3年大石ゼミ 研究論文
『少年非行問題に関する一考察』

            政経学部 経済学科 74308番 武田 幹緒

【目次】
はじめに
A、少年非行の意味
B、少年非行の動向と特質
 1、 少年刑法犯ならびに少年特別法犯の推移          
 2、 少年刑法犯の動向
 3、 少年特別法犯の動向
 4、検挙補導少年の特質
 5、犯罪少年の実態調査結果
C、非行少年の特質
D、非行少年の生活意識と価値観
 1、 非行少年の特徴 
 2、 非行少年の生活意識
E、今日の青少年
 1、 今日の青少年の意識
 2、 今日の青少年の日常生活
 3、食事から見る青少年の心の発育 
F、少年の非行対策
 1、 青少年の覚せい剤等の薬物乱用対策
 2、 凶悪・粗暴な非行対策
 3、少年非行の防止活動
終わりに
 〈参考文献〉


はじめに

 近年、社会の耳目を引く少年による凶悪事犯が発生したこと等を契機として、少年非行問題については、かつてないほどに高い関心が寄せられるに至っており各方面において様々な角度からこの問題に関して議論がなされている。戦後三つの波を経て、昭和59年以降は減少傾向にあった検挙数が、ここ2〜3年前から著しく増加傾向にあるほか、集団による非行行動や、処分歴のない少年による非行の増加も多く見られる。最近の少年の特性についても様々な問題が指摘されており、少年非行問題は、現在の刑事政策上の最も重要な課題であるといえる。そこでこの度の論文においては、少年非行の動向と特質、非行少年の生活環境などを特に詳しく述べてみたい。

A、少年非行の意味

 わが国における少年非行は、14歳(刑事責任年齢)以上20歳未満の少年による犯罪行為、14歳未満の少年による触法行為(刑罰法令に触れるが、刑事責任年齢に達していないために刑事責任を問われない行為)及び20歳未満の少年の虞犯(@保護者の正当な監督に服しない性癖のあること、A正当な理由がなく家庭に寄り付かないこと、B犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際またはいかがわしい場所に出入りすること、C自己または他人の徳性を害する行為をする性癖のあることのうちいずれかの事由があって、その性格または環境に照らし合わせて、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれがあると認められる状況)の3種類の行為または状況を総称する概念である。家庭裁判所の審判における非行少年は、それぞれ犯罪少年、触法少年、虞犯少年と称される。
 また、非行少年は年齢別により次の3つに区分される。14・15歳の少年は年少少年と呼ばれる。年少少年は、刑罰を科すことが少年にとって望ましくないを考えられているため、家庭裁判所が刑事処分相当として、観察官に事件を戻すこと(逆送)ができないので、おとなと同じ手続で取り扱われ刑罰を科されることがない(少年法第20条)。次に16・17歳の少年を中間少年と呼ぶ。中間少年では、逆送はできるが死刑を言い渡すことができない。
最後に18・19歳の少年を年長少年と呼ぶ。この年齢には死刑を宣告することが可能であり、現に執行された例もある。年齢については、行為時か処分時かが問題となるが、家庭裁判所での手続については、処分時が、刑事裁判については行為時が原則として基準となる。

B、非行少年の動向と特質

1、 少年刑法犯ならびに少年特別法犯の推移

 戦後の少年刑法犯ならびに少年特別刑法犯の人員の推移におもに3つの波がある。第一の波は戦後すぐの昭和20年代中盤あたりである。この時期は戦後の混乱の中、生活の困窮、すさんだ世相等を背景に、家出、浮浪、売春等の行動をとる少年が多かった時代である。第二の波は高度経済成長の中、少年犯罪の悪質化や都市流入少年による非行等が見られた時代である。そして第三の波は昭和末期の1980年代中頃でバブル期に入る前のあたりである。この時期には、経済発展、核家族化、人口の都市集中、地域社会の連帯感の希薄化、マスメディアの発展といった様々な社会的変化により青少年を取り巻く環境が変化していく中、窃盗犯の増加、非行少年の低年齢化やどこにでもいるような少年による非行等の増加、家庭内暴力、校内暴力及び登校拒否が増加した時期でもあった。平成に入り、その数が減少していたが、最近また増加傾向に陥っている。そのため現在の時期を戦後第四のピークとも呼んでいる。最近の非行は多くが金と結びついた非行であり、凶悪化というよりも、いままで非行と縁のなかった子が金欲しさに簡単に非行に走るという意味で「非行の一般化」というのが最も実態にあっている。

2、 少年刑法犯の動向

 交通関係を除く少年刑法犯の年齢層別人員人口比において、年少少年の動きを見ると、少年非行の波と共通するものがある。近年、特に平成7年以降は増加傾向にあり(。-1図参照)、これが年少少年の非行の増加、すなわち非行の低年齢化として特徴づけられるものであることを示している。中間少年や年長少年においてもここ2年ぐらいは増加傾向にある(。-3図参照)。
 殺人及び強盗といった罪を犯した凶悪犯については、強盗は戦後のピークのあと減少し、30年代半ばに再びピークを迎えた(。-4図参照)。その後40年代の半ばまで現象し続けたあとほぼ横ばいを保っていたが、平成の時代に入り増加傾向に入り、平成7年以降急増した。殺人に関しては、平成8年を除き、年長少年が圧倒的に多いが、長期的に見るといずれの層もおおむね減少傾向にある。強盗に関しては触法少年を除き、いずれの年齢層も昭和40年代以降減少し、その後は横ばい状態であったが、平成7年以降急増している(。-4図参照)。
 傷害、暴行、脅迫及び恐喝といった粗暴犯については(。-6図参照)、昭和30年代に入って著しく増加し、以前に述べた少年非行の第2の波を特徴づける動きを示している。40年代に入ると急激に減少したが、50年代半ばから再び増加し、最近また増加傾向にある。
 窃盗、詐欺、及び遺失物横領等を侵した者を財産犯と呼ぶ。窃盗については、少年刑法犯全体の推移に対応して、3つの波が見られる。手口に関しては、万引きが約半数を占めており、次いで、オートバイ盗、自転車盗となっている。窃盗の手口については年代により変化が見られるが、近年は、万引き、乗物等の非侵入犯が増加する一方、空き巣ねらい・忍び込み等の侵入盗が減少傾向にある。横領は、昭和40年代後半から急激に増加している。少年による横領は、ほぼ100%遺失物横領であり、その大半は放置自転車の乗り逃げである(。-7,。-8図参照)。
 以上の分野にて新しく出てきている事件は次のようなものである。一つ目は、「オヤジ狩り」といわれる通行人の大人に集団で襲い掛かるタイプの強盗致傷である。もう一つは刃物を使った殺傷事件が連続して発生していることである。
 
3、 少年特別法犯の動向

 少年特別法犯送致人数総数の動きを見ると、昭和30年代後半と昭和50年代後半にピークとなる波が存在する(。-9図参照)。そのうち2つ目の波の始まりである昭和40年代後半からは薬物関係の犯罪が著しく増加おり、現在でも毒劇法違反(シンナーなどを使った犯罪)と覚せい剤法違反で約7割以上を占める。
 交通事犯については、昭和30年代以降、モータリゼーションの進行に伴って交通犯罪が急増している。現在は違反別に分けてみると、無免許が約半数を占めている。次いで最高速度違反・酒気・定員外乗車となっており、成人に比べると無免許の占める割合の高さが目立っている。

4、 検挙補導少年の特質
 
 戦後の少年非行の動向において特徴的なことの一つに、女子少年による非行の増加が挙げられる。罪名を見るとどの年も窃盗が圧倒的に多いが、近年では横領の比率が年を追って上昇し、この2つで全体の90%前後を占める。また、特別法犯に関しては薬物事犯が多く、女子非行の特徴の一つとなっている(。-15図、。-1表参照)。
 少年の非行集団の代表的なものの一つに暴走族が挙げられるが、その構成員数に関しては、昭和57年以降減少以降にある。一方グループ数は近年増加傾向にある。これはグループの規模が小さくなっていることを示している。
 少年による家庭内暴力の認知件数も、近年増加傾向にある。学識別に見ると、どの年次も中学生が最も多くなっている。家庭内暴力の対象別の状況を見ると、一貫して母親が最も高い。やはり父親に比べ家庭にいる時間が多いうえ、子供に干渉する時間が多いため、ちょっとしたことで対象に向けられるのであろう。
 学校は、少年にとって家庭とともに重要な生活環境である。昭和25年には半分にも満たなかった高校進学率が、40年には70%を超え、49年以降は90%をも超えている。そのなかでも特にいじめ問題が深刻となっており、いじめが関係とした自殺が発生するなど、憂慮すべき状況にある。文部省の調べによれば、最近のいじめの態様において多かったのは、冷やかし・からかいであり、次いで、言葉での脅し、暴力、仲間はずれとなっている。一口にいじめといってもその態様は様々で、必ずしもすべてが刑事司法手続の対象とされるわけではない。また、行為の性質上、実態を把握しにくいのが現状である。いじめは単に加害者が加える攻撃の問題にとどまらず、攻撃される側、すなわち被害少年が、いじめに対する仕返しとして、殺人、傷害等を犯したり、自殺するなどの事例も見られる。平成9年の事件総数93件のうち、2件がいじめの仕返しによる事件である。
 法務省では、平成6年に、子供の人権問題を専門的に取り扱う「子どもの人権専門委員(子ども人権オンブズマン)」制度を設け、10年6月現在、計685人の専門委員を全国の法務局・地方法務局に配置し、いじめに悩む人々に対する相談活動を行い、いじめ解消のための適切な措置を講じている。

5、 犯罪少年の実態調査結果

 ここでは、少年非行の特質を明らかにするため、過去30年間に発生した少年事件から無作為に10分の1を抽出し、その人員が比較的多い傷害・恐喝・窃盗及び横領事件に関係する少年を中心に分析した結果である。
 犯行地と居住地との関連についてだが、傷害・恐喝及び窃盗においては犯行地が対象少年の居住地と同一市町村であるものの比率が大多数を占めている。また、犯行地が大都市である場合には、犯行地が郡部である場合と比べて、同一市町村であるものの比率が高くなっている。
 犯行場所に関しては、傷害及び恐喝は、路上を犯行場所とする者の割合の比率が高い。また、学校等とする者の比率は、傷害では昭和50年代後半に急上昇し、恐喝でも50年代後半から60年代初めにかけてピークがあったが、その後は下降している。窃盗では、デパート等とする者の比率が最も高い年次が多いが、建物等周辺とするものが、昭和50年代以降、長期的に上昇している。
 犯行動機は、恐喝・窃盗及び横領に関しては「困窮・生活苦」とする者の比率は極めて低い。傷害においては、近年「激情」がおおむね半数を超え、「怨念・報復」が約4分の1であるが、近年、傷害及び恐喝においても、この比率が上昇傾向にある。
 犯行の計画性及び人数についてだが、計画的犯行の比率は、恐喝で40%半ば、傷害で20%台、窃盗で20%台、横領で20%未満となっている。人数についてだが、恐喝においては共犯率が極めて高く、その他は下降傾向にある。しかし、全体的に見ると共犯者を伴う犯罪数は増加している。
 最後に反省の態度に関してだが、近年反省の度合が低下する傾向が見受けられる。これは少年法により守られているということを知っている少年が増加したことにもよるだろう。

C、非行少年の特質

 少年鑑別所に収容された少年について項目別にまとめると次の通りである。
 年齢層については、鑑別所収容少年総数では、男子は年長少年、女子は中間少年が最も多いが、ここ10年では男子は中間少年、女子では年長少年の比率が上昇している。また、凶悪事犯少年のうち、殺人事犯少年は年長少年、強盗事犯少年は中間少年が、それぞれ最も多い。更に、薬物事犯少年では、男女ともに年長少年が圧倒的に多いが、毒劇物少年は総数とともに、男子が年長少年、女子は中間少年が最も多くなっている。
 職業については男子は有職、女子は無職が最も多い。凶悪事犯少年では、学生・生徒の比率が総数及び薬物事犯少年と比べて高くなっている。
 非行の動機については、殺人事犯少年は「かっとなって」、強盗事犯少年は「お金や物が欲しくて」が最も多いが、後者では「誘われて、その気になって」の比率が近年上昇している。薬物事犯では、覚せい剤少年が「好奇心」、毒劇物少年は「うさ晴らし」が、それぞれ最も多かった。
 少年鑑別所入所以前の問題行動については、総数、凶悪事犯少年、薬物事犯少年共に、その経験者が7割を超えるのは、酒、タバコ、性経験である。さらに、覚せい剤少年では、毒劇物使用経験が男女共に7割を超えているが、近年、毒劇物使用経験なしに覚せい剤を使用するものが増加している。
 保護者が実父母である比率は、男子が女子を上回るが、この10年間男女共に上昇している。また、保護者の生活態度は、中以上の比率が上昇している。親の養育態度は、この10年間累計すると、両親共に放任が最も多いが、強盗事犯少年では母の養育態度は普通が最も多い。この10年間では、放任の比率の低下と普通の比率の上昇が見られる。親への態度は、男子は親和・信頼、女子は両価が最も多いが、強盗事犯少年では、親和・信頼の程度が高くなっている。また、覚せい剤少年の女子は、母に対しての親和・信頼が最も多くなっている。現在の家族の問題については、問題を抱えている者は女子のほうが多い。問題のない比率はこの10年間上昇し、問題の中では、指導力欠如、交流不足の比率が上昇している。殺人事犯少年には、かなり深刻な家族の問題を抱えた者と問題のない者との双方がいる。

D、非行少年の生活意識と価値観
 
1、 一般的適応感

 家庭生活に対する満足度についてだが、満足している者の比率は平成9年(以下今回)において早く7割を示している。一方不満の理由について尋ねると親の理解度、家庭内の争いを挙げる者が多かったが、親子間や家庭内の対人関係等を背景とした不満理由は平成2年調査(以下前回)を下回っているのに対し、家庭の収入が少ないと言う経済的な理由を挙げる者の比率が上昇している。次に家庭生活に対する満足度を少年院在院少年と短期保護観察少年で比較すると非行性が進んでいる者のほうが家庭似対して不満を抱くものが多く、また、男子に比べて女子の方でその傾向が強い。友達づきあいの満足度に関しても、その比率は男女とも短期保護観察少年の方が高い。このことからも、友達との絆の深さが犯罪を防いでいることが分かる。
 今の社会に対する満足度に関しては、依然として「どちらともいえない」と答える者が多いが、満足であると答えた者は前回を下回り、逆に、不満とする者の比率は特に女子で上昇している。その理由としては、主に「若者の意見が反映されない」とか「正しいと思うことが通らない」「社会の仕組みが変わらない」「金持ちと貧乏人の差が大きい」などが挙げられる。特に少年院在院少年の約4割が、今の社会に対して何らかの不満を抱いているのである。
 今の自分の生き方に関しての満足度は、満足するものの比率は前回より落ちている。そして「どちらともいえない」と答える者の割合が高いのが目立つ。これは人生に対する無気力観につながっているように思えるものである。非行少年の自己意識を見ると比較的男女差が大きい。否定的な意識をもつ者は女子に多く見られ、肯定的な意識をもつ者は男子に多く見られる。否定的な意識は非行性が進むにつれて強くなる傾向が認められる。特に少年院在院少年は、自分の努力を自らかなり評価しているが、他者からは頼りにされていないと感じていることが多い。

2、 生活意識

 今回の調査では、家族とコミュニケーションをとる者の比率が伸びている。いくらか家族との交流や心理的な結びつきが強くなってきている証拠である。しかし、非行性が進むにつれて家族との交流が希薄になるのは否めない。非行性が進んだ少年ほど自分の親の養育態度に関して、放任・言いなり・気まぐれなど何らかの問題を感じる者が多いという結果になっている。また罪悪感や規範意識の欠如、他律性、表現能力の未成熟、自己抑制力の不足などがみられる。これには経済情勢の低迷、少子化、国際化、情報化等の社会経済情勢の変化やこれらによる社会の意識構造の変化が、青少年の意識や行動にも直接・間接に大きな影響を与えているといえる。

  
E、今日の青少年

1、 今日の青少年の意識

 第四の波にきていることは先程述べたが、この背景には、少年年自身あるいは社会全体の意識や価値観の変化、青少年を取り巻く環境の変化の影響が指摘されている。
 こうした青少年自身の問題について成年層は、忍耐力、感情のコントロール、規範意識(モラル)の欠如を挙げる者の割合が高くなっている。一方少年層でも同じことを挙げる者プラス自己中心的と考える者の割合が高い。昭和58年のときと比べても前で上げたものの割合が増加しているとともに無気力を挙げる者の割合も増加している。このように青少年の問題点に関する一般認識と、非行少年に見られる特徴には、共通点もある。大多数が健全なる青少年だが、これを特別と考えてはいけない。広く青少年全般の問題として見る必要性がある。

2、 今日の成年の日常生活

 今日の自分の持ち物について聞くと、物質面については比較的恵まれた環境にあるといえる。また少子化に伴い一人部屋を持つ青少年も近年増加している。それに対して保護者のほうは、約8割方が子供に対して自主的な行動を尊重する傾向がうかがえる。青少年にとって保護者の束縛は低下していると考えられている。青少年の生活時間を見ると、学業時間がもっとも長いのは中学生で、睡眠時間は年を追うごとに短くなっている。最近特に見られるのはテレビを見る時間が増加しているところと学業時間の減少である(第1-2-14図参照)。わが国は高い学力の水準にいる国の中でもっとも学業時間が少ない国家である。週休2日制の導入にあたりさらにその割合が増すと見られる。その他、現代の日本人は体格の向上にも関わらず、運動能力の低下という現象が起こっている。これは1日増えた休みも塾や家庭内でのこもった遊びに費やされるためと見ることができる。これは自由時間が有効に使われていないとも取れる。普通の日においても、家でこもって一人で遊ぶ傾向が強いため、遊びを通して多様な人と触れ合う経験が少なくなっていることもうかがえる。

3、 食事から見る青少年の心の発育

 一般にジュースやスナック菓子を多く採ると、血糖値を下げようとしてインシュリンが分泌されすぎて、逆に低血糖になりイライラしたり、下がり過ぎた血糖値を上げようとしてアドレナリンが分泌されて、カッとしやすくなるといわれている。
 一方で孤食は非行問題とも密接に関わっているともいえる。これは近年増加傾向にあり、家族間の理解を深めたり、マナーを学んだりする機会の減少が、非行問題の背景にあるのではないかという指摘もある。

F、少年の非行防止

1、 青少年の覚せい剤等の薬物乱用対策

近年、薬物乱用問題が深刻にあり、特に、覚せい剤事犯で検挙される青少年の数が急増されており、青少年層への薬物乱用の浸透の傾向が見られることを考慮し、平成9年1月に、内閣総理大臣を本部長とする薬物乱用対策推進本部が内閣に設置され、さらに、同本部に取締対策専門部会及び青少年対策専門部会が設置された。平成10年5月26日には、薬物乱用対策推進本部において、「薬物乱用防止五ヶ年戦略」が決定された。この決定に踏まえ、青少年による薬物乱用の根絶を図るために、関係庁が連携しながら、関連施策の充実に努めている。

2、 凶悪・粗暴な非行対策

 最近の少年非行の特徴の一つとして、平成10年には入ってから相次いで発生した刃物使用事件に象徴される凶悪化・粗暴化の進展が挙げられる。このことより、総務庁、警察庁、文部省及び自治省の人間が、「少年のナイフ等携帯の問題に関する関係省庁連絡会議」を開催した。その会議には、後に法務省、厚生省、郵政省も加わった。各省庁が関係機関・団体、地方公共団体等に対して、会議の場や文書を通じて、少年のナイフ等携帯問題への取組を指示・依頼した。

3、 少年非行の防止活動

 総務庁では、関係省庁の協力を得て、昭和54年度から、毎年7月を「青少年の非行問題に取り組む全国強化月間」と定め、関係機関、関係団体、ボランティア等が、共通の理解と認識の下に、広報啓発活動及び有害環境の浄化活動の推進、家庭及び職場における指導の充実、各種相談事業及び補導活動の充実強化、住民の地域活動の促進、深刻ないじめ等に苦しむ少年の保護活動の促進など非行防止と保護のための各般の活動を集中的に実施している。
 また、法務省においても、関係省庁、ボランティア団体等の協力の下に、毎年7月に「社会を明るくする運動」を実施している。
近年は、少年の非行防止とその更正の援助のため、関係諸団体等による地域における各小集会活動を中心に、様々な活動が実施されている。
 さらに警察庁でも、例年、学校の休み明けの時期に、家出少年の発見保護活動を強化し、家出人の捜査発見及び家出中における被害又は非行の防止を図っている。
 その他にも学校による指導、地域社会における非行防止のために積極的な活動が行われている。

おわりに

 今回の研究において、政府や地域社会が対策を練り、行動していることが伺えたが、しかしながら、今一つ政府は踏み出しに迷っているような感じがした。最近の公的機関は国家機密といった感じで、どちらかというと臭いものにはフタをせよという考えが通っているような気がする。非行少年はどこかで心で叫んでいるはずである。そこに僕らおとながもっと親身になって接してあげるべきであると思う。ここに書いてある状況に関しては正直いって僕らに理解できないこともあるだろう。だからこそ、もっと僕自身子どもに接して、今の子ども論について伝えられるようにしていきたい。

〈参考文献〉
・総理庁青少年対策本部編『平成10年版 青少年白書』
・清永賢二編『少年非行の世界』有斐閣選書、1999年。
・守屋克彦『現代の非行と少年審判』勁草書房、1998年。
・法務省法務総合研究所編『平成10年版 犯罪白書』
・後藤弘子『少年犯罪と少年法』明石書店、1997年。
・小田晋『非行といじめの行動科学』フレーベル館、1997年。
・第一東京弁護士会少年法委員会『Q&A少年非行と少年法――少年は「凶悪化」しているかーー』明石書店、1998年。