▲▽▲▽▲▽国際結婚を経験した二人の話▲▽▲▽▲▽  匿名 希望

【〜妻から〜】
 私は、生まれも育ちも九州の日本人女性です。あるきっかけで彼と交際し、結婚しました。彼は外国人です。それまで国際結婚については、特に興味もなく、ましてや自分が国際結婚するとは思ってもみませんでした。
 もちろん彼と付き合うようになってからは、人に対する眼差しが変わってきたのは言うまでもありません。通りすがりでもあまり気がつかなかった外国人に目が行くようになりました。人種的な方面から意見を述べるのは好きではありませんが、ふと目に留まるのは白人、黒人系の方々です。大抵の日本人はそうだと思います。アジア系の外国人は肌の色も顔も比較的日本人に近く、よく見れば、日本人でないと気づきます。
 彼は白人系で、よく目立ちます。酒屋に行っても「日本語上手だね」と初対面でサービスしてもらったり、ほかの店でもおまけしてもらったりと何かしら優遇されている場面に何回か遭遇しました。エレベーターですれ違った子供も「英語の先生だ」というのです。どうして彼が英語の先生なのでしょうか?彼が白人でなければ、どうでしょうか?このような場面には遭遇しなかったかもしれないと思うのです。
 コマーシャルでは、よく白人の外国人が登場します。洋服や下着のモデルはどうでしょう。圧倒的に白人が多いと思います。
 いまや情報社会の発達でテレビやインターネット、新聞、誌面等の媒体から、様々な情報が飛び込んできます。そして利益を追求する輩から、誤った情報や大げさな報道が流され、惑わされることもしばしばです。私たちは真実を見抜く眼を養わなければなりません。
 彼はアジア系の友人がたくさんいます。もちろん私もその友人と仲良くさせてもらっています。その友人の方々は、明るく、日本語も饒舌で、地域に根付き社会に貢献されています。もちろんいろんな分野で活躍されている外国人もたくさんいらっしゃいます。
 しかし、外国人の取り巻く環境も厳しくなってきているのが現状です。もっと多くの日本人にこれらのことを知ってほしいのです。そしてふれあいの場を増やしてほしいのです。
 一人理解者が増えれば、やがて十人、十人が百人と理解者が増えていくことでしょう。対話や触れ合いが、心のバリアフリーの第一歩だと思います。それが今、私にできることです。
 彼と出会ったことで、囲の蛙だった私は、囲から飛び出し、川を、そして海を渡るまでになりました。彼との出会いに、そして彼に心から感謝し、二人でともに成長していきたいと思います。

【〜夫から〜】
 国際結婚は、今日の日本の国際化現象の一つとして注目されています。「国際化」という表現は非常に漠然とした言い方に過ぎないと感じていた私が、最近、国際結婚しました。
 3年間、研究者として国際結婚を客観的に観ようとしましたが、ある人との出会いによって、人生が一気変わりました。日本で7年間過ごしましたが、日本と関わるのはあくまで一時的なもので、いつかは本国に帰るという思いがありました。
 けれど今は、帰国のことよりも、「日本に永住するとどんなチャンスがあるのか」、「海外で身につけた技能を生かせるのか」ということを考えるようになりました。
 パートナーは日本人女性なので、「日本人の配偶者」になることは自分の自由を奪うことなのかと友達に相談しました。
 日本人女性と結婚した埼玉県在住のメキシコ出身の友人は、「ある意味、我々は配偶者になった途端に、自由が奪われるよ。さらに、日本語を喋れない、書けない私は、日本の底辺で働かざるを得ない存在だしね」と皮肉混じり言いました。
 私は友人と違って日本語をある程度使えますが、今のレベルで充分なのか、相変わらず不安です。もちろん私のパートナーは支えてくれています。夫婦は支え合うものと互いに思っているからです。
 しかし、日本では、国際結婚、(とりわけ、日本女性と欧米人の組み合わせ)が過度に美化されています。他の様々な組み合わせの国際結婚に対しても、それぞれに対する先入観があり、これが結婚観にも影響しています。
 私のパートナーが言うように、私もその一例で、団地のエレベーターでよく出会う子供たちが、「ママ、ママ、英語の先生だよ」と大声で叫ぶことは、日本人の対外国人観(白人観)を象徴しています。
 日本では、外国人は特に外見で判断されやすく、白人ではない多くの外国人は軽視され、それぞれの持つ技能を日本社会で発揮する機会を奪われています。
 にも関わらず、長く日本に滞在すればするほど、日常生活自体は日本人とほとんど変わらなくなるので、差別を受けることにますます違和感を覚えるでしょう。
 今日、日本の国際化における様々な課題が公に論じられるようになってきました。
例えば、少子化、高齢化、移住労働者の受け入れ、テロと戦争に対する国家強化など。
 しかし、外交や、他国との自由貿易協定(FTA)、そして英語の導入などだけが国際化ではありません。外国人観、外見での差別、言葉の壁、人種の違いなどを突破する「人間どうしの触れ合い」が国際化の優先課題ではないでしょうか。
 日本は他の国と同様、ボーダレス社会に突入して、海外との関係が多種多様化してきましたが、残念なことに国際化が「人間どうしの触れ合い」ではなく、「物々交換」に見える事もあります。例えば、外国人の労働条件や移住労働者の価値など。国際結婚の一部もそうです。
 しかし、日常の関わりが、徐々にお互いだけではなく、住む地域にも何かを貢献するはずです。これこそが今後の課題です。
 結婚は二人を結ぶことだけではなく、両者が担う文化、歴史、社会が交差することでもあると思います。