ファイルの互換性について


はじめに
 自分一人でコンピュータを使い、他人とファイルをやりとりすることが全く無い場合、ソフトウェアとかそのバージョンとかを気にする必要は全くありません。しかし、世界には種々のOS上で、種々のソフトを使っている人々がいます。万が一、それらの人々とファイルをやりとりしたいとか、しなければならなくなった場合には事情が異なってきます。そうした場合、ファイルの互換性に関する知識は不可欠になってきます。
 否、他人とファイルをやりとりしない場合でも、新しくコンピュータを購入したりして、それまで使っていたワープロ専用機で作成した過去のファイルを引き継ぎたい場合などにも、ファイルの互換性に関する知識は必要になってきます。しかもインターネット時代と呼ばれる今日、インターネットを通して何時、何処の誰とメールや文書や画像等のファイルをするようになるか分からないのです。
 従って、ファイルの互換性に関する基礎知識は不可欠となっています。
 そうした場合、常識に反して、OSは殆ど関係ありません。やりとりされたファイルを開くことができるか否かは、基本的にはソフトウェアとそのバージョンや使用フォント等に依存します。
 そこで以下では、学生諸君がレポートや論文を書く上で、最低限知っておくべき文書ファイルと画像ファイルの互換性について記します。毎年雑誌でも特集記事が掲載されていますし、この分野での書籍も販売されていますので、詳しくはそれらを参照して下さい。)

1 ソフトウェアとそのバージョンの問題
 ファイル互換性の基本中の基本は、ファイルを作成したソフトウェアを持っていること、しかも同一バージョンないしより新しいバージョンのものを持っている必要があります。ファイルはそれを作成したソフトウェアのより上位のバージョンで、使用されているフォントを持っている場合にのみ開けますが、逆に作成したバージョンよりも古いバージョンでは開けません。
 この原則は、使っているOSがマックであるかウィンドウズであるかには関係がありません。従って、ウィンドウズ・ユーザーとマック・ユーザーとの間の問題ではなく、ウィンドウズ・ユーザー同士でも、マック・ユーザー同士でも起きる問題です。逆に言えば、ファイルをやりとりできるかどうか、やりとりしたファイルを実際に開けるかどうかは、使っているOSとは無関係ということです。
 例えば、ウィンドウズ版「Office 97」とマック版「Office 98」とは完全に互換性があります。このことは次のことを意味します。つまり、「Office 97」で作成されたファイルは、ウィンドウズ版「Office 97」かマック版「Office 98」を持っている人は、そのOSには一切無関係に開くことができる、読むことができるということです。しかし、それらの何れのソフトも持っていない場合、マック・ユーザー同士であろうが、ウィンドウズ・ユーザーであろうが、ましてやマックとウィンドウズ・ユーザーの間では、そのファイルを開くことはできないということです。
 つまり、ウィンドウズ版「Office 97」で作成されたファイルは、ウィンドウズ版「Office 97」かそれよりも新しい「Office」(「Office 98」や「Office 2000」)を持っているウィンドウズ・ユーザーと、マック版「Office 98」かそれよりも新しいマック版「Office」(「Office 2000」)を持っているマック・ユーザーは開くことができます。しかし、ウィンドウズ・ユーザーであっても、ウィンドウズ版「Office 97」を持っていない人や「Office 95」以前のものしか持っていない人は、それを開いたり、読んだりできません。同様に、マック版「Office 98」を持っていない人やそれ以前のバージョンしか持っていない人は、ウィンドウズ版「Office 97」で作成されたファイルを開けないだけでなく、マック版「Office 98」で作成されたファイルも開けません。
 (勿論ここで述べていることは一般論です。あるファイル形式を他のファイル形式にコンバートする有料・無料のソフトはあります。)
 従って、相手が使っているソフトとそのバージョンを知らない場合には、ワープロ・ソフト等で作成したファイルをそのまま他人に与えても意味がないこと(「開けませんでした」、「読めませんでした」という返事が返ってくるだけ)になります。メールで添付ファイルとして送る時にも要注意です。
 では、相手の持っているソフトやバージョンが分からない場合にはどうすれば良いのでしょうか。そうした場合のための原則が作られています。それはテキスト・ファイルで送るということです。

2 文書ファイルのやりとりの基本はテキスト・ファイル
 他人と文書ファイルをやりとりする際の原則は、ファイル作成後に保存する際の保存形式で「テキスト」形式を選択するか、他人に与える前に一度そのファイルを開いておいて「テキスト」形式に保存し直すということです。
 テキスト形式とは、ワープロ・ソフト等で作成した際の、文字装飾(文字の拡大やイタリック等の変形)を消し、同じ大きさの文字と数字に解消してしまった形式です。ワープロ専用機などで「MS-DOS」というのがありますが、それと同じものです。このテキスト形式で保存された文書ファイルならば、自分が使ったソフトやそのバージョンを気にすることなく、安心して誰にでも送れます。
 しかし、「テキスト」形式でファイルをやりとりする場合にも、次の2点に注意が必要です。

 (1)文字化けする「機種依存文字」
 キーボード上にない特殊な文字や記号は「機種依存文字」と呼ばれています。以下のような文字や記号です。

 これらの文字や記号には機種により割り振りした番号が異なるために、他の機種では別の文字や記号に化けてしまいます。従って、ファイルをやりとりすることを考えれば、機種依存文字はできるだけ使わないようにしておくことです。
 例えば、インターネット上のホームページで、列挙箇所が「(月)、(火)」等となっているケースを見かけます。それらは入力時には「(1)」「(2)」だったのですが、機種依存文字であったために起きた「文字化け」です。この場合、半角で 「(」+「1」+「)」と入力すれば文字化けは防げます。

 (2)ファイル名は半角8文字+「ドット」+「.TXT」
 MS-DOSのファイル名の原則は、半角で合計12文字以内、特に後半の4文字は「.TXT」という「拡張子」する必要があるということです。「.TXT」は、テキスト・ファイルの意味です。この原則を無視すると、せっかくの互換性がウィンドウズの方では働かなくなります。

3 画像ファイルはGIFかJPG形式
 画像の場合、マックやウィンドウズには各々種々の形式があります。しかし、そうした画像ファイルをやりとりしたい場合には、そのファイルを「.gif」ないし「.jpg」形式にしておくことです。これらの形式はインターネットのホームページで使用される形式なので、作成されたソフトウェアも持っていなくても、NetscapeやExplorer 等の閲覧ソフトで開くことができるからです。
 小生の経験では、絵画等色数が少ないものはGIF形式に、写真などの色数の多いものはJPG形式が良い様です。
 では、種々の形式の画像ファイルをそれらの形式に変換するにはどうすれば良いのか。マックの場合には、Graphic Converterというシェア・ウェアがあり、雑誌の付録CD ROM等に収録されているので、入手すると良いでしょう。

4 DOSフォーマットのメディア
 ファイルをやりとりする場合には、やりとりする場合のメディア(フロッピーやMO等)も問題になります。ここでもDOSが共通の形式です。
 
 (1)DOSフォーマットしたフロッピー
 もしフロッピーでファイルをやりとりする場合、フロッピーにもフォーマット(初期化)の問題が発生します。マック・ユーザー同士、ウィンドウズ・ユーザー同士の間では、フォーマットの問題は発生しません。しかし、マック・ユーザーとウィンドウズ・ユーザーの間では、フォーマットの違いという問題が発生します。マックはウィンドウズ用に初期化(フォーマット)されたメディアを認識でき、マック用に初期化されたフロッピーと同じように扱えます。しかし、ウィンドウズはマック用に初期化されたメディアを認識しないからです。
 この問題は、マックの側でフロッピーをウィンドウズ用に初期化しておくことで解決できるし、マックはそうしたことができるようになっています。
 具体的には、フロッピーを入れて、「特別メニュー」から「フロッピーの初期化」を選択し、3つの選択肢の中から「DOS 1.44MB」(2HDの場合)を選択すればOKです。

 (2)DOSフォーマットのMO
 ファイルをやりとりするメディアとしては、現在ではフロッピーの時代は終了しました。その理由は、画像や音楽ファイルは容量が大きく、フロッピークに記録できないケースが増える一方、CD-ROMやMO等容量の大きなメディアの値段が安くなってきたからです。従って、最近のマックはフロッピーディスク・ドライブ(FDD)を内蔵していません。
 そうした場合、お金を出して外付けのFDDを購入するよりも、MOドライブを購入すべきです。勿論CDという方法もありますが、他人とのファイル授受のためにCD-RAMを購入する気になりません。ファイルをやりとりする相手がMOドライブを持っていない場合には、メールで送受信するのが賢いでしょう。
 小生はMO内蔵のマックを使った経験がないので、そうした機種でMOも簡単にDOS形式で初期化できるか否かは不明です。外付けのMOドライブの場合、残念ながら、メディアをDOS形式で初期化することはできません。これはMOドライブに付属のソフトの問題かも知れません。
 しかし、ウィンドウズ用に初期化してあるMOを買ってくれば、フロッピー同様、マック用に初期化してあるMOと同じように扱えます。ただし、640MBのMOの場合には、同じDOSでもメーカーにより多少異なる様で、さすがのマックでも認識できないものがあります。

5 インターネットないしメールの活用
 ファイルをやりとりする双方ともメール・アドレスを持っている場合、しかもファイルの容量がそれほど大きくない場合には、メールで添付ファイルとしてやりとりすれば、本項でのメディアの問題はクリアーされます。覚えておくと便利です。

6 圧縮・解凍について
 メールでファイルを送受信する場合には、メディアでやりとりする場合以上にファイルの容量について注意する必要があります。大きなファイルを送られると、受信する側では受信時間がかかり、電話代が多くかかるかも知れないからです。
 従って、メールの添付ファイルでファイルをやりとりする場合には、圧縮ソフトを使って容量を減らして送信し、受信者は解凍ソフトで元のファイルに戻して開くということが不可欠になります。
 そうした圧縮方法として、海外のウィンドウズ・ユーザーの間ではZIP形式、国内のウィンドウズ・ユーザーの間ではLHA形式、マックユーザーの間ではSIT形式が多いようです。圧縮・解凍ソフトは雑誌の付録CD-ROM等に収録されていますから、是非とも入手し、実際に使うことが必要となっています。

おわりに
 メールの送受信やホームページの閲覧・作成は、今や日常生活のみならず学習・研究上でも不可欠となっています。その意味は、インターネット時代とは、自分の書いたものがその通り相手に伝わっているかを意識せざるを得ない時代であり、学生諸君にとってもファイルの互換性に関する基礎知識は、不可欠のものとなっています。しかし残念なことに、殆どの学生はこの問題について実際には何も知らないというのが現状でしょう。「同じウィンドウズだから大丈夫」、と誤解している学生が多いからです。
 この「まめ知識」を踏まえて、学生諸君がもっともっとファイルの互換性について認識を深めることを期待しています。