『醒めない夢』
〜アスリート70人が語った魔法の言葉

2000年7月3日発売
ザ・マサダ刊 四六判296ページ
定価:本体1,500円+税
ISBN:4-88397-056-6

■各種目競技のシドニー五輪代表選手を中心に、これまでに書いた原稿を1冊にまとめた“ベスト集”です。マラソン、陸上、サッカー、柔道、体操、卓球、バドミントン、自転車などの五輪代表に選出された選手をはじめ、野球やバスケットボールなど各界のトップアスリートたちの肉声を収録。9月に開催されるシドニーオリンピックに向けて、ぜひご一読ください。

本書に登場するアスリートたち(*50音順)/浅野真弓(アーチェリー)、朝日健太郎(バレーボール)、阿武教子(女子柔道)、新井初佳(陸上短距撃、有森裕子(マラソン)、市橋有里(マラソン)、伊東浩司(陸上短距離)、犬伏孝行(マラソン)、井原正巳(サッカー)、大竹奈美(女子サッカー)、小野伸二(サッカー)、小野真澄(陸上女子棒高跳び)、小幡佳代子(マラソン)、笠松昭宏(体操)、神山雄一郎(自転車)、茅場 清(ハンドボール)、木村公宣(アルペンスキー回転)、黒岩 彰(元スピードスケーター)、小出義雄(マフソン指導者)、小西 杏(卓球)、古前田 充(サッカー監督)、斎藤春香(ソフトボール)、斉藤愛子(ヨット)、佐藤信之(マラソン)、佐藤由紀彦(サッカー)、沢 穂希(女子サッカー)、三宮恵利子(スピードスケート)、清水宏保(スピードスケート短距離)、白幡圭史(スピードスケート長距離)、鈴木博美(マラソン)、セルゲイ・ブブカ(棒高跳び)、高橋尚子(マラソン)、高橋 潤(ホッケー)、武田大作(ポート)、竹葉多重子(クレー射撃)、立花美哉(シンクロナイズドスイミング)、田臥勇太(バスケットボール)、田村亮子(女子柔道)、丹波幹雄(野球)、塚原直也(体操)、塚原光男(体操指導者)、中田英寿(サッカー)、名波 浩(サッカー)、楢崎敦子(女子柔道)、野口みずき(マラソン)、野茂英雄(メジャーリーグ)、ハイレ・ゲブレセラシエ(陸上長距離)、長谷川智子(射撃エアピストル)、ハビエル(デカスロン)、春名真仁(アイスホッケー)、ヒシャム・エルゲルージ(陸上中距離)、弘山晴美(マラソン)、船木和喜(スキー)、フランク・フレデリクス(陸上短距離)、フローレンス・グリフィス・ジョイナー(陸上短距離)、マイケル・ジョンソン(陸上短・中距離)、松坂大輔(野球)、マリア・ムトラ(陸上中距離)、マリオン・ジョーンズ(陸上短距離・走り幅跳び)、三浦知良(サッカー)、室伏広治(陸上ハンマー投げ)、室伏重信(陸上指導者)、モーリス・グリーン(陸上短距離)、柳川春己・安田享平(盲人マラソン)、山口衛里(マラソン)、山崎一彦(陸上400メートル障害)、米倉加奈子(バドミントン)、ラモス瑠偉(サッカー)、ランス・アームストロング(自転車)

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「醒めない夢」出版にあたって

 今回、フリーになって3年間書き続けて来た連載を、出版社「ザ・マサダ」から発行することになりました。本には、あとがきも、前書きもないほうがすっきりしていていいので書きませんでした。HP上で、力を貸してくださったみなさんにお礼を申し上げたいと思います。

 マサダの編集長である飯田健之さんは、私の書く原稿に興味を持って下さり、これまで何度も何度も様々な出版のアイディアを粘り強く提案してくださいました。その中でこうして記事を集め、シドニー五輪やサッカーをまとめれば読者の皆さんがシドニーを見る面白さが倍増するのではないかと提言してくれたことが本のスタートです。
 タイトルはいくつか考えました。
 私にとってスポーツの面白さとは何かと考えるとき、それは2つの夢を実現するものであることなのです。
 ひとつの夢は、「代理の夢」であります。
 自分は大学の体育レベルですら「体を駆使することのみによって結論を出す」作業にはギブアップしているわけです。自分には日本記録を作ることも、大会で勝つことも、代表になることも絶対にできません。
 しかし、私が「仕事ゆえに」付き合うことのできるアスリートたちは、それを可能にする人たちです。彼らは、自分が到底果たすことのできない夢をありがたくも「代わり」に果たしてくれるのです。

 もうひとつの夢は「現実を越えた夢」であります。
 まさかこんなことが起きるはずもないという、もちろんそれは必ずしもいいことだけではないでしょうが、想像や理解を遥かに超えた夢が、スポーツの世界では日常的に交差することがあります。
 2つの夢の特徴は、寝ながら見る夢とは違い、私にとっては「醒めないもの」でもあります。

 動き回る私を相手に、飯田さんは苦労の連続だったでしょう。成田へ向かうチェックインカウンターの横で話し合いをしたこともありますし、仙台往復でゲラを見て新幹線の降車口でお返ししたり、成田空港からファックスを送り、9時間もの時差があるモロッコへの連絡で調整をしてもらったり、私と付き合うと病気になる(笑い)という意見も多いのですが、飯田さんは何とか切り抜けてくださいました。
 最初の謝辞は飯田さんに申し上げたいと思います。そして、私の好きな紺と白を基調に素敵な装丁を、しかも短い時間で仕上げてくださった菅谷貞雄さんにもお礼色を申し上げます。

 私自身、自分の書いた原稿は最後のゲラ(赤字などをチェックするものです)を出してしまうと2度と読みません。ほかの方の原稿はともかく、書くことと読むことはかなり異なった作業であることが最大の理由で、いずれにしても媒体に掲載された文を読み返したりスクラップすることはありません。
 こういう無精者を大体の場合、非常に神経の細やかな行き届いた人が助けてくれます。
 今回の出版にあたり、わずか3年で貯めた膨大な原稿をジャンル別、媒体別、時期別にまとめてきちんと保管をして下さるなど編集業を全面的に受け持ってくださった井口実さん、みなさんも愛読してくださるこのHP(アクセスが200万超えたなどとは98年6月から読まれている読者のみなさん、信じられませんよね。本当にありがとうございます)のWEBマスターである田中龍也さん、何かと助けてくださる鵜沢茂郎さん(トラップドア)には、日ごろ感謝と合わせ、深く御礼を申し上げたいと思います。

 さて、日ごろあまりみなさんにお話するチャンスのない編集者のみなさんについて書き、各原稿をサポートしてくださったみなさんにお礼を申し上げたいと思います。
 編集者というのは、フリーでも社員でも編集部に所属する立場で媒体の意図、原稿の内容、ライターの選択、リサーチ、打ち合わせから細かな取材の準備、旅行の手配、記事チェック、校了と、とてつもなく多くの仕事をこなさなくてはならない方たちであり、ライターにとってはまさに信頼すべきパートナーといえる存在です。
 原稿は、多くの場合彼らの強力な支援と粘り強い忍耐力によって引き出されるものでもあります。色々な意味で本当にいい関係なれば、出来上がったものはやはりいいものになると思っています。
 彼らは、気の毒にも原稿を待たねばなりません。
 締め切りを決めてもライターの中には「納品期限」を微妙にずらす(笑い)人もいるそうですから。それでも「ありがとうございます、面白かったです」なんてにっこり笑って死ぬほど忙しい校了作業を続ける、そういう方たちでもあります。
 私は会社を辞めましたので、これからも原稿を待つ経験はしないでしょう。
 ですから編集者のみなさんの「待つ」という修行にも似た忍耐を思うとき、私には「締め切りに間に合わないものは紙クズ」と新聞記者時代に叩き込まれた職業訓練による条件反射が過敏に働き、指先が動くのであります。
 先ほどの忍耐力に加え、彼らは優れた読解力を持つ人々でもあります。
 選手やライターへの好みや、思い込みもあるでしょう。しかし、そうしたものを排除した上で物事や人物を公平に見ることのできる平衡感覚も重要ですし、運動神経やセンス、幅広い知識、体力……、スポーツライター以上に大変な仕事だということは分かっていただけるでしょうか。

 あいうえお順で、この本の中に掲載された原稿を演出してくださった皆さんにお礼を申し上げます。

 「AERA」編集部で連載のチャンスを最初に与えてくださった宇留間和基(当時)副編集長、取材をしたいというわがままをいつもご理解をくださった関戸衛編集長、デスクの青木康晋さん、南井徹さん、編集者もパワーのある女性ばかりです。週刊朝日からのお付き合いである浜田敬子さん、ほんの短い間でしたが池田恵さん、吉田香奈さん、古川雅子さん、松原亜希子さん、みなさんの忍耐力にはいつも助けられました。
 現在も連載を書かせてくださっている「サッカーマガジン」の伊東武彦編集長は私と同じ1961年生まれでもありお互いに「がんばろうね」と、衰えた体力にムチ打ち合う仲です。いつもありがとうございます。
 創文企画からは、「現代スポーツ批評」の創刊号で伊東浩司選手について書かせてもらいました。私は常にこうした評論と現場でのスポーツライティングをつなぐ雑誌があればいいのでは思ってきました。鴨門義夫さんは多くの雑誌編集を手がけてこられただけに、そうした意味での熱意に溢れておられます。ありがとうございました。
 「中央公論新社」の森清耕一さんは恐らく私がもっとも長くお付き合いさせていただいている編集者の方であります。私がまだ日刊スポーツ新聞社にいた頃から本当にたくさんのアドバイスをいただいて来ました。雑誌媒体に物を書く最初のチャンスを与えてくださった方でもあります。本当にありがとうございます。柔道の楢崎教子選手の取材では、木佐貫治彦さんにお世話になりました。
 「東京新聞」では1年間、連載を毎週書かせてもらいました。きっかけは大学時代の同級生である野呂法夫さんです。彼からの誘いで、スポーツとは必ずしも関係のない特報部のみなさんと仕事を出来たことは、非常に楽しい経験のひとつです。
 「Number」では、新しい試みやリスクのある原稿でもご理解ご支援いただいている井上進一郎編集長には、本だけでなく、日ごろの感謝をここで申し上げます。ありがとうございます。
 私がフリーランスになって最初に、一番難しいかもしれない薬物問題を扱ってみたいと相談して以来、藤森三奈さんには本当に助けてもらっています。同時に「スポーツ」への取り組み自体、教えられることが本当に多くあります。いつもありがとう。
 女子マラソンについて連載を始めたのは昨年の11月でしたが、高木麻仁君は私との仕事を前に「(私が)厳しいと思い覚悟した」と、後に笑っていました。
 女子マラソンの連載では写真を担当してくれる写真部の山本雷太君にもお礼を言いたいと思います。私たち3人はかなりの年齢差をもろともせず(笑い)チームで仕事をしています。競争と日程調整の難しい女子マラソンの取材にあって、入社3年目の若い彼らが常に最善を尽くそうとする姿勢は、ともすれば考えることさえ忘れる「初心」というものを私に思い出させてくれます。
 本の中にある短いコラムの何本かは、川田未穂さんの担当で書いたものです。
 体育会バスケットボール部出身だけあって意欲のみなぎる前向きな仕事ぶりは、私のような運動量の激しいライターとの出稿であっても少しも変ることなく行なわれています。
 室伏重信・広治親子の取材は、柳橋閑(しずか)君と早朝から愛知・豊田の中京大キャンパスに出かけ、無口な室伏先生を一日かかってしゃべらせるために2人で随分と苦心したものです。
 「FRAIDAY」の木所隆介さんからの仕事はいつも突然やってきます(笑い)。しかし「ヒーローの一瞬」というテーマに正確にこだわればこだわるほど、選手のテクニカル、メンタルでの高みについての興味と取材を充実させることができたのではないか、と思います。どうもありがとうございました。

 最後に、私がこの仕事を続けて行くための意欲、あふれんばかりの知識、喜び、苦しみ、アイディア、そして闘争心、時にユーモアというものを常に教えてくれる選手たちには、いつも感謝をしています。
 また現場で会いましょう。それとシドニー五輪に出場する皆さんが、怪我や事故なく試合の日を迎えられることを祈っています。

本の扉にはこう記そうかと思っていました。

「夢はいつか醒めるって?一体誰が、そんなことを言ったんだい?」