報告/分科会「在留資格」
安倍 妙子


 参加者は約15名、国籍は、ペルー、韓国、中国、イギリス、ナイジェリア、日本でした。女性記者が1人参加していて、熱心に記録していました。韓国人のAさん夫妻は、更新期間を過ぎてビザの更新を行おうとした際の、入国管理局の対応、中の様子について話してくれました。妻のビザ更新のためAさん夫妻が入管に行くと、通常は1階の事務所で手続きするはずが、この日は2階の窓口に通されました。入管の1階は、どこにでもある区役所といった様子ですが、2階は全く違い、まるで警察の取り調べ室のようで、観葉植物も調度品も何もない冷たい雰囲気の廊下、窓がない壁面という閑散とした風景だったそうです。二人は、「同じ建物の中でこんなに雰囲気の違う場所に行ったのは初めてでした」と、その時感じた恐怖を打ち明けてくれました。Aさん夫妻の場合、夫が公立大学の講師のためか、滞在に不法性はないと判断されたようで、難を逃れる事が出来ましたが、まかり間違えば収容所行きになっていたかもしれないという、笑えない内容の話でした。
 外国籍住民にとってビザの更新は、私たち日本人が運転免許証を更新するのとは全く違う、とても緊張する手続きのようです。
 ナイジェリア人のBさんは、日本人女性と結婚をしようと、彼女の父親と会ったため、不法滞在を通報され、旅券不携帯を理由に、婚姻届けを出す前に、不法滞在者として退去強制令を言い渡されました。高裁判決で逆転勝訴判決が言い渡されるまでの、辛く苦しかった過程をしみじみと話してくれました。
 中国人Eさんが、シングルマザーの友人が数度永住権申請をしたが、その都度却下されたのはどうしてかと問うと、永住権の申請には一定の納税が必要であり、インドシナ難民や中国残留孤児などの手続きの場合とは異なるとういう説明がありました。
 話は、国際結婚の苦労話から個々の家庭の話にも及び、『国際結婚は、在留資格の更新ごとに日本人の配偶者の協力が必要で、そのためには常に夫婦円満でなければならないんだね』という発言に笑いが起き、最近結婚したばかりのイギリス人Cさんの妻日本人Dさんは「もう一度教えて」と、笑顔でメモをしていました。時間はかなりオーバーしましたが、外国籍の住民と共に暮らしていく日本社会にはこれからもこういう場面は必要であり、とても有意義な時間を経験できました。



報告/「教育・家庭・生活」分科会
早瀬 孝子


 参加者は、フィリピン人7人、ボリビア生まれの日系人1人、日本人8人、合計16人でした。昨年も参加したという人も多く、今年も、日ごろ暮らしの中で感じている疑問や想いについて、活発に意見交換できました。

 @外国人にやさしい日本人のタイプ
   近所でも、仕事先でも、外国人に理解を示すのは海外経験者。異文化経験が、理解しあって共に生活する姿勢につながるようだ。
 Aこどものしつけや日本の教育で思うこと
   わが子が悪いことをしたときは、たたいて教えることも必要なのに、回りから「虐待」と言われる。では、日本人は親子間がより密接かと思えば、そうでもなく、親に、「人からいじめられている」ことを伝えられずに自殺してしまう子どももいる。子どもの遊び場が少なく、公園でボール遊びも禁止されている。子どもをめぐる教育の問題は、日本で生まれ育った者でも、対処に悩むことの多い昨今です。こういう場で、上記のような意見に対して、参加者ひとりひとりが自分の考えを出し合うえるところが、この分科会の良さだと思います。
 B日本人はトイレも一緒!?
  今回の集会を新聞で知って参加してくれた、ボリビア生まれの帰国子女の女性の話。「中学3年で帰国したが、トイレもグループで連れだって行くのに驚いた。言葉はもちろん、同級生たちの心を読み取るのが難しかった」思春期に帰国した苦労がうかがえる話でした。

 昨年に続いて、司会を務めたが、今回も子育て奮闘中のお母さん方のパワーがすばらしいと思いました。「当初は、姑に味噌汁の味が薄いなどと言われたが、今では、息子である日本人の夫よりも、私に相談してくれる」などの言葉に、日本にしっかりと根を張り生活している自信を感じました。
 熊本からの参加者が多く、「来年は熊本でやりたいね」などと言いながら分科会を終えました。その後、日本人同士で、「こういう会にも出られず、一人で悩んでいる外国人を探し、支援する活動も地道にやっていかねば」と、語り合いました。
 私は、福岡市の小学校に勤めており、今のクラスには、ニューカマーの母親が2人います。クラスの子どもたちが興味を持つように、母親たちの母国である、韓国と中国の本などを教室に持ち込み、子どもたちには「お友達ふたりは、ハーフではなくダブルだよ」と話しています。両親それぞれの国、民族のよさを学び、クラスみんなで共感できる「多文化共生」の実践をこれからも取り組みたいと改めて考えた一日でした。