報告
韓国「多文化共生と地域社会」の国際セミナー
中島 真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)


 2007年7月24日、韓国の忠清南道 天安市ペクソク大学国際会議室にて、忠清南道女性政策開発院と同女性フォーラム主催の、「多文化社会の到来と地域社会の対応」をテーマとする国際セミナーが開催されました。
 韓国忠清南道と熊本県が姉妹提携関係のため、県関係者からの依頼で、「日本の多文化共生のための地域社会の支援事例」の報告者として参加しました。
 セミナー開催の趣旨は、「最近、新しい移住人口の流入により、多文化化している韓国、アメリカ、日本、オーストリラリアの経験と事例を共有し、ジェンダーの視点から多文化共生のための地域社会の課題を見出す」というものでした。
 当日は、地域の女性団体の人々や忠南広域行政体の女性政策関係者、大学の研究者、NGO関係者など約200名が参加しました。
 午前中は、開会行事、主催者挨拶、基調報告のあと、第一部「多文化社会の現況と地域社会の課題」をテーマに、日本、オーストラリア、韓国の報告と総合討論がなされました。
 昼食後の午後は、第二部「多文化共生のため地域社会の実践と支援政策事例」をテーマに、日本とアメリカと韓国の報告と総合討論が行われました。

 この国際セミナーは、建国以来移民政策を採るアメリカ、白豪主義から多文化主義に転換したオーストラリア、「単一民族」意識の強い日本の「先進事例」から、急速に多文化社会へ転換する韓国の進むべきあり方を学びながら模索しようという内容でした。
 韓国は、セミナーの主催が行政のシンクタンク、発表者が学者や研究者、アメリカの発表者は、移民局の政策担当者、オーストラリアは、多文化政策の地方政府統轄行政官でしたが、日本の発表者が二人とも、NGOのメンバーであることに、各国の状況が反映しているように思えました。
 韓国では、2006年には国際結婚が結婚全体の13%に達し、農村部の基礎自治体では40%から50%に達しているところあります。ベトナム・カンボジア、モンゴルなどからの「結婚移民」と呼ばれる移住女性が地方、特に農村地域で急増しています。
 そこで、政府は2007年5月に外国籍住民処遇改善法を制定し、地方自治体に外国籍家庭支援センターの創設を義務付けました。自治体の取り組みは、昨年から始まっています。移住女性を、韓国の地域社会の構成員として認め、その問題を行政として正面から取り組もうとしている韓国の姿勢に学ばされました。



報告
移住労働者と連帯する全国ネットワーク
第6回全国ワークショップ
岩本 光弘


 6月9日、10日に東京との昭和女子大学において、移住労働者と連帯する全国ネットワーク・第6回全国ワークショップが開催されました。
 昨年春から関係省庁において検討されてきた外国人対策の議論は、’06年12月25日に「関係省庁連絡会議『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」として発表されました。日本経団連も07年3月20日に「外国人材受入問題に関する第二次提言」を発表しました。これらの提言はまだ最終的なものではなく、変更もありそうですが、基本的な方向がすでに示されています。
 内容を見ると、日本に在住する外国人や、これから来日する外国人に大きな影響をもたらすものであることが分かります。
 移住連運営会議では、この政策が日本に居住する外国人住民の将来に大きく影響する重要な問題であることから、今年のワークショップではテーマをこの問題だけに絞ってフリー討論をすることを決定しました。
 事務局は、従来の各分野での分科会を実施しないことから、今回の参加者は100人以内と考えて準備していました。しかし、各地から予想以上の申し込みがあり、結局150名以上が参加者しました。7つの分科会でフリー討論をし、岩本が担当した第2分科会には九州ネットのメンバーが3人入り、全体会での報告は、東京へ移ったばかりの挽地さんが、報告の準備は生駒さんが務めてくれました。
 分科会の準備段階では、次の3点を申し合わせていました。
  @ 内容は事務局が準備したものに沿ってフリーにする
  A 結論は出さないでよい
  B 参加者の意見をたくさん聞く
 各分科会とも、フリー討論がしやすいよう、参加者を20名程度にしていました。分科会は、どのような討論をするのか説明した後、討論しましたが、内容は、移住連運営会議が考えていた方向とは少しずれました。その原因は、討論の基礎となる、関係省庁、日本経団連が出している提言などの資料の内容を理解していない参加者がいたことでした。
そこでまず、教育問題から討論しました。
 奈良県の教諭が参加していたので、もし、外国籍の子どもたちが大量に学校に入ってきたら、教育現場でどのようなことが起こりうるかたずねました。すると、現状でも難しい問題を抱えているのに、これ以上外国籍の子どもたちが学校に入ってくると、学校は大混乱するだろうとの答えでした。また、フィリピン人女性からは、子どもの学校で自分たちが受けた差別、それに対する家族の取り組みが具体的に報告されました。
 在留許可の延長については、日本語能力の有無も判断基準にすると提言されています。このことについて、自分は日系人なので関係ないと思っているとの発言がありました。そこで、日系人も全員対象になることを説明すると、勉強する時間がないので日本語は上達しないし、まず、誰が教えてくれるのか、政府は何をしてくれるのかという意見が出ました。
 名古屋の保見団地から、県営住宅では、空室があるのに入居制限が行われているという報告がありました。これに対し、誰が、何の目的で制限しているのか調べてみたのかという質問があり、まだ調べていないので、今から調査するということになりました。
 外国人住民が集中した地域では、同様のこと起こりえるので、参加者の関心が高かったようです。さらに、困って苦しい時、教会に行ったことで心が休まり、同じ国からきた人たちから励まされ助けられたという報告もありました。
 最後に、外国籍の参加者から、支援を続けてくれるNGOに感謝しているが、これからは自分たちが自立して助け合わなければいけないと思うという発言がありました。この分科会のまとめは、Mネット誌に掲載されますので、ご一読ください。




九州ネットの活動について
岩本光弘

 九州ネットにいつもご理解いただき有難うございます。結成9年目を迎え、私たちの活動も結成当時とは様変わりし、会員もかなり入れ替わりましたが、移住労働者とその家族を支援するという目的は変わっていません。
 毎年の総会では、前年度の活動の反省と当年度の活動方針を決め、会計についても、決算と予算を明らかにし、確認をしてきました。NGOの機関紙では、活動報告や決算内容を掲載するのが通常です。ところが、九州ネットは、総会を欠席した会員に資料を送付していたことと、機関紙は、毎号他の報告事項が多く、紙面に余裕がなかったため、これまでは掲載しませんでした。しかし、今年度は会員でない方たちにも、広く私たちの日常活動を知っていただくために、総会資料と会計報告を掲載しました。お読みいただくと分かることと思いますが、改めて、活動を説明させていただきます。
 九州ネットは結成から9年間、会員に出来る範囲で精一杯の活動を行ってきました。毎年春に総会を開催し、前後1年の反省と方針の確認をしてきました。総会に合わせて講演会などのイベントも開催してきました。
 今年は昨年に続き、「第2回かたらんね、しゃべらんね」という外国籍住民の話を聞く会を開催しました。外国籍参加者から、1年に2回くらいは開催して欲しいという要望がありましたが、九州ネット事務局スタッフの人数や通常の活動の状況から、残念ながら今は要望に応えられる状態ではありません。
 総会以外では、例年12月に学習会を開催してきました。昨年は開催出来ませんでしたが、今年は、活動方針にも入れ、実施予定です。
 このように、九州ネットとしての独自の活動がたくさんあり、是非、多くの方に参加していただきたいと願っています。参加ご希望の方は、まずは事務局会議に参加されると良いと思います。その際、事前に事務局までご連絡ください。一緒に活動ができるなら、どなたでも歓迎します。
 次に財政状況ですが、本当に少ない予算で活動をしています。会員たちの手弁当で続けていると言っても過言ではありません。このような財政状態は活動がスタートした時から変わっていません。これまで、少ない予算をいかに効率良く使うかに工夫しながら活動を続けてきました。
 事務局の設置や会議の開催に、美野島司牧センターの全面的な協力を得、会場の無料提供を受けていることが、これまで財政を維持できた要因の一つです。
 しかし、会議の開催はできても、イベントの開催などには経費がかかります。過去には東京から講師を招いての学習会も開催しましたが、講師には、安い謝礼でご協力いただきました。私たちの活動を知ってもらい、参加者の輪を広げるには、イベントの開催も必要ですが、現在の財政状況では困難です。
 九州ネットの存続のために、一番に求められるのは財政基盤の確立です。過去には、補助金を受け、外国人の実態調査もしましたが、補助金事業を実施するにはかなりのスタッフが必要です。会員減少も活動の難しい状態を招いていると言えます。
 取り組みが遅れているのは、組織の拡大です。九州にはまだ空白地域があり、その地域への働きかけがなかなか出来ていません。旅費などの必要経費が不足していることも事実です。会員を増やすための活動は、会費とカンパで運営している組織にとって、大切な取り組みです。会員が増えることによって、仲間の輪を拡大することができます。
 以上のことから、九州ネットに参加していただける方を募集しています。積極的に活動できない方は、賛助会員として協力いただければ助かります。多数の方の参加をお待ちします。もちろん活動のためのカンパへのご協力もお待ちします。
 来年は九州ネットも結成10周年を迎えます。会員が増え、財政面でも余裕を持った状態で10周年を迎えたいと願っていますので、皆さんのご理解とご協力をお願いする次第です。