第17週 話法の助動詞



それでは今日は、話法の助動詞についてやって行きましょう。
話法の助動詞、ってなんか聞きなれないかも知れませんが、要するに、英語でやった助動詞、つまり、can とか must とか、そう言うもののことです。ま、助動詞を言うと、正確には、完了形や受動態なんかの have や be も、助動詞、ってことになりますので、「話法の助動詞」ってわざわざ言った訳です。
「話法」というのは、ニュアンスを付けるとか、そんな意味にとっておいてください。

さて、ドイツ語のこの話法の助動詞ですが、英語とは違う点が2つあります。


Er kommt heute nicht.


これは、普通の文ですよね?「彼は今日来ません」という、なんの変哲もない文章です。
それでは、これに話法の助動詞を使って、「彼は今日来れません」という文章を作ってみましょう。

(「来れません」?「来られません」??要するに、「来ることができない」という意味です(^^;))


Er kann heute nicht kommen.


で〜、話法の助動詞の kann というのを使って、「〜することができる」というのを表わすんですが、kann のすぐ次には、動詞は来ません。入れたくなっちゃうんですが(笑)こらえて、動詞は不定形、つまり、人称変化していない形で、文末に置きます。ここが肝心。

今まで何度か、ドイツ語では動詞は普通、頭から2番目の位置に置く、と言って来ましたが、2番目と文末、ここでがっちり挟む格好になります。

(これが俗に言う、枠構造というやつです)

これは、話法の助動詞だけでなく、動詞要素が2つある文、例えば、未来形や、完了形や受動態のときもそうなります。ドイツ語でも完了形や受動態は、過去分詞を使いますけど、その場合もこう、助動詞と過去分詞が、2番目と文末とで、がっちり囲んでしまいます。

助動詞の後、不定形になる、というのはいいですよね?英語の時も、He can swim. とか言って、He can swims. にはなりませんでしたよね?

そして、もう一つ。ドイツ語の話法の助動詞で大事なことは、と言えば、人称変化があることです。
ついて回るんですよね〜、人称変化って。

(それと、格変化が・・(^^ゞ)

ここで、話法の助動詞ひとつひとつを見て行くことにしますね。


dürfen können mögen müssen sollen wollen
ich darf kann mag muss soll will
du darfst kannst magst musst sollst willst
er darf kann mag muss soll will
wir dürfen können mögen müssen sollen wollen
ihr dürft könnt mögt müsst sollt wollt
sie
(Sie)
dürfen können mögen müssen sollen wollen


それでは、まず最初、dürfen ですが、これは、「許可」を表わします。
例えば、Darf ich rauchen? たばこ吸ってもいいですか、という場合です。

ただし、Du darfst nicht rauchen. みたいに、nicht と一緒、あるいは否定の言葉と一緒に使われたら、「あなたはたばこを吸ってはいけない」と言うように、「禁止」になります。吸わなくてもいい、じゃありません。

次は können 、これは、〜することができる、「可能」を表わす訳で、英語で言う can ですね。Er kann Deutsch sprechen. なんていうと、「彼はドイツ語を話すことができる」、ってわけですね。

(実際問題、「ドイツ語を話す」のは、「ドイツ語を話せる」からこそ成立しているのですが、ここでは問わないことにします(笑))

それから今度は、mögen ですね。これは「推量」を表わし、〜かも知れない、という意味になります。 Sie mag schon über 40 Jahre alt sein. みたいな例がよく使われますね。「彼女はもう、40才を越えているかも知れない」なんて。

また、mögen は、本動詞として、つまり、mögen 単独で使って、〜が好きだ、という意味もあります。Ich mag nicht moderne Musik. なんて言いますと、「私は現代音楽が好きではない」という意味になります。

それから、müssen 、これは、〜しなければならない、といういわば「必要」を表わします。もちろんこれ、英語の must ですよね。Er muß viel arbeiten. 「彼はおおいに勉強しなければならない」なんてね。

それから、sollen ですが、これは、〜するべきだ、という「当為」、なんて言うか、他者の意志と考えてもいいです。例えば、Du sollst nicht töten. なんて言いますと、直訳すると、「あなたは殺してはいけない」、これは聖書にある言葉で、「汝殺すなかれ」(出エジプト記)とか、そんな例があります。

そして、wollen ですが、これは、活用した形を見ると、英語の will そっくりですが、ドイツ語の wollen は、未来というよりもむしろ、話し手の「意志」を表わします。Ich will nach Deutschland fliegen. と言ったら、「私はドイツに行くつもりだ」となります。

今言ったのは、あくまで基本的な意味でして、ほんとはもうちょっと別の意味もあったりしますが、とりあえず、これだけは押えておいて下さいね。

また、話法の助動詞と同じようなもので、möchte というのがあります。


ich möchte
du möchtest
er möchte
wir möchten
ihr möchtet
sie
(Sie)
möchten


本来これは、さっきやった mögen の接続法II式という形で、言わば英語で言う仮定法みたいな形なんですね。教科書ではずーっと後で出てきますが(笑)

(要するに、「もしも私が鳥だったら・・」のことです)

しかしまあ、これは、「〜したい」という意味で、話法の助動詞と同じように使われますので、ここで一緒に覚えてしまおう、ってわけです。Ich möchte Kaffee trinken. 「私はコーヒーを飲みたい」なんてふうに、気軽に使います。
由来なんか、気にしなくっていいです。ドイツ人も普通、知りませんから(笑)母国語の文法や語彙を、そうそう気にしてしゃべる人は、少ないですよね?みなさんだって、「ヤクルト優勝する」と「ヤクルト優勝する」と、どこが違うんですか、って外国人に聞かれたりしたら、ちょっと悩むでしょ?(爆)

(・・・・・??)