- 一両編成の秋田内陸縦貫鉄道には車掌がいて観光案内をしていた。阿仁マタギ駅前の観光案内所の管理人に気をつけてと声をかけられて出発した。快晴だった。登山口の打当内(うっとうない)までの間で正面に森吉山が見えた。
- 登山口からの植林帯は少し草深く道が分かりにくかった。ミズナラの森になると道がはっきりした。ドングリが多かった。靴下に草の実(くっつき虫)がたくさん付いた。標高700mでは岩から湧く清水が有った。標高833mのブナ林で幕営した。
- 二日目は曇りだった。ブナの黄葉を楽しみながら登った。正面に滝が見える水場付近は足場が悪かった。森林限界を超える頃に雨が降り出した。レインウェアを着た。
- 小雨降る山頂は風が強かった。ザックカバーを飛ばしてしまい、灌木帯をかき分けて回収した。風下で風を避けて一休みした。最初下に見えていた小屋は霧で見えなくなってしまった。登ってきた単独行二人は、すぐに下山していった。
- 霧の中を山人平へ向かった。登山者二人とすれ違った。山人平は20mほどの視界だった。ヒバクラ岳分岐に近づくと霧が晴れてきた。分岐で一休みする間に森吉山が見えてきた。雨もやんだ。木道には熊の爪痕が有った。
- 小池ヶ原へ眺めの良い稜線を歩いて行った。三角点ピークを回り込んだところが小池ヶ原で小さな池が有った。小池ヶ原からは下りになった。ブナの黄葉が見事だった。レインウェアはすっかり乾いたので水場で脱いだ。鞍部付近はぬかるんだところが多かった。ぬかるみには熊の足跡が付いていた。
- ブナの黄葉を楽しみながら歩いて行った。割沢森を過ぎ高場森分岐まで進むと再び雨が降り出した。レインウェアを着た。赤水渓谷への分岐の手前にベンチが有った。分岐から赤水渓谷へ下る道は急坂でロープが取り付けられていた。
- 坂が緩くなると遊歩道に出た。右へ5分で桃洞(とうどう)滝と赤水渓谷の分岐に着いた。水はけの良い所にテントを張った。小降りの雨の中、空身で桃洞滝に向かった。桃洞横滝を過ぎると水流脇の道になった。紅葉がきれいだった。輪切りの丸太を縦に置いた橋を渡った。桃洞滝は岩を滑り落ちるきれいな滝だった。テントに戻った時は夕闇が迫っていた。
- 翌朝は曇りだった。沢は昨日より2-3cm水量が減っていた。渓流タビを履いて歩き始めた。しばらく進むと山道はなくなり、水流の中を歩く道になった。ナメが続き、左右の紅葉がきれいだった。所々の深い穴を避けながら歩いた。
- 次々と現れる美しいナメを楽しみながら歩いて行くと、本流と玉川温泉に向かう流れとの分岐に着いた。小雨が降り出していた。荷物にザックカバーを付けて沢の斜面の濡れない場所に置き、空身で兎滝に向かった。いままでの流れより、一層緩やかな流れになった。足元からヤマメが数匹泳ぎ去るのが見えた。
- 周囲の紅葉に見とれながら歩いて行くと、行く手から流れの音が聞こえてきた。カーブを曲がると兎滝が見えた。手前が静かなよどみになっていて白い滝が水面に反射してきれいだった。
- 分岐に戻った頃には雨はやんでいた。荷物を回収して玉川温泉へ向かった。水流は今までより急で少なくなった。登るのが難しい滝が2箇所あり、いずれも足場のボルトが打たれていた。所々で倒木が水流をふさぎ小さなダムを作っていた。
- 二俣を左に入り、やがて水流が無くなると赤水峠に着いた。登山靴を履き終わると、やんでいた雨が再び降り出した。
- 赤水峠からは紅葉のきれいな山道だった。林道に出てからは本降りの雨の中を歩いた。
- 結局、三日目は登山者には会わなかった。新玉川温泉で汗を流し、服を着替えてからバスに乗り込んだ。