福岡ブロック政策提言:自治体の反応
挽地康彦(移住労働者と共に生きるネットワーク・九州 事務局)
去る2004年11月30日と12月1日、ネットワーク九州福岡ブロックは、福岡県、福岡市、北九州市に政策提言を行いました。提言文書を提出した際、各自治体の担当者と簡単に意見を交わし、最後に文書による回答を要請しました。2005年2月の時点で、文書回答があったのは昨年と変わらず福岡市のみです。しかしながら、政策提言時の各自治体の反応は昨年に比べて充実していました。おそらく前回の経験が活きたのでしょう。紙幅の制約から、意見交換と文書回答(福岡市)の内容を詳しく紹介できませんが、以下にそれらを提出順に要約します。
北九州市(国際交流課)は、今回の提言の中で最も手応えを感じた自治体でした。当市は、2004年に外国籍市民懇話会を発足させ(年3回開催)、外国籍市民の実態調査(5言語でアンケート)も同年に実施しています。教育分野では、通訳ボランティアの派遣事業を新たに制度化(保険あり、交通費なし)するなど、多文化共生を「地域のなかの問題」と捉えて取り組む姿勢をみせていました。
福岡県(国際交流課)は、2003年に審議会の中に「在住外国人部会」を設置しています(年2回開催)。そこで外国籍住民の「代表」から要望を聞き、県庁各部局、市町村連絡会議と情報を交換しているとのことでした。しかし他方で、外国籍住民の実態をきちんと把握するつもりなのか疑問に感じる一幕もありました。特徴的だったのは、自動車免許の多言語試験についての提言に対して、問い合わせがないことを「ニーズがない」として理解していたことです。こうした一方通行の実態把握は、行政の施策に往々にしてみられる「つまずきの石」です。この問題については、今後あらためて要請する予定です。
福岡市(国際企画課)の反応はいまひとつでした。具体的な対応は、文書回答のみで行う予定にしていたのか、歯切れが悪かった印象をもっています。基本的に(財)福岡国際交流協会に依存する傾向が見受けられ、外国籍住民の生の声を聞くためにアンテナを張っている様子はなく、先日届いた文書回答の中身もそうした態度が反映されていました。政策提言の趣旨は、現行の行政サービスが不十分か、若しくはうまく機能していないから、外国籍住民のニーズに対応するよう求めているのですが、福岡市の回答は現行のサービスを強調するという堂々巡りとなっている。
たとえば、「多文化共生推進条例」の制定については、福岡市が策定する「計画」が謳うスローガンを繰り返し、「条例」の策定は今後研究すると述べている。「保健・医療・福祉」では、国の立場に右にならいで市独自の政策を打ち出す姿勢は示されていない。「教育」についても、「語学ボランティア」や日本語指導員の派遣事業を実施している旨を主張ばかりで、現行の施策を見直す視点はない。DV被害防止など「その他」の提言に関しても同様で、政策提言で求めている内容に真摯に応答しているとは思えなかった。
日教組全国教研「国際連帯の教育」分科会に参加して
福岡市立東吉塚小学校 早瀬孝子
昨年、5月の総会のときのコムスタカの中島氏の報告を元に、職場で学習会をもちました。その実践報告を、日教組の教育研究集会で報告したものです。昨年の夏、校内での研修資料を元にしたレポートをまとめ、1月初め、札幌で開催された全国教研に望んだ。
隣の校区で中国人留学生による一家4人殺害事件が起きたこともあり、昨年夏の校内研修は、@「在日外国人の犯罪が、報道されているように、本当に増加しているのか」A「在日外国人と共生していく取り組みの身近な例」について資料を準備していった。@の資料は、2004年5月、わたしが事務局に入っている「移住労働者を支援する九州ネットワーク総会」で中島真一郎氏が報告されたものを元にしている。氏の所属するNGOは、コムスタカー外国人と共に生きる会(熊本市)である。
全国教研で、新渡日の子供に関するレポートは、@「外国籍の子との、よりよいかかわりを求めて」という題で、モンゴルから来た子とクラスの子どもたちの関わりを報告した石川の小学校の先生の取り組み。A「ジューンが学び、ジューンに学ぶ」という題で,、4年生でフィリピンから来た新渡日の子の2年間の成長と、学力を巡る今後の進路の不安を報告した大分の先生など、多岐に渡っていた。中でも注目を集めたのは、B「ハティジェとメルジャンの高校生活を奪わないで」という題で、定時制高校で担任したクルド人難民家族の支援活動を報告した埼玉の先生の報告だった。2004年夏、国連大学前で難民認定を求めて、72日間座り込みを続けたクルド人2家族については、マスコミでもたびたび報道されていたが、題にもなった二人の姉妹を担任された、東先生の報告は、持ち時間の10分ではとても語りきれるものでは無かった。
「トルコに強制送還されれば、反体制分子として、どんな迫害が及ぶかわからない」…校長の嫌がらせを受けながら、「教え子とその家族を何とか守りたい。」と署名活動などに取り組む<現在進行形>の報告だった。「教え子を戦場に送るな」の言葉と重ね合わせ、国家権力の非情な政策から目の前の教え子を何とか守ろうとする教育労働者としての良心をそこに見た。
この報告レポートをまとめていた1月18日、このクルド人のうち成人男性二人がトルコ航空機で強制送還されたニュースが流れた。泣き崩れる家族の傍らで、二日間をともにしたあの東先生が「6万人の署名では、だめですか?100万人あればいいのですか?」と肩をおとされていた。
二日目の分科会を終えて外に出ると吹雪だった。会場前の歩道に右翼対策のための警備の若い機動隊員(宮城県警)が立っていた。自衛隊に入り、イージス艦に乗っている教え子の事がふと思い起こされ、「寒い中ごくろうさま。」と信号を待つ間、立ち話をしてしまった。ちなみに、教え子の今年の年賀状は、インド洋沖に出航している間に生まれ、生後3ヶ月で初めて対面できた娘の写真であった。
全国ネットワークからの報告とお知らせ
全国ネット運営委員 岩本光弘
1月10日名古屋で開かれた運営会議では前回からの日程が短かったこともあり、昨年の末に行われた省庁交渉の内容について突っ込んだ論議が行われました。特に各省庁に対しての申し入れに対しての省庁の対応について報告が詳しく行われました。
今回の論議で出された問題点は、九州ネットから提議した全国と地方が申し入れている内容についての整理が必要なことがあります。例えば、移住労働者の年金加入問題については、加盟している労働組合は申し入れているが、全国ネットの申し入れでは岩本の判断では論点が弱い面があります。今後もこのよう課題については全国ネットと調整していこうと思います。3月5日には京都で次の運営会議が開催されました。
この会議では、前期の活動報告、次期の活動方針、会計報告と予算など多くの議題があり、最初から時間延長を予定して会議を行いました。全国ネットの活動は年々広がっているために資金が足りません。また、専従の職員を抱えないと事務局態勢が維持できないほどの業務内容になっていません。しかし、資金不足で賃金を十分に支払えない状況になっています。この事態を乗り切るためには、会員数の増加が絶対必要です。会員になっていない個人・団体に加盟をお願いしたいと思います。
全国ワークショップが京都で開催されます。
昨年5月に福山市で全国フォーラムが開催されましたが、今年は全国ワークショップが開催されます。前々回まで「活動者会議」として開催していましたが、前回から名称を変えました。全国フォーラムでは十分に話し合えないこともあるので、お互いに突っ込んで話し合おうということで開催されています。
今回は京都で開催することになりました。会場は京都駅から歩いて15分程度の所にある東本願寺の施設で、東本願寺の裏にある「大谷婦人会館」です。
全員が宿泊できますし、通りから一寸入った所にある割には閑静な雰囲気のある施設です。今回はここを安くお借りできましたので、一泊2食で一万円の会費です。 関西の地元実行委員会が準備を進めていますので、多くの方の参加を待っています。
来年の全国フォーラムについて
2年毎に開催している全国フォーラムについて、1月の運営会議で話し合いました。次回は神奈川での開催を予定していたのですが、同じ時期に別の大きな大会が神奈川で行われることになり、その兼ね合いから別の地域での開催を考えることになり協議をしました。
今回は関東より北の地域のどこかで出来ないだろうかということから、北海道という案が出され、この案を北海道の運営委員が地元に持って帰り検討することになりましたが、北海道で引き受けるという返答が3月にありました。しかし、準備の関係がありますので正式な決定はもう少し先になるかもしれません。