mori's Page  低周波音・超低周波音


プラントに於ける低周波音の対策と消音器
The Low-Frequency-Noise & Infrasound Measures and the Silencers at the Plant




1.振動ふるい・振動コンベア

 ふるい振動面が上下振動することにより音の発生面となっている。図1にふるいの構造図を示す。

 1.1.対策方法

  1.1.1.ふるい上下面の逆位相波を利用して音圧の低減を図る方法

1)ふるい周囲を覆い、上下面より発生している逆位相の音波を相殺しやすくする。(図2参照)

2)上記覆いで不足の場合、ふるい構造体の不要部分に強度的に問題無い場所に穴を空け音源の面積低減を行う。
 ・更に減音量を上げるためには、材料投入口や搬出口を必要最小限に塞いだ後、拡張型の消音器あるいはアクティ
ブサイレンサーを取り付ける。



1.1.2.複数台の同一ふるいを位相を制御して稼働して干渉させ低減させる方法

 それぞれのふるいから発生する音波を干渉させて低減する。現在ではインバータが発達しているので、駆動モーター
をそれぞれ位相制御して同期運転となるようコントロールすれば低減は可能である。本方法は低周波音だけでなく地
面振動も低減できる。ただし、本方法は発生している低周波音の波長に比べふるいの間隔が十分小さくないと、対策
後鋭い指向性を持ち、ある方向では低減できるが他の方向では逆に大きくなる可能性がある。

1.2.対策例

ふるいは単床開放型(図1参照)で12.5Hzがふるい近傍で92〜105dB、52m離れた地点で84dBある。ふるい面が音の
発生面となっている、図2に示すようにふるい全体を鉄板で覆い、ふるい面の振動による上部と下部の音波が相殺さ
れやすくし、音圧レベルを減少させる方法で約10dBの低減があった。覆う鉄板には十分な強度が確保できるよう注意
を払うことが必要である。

 振動コンベアの対策についてもふるいと同様の原理で対策を行うが、振動コンベアの場合は、ふるいに比べて運搬
面の長手方向の距離が長いために、内部に幾つかの仕切板を入れて、積極的に上、下部の音波の相殺が期待でき
るようにする(図3参照)。幅1m、長さ10m程度、発生周波数10Hzに適用した場合、約5dBの効果があった。






2.コンプレッサー、内燃機関、ブロアー

 ピストンの往復やローターの回転による圧力変化が吸気口、排気口から放出され低周波音が発生している。

2.1.対策方法

2.1.1.排気口に拡張型消音器もしくはアクティブサイレンサーを取り付ける。

図4は基本的な拡張型消音器を取り付けた例で、消音器本体、尾管の長さを低減したい周波数(f0)の波長のλ/4
にし、入口管と尾管の断面積を同一とし(S0)消音器本体の断面積をS1にした場合のf0の挿入損失は20log(S0/S
1)となる。図5は各周波数帯域で計算した挿入損失例である。コンプレッサーやエンジンなどの音源のインピーダンス
は定速度音源と仮定し考えても良い。入口管の長さは十分検討しなければ効果が出ない場合もあり、また図5で示す
ように負の減音量となる周波数帯域が存在するので2次、3次の周波数に対する影響も十分考慮する必要がある。消
音系の周波数特性を変更するためには、それぞれの管路の長さを変える事により行う。(5.消音器参照)また、消音
器内部に抵抗材(吸音材等)を配置することにより、負の減音特性部を改善すると共に、付随した普通周波数帯域の
騒音を低減できる。

 吸排気口に上記の様なパッシブな消音器の代わりにアクティブサイレンサーを取り付け低減させることも可能であり、
この場合装置自身は波長の長さに関係なく設計できるので小さく出来る可能性が高い。しかしながら大音量を発生で
きる消去音源(スピーカーなど)がない。この場合、増幅(共鳴)管を消去音源に取り付けて大音圧を発生させている例
もある。この他に、温度、流れの影響に対しての検討が必要である。図6はアクティブサイレンサーのエンジン排気用
へのシステム例を示す。

2.1.2.複数の同一機器を位相制御して稼働し低減させる方法

複数の同一機器が近接して設置してある場合は、ふるいの場合と同様に位相を制御して音波を干渉させ低減させるこ
とにより低減できる。



図4 拡張型消音器による対策






3.送風機
 大型送風機の場合、回転数と羽根枚数による一次の周波数が低周波音として発生することがあるが、他に部分風量
において旋回失速・サージングによっても低周波数の騒音を発生する。 
 この場合、旋回失速を発生させないように部分負荷での運転がないよう設計する、または部分負荷での運転をさける
ためバイパスを設けるなどの対策が考えられるが、このような対策が施せない場合は低周波音用消音器の取り付け
が必要となる。

 3.1.対策方法
 通常は風量調節を行う場合、図7のように管路にダンパを入れて行っているが、風量を絞り込んだときなどサージン
グ、旋回失速が発生して低周波音が発生することがある。図8の様にバイパス管路を設けて風量を調整するとサージ
ング、旋回失速は起こらなくなる。また、モーターの回転を制御して風量調節を行ってもよい。
 バグフィルター等でバグが詰まってくると風が流れなくなり、サージングが発生することがある。この場合バグの掃除
間隔を調整するか、排気口に消音器を設置する。消音器はコンプレッサーと同様の拡張型消音器を設置する事が多
いが、送風機の場合音源のインピーダンスは定音圧音源に近くなる。

3.2.対策事例
 発電所用大型送風機(FDFボイラー押込み送風機)よりサージングと考えられる16Hzの低周波音が発生しており、図
9のような消音器を取り付けることにより、図10に示すように15dBの減音効果が得られた。
 図11はボイラー室換気扇より60Hzの低周波音が漏れ出ていた換気口に消音器を設置した例で20dBの効果があっ
た。









4.ボイラー
 火炉からは熱による圧縮、膨張が原因で、再熱器からは気流によるカルマン渦、燃焼共鳴が原因で低周波音が発
生することがある。また、押し込み送風機からサージング等が原因で発生することもある。(*騒音制御工学ハンドブッ
ク応用編より参照)

 4.1.火炉及び再熱器の対策
燃焼器の改良、調整により燃焼状態を変え渦や圧力変動を低下させることが本来であるが、音響的に次のような対策
も行われている。
@燃焼室の形を変え、熱源を管中央より下流側に位置させる。A管炉・煙道に仕切板を入れ固有振動数を変える。B
煙道の圧力変動・流速変動の腹に孔や絞りを設ける。C管路にリブを設け規則的な渦の発生を防ぐ

4.2.対策事例
蒸気管のカルマン渦、管自身の固有振動数および既設仕切板(防振板)間の共鳴周波数一致が原因であるため、仕
切板間の間隔を小さくし、共鳴周波数を変えるために新たに仕切板を1枚追加した(図11参照)結果ボイラー後伝部
にて2〜80Hzの音圧レベルが105から91dBに低減された。




5.低周波音用消音器

5.1.内ダクト付き拡張型消音器の音響式



                      

                   

5.2.ブランチ管




5.3.2ポートマトリックスによる拡張型消音器の計算

 以上の音響式では系固有のインピーダンスや複雑な管路は計算出来ない。このような場合2ポートマトリクスにより
様々に組み合わせた管路系の計算が可能となる。

 音源から管路出口までの音響等価回路は、図14のようになる。このとき管路系の出入り口の音圧と体積速度の関
係は2ポートマトリックスで表される。






5.4.アクティブサイレンサーの原理

 図15に管路系のアクティブサイレンサーの原理図を示す。

 音源から発生した騒音は参照入力センサーにより採取され信号処理装置へ導かれる。信号処理系は参照入力より
入力した信号を処理し2次音源より発生させる。このとき2次音源より発生する消去音が適切か、誤差入力センサーの
信号により信号処理系を制御する。

信号処理系と音響伝搬系の伝達関数が逆関数となったとき騒音は消去される。

信号処理系は誤差入力の二乗平均誤差が最小となるように振る舞うLMSアルゴリズムを発展させたFiltered-X LMS
が主流である。




6.参考文献

1)森卓支、西脇仁一、藤尾昇 「大型送風機用超低周波消音器」日本騒音制御工学会技術発表会講演論文集 昭和
54年p213〜216

2)西脇仁一、森卓支、藤尾昇「振動型機械(ふるい、コンベア)から発生する低周波音とその対策」日本騒音制御工学
会技術発表会講演論文集 昭和58年p5〜8

3)騒音制御工学ハンドブック応用編 (社)日本騒音制御工学会編 (技報堂出版2001)

4)福田基一、奥田襄介:騒音対策と消音設計(共立出版1974)

5)須山栄蔵、他:管内平面波の減衰定数、日本音響学会誌、35巻4号(1979)



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