1999年6月6日

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キリンカップサッカー'99
日本×ペルー

(横浜国際総合競技場)
天候:晴れ、気温:33度、湿度:42%
観衆:67,354人

日本
ペルー
0
前半 0 前半 0
0
後半 0 後半 0
 

 

先発
GK 20 楢崎正剛【名古屋】 GK 1 イバニェス【ウニベルシタリオ】
DF 5 秋田 豊【鹿島】 DF 3 レイノソ【クルス・アスル(MEX)】
3 相馬直樹【鹿島】 16 グアダルペ【ウニベルシタリオ】
6 服部年宏【磐田】 4 レボシオ【スポルティング・クリスタル】
22 森岡隆三【清水】 14 ソト【スポルティング・クリスタル】
MF 13 藤田俊哉【磐田】 MF 10 パラシオス【ウニベルシダ・アウトノマ・デ・グアダラハラ(MEX)】
10 名波 浩【磐田】 8 ハヨ【ウニオン・サンタフェ(ARG)】
7 伊東輝悦【清水】 5 ペレーダ【ボカ・ジュニアーズ(ARG)】
8 中田英寿【ペルージャ】 7 ソラーノ【ニューキャッスル・ユナイテッド(ENG)】
FW 11 呂比須ワグナー【名古屋】 FW 9 マエストリ【ウニベルシダ・チレ(CHL)】
21 柳沢 敦【鹿島】 11 ピサロ【アリアンサ・リマ】

交代
46分:斉藤俊秀(名波 浩)
64分:三浦淳宏(藤田俊哉)
70分:奥 大介(呂比須ワグナー)
84分:北澤 豪(中田英寿)
オルセン(ピサロ):60分
チャコン(グアダルペ):72分
メンドーサ(マエストリ):89分

試合データ
日本   ペルー
11 シュート 21
15 GK 5
3 CK 1
14 直接FK 19
19 間接FK 3
5 オフサイド 3
0 PK 0

 最終戦となったペルー戦に優勝をかけた日本は、当初は出場をさせない予定だった中田英寿(ペルージャ)をトップ下に起用し、柳沢 敦(鹿島)とロペス(名古屋)を2トップとする布陣で臨んだ。前半には、フリーキックなどを含みシュート5本を打つなど、チャンスを作りながらも決定力不足に泣き、ベルギー戦に続いてまたも無得点のまま折り返す。

 後半は名波 浩(磐田)をベンチに戻して斉藤俊秀(清水)を3バックに入れたが、残り30分になったところから、ピッチ上では35度にもなっていた高温に、選手の足が止まってしまう。DFは、ペルーの早い攻撃から防戦一方になり、攻撃でも、中盤から前へのボールがつながらず、また動きが鈍ったことから、スペースを有効に使うことがまったくできなくなった。
 ペルーのシュートも、楢崎正剛(名古屋)のファインセーブと、ポスト2回、バーに1回と、ゴールに嫌われる、日本の守備に運もあり双方無得点のまま終わった。
 代表初出場を果たした三浦淳宏(横浜)も本来の左ではなく、右サイドへ、奥大介(磐田)はロペスと交代してトップへ、また、交代を準備し、一度はレフリーに通告した久保竜彦(広島)も、相馬直樹(鹿島)と交代しかけながらベンチに戻る、など、どこか「ドタバタ」としたトルシエ監督の采配にも不可解な点は残った。

 これでこの大会、優勝はベルギーとペルーが同率で分け合い、日本は最下位の3位で終了。また、昨年、トルシエ監督が引き継いで以来4試合で、得点はわずかにエジプト戦(98年10月28日)での中山雅史(磐田)のPK(前半25分)だけ。以来、335分の無得点が続いている。

ペルー代表/オブリタス監督「内容の濃い試合だった。日本は前半、ペルーを上回っていたが、後半、特に残り30分からは完全にペルーのペースだった。勝たなければならなかったしいくつものチャンスがあったのに、正確性に欠けた部分があったことが残念だった。コパアメリカ(南米選手権)で日本と当たるときにはさらに全力を尽くして、大会のベスト4を目標にしたい」

トルシエ監督「かなりがっかりした。最後の30分については(あまりに選手が疲れていて)特に申し上げことはございません。まるでJリーグを見ているかのようだった。疲れてしまって、頭が空っぽで、アバウトで、想像性もなく、Jリーグっぽい試合になってしまった。しかし、選手にあまり意地の悪いことは言いたくない。技術的なことはともかく、一生懸命やろうとしていたからだ。もし、それも(一生懸命勝とうと)していない、というのなら、みなさん、どうぞ批判してくださって結構だ」


「使わないはずが使い、使うはずが使わない??」

 1日の会見では、後に修正したことはともかく、「中田は南米選手権には連れていかないのだから、ペルー戦では使わない」とまで断言したトルシエ監督は、この日も中田を先発から84分間使った。変更したのは、スポンサー云々が理由ではなく、優勝トロフィーを手にしたかった監督自身の気持ちの変化からである。
 この試合は、この何ヶ月か、メディアと監督の間で繰り返されている、監督が「問題発言」をし、すぐに「そんなことは言っていない」とひるがえすという、極めてややこしいやり取りを象徴するような試合運びだったのではないか。
 中田はこの試合、暑さや疲労から決していいコンディションではなかったはずだ。
 さらにトップ下をこなそうにも、ロペス、柳沢2人ともが一度受けてからはたくタイプなために、サイドに流れることがほとんどなく、スペースが取れず、自分が前に上がるチャンスもまったくと言っていいほどなかったといえる。
 それでも、ペナルティエリア付近では相手からファールを奪い、1試合で3枚もの警告を(これはこの試合のペルーの警告全部)1人で奪ってフリーキックのチャンスをものにする当たりは、レベルの高さをうかがわせた。
 試合後「結果が出た(最下位)んで仕方ないです。(出場は予定外か、の問いに)予定外も何も、選手ならばとりあえずはいつでも行ける準備はしていなくてはならない」と、中田はゲームを振り返っていた。
 一方監督は、使わないはずの中田を使い、レフリーに交代を告げた久保を使わなかった。 「交代を言われ、もっと動くようにと……、けれどもまた座っていていいとなり……。まあ仕方ないんですが」と、試合後久保は淡々と話していたが、そもそも交代の相手が相馬であった。
 交代を告げた後、ペルーのチャンスが相次いだために、久保を入れては失点するのでは、と考えたはずだが、ロペスに替わった奥も、あのポジションは未経験で、三浦も練習ではやったとはいえ、右サイドの選手ではない。直前に「右にいけ、守備はいいから」と言われたと話していたが、とにかく優勝のためには1点を取るだけの試合、と、目標はシンプルだっただけに、監督自身に得点のオプションがなかった点、采配もどこかドタバタした点と、2つの課題がクローズアップされたのではないか。
 監督の評価が、1試合くらいでよくなったり悪くなったり、ということは起き得ないが、トルシエ監督の場合は、メンタル的にもかなりの「波」があるようだ。会見も30分話して、質問は1つ、など、激しいのはピッチだけでいいのだが。
「選手は、日本的なすばらしい精神を生かしている。DFにはフレームができたし、負けない、という試合はできた。私が求めたいのは、技術の高さである。攻撃は悲しいかな、1年前にできていれば」と、昨年のW杯時まで遡ってしまう当たりは、「評論家」のようである。
 南米選手権ではペルー、パラグアイ、ボリビアと予選で当たる。中山雅史も復帰するメドは立った。重症の「無得点病」は、今回だけの問題なのか、それとも根本的な治療を要するのか。監督の病状の見立て、またそれをどう治療するのだろうか。
 就任から、もっとも大きな最初の山場を迎える。

 トルシエ監督の天敵、ではなくて「お目付け役」となる代表の強化専門部門責任者となる、協会・釜本副会長は「この試合は55点から60点にいくかどうか。決定力不足だ。監督のやろうとしていること(3バックでラインDFを積極的に)はよく分かるが、ペナルティエリア30メートルからチームとしての形を感じられない。奥にしても、三浦にしても、入って来て何をするのか(させるのか)代表での役割への意識が低い」と、厳しい採点だった。

先発で無失点のGK楢崎(代表3試合目)「試合にはずっと出たかった。勝利が目標だっただけに残念。暑さでうごきが止まってしまったところはあるが、相手のシュートは上手かったと思う。ポスト、に助けられたとみなさんは言うけれど、あれもDFが厳しいところをチェックして、コースをふさいでいるからであって、別に運というわけではない」

今回は出場がなかった井原「DFはよくやっていたと思う。森岡は、チャンスをものにしようとよくやった。DFは後半残り30分から、苦しいところだがあそこでもっとビルドアップをしなくてはならない。ペルーには、南米選手権で借りを返しましょう」

初めての代表90分フル出場を果たした柳沢「ベルギー戦も今日もそれなりにできてはいたけれど、90分を通じてやり切れなかったことが課題になった。試合の中で、こういうときにはこう、とか流れをちゃんと読んで動かなくては」

去年の6月以来の出場となった北澤「奥とのポジションチェンジをしながら点に絡め、という指示だったが、それができなくて残念。攻撃の形もシュートまで作れていない感じがする。チームとしてのまとまりはいいので、次につなげたい」

前半で交代した名波「相手を崩すことはベルギー戦よりはうまくいったのではないか。ただ、勝たなきゃいけない試合だった」(また、セリエAベネチアへの移籍について、関係者は、あす7日にも正式に契約が結ばれ、磐田から発表される見通しである、と明らかにした)

トルシエJAPAN、これまでの先発メンバー
98.10.28
日  本 1ー0 エジプト
99.3.31
日  本 0-2 ブラジル
99.6.3
日  本 0-0 ベルギー


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