移住労働者と共に生きるネットワーク九州と
福岡入管との第9回意見交換会報告


中島真一郎 コムスタカー外国人と共に生きる会


一、  はじめに

 移住労働者と共に生きるネットワーク九州と福岡入管との第9回意見交換会は、2007年2月5日(月)午前1時30分から午後3時半頃まで、福岡入管3階会議室で行われました。

 前回の第8回の意見交換会から3年ぶりに復活した実務担当者3名(入国在留審査部門、警備部門、審判部門の統括審査官)が今回も出席し、総務課の渉外調整官1名の計4名が出席しました。また、移住労働者と共に生きるネットワーク九州から10名が参加しました。
 最初に出席メンバーの自己紹介を双方行い、2006年12月6日にネットワーク九州が事前に福岡入管に文書で提出していた質問に対する回答の説明が約30分ありました。(前回から質問への回答部分についてのみ録音が認められ、今回も録音しました)。
 その後、福岡入管からの回答に対して、2006年入管法改定に伴う、テロ対策と個人識別情報提供の義務化問題、犯罪防止と定住者告示の改定による「素行の善良化」(出身国の無犯罪証明書等の提出)問題、人身売買防止対策と「興行」の在留資格の制限問題、在留特別許可のガイドライン公表問題など約1時間あまり質疑を行いました。そして、最後に、ネットワーク九州から福岡入管への要請書を読み上げて終了しました。

二、入管行政への質問項目と回答
(注):数値は、福岡入管内の数値で、2005年は確定値、2006年は概数。

T 2004年5月に国会で成立した改定入管法の運用状況について

1.改定により新設された出国命令制度により、出国した外国人は、何人いますか
回答2005年:68人、2006年:68人 (引継ぎベース)全員出国ずみ

2.在留資格の取消制度が新設されましたが、在留資格取消がなされた外国人は何人いますか
回答 2005年:1名、2006年:1名   内容:偽装結婚

3.新しい難民認定制度の施行以降、新たな難民認定申請件数、及び難民認定件数は、何件ありましたか
回答 2005年、福岡入国管理局管内においては難民認定申請はありません。2006年は、集計中


U 2006年5月に国会で成立した改定入管法の運用状況について

1.上陸審査時における外国人の指紋など個人識別情報の提供は、いつから施行されますか。又、そこで収集された個人識別情報は、どのぐらいの期間保管されますか
回答要旨 平成18年5月24日公布で、公布の日から1年6ヶ月を超えない範囲において政令で定める日に施行される。なお、保管期間は、出入国管理行政に必要な期間保管されるが、具体的な保管期間は回答をさし控えさせていただく。個人識別情報についても行政機関個人情報保護法第3条2項の規定(個人情報保有制限)が適用される。

2.外国人テロリスト等(「公衆等脅迫目的の犯罪行為」その「予備行為」もしくは「その実行を容易にする行為」を行う恐れがあると認めるに足りる相当の理由ある者として法務大臣が認定する者又は国連安全保障理事会などの国際約束により本邦への入国を防止すべきものとされている者)を退去強制の対象とすることとなりました。この規定による該当者は、2006年6月13日以降、何人いましたか。また該当する者であるという判断はどのような手続きでおこなわれますか
回答要旨 テロリストの認定手続きについては、高度な専門知識を持つ行政機関関係者(警察庁・公安調査庁・外務省・海上保安庁)による関係省庁連絡会議で、慎重かつ的確に認定手続き実施することにしています。また、国連安全保障理事会の決議等国際約束によりが本邦への入国を防止すべきものとされている者については、国連安全保障理事会の決議等に基づき具体的な措置が取り決められる。また、この規定の該当者数については、テロリストを利する恐れがあるので、回答は差し控える。

3.退去強制について、本国送還の原則が緩和され、本国以外の受入国にも退去強制ができるようになりましたが、本国以外の受入国に退去強制がおこなえるためには、本人の意思、受入国の同意以外に何か他の要件がありますか
回答 被退去強制者に自主出国する意思があり、経費負担能力が認められる場合で、当該外国人が本国以外の国を送還先として自主出国を申請し、かつ申請する送還先である国が査証を発行するなど当該外国人を受け入れることが確実である場合であれば、送還先の変更が不相当であると認められる特段の事情がなければ、これを認めることになります。

コメント
 2006年の改定入管法の最大の目的が、個人識別情報の提供の義務化です。施行は、2007年11月とマスコミでは報道されています。
 参加者からの質疑でも、この問題について集中的な批判と疑問が出されました。1999年に指紋押捺制度をすべての外国人を対象に廃止したのに、入国者を対象に指紋などの個人識別情報の提供を義務化するのは、入国する外国人を「テロリストあるいはその予備軍」とみなすもので、その差別と人権侵害にあたります。
 質疑の中で、提供を拒否した場合には、日本に「入国できない」こと、1回だけでなく入国のたびに個人識別情報を提供しなければならないこと、識別機械の性能や安定性が確立できておらず、誤作動の危険性があること、また施行されると多数の外国人が対象となり、入管にとっても膨大な業務量の増大が見込まれるが、それに対応した人員増加が見込めない現状もあります。
 個人識別情報の利用は、過去退去強制歴のある外国人が、再び入国する際に偽造パスポートを使用して「不法入国」あるいは、国内にすでに他人になりすまして「不法入国」している外国人が、再入国許可を得て入国する際に、本人確認が入国時点で把握しやすくなります。入管にとってテロリスト対策というより、この目的で個人識別情報が活用されていくように思われます。


V 定住者告示の変更について、

1. 2005年9月より、一部改定された定住者告示では、元中国残留日本人の養子や婚姻前の子について、「6歳に達する前に同居していた」場合には、一律に定住者の在留資格を付与することになりました。   
 2005年、2006年中に、元中国残留日本人の養子や婚姻前の子について「6歳に達する前に同居していた」要件に該当するとして定住者の在留資格が付与された者は、何人いましたか
回答 このような統計を取っていないので、回答を控えさせていただく。

2.2006年3月29日 定住者告示が一部改定され、日系人及びその家族が「定住者」の在留資格を取得する要件に「素行が善良であること」が追加され、同年4月29日から施行されています。出身国の警察などによる「無犯罪証明書」、「犯罪歴証明書」の提出が義務付けられるようになりましたが、「日本での滞在中に犯罪歴がなかった」ことを証明するには、どうすればよいのですか、また、2006年中に、「素行が善良」と認められず、「定住者」の在留資格をえられず入国できなかった者、及び「定住者」の在留資格が更新できなかった者は、それぞれ何人いましたか
回答要旨 日本国内での滞在中の無犯罪証明書は、日本では発行されていないので「日本での滞在中に犯罪歴がなかった」ことを証明する必要はない。また、質問のような統計は取っていない。

コメント
 2006年4月29日から日系人とその家族が「定住者」の在留資格を取得・更新する要件に「素行が善良である」ことが追加され、「犯罪歴証明書、あるいは無犯罪歴証明書」の提出が求められるようになりました。
 2005年11月の広島市内で起きた少女殺害事件を契機に、このような犯罪の防止を目的に、日系2世、3世で「定住者」の在留資格で入国、在留して入る外国人のみを対象として規制強化が行われました。
 「定住者」の在留資格で在留する外国人のうちインドネシア難民、中国残留孤児の家族、日本人等の実子を養育監護している外国人親などには適用はありません。これに該当する「定住者」の在留資格を申請・更新する外国人は、その証明書を入手するため新たな負担を強いられています。
 個々の凶悪事件の再発防止を、日系2世、3世の「定住者」の在留資格者を対象として規制していること、また、「犯罪歴」という重大なプライバシーを入国や在留資格の更新の条件として提出させ、道交法違反や罰金以下の刑罰、執行猶予が終了した場合などを除いて広範な罪種にわたって「犯罪歴のある」外国人を排除しようしていることは、これら対象となる外国人を「犯罪者、犯罪予備軍」とみなすものです。
 実は、日本の警察や行政機関は、「無犯罪証明書」や、「犯罪歴証明書」は発行していません。「犯罪者」に対しても、その前科などの犯罪歴を重大なプライバシーとして保護し、その社会的更生を重視して、その妨げとなる犯罪歴の公表を原則として行いません。
 すでに日本に長年定住している外国人が、「犯罪歴が記載されている証明書」しか提出できなかった場合、更新されず日本から退去されなければならないのか、日本と同様に「犯罪歴証明書」を発行していない国の外国人は、どのように取り扱われるのかという質問をしました。これに対しての入管回答は、「総合的に諸般の事情を考慮して判断する」、「発行されていない国からの申請については、他に変わるものの提出を求めて判断する」というものでした。これらの回答から、入管にとって対象となる外国人が多数に及びその審査の業務量の増大とともに、その運用の基準どうするかという難問を抱えていくように思えます。


W 在留特別許可のガイドライン

 2006年10月に法務省のホームページにおいて、在留特別許可のガイドラインを公表しました。以下、このガイドラインに関する質問です。
1.このガイドラインによると、「日本人と特別永住者の配偶者」の在留特別許可が「積極要素」として明文化されていますが、「一般永住者・定住者の配偶者」の場合には、「日本人と特別永住者の配偶者」に準じた扱いとなるのですか、それとも「日本人と特別永住者の配偶者」と比べて、不利な扱いになるのですか。
回答 在留特別許可のガイドラインは、平成16年以降に公表してきた在留特別許可が認められた事例、認められなかった事例を中心に整理して作成したもの。ガイドラインの基本的な考え方にあるとおり、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して考慮して判断する(在留資格により有利・不利となるものではない)。

2.これまで、「日本人と特別永住者の配偶者及び「一般永住者・定住者の配偶者」とも、在留特別許可については地方入管で専決事項として扱われてきたと思われますが、このガイドライン公表により、その取扱いに変化がありますか。また、どのような在留資格の人の配偶者(法律上の真正な婚姻関係)の場合が、地方入管での専決事項として、実務上扱われるのですか、その根拠となる通達などがあれば教えてください。
回答 在留特別許可については、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して判断することになっており、ガイドライン公表によりその取り扱いに変化はない。
 入管法に規定する法務大臣の権限は、法69条2項により地方入国管理局長に委任されており、法第50条(法務大臣の裁決の特例)第1項及び第2項、にかかる法務大臣の権限については、その権限委任の範囲を定めている入管法施行規則第61条の2第11号により地方入国管理局長に委任することとされている。
 但し、この権限については、法務大臣自ら行うことを妨げないとされており、具体的に法務大臣・地方入国管理局長が自ら裁決を行うか、違反審判要領第5章第1節第2に規定されており、特定の在留資格の者の配偶者について、地方入国管理局長が専決するという規定とはなっておらず、退去強制事由に争いがあるものなどについては、法務大臣に進達するほか、政治・外交などに重大な影響を及ぼすおそれがある案件、法務大臣の判断をあおぐ必要があると認められる案件については、法務大臣に請訓することとしている。

3.このガイドラインでは、「本邦への定着性が認められ、かつ、国籍国との関係が希薄になり、国籍国において生活することが極めて困難である場合」が「積極要素」として明記されていますが、福岡入管の近年の在留特別許可の事例の中で、この場合に該当する事例は、何件ありましたか。
回答 在留特別許可については、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して判断することとしており、このような統計を取っていない。


X 裁決の見直しについて

1.在留特別許可を認めない裁決を行い、退去強制令書が発付された事例の中で、裁判で敗訴した場合以外に、裁決の見直しはどのような場合に認められますか。
 裁判で国(法務大臣・入国管理局長)が敗訴して、その処分を取り消し、当該外国人に在留特別許可を与えた事例(例えば、2005年3月7日の福岡高裁判決を受け入れ、上告断念して、中国籍の7名に定住者の在留資格を認めた事例)を除いて、裁決が見直されて在留特別許可が与えられた事例が、福岡入管の2005年と2006年の事例で何件ありましたか。
回答 法務大臣は原則として裁決の見直しを行わないが、案件によって、例えば判決で裁決が違法であると判断された場合、裁判所における審理の過程で新たな事情が判明した場合、裁決後に事情が変更し、退去強制することが人道上過酷であるような場合については裁決の見直し、在留特別許可の可否について再検討する場合がある。なお、福岡入国管理局において裁決を見直し、在留特別許可をした事例は、2005年:1件、2006年:0件

コメント
 退去強制令書発付処分後に訴訟をしたが敗訴確定したケース、あるいは、退去強制令書の発付処分を知ってから6ヶ月以内という出訴期限を過ぎて、訴訟を提訴できないケースや、摘発後に婚姻届が受理されたが、同居期間が短いために退去強制令書が発付されたケースなど、裁決の見直しを求めるケースが増えています。
 退去強制令書発付処分後の裁決の見直しは、「開かずの門」ともいえるほど入管行政上の厚い壁です。回答中の裁判で違法と判断されたときの見直し、訴訟中に入管の基準が変更された場合にのみなされるのは、いわば当然のことです。
 回答で注目されるのは、これまで、裁決の審理中に裁決時には判明していない新たな事情(たとえば、日本人との子どもがいたことがわかる等)が明らかになった場合しか認めていないという説明から、「裁決後に事情が変更し、退去強制することが人道上過酷となる場合には裁決を見直す」ことがあるという回答でした。


Y E-メールによる通報制度

 法務省は2004年2月よりE-メールによる通報制度を行っていますが、このE-メール通報制度により、通報の対象者が福岡入管内在住の場合に連絡を受けて摘発をしたケースが何件ありましたか。
回答 2005年:2件27人、2006年:  3件9人


Z 人身売買の被害者の保護について

 人身取引(トラフイッキング)の外国籍の被害者が入管難民認定法違反者で退去強制対象者の場合にも、在留特別許可を付与し、被害者保護として特別な配慮するとしています。福岡入国管理局は、人身売買の被害者の保護として、入管難民認定法の運用においてどのような配慮が行われてきたかを知りたく以下の質問をします。

1.過去2年間(2005年 2006年)の「興行」の在留資格者の退去強制者数を教えてください。
回答 過去2年間に[興行]の在留資格で退去強制された人数は、 2005年:337人、2006年:298名

2.過去5年間(2002年?2006年)の「興行」の在留資格者での入国者数を教えてください。また、そのうちの性別、国籍別(上位3カ国)の入国者数を教えてください。
回答 興行の在留資格の全国の入国者数
総数(人)【国籍別上位3カ国(人)】
2002年:12万3322【フイリピン: 74729/米国:6887/中国:5670】 
2003年:13万3103【フイリピン: 80048/米国:7006/中国:6486】
2004年13万4879 【フイリピン: 82741/中国:8277/米国:6704】
2005年:9万9342【フイリピン: 47765/中国:8263/米国:6852】
2006年:4万8250【フイリピン:8607
/米国:6771/中国:4978】
性別の統計は取っていない。

3.過去2年間(2005年?2006年)で、人身売買被害者として保護された外国人は、全国及び福岡入管内で、それぞれ何人いましたか。
回答 2005年:全国115人(うち福岡入管内18人) 2006年:集計中

4.2006年3月13日に政府の「人身取引対策行動計画」に従って基準省令を見直し、「興行」の在留資格で上陸しようとする外国人の受け入れ機関の要件を厳格化しました。同年6月1日から施行されていますが、人身取引関与者として外国人芸能人と興行に係る契約を締結する機関(契約機関)から排除された者は、2006年中
に何人いましたか。
回答 統計としてとっていない。

5.「興行」の在留資格の要件の厳格化に伴い、近年、日本人との「偽装結婚」が増加していると言われています。過去3年間(2004年?2006年)に「偽装結婚」を理由に摘発された件数を明らかにしてください。
回答 統計としてとっていない。


コメント
 前回は福岡入管内の数値は回答しませんが、今回は福岡入管での保護数18人が明らかになりました。
 また、質疑の中で、人身売買被害者の在留特別許可の付与につて、「短期滞在」「特定活動」以外の在留資格が与えられ、長期的な滞在が可能となることがありうるのか、という質問にたいして、「ありうる」という回答がなされたことが注目されました。
 人身売買の根絶やその被害者の保護のために、入管政策として「興行」の在留資格者の摘発(ホステスとしての「接客行為」を行っていることが入管法に違反するとして)が急増し、また、「興行」の在留資格で入国できる運用基準を厳格化し、実質的にフイリピンからの「興行」での入国を締め出しています。
 入管の政策転換により、この2年間フイリピンからの入国が10分の1以下に激減し、フイリピンパブの多くが閉店に追い込まれています。これまで黙認してきた「接客」行為を理由に摘発したり、入国を規制したりするこのようなやり方が、人身売買の被害者の救済や人身売買の廃絶にどの程度貢献しているのかについては、疑問を抱かざるを得ません。
 日本に「ダンサー」「シンガー」を名目に、実際には「ホステス」(接客)として働きに来ていた外国人女性を締め出し、入国できなくする政策は、入管が把握―管理できていた「興行」での入国を制限し締め出すことで、表面上問題を見えにくくする役割を果たします。しかしながら、人身売買の供給ルートには、「興行」以外にも、「短期滞在」や、偽造旅券などの「不法入国」などの手段で供給されてきており、「興行」で働きに来ていた13万人をこえる外国人女性に、代替手段として働きに来る途を与えず締め出せば、その一部は「興行」以外のルートから供給されることが危惧されます。
 「摘発」機関である入管−警察が、被害者保護の役割も同時に担うことや、被害者のプライバシー保護を理由に情報公開に消極的なあり方についても、その保護の実態がどのようになっているのか不透明のままです。


[ 統計数値に関する質問

 件数または人数は、特に指定のない限り2005年及び2006年について、それぞれお答え下さい。

1.福岡入管の管内での在留特別許可の運用の現状について
@在留特別許可が認められた件数 
回答 2005年:290件/2006件:206件
A福岡入管で収容中に60日以内で在留特別許可が認められた件数
回答 2005年:1件/2006年:2件
B1年以上の懲役または禁固刑の有罪判決(執行猶予付き判決も含む)を受けるなど上陸拒否事由者に該当するケースで、 退去強制されずに在留特別許可が認められた件数
回答 2005年:10件/2006年:7件

2.福岡入管内での上陸特別許可の運用の現状について
@ 上陸特別許可の件数を明らかにして下さい。
回答 2005年:75件/2006年:81件
A 退去強制された外国人で上陸特別許可が認められた者のうち事前審査した在留資格認定申請者のうち入管法第5条該当者数を明らかにして下さい。
回答 2005年:2件/2006年:8件

3.福岡入管内上陸拒否者
@福岡入管管内の空港や港で、来日しながらも上陸拒否された外国人は、何人かを教えて下さい。
回答 2005年:496件/2006年:358件

4.福岡入管の退去強制処分について
@福岡入国管理局管内で退去強制された者の総数及び内訳を教えてください。
回答 退去強制者の総数【内訳】
2005年:929人/2006年:946人
【不法残留者;2005年:449人/2006年:425人 不法入国者;2005年:111人 /2006年:164人 不法上陸者;  2005年:5人/2006年:10人 
資格外活動;2005年:340人/2006年 306人 刑罰法例違反者;2005年:24人/2006年:41 人】
A入管法違反の受理件数のうち本人の自主申告者数は、何人ですか。
回答 2005年:138人/2006年:130人(注:出国命令による帰国者を含む)
B退去強制者のうち福岡入管より警察・検察に告発した人数と、告発理由別内訳数
回答 2005年:7人/2006年:10人 (不法入国)

5.福岡入管内の収容施設
@ 福岡入国管理局の収容定員の平均収容期間、最長収容期間について教えてください。
回答 2005年の平均収容期間:3.6日、 最長収容期間:31日/2006年の平均収容期間:5.2日/最長収容期間:50日
A 福岡入管の収容施設内での、被収容者の
自殺未遂(自傷行為)を引き起した件数は、どのぐらいありましたか
回答 2005年:該当者なし/2006年:該当者なし 

6.福岡入管の職員体制について
@2006年度福岡入管職員の総定員、警備部門、在留審査部門、審判部門の大まかな定員数を教えてください。また、2006年度は前年度に比べてどの分野にどのぐらい増員がなされましたか。
回答 2006年度 福岡入管職員の総定員211人、うち福岡本局52人【その内訳 警備部門27人、在留審査部と審判部門13人 その他12人】(2006年度の人員は、前年度と比べて増員)
B 福岡入管職員の一人当たりの月平均残業時間は何時間ですか。
回答 本局では、2005年及び2006年の一人当たりの月平均残業時間は、40時間

7.研修生及び技能実習生について
@九州内の研修生の総数と各県別の数
回答 2005年12月末現在 九州内外国人研修生(九州7県内) 3878人
各県別;福岡県:832人/佐賀県:365人/長崎県:583人/熊本県:806人  /大分県:333人/宮崎県:576人/鹿児島県:383人
B 九州内の研修生及び技能実習生で失踪、
逃亡した者の数。
回答 2005年:81人/2006年  111人
B2006年4月1日現在、技能実習生に認められている職種の数は、いくつありますか。
回答 62種

コメント
 入管行政の規制強化の動きを示すものとして、2004年と比べて2005年、2006年(概数)の統計数値は、退去強制者が600人台から900人台は増加していること、在留特別許可は、350人台から、290人台、200人台へ減少していること、退去強制者のうち福岡入管より警察・検察に告発した数が、1件から7件、そして10件へと増加している。福岡入管での収容施設での平均収容期間が、2004年、2005年の3日台から2006年5日台へと増加しています。
 一方、上陸特別許可者数が、46件から75件、81件へと増加、上陸拒否者数は、500人台から400人台、300人台へと減少しています。(日本人との婚姻を理由とすると思われますが、5年間の上陸拒否事由者に5年間以内に上陸特別許可が認められたケースも、4件から2件、そして8件と増加しています。
 研修生も、2004年末、2500人台から2005年末3800人台へと増加しているが、失踪逃亡者(技能実習生を含む)も80人台から110人台へと増加しています。
 福岡入管の職員数は、2005年度 208人から、2006年度211人と3人増加していますが、業務量の増加に追いつかず、残業時間も月30時間から40時間へと増加しています。



要  請  状

2007年2月5日
法務大臣・福岡入国管理局長殿
移住労働者と共に生きるネットワーク・九州
連絡先:福岡市博多区美野島2-5-31
美野島司牧センター内
092-431-1419FAX092-431-5709共同代表:岩本光弘(福岡県遠賀町)、コース・マルセル(福岡市・美野島司牧センター)塚田ともみ(鹿児島市・ATLAS)、中島真一郎(熊本市・コムスタカ-外国人と共に生きる会)

(1)2006年改定入管難民認定法について
1、個人識別情報の提供の義務化について、
特別永住者を除く外国人を対象として、指紋情報など個人識別情報の提供を義務として求めることは、外国人を「テロリスト予備軍」とみなし、管理・監視の対象とするもので、外国人を差別し、外国人の基本的人権を侵害するものであり、すみやかに廃止してください。にもかかわらず、施行・運用するに際しては、提供された個人情報をプライバシーとして保護し、その目的外利用を許さず、その目的達成のための合理的な期間経過後はすみやかに消去してください。

2、新に退去強制の対象となる「テロリスト」の認定について
 新に退去強制の対象となる「テロリスト」の認定に際しては、その認定基準や認定の根拠や経緯を具体的に明らかにし、その認定が当局の恣意的な運用にならないようにしてください。及び認定の対象とされた外国人に、十分な反論や反証の機会を与え、適正手続きを保障した運用を行うようにして下さい。

(2)定住者告示の見直しについて、
1、定住者の在留資格の申請、更新の際の「素行の善良さ」の証明について
 この「定住者告示」の見直しは、2005年11月に広島市安芸区でおきたペルー人男性による「日本人女児殺害事件」を契機として、このような事件の再発防止を目的として導入されました。しかしながら、このような凶悪事件は、あくまで加害者が引き起こした個別的な事件であり、「定住者」の在留資格で入国あるいは、定住している外国人全般を対象として、いわばそれら外国人を「犯罪者、あるいは犯罪予備軍」とみなして管理や規制を強化することは、これら外国人の基本的人権を侵害するものです。
 また、そのために「本国の権限を有する機関が発効した犯罪歴に関する証明書の提出を求めること」は、「犯罪歴のある外国人」の入国を認めず、あるいは日本から排除して行こうとするもので、「犯罪歴のある」外国人の基本的人権を侵害します。「定住者告示」の「素行の善良あること」の要件、およびそのために「本国の権限を有する機関が発効した犯罪歴に関する証明書の提出を求めること」は、すみやかに撤回してください。

(3) 在留特別許可について
1、日本人等との婚姻や日本人等との実子を養育していることなどを理由とする在留特別許可申請については現行の三審制を1回の審査で済むように改める等、増大傾向にある在留特別許可申請に対応して迅速に審査し、審査期間を短縮するように改善して下さい。
2、在留資格のない外国籍の家族について、日本で出生した子どもがいる場合や、子どもが就学中の場合には在留特別許可により定住者の在留資格も認めるようにして下さい。
3、入管法違反で収容され、退去強制令書発付後に、日本人等との婚姻届が受理された場合でも、夫婦の実態があると認められる場合には、「再審情願」により法務大臣の裁決を見直し在留特別許可を与えるようにしてください。
4、オーバーステイ等を理由に逮捕・摘発される前に、夫婦として同居していない場合や同居期間が短い場合にも、夫婦としての実態を総合的に判断して、在留特別許可を認めるようにしてください。
(4)「日本人配偶者等」から「定住者」の在留資格への変更について、
1、日本人配偶者との離婚や死別等により配偶者ビザから定住者ビザへの変更を希望するケースで、子の親権のない場合でも、子の面接を行うなど子との交流を続けているケースでは、定住者ビザへの変更が認めるようにしてください。

2、日本人配偶者との離婚により配偶者ビザから定住者ビザへの変更を希望するケースで、日本人配偶者等の在留資格で3年間の在留期間のビザを有し、日本での定住を希望する場合は、原則として定住者の在留資格への変更を認めてください。

3、日本人配偶者との死別により配偶者ビザから定住者ビザへの変更を希望するケースについては、日本人配偶者が日本での定住を希望する場合は、原則として定住者の在留資格への変更を認めてください。

4、「定住者」あるいは、「日本人配偶者等」の在留資格で日本で暮らしている外国人が、その親の介護、あるいは子どもの育児のため親を呼び寄せたいとき、「短期滞在」ではなく「特定活動」あるいは、「定住者」の在留資格を付与し、長期的に滞在できるようにしてください。

(5)DV及び人身取引の被害者について
1、外国籍のDV被害者に対して、夫と離婚成立前であれば日本人配偶者等の在留資格の更新を、離婚後であれば日本人配偶者等の在留資格から定住者の在留資格への更新を認めるなど、在留資格の付与を明確にしてください。

2、在留資格のない外国籍のDV被害者で、入国管理局へ出頭し在宅で在留特別許可の審査を受けている場合に、自治体からの国民健康保険加入や生活保護の給付決定を行うための在留特別許可取得の見込みの問い合わせに対して、福岡入国管理局が、「在留特別許可により1年以上の在留期間のある在留資格(「定住者」・「日本人配偶者等」など)が与えられる蓋然性の有無」について回答するようにしてください。

3、外国籍の在留資格のない人身取引の被害者に対して、帰国を希望する場合にはすみやかな帰国の実現を、帰国を希望しない場合には、仮放免の弾力的運用や在留特別許可を付与するなど積極的な被害者保護を行うことを要請します。

(6)外国人を対象とする E-メール通報制度の廃止について、
 法務省入国管理局のホームページで 外国人のみを対象として、E-メールでの通報を呼びかけ摘発に利用することは、外国人を「犯罪者、あるいは犯罪予備軍」とみなし、外国人の基本的人権を侵害します。すみやかにE-メール通報制度を廃止してください。