報 告 柳戸信吾
開催日 1999年3月5日(金)
時 間 19:00〜21:00
会 場 株式会社小林工芸 会議室
参加者 弓場哲雄、重盛恭一、嵯峨創平、星野守弘、下野晃義
ミ利研会員である柳戸信吾さんが、自身の職場での活動を会員向けにまとめ直して、スライドを交じえ解説して下さいました。
以下は発表の概要です。
名 称“掘り起こせ!古代からのメッセージ Part 5 考古のなぞに挑戦しよう!”
期 間 平成10年8月4日〜9月6日
会 場 飯能市郷土館
主 催 飯能市教育委員会
飯能市は、以前から夏休みに期間を合わせ、小学生を主な対象にした企画展を行なってきた。
今回は5回目(隔年)の実施である。
1〜3回目までは“最新出土展”という感じで、実物資料を手に取らせる事はなかった。
前回の4回目から積極的に触らせる様な仕掛を設けた。外部からは事後のレポートを読んでからの反響が多かった。

実物資料を手に取って見てもらおうとしたそもそものきっかけは、スミソニアンで見た標本展示(?)。化石の実物資料を抽出ごと借りて机に運び、手に取って見ることができるという事に感動した。
今回の企画の雰囲気は展示と言うよりは、体験学習室の様だった。
壁面には解説パネルも用意したが、実際には大人あるいは大人が子供に説明するために読む位で、子供はほとんど見ていなかった。
今回作った物の中には、会期終了後も学校等に貸し出せるようになっているものがある。言い換えると、そのようなアイテムが一同に会したイベントだったともいえる。

展示空間は、実際の研究者がどのような過程を経て仕事を進めていくかという点をべ一スに構成した。つまり、現場での発掘作業、資料の研究、論文発表の三段階。それぞれ第一部「発掘現場再現」第二部「はんのう考古学研究所」第三部「私が考えた縄文人」に対応している。
来場者の平均滞在時間は2時間。リピーターがかなり多かった。会期中の入場者数は3,118人。1日平均100人。曜日別では火曜日が23%と最も多く土日の各18%をおさえている(月曜休館)。
プランニングは柳戸氏を含め4人。作業は25人のスタッフで3週間かかった(最終日は徹夜)。

会期終了後、前述のアイテムを携えて市内の中学校に出張したが好評だった。知識のある子は斜に構えがちで、日頃あまり勉強に関心がないような子のほうがかえって積極的に参加していた。
反省点あるいはこの種のイベントの問題点として、指導員が不可欠だということがある(指導以外に子供たちが組み立てた模型の写真撮影、復帰、監視の仕事がある)。また作りが単純な分、前回(第4回)の方が土器に触れる機会が多かったと思う。
土器等の資料は壊れ易いため、専門家の中では資料保護を第一に訴える人も多い。その背景には開発の名のもとに埋蔵文化財がないがしろにされる中、必死にその意義を説いて戦ってきたという歴史がある。同じ考古をやる人でも世代によって資料保護と普及活動に対する感覚の違いがあるようで、今回の企画も柳戸さんを含め、30〜20代のスタッフによって作られたものだという。

「もっと上の世代がやっていたら、こうはならなかったでしよう」とは柳戸さんの談。
柳戸さん、貴重なレポートありがとうございました。