
    焼いてから出る肉の臭みをを消すこと、食欲を刺激する風味付けをすることが役割となる。塩分
    を和らげるのは、酸味を加えるのが良い。そして、肉の臭みを取るのにはリモネンを加えるのが
    効果的になる。リモネンは、食欲増進に効果の高い香り成分であり、レモンをはじめ柑橘系に多
    く含まれています。