『外国人労働者問題』
──その現状と対応について──

       政経学部政治学科3年 70301 安念 護

目次
はじめに
第一章 なぜ外国人労働者は日本に流入するのか
 第一節 日本の持つ吸引力
 第二節 送りだし国側の思惑と問題点
 第三節 外国人労働者の実態
第二章 外国人労働者の現状
 第一節 外国人労働者を利用する者
 第二節 外国人労働者への人権侵害
第三章 日本と外国人労働者
 第一節 日本が外国人労働者を拒む訳
 第二節 入管法の改正とその波及
 第三節 開国論・鎖国論について
おわりに


はじめに

 このレポートは現在の日本の経済・社会に大きく関わっている外国人労働者の現状と日本の対応そして問題点について述べたいと思います。近代における人の移動は強制的であれ自発的であれ基本的には経済活動において必要な労働力の移動であります。この経済活動において労働力をいかに安価に安定的に補充するかが重要であり、それに外国人労働者の移民労働が利用されてきました。しかし外国人労働者は自由に国家間を移動できる訳ではありません、単一民族論に基ずく日本では外国人は法的・制度的に制限されてきただけでなく、文化的・社会的にも異質な存在として扱われてきました。外国人労働者問題とは労働者を求める経済の論理と国境を越える人の移動を制限しようとする国の力の間に生ずる「ずれ」によって起こるのである。第一章では外国人が日本を選ぶ訳と労働力輸出を行う国の側の思惑と現実のずれにについて。第二章では中小企業、暴力団関係に使用される外国人の実情と日本にある外国人にたいする差別について。第三章では日本が外国人を拒む訳と開国論・鎖国論について私見を述べたいと思います。


第一章 なぜ外国人労働者は日本に流入するのか

 第一節 日本の持つ吸引力
マス=メディアの発達と交通機関の発達により情報は、世界中のあらゆる場所に瞬時に送られるようになり、地図の上での距離ももはや関係無く世界中のあらゆる場所にわずか数時間で到着することも可能である、そう世界は確実に狭くなっているのである。現在、日本には合法・非合法を含めて大量の外国人が流入している、彼らが日本を選ぶ理由としては、ソニーなどの家電メーカーの海外輸出、その他ホンダなどの各企業の日本商品や日本企業の活動との接触を通じて日本が身近な存在になっていることが挙げられる。また日本人の観光客が休みとなれば大量に海外に出掛け海外商品を買いあさっているのを見れば日本人の生活は豊かだと思われるのも仕方の無いことである。また業種、国によるが日本での収入は母国での2倍3倍の価値を持つというのも良く知られている。例えば日本と韓国の通貨は1円=8ウオンである(1997年12月の株価暴落で1円=15ウオンになる)、海外に出稼ぎに出る人の母国は大抵慢性的な失業に悩む国であり母国では暮らしていけない為、この賃金格差を利用し短期間で稼ぐだけ稼ぎ帰国するのである、日本ではとても暮らしていけない金額でも母国に持ち帰れば十分な暮らしが送れるのである、日本での1年間の労働で得た賃金は途上国での3年分に値するのである。つまり日本の持つ吸引力とは近年の国際社会における日本の急速な経済成長が近隣諸国をはじめ、東南アジアや南アジアからの労働力移動を誘発しているのである。「情報」よって外国人を引き付ける吸引力を日本自ら創り出しているのである。そしてもう一つの理由として国は拒んでも企業は外国人労働力を求めている。もし誰も使用するものがいなければ外国人労働者は規制の多い日本に入ってくる訳はない、需要があるから彼らはやって来るのである。企業にとっては、いかにコストを下げるかが大事であり、そのために人件費の削減を行うため低賃金で雇える外国人労働者を大量に求めるのである。またサービス化やME化などの一連の変化が専門職・技術職などの高賃金・好条件の仕事口と並んでそれを補完する低賃金・悪条件の仕事口を大量に生み出した為「国内労働者の嫌う仕事口を埋める」ため外国人労働者にたいする需要はますます高まったのである。
 
 第二節 送りだし国側の思惑と問題点
労働力の送りだし国である発展途上国は、一般に高い失業率と潜在的失業に悩んでおり、労働力が流出してもそれ自体がマイナスの影響を経済・社会に与えない。労働者の海外流出は、多すぎる人口を抑える安全弁となっている。そのためフイリピン、メキシコのように国が労働輸出を奨励している例もある。また経済停滞が革命等に繋がらないように労働力輸出を通じて不満分子の国外流出促進を図っている。ただしこのような労働力輸出は最も生産力の高い若い男子を海外へ流出させるため長い目で見ると国にとって良いことではないと思える。送りだし国の目指す目標は、1 国内の失業問題の解消。2 外貨獲得による国内経済の立て直し。3 海外の新技術の導入であり。これによって最終的には労働力輸出を停止させる効果を期待するのである。しかし国の思惑とは裏腹に労働力海外輸出には問題点がある。1 労働者は帰国すること無く受け入れ国に定着する(労働力の減少)。2 出稼ぎ労働者からの送金額は多くとも送りだし国における雇用機会の創造を伴った発展には結びつかない。3 巨額の外貨送金は国際収支の改善には役立つかも知れないが国内経済の活性化をもたらすことはない。4 労働者と送りだし国の考えが必ずしも一致しない。3・4に関して移民労働がもたらす賃金は生活費・借金の返済に使われ国内産業への投資等によって発展させるほどではない。つまり移民労働は、各国間の賃金格差を縮小する手段とはならない。母国が貧困であるため海外出稼ぎに出ても賃金の高い地域に定着または次の仕事を求めて各国を渡り歩くなど高額の賃金獲得に力を入れ、海外で獲得した報酬や熟練度を母国の発展のために使用することはない、この点で労働者と国の間には考えが食い違うのである。以上で送りだし国側の目指す目標と現実のギャップを挙げたが労働力海外輸出の問題点はもう一つある、それは頭脳流出の問題である。現在の労働力移動の背景には、北と南の経済格差、先進国に比べて異常に多い発展途上国の人口がある。発展途上国には、自国の経済力と人口のバランスが合っていない為、外国への出稼ぎを奨励したり、わざと国内の賃金率を低め出ていかざるを得ないように仕組む国もある。こうして自国の多すぎる人口を減らしさらに労働者が持ち帰る賃金によって自国の経済を発展させようとするのである。しかし肉体労働者はどこの国でも持て余しているのが現状である。他方、近ごろは熟練度の高い専門的職業・技術者(医者、看護婦、英語教師、コンピュータ技師、等)の移動が増加している。肉体労働者などの不熟練労働者は、受け入れに規制を設ける国が多い反面プロフェッショナルな熟練労働者を受け入れる国は多い。日本も1990年6月1日の改正入管法の施行で専門技術者など熟練度の高い職種について合法的滞在・就労の枠を広げている。不熟練労働者については、期間を決め厳しく取り締 まっているが熟練労働者についてはかなり寛大であり定着も認められているのである。この頭脳流出の問題点は、受け入れ国は自国の訓練コストを節減し完成された労働力を手に入れる事ができるが、送りだし国からすると自国の発展にいずれ必要になるであろう優秀な人材を海外に流出させてしまうことになる。発展途上国からすれば熟練労働者は数も少なく養成にも多大な時間と費用がかかる。せっかく養成した労働力が海外の高い所得にひかれて流出するのは多大な損害であると思われる。国によっては(例えばシリア)出国を厳しく制限し流出を抑えているが、大抵のこの手の優秀な人間は自分の力を試したいと思う人間が多く、母国では自分の力を生かす場を与えてくれないと母国に希望を失い新天地を求めて海外に流出するのである。この動きは状況に違いはあれ1997年7月に中国に返還された香港でも起こっている。まとめとしてつまり労働力海外輸出のマイナス面は、1 外国で獲得した賃金・熟練を活用する機会が送りだし国に少ない。2 海外出稼ぎに出るまでの間の待機的失業。3 優れた人材の海外流出があげられる。この対策としては、1 送りだし国は労働力を流出させるだけでなくその労働力がもたらす外貨と熟練を用いて自国の経済を発展させいかにして労働力輸出を減少させるかを考えることが必要である。2 自国の将来のために人材を育成しいかにして自国に止まらせるかを考えることが必要である。3 送りだし国は海外出稼ぎを個人に任せず国レベルで受け入れ国と連絡を取り合い労働力移動に関する政策の整備を行うべきである。4 獲得した外貨をもって小企業の設立、自営業、農業・漁業用具の購入についての知識を持たないことが問題。国が指導すべきである。

 第三節 外国人労働者の実態
 日本など受け入れ国に来る労働者はその国でも最下層に位置する人々であると思われがちだが実は国によって若干の違いはあるものの大半が中の下に位置する人々が多いのである。というのは労働者として移動する際まず旅券が必要になる。次に申請書類の代行をリクルーターに手続代行費用を払う必要がある、さらに職業によっては講習を受ける必要がありこれにも費用がかかるそして申請が降りるまで都市を往復しなければならない、これにも交通費がかかる。このため出国する際には多大な借金を背負うことになる。大部分は借金となるがそれでも50万円ほどは即金で支払わなければならない必要があり、これだけの費用を払うのには最下層の人々にはまず無理である。この費用が払えない人は偽装難民なり船による密入国でもするしかないのであるがこれにも手引きをする者に支払う金が必要なので難しいのである。またこのように借金をして日本に入国しても良いリクルーターに出会えれば日本で数年働けば借金を返し、多少の蓄えを持って母国に戻ることも可能だが悪質なリクルーターに捕まるとピンハネなどで借金を返すどころでは無くなってしまうのである。


第二章 外国人労働者の現状

 第一節 外国人労働者を利用する者
 日本で外国人労働者を利用する者は、暴力団関係、中小企業が主な者である。まず暴力団関係、リクルートの段階から介入し、入国の手引き、職場の斡旋を行い、ここまでにかかった費用を借金として取得し低賃金で酷使したりピンハネをし、それを暴力団の資金源とするケースが多いそうである。賃金からのピンハネ率は6から12パーセントもしくは仮に一か月の賃金を20万とするなら、そのうち15、6万にも及ぶと言う。仕事は作業現場、性風俗業のように特殊な技術も必要無く、労働者の素姓を不問にすることから足が着きにくい職業が主である。その対象となる国を多い順に挙げるとタイ、マレーシア、イラン、韓国、フィリピン、ペルーとなっている。タイの就業率は全体の約40パーセントうち女性のホステス、ダンサーが多くを占めている。以前最も女性就業率の高かったフィリピンとタイが入れ替わったのにはカトリックのフィリピン女性よりタイ女性の方が使いやすいという実にふざけた理由である、タイにも仏教があるのにいかに彼女達を馬鹿にしているかが良く解る。待遇も逃亡を防ぐため監禁、パスポートの取り上げ、暴行、ピンハネ、借金地獄、健康を害するか麻薬中毒などまさにTVドラマのようだそうです。彼(彼女)達が日本へ入国し就労するまでの費用は、個々によってばらつきがあるがリクルーターへの斡旋料、偽造パスポート作成費などなど約300万近くかかるという(観光ビザなどを使用した場合もうちよっと安くなる)。このように多額の借金をしても暴力団関係、悪徳リクルーターに捕まると地獄である、まさに日本への入国は命懸けの賭である。次に中小企業。就職難と言われているが中流志向のため若者のいわゆる3K単純労働離れが増加し労働力が不足している、そのため企業は人件費削減の為、もしくは高くつく日本人労働者を雇う力の無い企業で安く使える外国人労働者が使用される。なぜ中小企業は外国人労働者を雇用するのか?メリットとデメリットを挙げるとメリットは日本人が敬遠する仕事に従事する。残業を嫌がらない。日本人に比べ低賃金である。保障費が安い、母国の賃金水準・物価水準が日本に比べて低いので生命の値段は日本人労働者の50分の1ないし80分の1で良いと主張される。裁判でもこのような算定方法が使われ事故が起こっても少額の見舞い金でかたずけられたり不法就労であることを利用され泣き寝入りさせられる場合もある。と職種を選ばず送金のため真面目に働く事が挙げられる。デメリットは言語・文化の壁がある。病気・事故の時に困る。住宅の確保に困る、大家の本音では、日本人と外国人なら日本人を選ぶ理由は、言葉の問題、イメージの問題、万が一逃亡されても日本人なら追いかけることも可能だが外国に逃げられたら追えないからと言う。定着率が悪いが挙げられる。人手不足、資金不足から以上のようなデメリット以上に雇用のメリットを選ぶというのが企業の本音のようである。

 第二節 外国人労働者への人権侵害
 労働問題では、賃金不払い、賃金差別(日本人の5から7割。風俗産業では約3分の1)、長時間労働、解雇(就業規則の解雇手続不記載、解雇予告義務の不履行)、労災保険の適用申請をしない、労働契約時の労働条件明示義務違反、休日・休憩時間関係違反、割増賃金関係違反、就業規則関係違反、賃金相殺禁止違反、強制労働禁止違反、中間搾取禁止違反。このように労働基準法違反は増加しかし大半は泣き寝入りだそうである。労基法三条によると、合法であれ不法であれ、いかなる国籍であれ、日本社会で就労する者すべてに対して均等待遇すなわち差別禁止、平等扱いを定めている。にもかかわらず人権侵害は増加しているのである。次に生活面での問題、まず住居の確保も困難である。第二章 第一節で述べた理由の他にも住環境の悪化、イメージダウンにつながる、一つの部屋に5、6人で住まれる(高額かつ部屋を借りることの困難のため)がある。地方自治体によっては条例で「国籍差別禁止」の条項を設けているがほとんどの自治体では未だ差別禁止の条例を制定していないのが実情である。このように合法不法を問わず外国人労働者は人間として不可欠の住居権すら保障されていないのである。次に医療問題。制度的には健康保険制度では、強制適用事業所に常時雇用されている者は国籍に関わらず日本人と同様に適用される。国民健康保険制度では外国人登録法に基ずき在留を許可された者(外国人登録法では90日を越える滞在をする場合、90日以内に新規登録を行わなければならない、また確認は外国人登録証で行う)。一年以上の滞在者であることである。適用除外者は観光ビザによる滞在者、一年未満の短期滞在者、不法就労・不法滞在者、在日米軍人、軍属などが挙げられる。この制度のためオーバーステイ等の不法就労・不法滞在者は制度に加入できない、そのため医療を受ければ全額自己負担になる為医療を受けられない、そのため限界まで医者にかからないことになり手遅れになる場合が多い、また法制度の問題の他にも雇い主が不法就労者の使用が明らかになるのを恐れ申請しない、労働者も少しでも多くの収入を送金に回す為加入しない、と言うこともある。これらの問題に対する対策として生活保護法と行旅病人法の実施が考えられたが、生活保護法は厚生省によると生活保護の対象は国民(日本国籍を有する者)に限るとされ、行旅病人法は生活基盤(居所)がはっきりしている者は適用外であるとされた。外国籍を持つ者は制度に加入できず全額自己負担による高額の医療費を恐れて病院にも行けず手遅れになる場合が多いのである。国の制度による対策は当てにならず、民間ボランテイアの手による活動だけが外国人達の希望になっているのが現状である。この他外国人を見れば犯罪者というようなイメージを持ったり、近寄り難いという心理からも数々のトラブルを引き起こしている。ではなぜこのような人権侵害が起こるのか、その要因として挙げると、第一に「不法」という不安定かつ弱い立場にあるため人権侵害が起こっても権利主張が十分に行えない。第二に「不法」という法的地位をブローカー、雇用主、暴力団、が利用し非人間的に扱うこと。第三に不安定な雇用形態が労基法、労安法、職安法等の労働関係法の適用を困難にしていること。第四に日本の外国人管理法制は法務省出入国管理行政に一任され、労働省の労働保護行政ですら就労に関わる労働関係法規違反があっても一切関与できないシステムになっているのである。この事に関係して入管法六十二条二項に定める公務員の通報義務がある。この義務は国家公務員だけでなく末端の地方自治体の公務員にも課せられる。そのため外国人、特に不法外国人は人権侵害があっても安心して相談にも行けないのである。第五に言語によるトラブル、そして労働法規の権利保障の規定、権利救済手続などの知識を持たないため不当に扱われるのである。第六に外国人労働者に関わる労働法規違反に対して労働行政機関が職務を行使するのに十分な人的・予算的措置が取られておらず労働保護行政自体不十分であること。第七に斡旋者、暴力団等への取り締まりを強化すればするほど彼らは地下に潜り、捕まるのは末端の者だけの為「いたちごっこ」になってしまうことである。第八にマスコミによる大衆の心理操作。最近マスコミで外国人犯罪が意図的に報道され、それを利用して外国人労働者導入反対の根拠としての「治安悪化論」が出されているが調査によると日本人と外国人の人数を比較しての犯罪発生率はむしろ低いとの指摘もある。これの問題点は外国人問題に関心を持たない人々にも「外国人は悪い」という固定イメージを定着させ外国人全体のイメージを悪化させることにある。


第三章 日本と外国人労働者

 第一節 日本が外国人労働者を拒む訳
 日本が言う外国人労働者を受け入れない理由は以下のようなものである。
 第一に80年代からの急速な外国人の流入という事態に直面した我々の間には「外国人労働者の流入がこのまま続けば、やがて今日の生活水準を脅かすような、きわめて深刻な事態を経験することになるのではないか」という漠然とした不安感の存在。
 第二に大量の低賃金労働力が得られることによって、企業は省力的な技術開発に積極的に取り組まなくなるということ。また本来ならば国際競争力を喪失する企業が残存することによって、産業構造の転換が遅れることになる。つまりこれは、日本は世界で唯一外国人労働者を使用せずに高度経済成長を成し遂げた国であり、外国人労働者の流入を容認しなかったことが技術革新と産業構造の高度化を促した要因であるという説である。
 第三に現在世界的に受け入れ国である先進国は、労働力移動に閉鎖的で様々な制限を行っている。これは一国だけ他の国と違う政策を採り制限を解けばその国に労働者が殺到し経済が破綻するのは目に見えているからである。
 第四に日本人が働きたがらない職種の発生、それの固定化によって労働市場が二層化する恐れ。
 第五に景気後退期において、外国人労働者の失業問題が発生し、国内全体の雇用情勢が悪化する恐れ。
 第六に国内労働者の賃金その他の労働条件の向上を阻害する恐れがある。
 第七に産業の近代化・合理化や産業構造の改善に対して悪影響が及ぶ恐れがある。
 第八に諸外国との貿易収支の不均衡を是正するための黒字減らしの努力に反して国内生産が拡大し輸出増加を招く恐れがある。
 第九に非生産的消費に結びつく外国人の送金により母国の経済発展に結びつけることは困難である。
 第十に定着化・定住化の進行に伴い教育、住宅、保険衛生などの社会的コストの負担をどうするかという問題。
 第十一に地域で言語、生活習慣の違いを原因としたトラブルの発生の恐れ。
 第十二に外国人に関わる非行や犯罪の増加の恐れ。

 第二節 入管法の改正とその波及
 1990年6月1日出入国管理及び難民認定法(入管法)を一部改正・施行された。改正点には、在留資格の整備、範囲の拡大、入国審査手続の簡易、迅速化、不熟練労働者の受け入れ拒否さらに不法就労にあたる外国人を使用した使用者、リクルーターなど不法就労を助長する者に対する罰則規定が設けられた。そして今回さらに一部改正された新たな入管法が平成9年5月1日に公布、同年5月11日に施行されました。
 入管法によれば資格外労働者、不法残留者のうち報酬その他の収入を伴う活動を行っている者、不法入国者、不法上陸者を取り締まっている。しかし実際には日本で働く不法就労者の数は約10万とも60万とも言われている。厳しい罰則にも関わらず増加傾向にあるのである。そしてこの改正案は不法外国人の取り締まりを強化する一方で日本での外国人労働者問題にもう一つの問題を引き起こしたのである。この改正案のため、不法就労者雇用による処罰を回避するため、人手が欲しい日本企業は、日系人労働者を呼び寄せた。外国籍でも日本人の子孫であれば日本国内で合法的に働けるからである。この求人は、ブラジル、ペルーなど中南米諸国日系人労働者に集中した。
 この結果、現地では急激な若い日系人の流出により高齢者が残存し労働力不足になり、現地社会に打撃を与えたと言われる。この血統主義に基ずく日系人の合法就労は他から多くの非難を受けたのである。この入管法による外国人規制の問題に関して、不法就労者が存在するのは日本が不熟練労働者の入国・就労を認めていないためであり規制を解き合法化すれば不法就労は消滅する、と言う説があるが仮に外国人労働者に合法的な就労を認めた場合でも、受け入れ可能人数には制限がある限りその限度枠に入れない労働者はやはり様々な形で入国・就労を行おうとする為、不法就労者の減少には必ずしも結びつかない。さらに供給圧力の強まった国際労働力移動の現状では、どの先進国も受け入れ規制を採らざるを得ないのである。雇用機会の数には限度があり自国民の雇用機会を奪ってまで外国人に就労を認める国は無いであろう。

 第三節 開国論・鎖国論について
 日本では、外国人問題を述べるとき必ずと言っていいほど開国論・鎖国論の二つの点からしか話が始まらない、鎖国論の主張は産業構造の二層化、治安の悪化など第三章第一節で挙げた主張が中心であり個人の明確な主張が無いものが多いと言っても間違いは無いと思う。では開国論の方はと言うと、国際化に従い日本も外国人を受け入れる事によって新たな文化を学ぶべきだ、外国人労働者の労働力は必要不可欠である、外国の失業者の受け入れはその国の経済発展などの国際協力につながる、などの主張がある。
 しかしこの開国論にしても結局は単純労働者としての外国人しか対象にしていないのである。日本で暮らすには最低12、3万は必要であるのに対し単純労働者として働いて十分な生活ができるのか?文化を学ぶと言っても一日何十時間も労働し休みは家で寝ている彼らにどうやって母国の文化を伝えろと言うのか、必要不可欠の労働力と言っても日本の労働市場の最底辺であり使い捨て同然の扱いである、諸外国からすれば自国の大切な労働力を取られたあげく使い捨て同然の扱いを受けている現状を見ればどう思うであろうか、国際協力も主張としては立派だが現在の日本の法制度、労働輸出が経済発展に結びつかないという事実から考えても難しいのではないかと思います。現在我々には開国論か鎖国論かという二つの選択が与えられていますが両方ともに問題点を抱えています。
 鎖国論は、現在の日本における外国人の状況を認識していない、もしくはあえて無視しているようにしか思えません。さらに鎖国論ではすでに日本に住む外国人を不法化することにつながり、彼らの人権を抑圧する事になります。また開国論では、経済の論理によって低賃金労働力として外国人労働者を使おうとしているとしか思えません。さらにこのように単純労働者のみ受け入れた場合、送りだし国を出稼ぎに依存する不幸な社会とさせ、受け入れ国には汚くきつい仕事を担当する外国人と彼らの労働の上で頭脳労働に従事する日本人という階級の二分化を起こさせることになります。ようするに彼らの生活や老後の保障を行うのは日本ではなく労働力という良いところだけを使い、古くなったら捨てるという使い捨ての精神なのであります。
 このように両者共に受け入れがたい論であると思います。現在日本での外国人対策は入管法によって行われていますが現行入管法は鎖国論をもとに作られた法であり現在の大量移入への恐怖、人権問題、諸外国との妥協など複雑な外国人問題に対応できるものではないと思います。


おわりに
 現代の資本主義経済構造のもとモノ、カネの自由化の名の下に先進国は途上国からの収奪を行い、その結果先進国には富が集中し途上国は貧しくなる、そうして貧しくなった人は富を求めて先進国へ出稼ぎにでる、これは必然的なものでありいくら制限したところで止めることのできない流れであると思います。しかし止められない流れだからといって放置すれば日本は経済的にも社会的にも確実に崩壊すると思われます。仮に外国人の入国を放置した場合、現在日本で働く合法就労外国人が約10万人ですが彼らが家族を連れてきた場合、配偶者と子供の3人家族にしても30万人、さらに不法就労者が30万人いたとして家族を連れてきた場合90万人、際限無く入ってきたとしたらこの数はさらに2倍3倍となり実際に労働する人数の数倍の外国人が日本に存在することになる。そうなれば労働市場は変質せざるを得ないだろうし外国人の子供にたいする教育の問題、文化の差異からくるトラブル、医療問題・保険・法の問題などの改革やコスト負担に追われることになり日本の経済は破綻するだろうと思われる。
 私は外国人労働者の流入に制限を設けるという点では鎖国論に賛成する。しかしそれを利用して外国人労働者を食い物にする日本の現状に反対します。外国人排除を訴えながら日系人、研修生などの部分解放を認め、また外国人労働者の人権侵害などの問題を放置し労働者としては利用し何か問題が起これば不法者として処罰する、全てのツケを外国人にまわすという態度は問題があると思えます。例えば研修生の問題ですが研修生は開国はまずいが研修といえば途上国への国際協力という美しい言葉で偽装して労働力を確保できる、しかも研修では賃金を払えないということで月5、6万の賃金ですむ。企業としては低賃金で、一日何十時間も働く、何万という労働力を手に入れられる。何万という人を導入すればこれはもう研修生という言葉を隠れみのにした事実上の外国人単純労働者である。日本では外国人にたいしこのような利用、人権侵害、差別などが横行しています。このような態度は改善すべきであると思います。外国人への人権侵害について不法就労であることが悪いという意見がありましたがその考えでは不法者は何をされてもいいという事になります、確かに法を破り入国した彼らは間違っていますが警察に引き渡すなり法に基ずいて処罰するならまだしもその負い目を利用し人権侵害を行う事は脅迫と変わり無い事です。願わくば彼らが海外出稼ぎそのものを止めてくれれば何の問題も無いのですが各国間の経済格差を考えれば海外出稼ぎは無くならないでしょう。そもそも労働力海外輸出とは本来母国で就労させるべきである労働力を他国に送るという間違ったものであり、労働力海外輸出は母国の経済発展には結びつかず、他国にも混乱をもたらすものです、しかし現実の問題として労働者は日本に流入しこの数は増加しており、この流れを止めることは不可能であります。結論として私の考えではこの流れを必然的なものであると受け止め不法就労をしなくてもすむ法的体制を整備すべきであると考えます。まず今までの外国人労働者個人と国という関係から、国たい国という関係にし、国が出稼ぎ労働者の管理をし各国間で必要労働力人数の調整をしローテーションを行うというものです。こうは言っても企業の反対、政治レベルの問題など事は単純ではなく一朝一夕で解決する問題ではないとわかっています。しかし私は労働力海外輸出にも開国論・鎖国論にも反対ですが実際に彼らはもうすでに日本に入国し働いてしまっているのですからせめて人権は守るべきだと考えます、少なくとも国が労働力海外輸出を管理すれば彼らの身分は保障されます。理想としては将来的には途上国が労働力海外輸出をしなくてもすむ経済力を持てるよう日本など先進国が今の金貸し援助や条件つき援助のような見返りを求めた途上国を半植民地化するような援助ではなく国際的に自立できる経済力を手に入れられるよう手助けすることが望まれます。以上で私の3年レポートを終わります。


参考文献

梶田孝道『外国人労働者論』弘文堂
花見忠・桑原靖夫『あなたの隣人外国人労働者』東洋経済
村上博『外国人労働者問題を斬る』部落問題研究所
宮島喬『外国人労働者と日本社会』明石書店
J・V・ネウストプニー『外国人とのコミュニケーション』岩波新書
『難民問題とは何か』岩波新書