第六回移住労働者と連帯する全国フォーラムin北海道  安倍妙子

 6月24日、25日、梅雨真っ盛りのこの時期、北海道の天候はやや不安定ながらも概ね晴天の中、第六回移住労働者と連帯する全国フォーラムが開かれました。初めての北海道での全国フォーラムを成功させようと、北海道の皆さん方が中心となってこの一年間準備を重ねて、札幌市にある北星学園大学を会場として行われました。緑豊かな広いキャンパス内の2日間はとても充実して、全体会から分科会、盛大な交流会まで、時間に追われることなくのびのびと各団体個人の交流を楽しむ事が出来ました。
 24日午後1時から始まった全体会では、実行委員会共同代表の牧下徳子さんの開会挨拶から始まって、イスラム・ヒムさんの基調講演「アルカイダといわれて勾留された43日間」をメインに、北海道実行委員会からの報告や、移住連代表の渡辺英俊さんの報告「外国籍住民との共生に向けて〜何が問題か?どうすればいいか?〜」が発表され、その後分科会では9つに分かれた各会場で各テーマに沿って発表・討議がなされました。各テーマは以下の通り。

 @「外国人の出入国・在留管理」
 A「求められる外国人労働者における労働対等の実現」
 B「ことばと医療の未来」
 C「難民―収容・強制退去と社会統合への模索」
 D「外国人の人権基本法、人種差別禁止法を制定しよう」
 E「子どもの教育」
 F「外国人と共生するまちづくり」
 G「国際結婚&移住女性のエンパワメント」
 H「外国人研修・技能実習制度」

 私個人はこの数年間外国人女性問題、主にはDVやエンパワメントに関心が留まっており、この日もG分科会に参加して、4名の報告者の発表を聞き、ディスカッションに参加しました。
 特に興味深かったのは山形のIVY山形国際交流協会のNさんの報告でした。国際結婚を山形の事例から報告、行政主導型の国際結婚定住者への対応が、20年近くを経ても未成熟な問題として現存しており、言葉の習慣、困難な就労((家庭外での)仕事をさせてもらえない・仕事がない)、仕事をさせられる(過剰な家事労働)、慣れない習慣・近所づきあい、日本への同化を強いる家族・地域、意識に潜む・言葉に表れるアジア人蔑視、外へ出してもらえない、経済的問題、など、実に様々な国際結婚の問題点が今に至るまで山積している現実を知ることが出来ました。
 国際結婚を決意した日本人男性の主な理由には、「一生に一度結婚をしたかった、性的欲求を満たす為、老親の介護の担い手として」また、親側の願望として「老いを自覚した親が嫁を取る必要性を感じる、障害をもつ息子にも結婚させてやりたいという思い」
 片や女性側の理由としては、「経済的豊かさへの願望(マスコミ報道や聞き伝えによる日本に対する幻想)、貧しい家計を支えたい、借金を返済したい、新天地(可能性)を求め、人生をかけた思い、先に日本人と結婚した姉妹や友人が幸せそうだから」と、双方の結婚観にかなりの隔たりがあり、妻は「家の嫁」であり「コミュニティーの嫁」である事実が、妻を必要とする夫の影が稀薄であるという農村家族・地域の深刻な現実を示していました。
 都市部に住んでいては解らない農村部の国際結婚の問題提起でした。
また、移住女性のエンパワメントについて、カラカサンのRさんや、札幌在住のSさんが自らの体験を語り、移住女性達がエンパワメントを高める為に夫や姑を巻き込んでの辛抱強い対話の努力は欠かせないと語りました。

 地域国際交流協会の取り組みでは、T市国際交流協会のEさんから、T国際交流協会の概要〜経緯と事業体系などが語られ、相談サービス事業に地域で出産し子育てなどを経験した外国人市民当事者を雇用し、マイノリティを中心に再構築し続ける市民交流型の紹介があり、そういう中での「外国人が安心して集える場作り」の体験談、南部の図書館を拠点にした地域の「環境・共生・活性」等の課題に取り組んでいる様子などが紹介されました。

 DV関連の問題提起では女性の家ヘルプのOさんから、DV法施行から1年経った今の状況について、警察の対応の未成熟さによる二次被害が続出していることについて取り上げられ、今年秋の取り組み課題として、行政機関への指導も含めて、被害女性への正しい対応の仕方を教育していくべく、啓発運動を繰り広げていく必要性が語られました。
 今年の全国フォーラムの全体感想として、時間にゆとりのあるプログラムであった事、その理由として、各部会のタイムカウントが十分に余裕があり、ボランティアスタッフがフルに活動して会場内の環境整備・移動などがとてもスムーズに行われていた事が挙げられると思います。
 両日とも気ぜわしさを感じない、とてもゆったりとしたフォーラムでした。
 24日は分科会が終了後に北星学園大学を上げての北海道での全国フォーラム歓迎の交流会、翌25日の全体会では北海道ウタリ協会副理事長の阿部ユポさんの講演「アイヌ民族の先住権」、など、多民族・多文化共生社会へ向けての力強い発言を聞いて、最後に全体アピール、「国や関係機関は、これまでの硬直した排他的政策ではなく、また、移住労働者をご都合主義的に処遇するのではなく、この人々の人権を守り、安定した生活を保障するという公共の責務を!」と、果敢に取り組むように強く訴えて2日間の全国フォーラムは両日でのべ参加数約500名ほどで盛況のうちに終了しました。