1999年6月29日

※無断転載を一切禁じます


〜 南米選手権パラグアイ99 現地レポート 〜

日本×ペルー
29日午後6時15分(日本時間30日午前7時15分)
(アスンシオン/ディフェンソーレス・デル・チャコスタジアム)
天候:くもりのち雨、気温:14度、湿度:50%

日本
ペルー
2
前半 1 前半 0
3
後半 1 後半 3
07分:呂比須ワグナー
78分:三浦淳宏

ホルヘ・ソト:71分
オルセン:75分
オルセン:82分

日本代表スターティングイレブン
交代出場:
31分:福西崇史(田坂和昭)
62分:三浦淳宏(望月重良)
73分:奥 大介(呂比須ワグナー)

 日本代表は、前半の立ちあがりから激しいプレスをかけ、積極的にDFラインを上げる戦術で序盤戦をスタートさせた。ペルーのペースがまだ上がらない前半7分、この日、右サイドに入った望月重良(名古屋)が、相手のファールを誘って、最初のフリーキックをものにする。ここで名波浩(磐田)が、正確なフリーキックで、DFの後ろから飛び込んでいった呂比須ワグナーの頭に合わせて先制。日本の初シュートが、南米選手権での初ゴールにもなり、昨年10月、トルシエ・ジャパンに替わって以来、初めてPK以外での得点で1勝に向け弾みをつけた。
 しかし、得点を奪った時間が早すぎたのか、この直後から動きが悪くなり、完全にペルーに主導権を握られてしまった。特に動きの悪い田坂和昭を31分で早々に福西に交代。しかし、前半だけでペルーのシュート16本、日本はたった2本という「防戦」状態で前半を折り返した。

 後半13分、この試合でスピードに乗って相手のファールを再三誘うなど働いていた望月が、相手のヒジ鉄を鼻に受けて退場。鼻骨骨折の重症で、救急車で病院に運ばれるハプニングが起きた。
 後半17分には、まずは望月に替えて三浦淳宏(横浜)を投入。しかし、福西と三浦が組んだボランチの経験はこの2人にはなく、安定しないボール回しは相手のDFから狙われる格好となった。後半26分、右サイドから切り込んでいったホルヘ・ソトに、右足で厳しいコースをつかれて失点。振り出しに戻されてしまった。
 直後の30分には、足首捻挫のために、ロペスに替わって入った奥大介が、中盤でのボールをペルーに奪われ、ここから逆襲を受ける。一度右サイドに出たボールからヘディングで折り返され、そこへオルセンがヘディングで飛び込んでわずか4分で逆転をされる。
 しかし、日本も福西が頭を使ってフリーキックを奪い、三浦、名波と2人でボールを追うフェイントをかけて壁の位置をずらし、三浦がそのすきを突いて右足からキック。ペルーの壁に当たってゴールとなり、同点においついて粘りを見せた。
 だが37分、逆サイドからペナルティエリア付近に振られたボールに、秋田豊がマークを外し、そのままノーマークでまたもオルセンに合わせられてしまい3−2と逆転をされてしまった。
 日本は早い時間帯に、トルシエ監督が就任して以来、5試合目、342分にしてようやくゴールを奪い、ロペスも99年南米選手権の記念すべきゴール第1号を挙げたものの、手のひらに一度は納まりかけた勝利を、自分たちの些細なミスから逃がす、痛恨の敗戦を喫してしまった。
 これで、日本は南米での試合は通算2分12敗と勝ち星がない。2日のパラグアイ戦までの立てなおしが早急な課題となった。

 試合中、激しい鼻血を出して途中退場した望月は、運ばれた救急病院で検査した結果、鼻骨骨折が判明。2日ばかり安静にし、その後プロテクターをつけて練習には参加する予定。日本へは帰国せず、最後まで帯同する。

トルシエ監督「前半に比べて後半はプレスがうまく掛からなかった。中盤から後ろはズルズルと下がってしまって、試合の最初のようなプレスがかからなくなってしまった。今日は(自分の)戦術のミスで負けたとは思わない。大きなミス(敗戦)を犯したのは選手たちであり、(その敗戦を招いたのは)彼等の試合中の小さなミスである。しかし最初にみなさんに断っておきたいのは、この大会に参加しているあらゆる国が日本よりも上のレベルにあるということ。何かをすぐに変えることも、試合中の流れを変えることも、日本にとっては非常に難しいということだ」

3月のブラジル戦以来の先発、キャプテンでの復帰となった井原正巳「最後まで(ラインを)振られてやられてしまった。肉体的な疲れもあったと思うが、1点を取られるごとに中盤から少しずつ後ろに下がってしまったし、もちろん、自分たちも体力的には目一杯だった。バックラインとしては、もっともっと一種の『遊び』を持ったプレーでボールを前線までキープしていく必要がある。時には遅く、何度も立てなおしながら、時には早く、といった具合に緩急をつけられるようにならなくてはならい」

磐田でだけでなく、代表でも正確無比なフリーキックを披露。日本の初得点をアシストした名波 浩「今日は先制点を取ったこと、大会の雰囲気を知れたこと、これが収穫で、ほかには何もない。(攻撃のことを聞かれて)それはオレ1人の問題じゃあない。でも、フランスの時(W杯)に比べると、意思の疎通とか、チームの規律とかが完成されていないのかもしれない。(若い人が入ったことで?)それもあると思う。(次々と飛ぶ質問に)、まだ試合が終わったばかりなんで……

右足のフリーキックで同点ゴール、代表での初ゴールを奪った三浦淳宏「見ていて、ペルーのプレッシャーは非常にきついんだろう、と福西とも話していたが、入ったらそうではなかった。代表は自分よりも技術の高い人たちばかりなので、後は自信を持っていくべき。絶対行けるのに、気持ちで負けてしまった。こちらがおどおどしていれば相手もわかる。サッカーではハッタリくらい見せないと。まだまだ絶対にいける」

2点目、後ろから不用意にボールを奪われるミスをしてしまった奥 大介「交代で入る時には、監督に全体のバランスが崩れているので、それを立てなおすように言われた。とりあえずきちんとキープしようと思ったのに、それができなかった。残念でし方ない。多少慌てたところもあった、というのが正直な感想でした」

前半早々で交代出場した福西崇史「勝てない相手では決してなかった。悔しいです。交代が早かったこともあるし、入ってから5分くらいは、さすがにちょっとバタバタとしてしまった」

合計で25本ものシュートを受け、何度もファインセーブを見せた楢崎正剛「日本でのペルー戦(キリン杯)とは、彼等の本気さが違ったし、何より受けていてボールの勢いが違いました。自分としては特に緊張することもなかったし、むしろチャレンジャーとして思い切り行こうとできた。アウエー、と思っていたけれど、全然そうではなくて、パラグアイの人たちには応援してもらったんで、是非勝ちたかった。ちょっとしたミスでスキを突かれた」

南米選手権での日本代表の初ゴール、記念すべきゴールで先制点を奪い、故郷に凱旋を果たした呂比須ワグナー「練習でやっていた通り。名波からはすごくいいボールが来たからね。でも、負けてしまっては何点とっても何の意味もない。悔しいし、次はもっとがんばりたい」

GROUP A
チーム 試合 得点:失点 勝点
ペルー 1 1 0 0 3:2 3
パラグアイ 1 0 1 0 0:0 1
ボリビア 1 0 1 0 0:0 1
日本 1 0 0 1 2:3 0


「180分勝負は、2−3でペルー勝利」

 この日(手元の集計で)25本ものシュートを受けたGK楢崎は、試合後、「ペルーのシュートを受ける度に、キリンカップの時とはボールの勢いが違っていました。彼等の目の色も違う。日本での親善試合のように、(軽く)やっとこうか、というのとは全然違う、と思った」と、5月のキリン杯に続いて1か月で2度、いわば裏表の対戦をした相手の「変貌ぶり」に驚きの表情を見せた。
 日本での試合(於:横浜国際)では0−0で引き分け、そしてここアスンシオンで2−3と、通算「180分(90分×2)勝負」は、最後にペルーに振り切られた格好となった。

 日本が2点を取りながらも敗れてしまった要因はもちろんひとつではないが、まず第一に試合全体のペース配分がある。
 前半7分、日本は名波のフリーキック、ロペスのヘディングと、練習で繰り返し、これ以上望みようのないほどのセットプレーで、絵に描いたような先制点をものにはした。監督は「矛盾している、と言われるかも知れないが、早い時間に点を取ったことでむしろ危険が大きくなるとも思っていた」という。
 日本が先制することは最高の展開としても、7分ではあまりにも早い。あまりにも早いから、健気に戦う日本選手は余計に、「油断してはならない」と、より強く思う。そうなると、より激しく足を動かし、プレスを高い位置からかけて「積極的に守ろう」とする。当然のことながら、普段の試合展開よりもかなり「飛ばして」試合を運ぶことになってしまう。
 先制点を早い時間に奪ったところで、それがまた同時に、相手にとっての格好の「罠」にもなる、そのことを日本は改めて、ここ南米まで来る高い代償を払って認識しなくてはならなかったようだ。
 日本代表は、先制した試合をものにすることがあまり得意ではない。W杯予選中には、日本での韓国戦、アウエーでのカザフスタン戦、どれも先制していながら落とし(または引き分け)てしまう。

「手を抜くのとは違う、遊びというか、緩急をつけたりなど、気持ちに余裕がなくても、プレーで余裕が欲しい」と、井原は「遊び」という言葉を口にした。
 ペルーにすると、日本が1点をどう守る相手か、それは十分吟味してあるはずだ。走らせて、日本の好きな「積極的」という「罠」にどんどん相手を追い込み、最後につかまえればいい。
 マラソンにたとえればスタートから折り返しに行くまでの間をハイペースで飛ばし、肝心のゴール付近になってから急激にペースが落ちるランナーと、自らのペースをきっちり守って多少の差は気にせず、ゴールまでたどり着くランナーと、ホーム&アウエーの試合運びには、こういった駆け引きがある。
 決勝点を奪って勝つ試合、逆転、逆転のシーソーゲームをものにする試合、劣勢をひっくり返す試合……、そして国際試合でもっとも難しいのは、先制して、それを守り切って勝つ、そういう試合である。ポイントは試合のペース配分、それも勝つためのペース配分である。

 2点目には、ペルーの日本研究の徹底さがある。
 3バックのラインDFというコンセプトを、ペルーはキリン杯で研究し尽くし、手土産一杯で帰国していた。それを象徴していたのは、この日のオフサイドである。ペルーから奪ったオフサイドは、前半に1本、後半にも1本、とたった2本だけである。足が止まる後半まで、ペルーは、オフサイドを十分に注意して、最終ラインを一度引きつけてから、裏を取るパスを狙った。
 DFラインが高い位置に来たがる習性を逆に利用された格好になってしまい、井原、秋田、森岡の3人にとっては、高い位置で守備をしようとすればするほど、裏を取られて走らなくてはならない「距離」が伸びてしまう。 
 中盤でのチェックが甘くなれば、さらに思うツボである。

 三浦は「最後に(最終ラインを)抜けられたら、ピンチになるのは当たりまえ。もっとしっかりとしたマークをしなくてはならなかった」と反省を口にする。ペース配分、DFに偏ったコンセプト、昨年のW杯以来、すべての試合で言われている「小さなミス」の重みなど、アウエーの戦い方、落とし穴など、一口で言ってしまえが、その単語だけでは簡単に説明できないような要素が、アウエーという単語の中には潜んでいるはずだ。
 アウエーはイコール、その国のサッカー全体の、「適応力コンテスト」のようなものでもある。

 しかし、一方では、これまでにはできなかったことを、何気なくこなした面もある。
 試合前には、ピッチの視察が全面的に禁止されており、文字通りのぶっつけ本番にも、選手は慌てず、スパイクを慎重に選んだ。DFは取り替え式を履いていたし、ピッチ状態の悪さは、画面を通じては分からないほどだったのではないだろうか。
 実際には、中田、中山が欠け、特に、中盤で中田が1試合出場しなかった試合は、彼が代表にデビューした97年の日韓戦以来ではないか。2年にわたってトリオを組んできた山口、名波、中田の3人のうち2人もかけた中盤も2年ぶりである。名波がそういう中でどこまでやるか、これは新たな代表の指標にもなる。
 城も、故障上がりでは調整は不充分だったろう。
 福西、三浦はまだ安定はしてないが、それでも三浦の代表初ゴール、しかもフリーキックからのゴールは大きな自信になったはずである。

「気持ちがおどおどしてたら、相手も気がつく。そこを狙われないようにしないと。こういうときは、ハッタリくらい、かます気持ちで行きたい」と三浦は、自らがつかんだ何かを確認するかのように言う。
 この日の2試合目、完璧なホームであるはずのパラグアイは、先週末までチームさえ組めなかったというボリビアと引き分けた。
 何が起きるのかはわからないし、まだギブアップするのは早過ぎる。


「敗軍の将、兵を語る?」

 逆転され再度同点にしながら「勝ち点」を取れなかった日本代表のプレーよりも弱々しく、どこか後味が悪かったのは、トルシエ監督の試合後の会見だった。
「今日は戦術的なミスはなかった。選手自身が大きなミス(敗戦のこと)を犯した」と口火を切った。
 監督は「敗戦は戦術のせいだと私は思わない。大きなミス(敗戦)を選手たち自らが小さなミスによって招いたもの」と、通訳を通してのコメントながら、聞き様によっては、あまりいいものには聞こえないし、報道陣に対して、皮肉交じりの嫌味を言うなどのやり取りもあった。
 また怪我人の多さを嘆き、いつものJリーグ批判をし、と……。
 会見の後、日本人記者だけの囲み(立ち話)での一問一答は以下。(抜粋)

──田坂の交代が早かったが?
監督 そうだ。得点が早く、競い合いになると田坂は役に立たない。早く替えないと危険が大きくなると思った。矛盾しているかもしれないが、早く点を取りすぎたことは日本にとって非常に難しいものだった。
 ただし、日本のメディアのみなさんは大喜びしているのではないか。何しろ、あれほど得点が取れない、と騒いでいたのに、2点も取ったんだから。

──負けたのに(報道陣が)大喜びするってことはないでしょう。
監督 いや、点が取れない、とあれほど批判して言ってたじゃないか。私は個人的には今日の敗戦には満足はしない。論理的には、(勝ち点の取れる引き分けで)0−0でもいいんだ。だって一番大事なことは、試合で、勝ち点を取ることで、2−3でも3−4でも負けてしまえば勝ち点はない(記者たちへの皮肉と、ヤツ当たり? に取れれる)それと、1−0での試合をものにできるほど、ここ南米選手権は甘くはない。すべてのチームは日本よりも格が上で、その中で自分たちのサッカーを急に変えたり、試合の流れを変えたりすることは非常に困難だ。
 例えば日本代表はまだ、1−0の試合をどう勝つかまではとてもできるレベルにいるチームではない。86分で1点取ったとか、そういう試合ならばできると思うが。

──福西と三浦のボランチは初めてのものですが、それも戦術的な失敗ではないのですか?
監督 そうは思わない。今日は、ブラジル戦の名波のように、奥が(後ろからボールを取られる)ミスを犯し、秋田も小さなミスをした。もちろんもう同じミスはしないだろうが。今回大事なのは、我々は南米選手権に、経験を習うために来たということ。このミスを2002年までのあと2年で、同じことをしないようなレベルにしなくてはならない。

──怪我人なども続出しています。
監督 ロペスは捻挫で、城は合流してまだ2週間。調整不足は否めない。FWの吉原も7月1日の合流で、着いてもまだ12時間以上もの時差がある。改めて、Jリーグのレベルが低いから、コンディション作りがしっかりできていない気がする。試合では1時間でバッテーリーが切れ、最後の30分はまったく走れない。

──今後の2試合については?
監督 こんな状況で、1週間に3試合、どうやったらいいんだ。私の目標はボリビア戦に置く。

 監督は、試合に出る前、ベンチに三浦淳宏を呼んで「中と(中盤)と外(サイド)とどっちがいい?」と聞いたという。三浦は自分で「右はできない」と答えて中盤に入ったという。
 戦術の失敗云々はともかく「どっちがいいんだ?」とピッチで尋ね、練習でも一度も組んだことのない、三浦と福西のボランチを急場しのぎで組むことになったり、選手と同じように、監督にも「小さなミス」があったのではないだろうか。
 もっともフランスには、「敗軍の将、兵を語らず」という言葉がないのなら仕方がないところだが。


対ペルー戦、試合当日
午前10時(日本時間29日午後11時)
朝10時現在の天候は曇り、気温17度、湿度62%

 初出場となる南米選手権での開幕戦、対ペルー戦をいよいよ7時間後に控え、日本代表は、宿舎で休養を取り練習も行わずに、スタジアムへは1時間半前に入ることになった。
 アスンシオンは28日午後から豪雨と強風で、日本代表が予定していた、試合会場となるスタジアムへの見学も中止。28日には、当初、試合会場での練習が伝えられたが、ボールの使用、スパイクの着用も急に禁止され、ようやく許可されたスタジアム視察も雨で流れたとあって、まさに「ぶっつけ本番」でのペルー戦となった。
 一晩降り続いた雨は、午前9時過ぎに上がり、少し晴れ間ものぞくほどに回復。上着がなければ多少肌寒いくらいの感じで、湿度もない。雨が降ると気温は下がるという、パラグアイの秋口の典型的な気候だそうで、涼しいアルゼンチンで合宿をした選手たちにとっては、到着時の蒸し暑さに「涼」を運ぶいい雨になったようだ。
 スタジアムのピッチの状態は、関係者によれば良好とのことだが、試合前のピッチの下見でどれくらいの情報を正確に得られるか、特にDFには重要な試合前の準備となる。


「物を知らないとは恐ろしい」

 28日の晩、スポーツ新聞が契約をしている現地の日系2世の通訳の方と食事をするチャンスがあった。
 日本でも12年暮らしたという通訳氏の話に、食事をしていた新聞記者一同、みな少なからずショックを受けてしまった。
 彼によると、「日本の応援は多分すごいものになると思う」という。
「エッ、日本の完全なアウエーってことじゃないんですか」と、キョトンとしている私たちに、彼は説明をしてくれた。
 パラグアイには、ボリビア、ペルーからの移民も非常に多いが、過去の歴史的な史実から国民感情はあまり良好ではない、しかも最近のインフレ傾向で職を失う人が多く、こうした経済状況もあって、隣国のペルー、ボリビアとは、むしろ悪感情が募った関係になっているという。
 一方、国内の移民の半分を占める日本人の移民は、ここパラグアイに革新的な農業技術をもたらし、農業では大豆、小麦など国民生活を支える食物を生産する源となっており、非常な尊敬を集めているそうだ。
「常識的に考えて、パラグアイ戦はともかく、残りの2試合については、みんな日本を応援すると思いますよ。かなり熱烈に。ですからアウエーっていえば、ペルーやボリビアはすごくやりづらいんじゃないでしょうか」
 記者も、選手も、「ここ南米では日本チームが初めてアウエーの洗礼を浴びる」と思っていたし、そう書いてきた。選手は試合を数時間後に控えた今も、恐らくそう信じているだろう。
 ところが、実際の試合開始時にどうなるかは別としても、受け入れている国の事情、つまりペルーやボリビアとは一般的な市民レベルでの関係が良くない、などということは、こうやって聞かなければ知る由もない。知らないで、今日まで「アウエーの洗礼」と書き続けたわけで、物を知らないということは、本当に怖い、と改めて思う。
 また、現地の新聞では、「ペルーの日本大使館人質事件」と「日本サッカー」を結びつけて面白い記事にするものもある。
 もっともアウエーとは応援だけではかるものではない。選手も言うように、その土地への長い移動、それに伴う環境の変化や、ジャッジ、ボール、芝の状態などすべて、でもある。
 もしもペルー戦で、日本への応援が思った以上にあれば、それは、荒涼とした大地にとてつもない苦労をして農業を確立した日本移民のみなさんのおかげなのだろう。
 彼らの日本代表への思いは深く、日本の到着時には、空港で涙ぐむ年配の方たちまでいた。地方で流れるFMの日本語ラジオでは「日系のみなさん、まだキップを持っていない方は、早めに買いましょう」と連日流し続けているそうだ。
 日本の反対側で、一体どんな風に試合が行われるのか、画面を通じて、そんな歴史や事情も少し参考に、試合を観戦していただければ、面白さもまた違ったものになるかもしれない。
 南米選手権開幕戦のキップは完売。ダフ屋では、正貨の10から20倍(月収の半分から3分の2)に跳ね上がっている。

    ■参考:
    試合開始時間は、現地時間29日午後6時15分(日本時間30日午前7時15分)の予定。
    なお、日本でのテレビ放送予定は次の通り:
     6月30日午前7時よりNHK−BS1にて衛星生中継
     6月30日午後11時37分より日本テレビにて衛星録画


BACK