福岡県警ホームページでの「外国人犯罪」「来日外国人組織犯罪」の
情報提供を呼びかけるメール通報制度の廃止を求める申し入れ行動報告
中島真一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
2004年7月1日の移住労働者と共に生きるネットワーク九州事務局会議で、福岡県警のHP(ホームページ)上での「外国人犯罪」のE−メール通報問題で、廃止の申し入れ書の賛同団体・個人をつのり、7月20日に提出にいくことを決定しました。限られた時間でしたが、ネットワーク九州構成団体など九州内8団体・個人18名の賛同団体・賛同者が7月20日までに集まりました。
7月15日に福岡県警の生活相談係りに、7月20日午前10時に福岡県警本部にいくことを伝えていました。その際、県警本部のHPの内容担当の国際捜査室の担当者も同席して対応してほしい旨つたえましたが、窓口の担当者の反応は否定的なものでした。7月16日に、福岡県警記者クラブに、取材要請書と申し入れ書(案)と移住労働者と共に生きるネットワーク九州の活動紹介をFAXで今月の幹事社に送り、各社記者に案内してもらえるように依頼していました。幹事者の記者からは、当日関心のある社の記者が県警本部の入り口(館内では取材ができないとのことで)で取材するという連絡がありましたが、実際に何社取材に来るかはわかりませんでした。
2004年7月20日午前10時に、福岡県庁の隣にある福岡県警本部に移住労働者と共に生きるネットワーク九州の共同代表3名と事務局員3名の計6名で、廣畑史朗福岡県警本部長あての「福岡県警のホームページでの『外国人犯罪』『来日外国人組織犯罪』の情報提供を呼びかけるメール通報制度の廃止を求める」申し入れ書(九州内の8団体 個人18名の連名)を提出に行きました。福岡県警の生活相談係りの案内で、入室は3名までと限定されたため、共同代表の3名が入室することにして、残り3名はロビーで待機しました。共同代表3名は1回の相談室の部屋に通され、そこでは苦情生活相談係りではなく福岡県警総務課国際捜査室の3名が応対するように変わっていました。
自己紹介した後、福岡県警本部長あてのHPでの「外国人」をカテゴリーとしたE−メール通報制度の廃止を求める申入書を読み上げました。国際捜査室の担当者は、「皆さんの趣旨はよくわかりました。私たちは、決して外国人を差別する意図はありません。皆さんの意見は今後の参考にさせていただきます」といい、すぐにお引取り願いたいという姿勢が見え見えでした。「外国人」「来日外国人組織犯罪」というカテゴリーでのE−メールの通報制度は、いつから設けられたのか」という質問には、「ホームページを更新した2−3年前から設けた」という回答でした。また、「我々、国際捜査室は、外国人の犯罪を取り締まるのが仕事です」というので、「外国人だけを取り締まりの対象としているのですか」という質問には、最初「そうです」という回答でしたが、「日本人も捕まえることはないのですか」と再度たずねると、「共犯の場合など日本人も捕まえることもあります。」との回答となりました。「そうであれば、外国人だけを対象とした通報は必要でないのではないですか」と追及すると、「今日は議論しあう場ではない」と逃げの回答となりました。
そして、「このメール通報により、何件これまで通報があり、摘発に結びついた成果はどのぐらいありますか」と聞いたところ、「内容的な議論はしません」といいつつ、「大いに効果を上げています」という回答でした。そこで、「この前事前に私に電話で説明いただいた職員の方からは、ほとんど摘発に結びついていない」と聞きましたし、「刑事事件は、現行犯以外は裁判官の令状がないと逮捕できないので、E−メール通報があっただけでは逮捕できないのでは」と追及すると、「捜査の端緒として役立っている」という回答にかわりました。出席した他の共同代表から「外国人を対象としたこのメール通報制度は差別であり、外国人を『犯罪者』「犯罪予備軍」とみなすもので、様々な人権侵害をもたらすので、廃止してほしい」と要請しました。
「申し入れの趣旨を理解していただけるのなら、具体的な見直しの検討をされているとも聞いているが、いつまでに見直しできるのか、返事をもらえますか」と尋ねたところ、国際捜査室の担当者は「今日は、皆さんの申し入れの趣旨を伺う場で、内容的な議論はする場ではないので、答えられない」との反応でしたので、「今日の申し入れは、ただ聞き置かれるだけですか」というと、あわてて「次のホームページの更新のときの参考意見とします。ただその時期はいつかとは答えられない」という回答でした。「今日の申し入れの趣旨を理解され、内部で検討いただき、検討された結果、見直される場合などは、必ずご連絡下さい。今後とも見直しが為されない場合には、改めてこちらからも連絡します」といって、約20分ほどで終わりました。
1回のロビーで、待機しいていた3名と合流すると、同じくロビーで待っていたマスコ関係者(西日本新聞社、毎日新聞、読売新聞社の新聞メデイア3社、RKBのテレビメデイ1社、もう1社は不明の5社の記者)から取材を受けました。館内では取材はできないということで、館外に出て、県警本部の入り口の前で、30分ほど申し入れの趣旨や今日のやり取りの内容を説明しました。7月20日の福岡県警本部への申し入れ行動は、この日の夕刊と翌日の7月21日の朝刊で報道されました。
当初、6月末に私が個人として廃止を求めて投稿したり、電話で抗議したときは、福岡県警は単なる警察への苦情処理の一つとして終わらせたいという姿勢がうかがえました。しかし、九州内のNGOや個人が連名した申し入れ書を持って直接県警本部まで要請に来たことや、マスメデイアが一部であっても複数社報道したことで、この問題が対外的な問題となり、内部的な処理レベルでは対応できない問題となったことは間違いないと思います。 自ら「誤り」を決して認めようとしない警察の体質がありますので、7月20日の申し入れ行動だけで容易に「見直し」を行う可能性は少ないと思われますが、この申し入れ行動を第一弾として、今後多くの人々にこの問題を呼びかけ、廃止の声を広げて行きたいと思います。
第47回日弁連人権擁護大会 参加報告
岩本 光弘
2004年10月7日(木)に宮崎のフェニックスシーガイアにおいて開催された日弁連の人権擁護大会に参加してきました。大会では1日目に三つの分科会が用意されていました。今年の大会は47回目になって初めて外国人問題をテーマに取り上げたそうで、分科会実行委員長の丹羽弁護士(移住連・共同代表)から多くのNGOへ参加の要請があつたので、九州ネットからもこの分科会へ参加をしました。弁護士だけでなく参加は自由で、地元の高校生がたくさん傍聴に来ていました。NGOも含めてこの分科会への出席者は840名で、後ろはたくさんの立ち見が出るほどでした。
第一分科会は「多民族・多文化の共生する社会をめざして外国人の人権基本法を制定しよう」というタイトルでシンポジュームがありました。第1部では弁護士会から問題提起と基調報告があり、総論と各論が詳しく述べられましたが、参加していた高校生でも理解できるような丁寧な説明で、さすが弁護士会だと感心したものです。第2部では当事者の主張が行われました。当事者として@在日コリアンの方々から。A在留特別許可を受けた方々から。B難民の方々から。の3グループが主張を行いました。その後、特別報告として「戦後補償裁判の現状と課題」「中国残留日本人と家族の現状と課題」の報告がありました。第3部からパネルディスカッションがパート1とパート2に分けて行われました。
パート1では「外国人及び民族的少数者の現状と課題」というテーマで、外国人の現状についてのディスカッションが行われました。移住連から渡辺英俊共同代表が報告者として移住連が取り組んでいる活動を報告し、現在日本にいる外国人の抱えている問題点を報告しました。パート2では「多民族・多文化共生社会への展望」というテーマで、これからの取り組みについてのディスカッションが行われました。
最初に実行委員会事務局長から次のような点が指摘されました。@日本に在留している外国人にとって、基本法が絶対に必要である。入管法は00年、02年、04年と3回改定されたが、不法滞在者の一掃を狙った治安維持を目的としていて、なぜこれが必要という議論がなされていない。A今の日本社会では市民意識の変革が必要である。多文化共生の教育の必要性が大切で教育をして意識の変革をしないと差別はなくならない。B歴史の清算が十分なされていない。オールドカマーの人たちへの清算をしていないで政策を進めるため、ニューカマーへも同じことを繰り返している。
移住連からRAIKの佐藤信行さんが外登法についての取り組みを報告し、入管法、出入国管理法の二つで、日本に在留している外国人を管理していて、人権を守る法律が作られていず、日本国民の意識を変えるには制度の制定から入っていかなければいけない。法務省の考え方について、次のようになっていること指摘しました。@日本に難民は来ないことを前提にシステムを作ってきている。だから60日ルールがある。A難民は危ない外国人という意識を持ってきたから、入れるか入れないかの議論だけをしてきた。その結果、入国させても出国させることが出来ない人が増えて来ている。B認定された後の処遇が全然出来ていない。教育、住民サービス、厚生関係などC行政側の裁量権の幅が広すぎていて、担当官僚が変わる度に施策・裁量が変わっている。裁量の幅が広いので、良くなったり悪くなったりする。D人道目的での外国人の受け入れが少ない。E日本は人種差別禁止条約に96年に加入していながら、国内法を何も制定していない。
10月8日(金)は弁護士会の大会でしたが、今回参加したNGOは宮崎県弁護士会館において「宮崎NGO交流・意見交換会」を開催しました。九州ネットは一応地元のネットワークでもあるので活動状況を見てもらうために資料を持って行き、九州ネットの活動状況報告も行いました。この会議では今回の大会を機に「外国人・民族的マイノリティ人権基本法」と「人種差別禁止法」の制定を求める全国連絡会議を、来年春までに準備を進めていくことが決まりました。
宮崎県のNGOが行った宮崎の現状報告では、宮崎県に在住している外国人は4,900名、外国人のための活動をしているNGOは11団体あることが報告されました。今まで九州ネットは宮崎県の活動団体とのつながりが余りありませんでしたが、今回は地元から二つの団体の出席がありましたので、会議終了後出席した地元の方に挨拶をし、九州ネットのことについて話をする時間を持つことが出来ました。今後は連絡を取ることを伝えると共に問題が出たときは遠慮なく我々を使ってくださいと話して来ました。