アジア女性センター活動報告
・・・デートDVとは・・・

 
ドメスティック・バイオレンス(DV)と言う言葉はここ数年でかなり周知されるようになってきました。DVは、家庭内で起こる、主に夫から妻への暴力のことですが、私たちがこの問題に取りくみ続けている中で、近年、デートDVという問題が浮かび上がってきました。
 デートDVは、交際相手からの暴力を指しますが、殴ったりけったりの身体的暴力によるものや、言葉や態度によって精神的に追い詰め、支配関係を作り上げる点で、配偶者間のDVと同じ構図を持っています。
 内閣府が2006年度4月に発表した『男女間における暴力に関する調査』報告では、10代から20代の結婚前に「交際相手(後に配偶者となった相手以外)がいた(いる)」という人の交際相手からの被害経験の有無について、“身体的暴行”“心理的攻撃”“性的強要”のいずれかをされたことがあったという人は女性13.5%、男性5.2%となっています。ここでは、配偶者となった相手以外からの暴力を問題にしていますが、配偶者からの暴力を受けた人の中には、結婚前にも暴力を受けていたという人が少なからずいます。
 また、ある民間団体の行ったアンケート調査では、女子高生の10%、女子大生の14%が何らかのデートDVを経験しているという結果も出ています。
 交際相手からの暴力は、個人的な問題と捉えられがちで、友人など周囲の人間に相談しても、「いやなら別れればいい」とか、「愛情の表れ」といった反応をされることがあり、これも、家庭内の問題と片付けられて、周囲の理解が得られにくいDVとの共通点です。
 配偶者間のDVに適用される、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」は、“配偶者もしくは事実上婚姻関係と同様にあるものからの暴力又はこれに順ずる心身に 有害な影響を及ぼす言動について”定められており、デートDVの被害者は、現在の法律ではこれに適用されません。被害者にとっては、配偶者間での暴力以上に逃げ場が無いともいえます。
私たちはこの問題についてどう取りくめばよいのか考えています。まず防止のための情報カードとポスターを作り、県下の高校や大学に働きかけています。カードやポスターで、“相談ができること、学校に出向いてのデートDV防止のための授業ができること、暴力を受ける人が悪いのではないということ”を伝えています。
 ポスターは、イエスとノーで設問に答えて、相談の必要性に気づきを促すものです。診断ができるようになっていますが、それが目的ではありません。出張授業も“相手と自分の主張が違うときにどうしますか?相手を怖がらせて自分の主張を通すのが暴力です。”ということを伝えて、相手と自分が違うことを認めて、どちらも我慢せずに、いい関係を築いていく方法を、言葉のやり取りなどから学んでいこうとするのがデートDV防止のための授業です。
 力を振るって主張を通す暴力は、家庭内ではDVと呼ばれますが、同じ行為は家庭内に限らず行われています。伝え方を学んでいなかったり、そういった方法しか知らずにきたことが暴力の原因であれば、変えていける部分はあるのかもしれません。
 しかし、すでに起こっている暴力に対しては、「家庭内の問題」や、「交際相手だから別れればいい」という見方をせずに、被害者の声にしっかりと耳を傾けていくことが最も重要であるように思います。