報告――逮捕後に婚姻届が提出されたナイジェリア人の
退去強制令書発付処分等取り消し請求訴訟の第一審判決は
原告敗訴の不当判決でした。

  中島 真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)

 交際中の日本人女性の父親の警察への通報による逮捕後に、日本人女性との婚姻届が提出されたナイジェリア国籍の日本人配偶者を原告とする退去強制令書等発付処分取り消し訴訟について、2006年1月10日午後1時10分、福岡地方裁判所民事302法廷で、福岡地裁民事第二部(岸和田 羊一 裁判長)は、「原告の請求を棄却する」という不当判決を言い渡しました。
  開廷後、わずか1分程度の判決言い渡し後、判決文を原告代理人弁護士がもらってきて、裁判所の敷地内にある弁護士会館2階の会議室で、判決内容を説明する記者会見と今後の打ち合わせをしました。
 判決文の結論は、「原告には日本人配偶者がおり、(警察への通報者であった)妻の父親との現在では有効な関係が築かれつつあること、不法残留の他に原告が本邦において犯罪等を行った事実を認めるに足りる証拠はなく、原告は本邦に置いて概ね平穏に生活していたとうかがわれること、原告がナイジェリアに帰国した場合に妻に精神的苦痛を生じさせるなど」については、「原告に有利に考慮されるべき事情があるとはいえる」ことは認めました。
 しかしながら、二人の婚姻期間は本件裁決まで2ヵ月半、交際期間を含めても5ヵ月半、逮捕の翌日に婚姻届が提出されていること、同居もしていないこと、二人の関係は原告の不法残留の継続という違法状態の上に築かれたものであって、当然法的保護に値するものでなく、在留特別許可を付与するか否かを判断する一事情に過ぎない。原告は帰国しても生計を維持することが可能であり、妻も海外渡航することも可能であり「原告がナイジェリアに帰国することが原告及び妻にとって著しい不利益であると言いがたいこと」として不利な事情をあげています。また、「人種差別」による婚姻の反対理由からの日本人妻の父親の警察への通報・逮捕がなければ、原告と妻は婚姻届を提出し、同居して他の多くの在留特別許可者のケースと同様に在留特別許可を取得できていたという事情を考慮すべきという原告も斥けています。そして、「B規約などの精神や趣旨を考慮しても、原告に在留特別許可を付与しなかった被告福岡入国管理局長の判断は、裁量権の逸脱叉は濫用の違法があるとは認められない。」と判断しました。
 この判決は、国際人権規約などの精神や趣旨を考慮し、この夫婦に婚姻の真実性や夫婦の実態があるか否かを審査するのではなく、被告の在留特別許可の運用に当たって「交際期間の短さ」「同居のなさ」「逮捕後の婚姻届の提出」という形式的理由で在留特別許可を不許可にする運用を行っている被告の処分を追認する不当判決です。
 この判決に対して、原告は1月18日に控訴手続きを取り、本件訴訟は、今後、福岡高裁で控訴審が争われていくことになります。また、大村入国管理センターに昨年3月より収容され続けている原告Aさんの仮放免の実現をめざして3回目の仮放免申請を日本人妻を身元保証人として行ったところ、2月23日に仮放免が許可され1年ぶりに夫婦として一緒に暮らせるようになりました。