2002年5月25日

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キリンチャレンジカップ2002 ファイナルチャレンジ
日本×スウェーデン

(東京・国立霞ヶ丘競技場)
キックオフ:19時20分、観衆:55,418人
天候:晴れ、気温:23.2度、湿度:44%

日本 スウェーデン
1 前半 0 前半 1 1
後半 1 後半 0
63分:オウンゴール

アルベック:20分

    <交代出場>
    ●日本
      H T :宮本恒靖(松田直樹)
      H T :明神智和(服部年宏)
      H T :鈴木隆行(森島寛晃)
     56分:三都主アレサンドロ(小野伸二)
     64分:小笠原満男(中田英寿)
     68分:中山雅史(柳沢 敦)
     69分:福西崇史(稲本潤一)
     74分:秋田 豊(森岡隆三)
     88分:市川大祐(戸田和幸)
    ●スウェーデン
     16分:アレクサンデション(Ma.スベンソン)
     67分:イブラヒモビッチ(アルベック)
     74分:A.アンデション(ユングベリ)
     77分:ヤコブソン(ミャルビー)
    ◆試合後のコメント:

三都主アレサンドロ(清水)「ワールドカップ前に試合に出て自信もついて、いいワールドカップにできると思うし、チーム全体としてもいいワールドカップにしたい。(得点の場面は)ヒデがスペースにいい走り込みをしていたので、合わなかったけれどもいい狙いだったと思う」

森岡隆三(清水)「自分がどこまで戻っているかを確認する試合だった。チームとしても良いところ、悪いところがあったが、これからケガをしないようにコンディションを整えてがんばりたい。
 足の怪我はもう大丈夫。フィジカルも問題はなかったし、こんな感じではないでしょうか。スウェーデンにはもっとやられると思ったが、そうでもなかった。(トルシエ監督には)試合後、これで自信になっただろうと言われた」

中田英寿(パルマ)「今日は引き分けたが、あとから追いついた展開で結果は上々。チームの雰囲気もいいので、ワールドカップに向けていい準備をしていきたい」

トルシエ監督「選手に対する私のメッセージは、ワールドカップに向けてこの試合が皮切りになると思ってほしいし、そういう大切な試合だということを自覚して試合に臨んでほしかった。私は大きな満足を持って、プラスアルファの自信とともに試合を終えることができた。ゴールキーパー以外、すべての選手がしっかりと試合に出て、大きなフェスティバルに対して準備ができたと思う。今このチームには自信と、いい雰囲気がただよっている。6月4日に向けて私たちのワールドカップがスタートしたわけだ。ワールドカップはオフェンシブに戦っていく。私たちのほうからゲームメイキングをするということで、ゴールを決めるだけではない。自分たちで主導権を握り、仕掛けていくということだ。日本のほうがボールの支配率が高かったと思うし、スウェーデンのほうによりつらい場面が多かった。(日本語で)“ワールドカップ、一緒にがんばりましょう”」

スウェーデン/ラーゲルベック監督「前半は私たちのポジショニングに問題があったけれど、後半は改善された。日本は技術がとても高いが、今日はオフェンスのマックスの力を出すことを私たちが止めたと思う。私たちのディフェンスのほうが強かったということだ。スウェーデンとしては、私が考えるいい試合だとは思わなかった。このゲームとイングランド戦を比較することは難しいので何とも言えないが、日本と練習試合ができたことはよかった」

試合データ
日本   スウェーデン
7 シュート 7
8 GK 9
8 CK 3
13 直接FK 26
7 間接FK 2
0 PK 0
秋田 豊(鹿島)「時間もなかったし、1-1で終わったのはよかったと思う。久々なので緊張感はあったし、溶け込もう、溶け込もうと、深呼吸をした。入るときに、右、左どちらがいいかと監督に聞かれて、(森岡の足もつっているようなので)右、と言った。松田や浩二(中田)を刺激して、脅かす存在になれればと思う。(中山さんとは)常に隣にいるけれど、これといって特別な話はしていない。4年前のチームと比べてそれほど変わってはいないが、色が違うと思う。今回はベテラン、若手がそろっているし、前はそれぞれグループがあって、それがまとまって食事をするようなところがあったが、今回はそれはない。いずれにしても、97年のアジア予選のプレッシャーに比べれば、本大会はそこまでのプレッシャーがない。その分、使命はありますが」

楢崎正剛(名古屋)「ベルギー戦に向けて最後の準備となる試合だったので、点は取られているけれども、後半はよく立て直しができたと思う。先発はミーティングで言われた。(特別な意味を感じたか、と聞かれ)最後の試合ですから、自分にはチャンスだとは思った。DFとは、宮本であっても森岡であっても、連携の問題はなかった。個人的には、(相手が高いので)ハイボールの処理には十分に気をつけたつもりです」

小野伸二(フェイエノールト)「(右サイドはAマッチで)初めて。逆の視野になるので本当に難しいし、どういう動きをしたらいいのか、わからなかった。相手の選手をマークすることにも戸惑ってしまって、大変な作業だったし、守備の時間が長かった。ほかの選手と比べてもコンディションが悪く、今日はとても疲れてしまった。このまま6月4日になって、自分がピッチに立っているかどうかがわらないですね。このシステムでは、もっとサイドを崩さなくてはならないし、ヒデさん(中田)、森島さんに、ボールを入れなくてはなならいのに、できませんでした」

中山雅史(磐田)「後半の攻めの姿勢が、結果的にはオウンゴールになったと思う。前半もそれなりにバランスは取れていたように見えた。(自分のパフォーマンスは)あ、ダメですね。もっとボールに絡まないといけなかったし、今日は練習試合でよかったですね。まあ、自分は短いアップの中から飛び出していかなくてはならないので、難しい面はあります。でもいい準備をして、試合に、チームに貢献したいと思う。若手はみなとてもしっかり自信を持っているし、こっちが盛り上げてもらってるんじゃないですか。サポーターの応援もとてもうれしいし、期待に応えられるように、しっかり自分というものを表現できたらと思う。
 オウンゴールの場面では、ヒデがしっかりと(相手のDFと)競り合ってますからね。お、なかなかやるじゃん、という感じですね。まだ本番までのピリピリムードには早いんで、少しずつ、徐々に高めていければいいと思います。磐田のみんなの気持ちをしっかりと持っていきたいですね。(10番について)ま、ファンタジスタとしてはまだまだでしょうね(笑)。(楢崎が『英語の場内アナウンスでは、マサシ・ヤマナカと言っていましたよ』と中山に伝えたらしいが)アナウンサー、クビですよねえ(笑)」


「通し稽古終了、次に幕があくのは……」

 この試合をもって、何が課題であるとか、ここが収穫であるとか、分析することは無駄であるし、あと10日でできることもないだろう。いずれにしても、今日は、演劇や舞台の初日を前にした、言うなれば「通し稽古」の日ではなかったかと思う。
 幕が上がり、最後の通し稽古が始まって、スポットライトが当たると、配役も、脚本もちょっと変わっていて、「監督」は、非常によかった、すばらしい劇の進行で、何も問題はなかったと拍手を送っている。しかし、ここまで4年もの「稽古」を舞台裏から見ていた照明係や、舞台装置を作った美術、似合うように準備した衣装係りには、解釈に多少の時間がかかったというところだろうか。

 慣れるのに時間がかかった部分がある。
 小野の右は、Aマッチ初めてだった。この日、自身の体調が悪いのは明らかだったが、「視野が(左サイドをやっていたときとは)逆になるので、昨日の練習からとても戸惑ったし、非常に難しい作業だった」と試合後話し、「6月4日もこれではわからない」と、10日前になって振り出しに戻ったという。
 服部年宏(磐田)の左については、未知ではなく「あのくらいだと思う」と話していたが、それでも、中盤との連携となると、この日は何度もタイミングがずれてしまう場面があった。
 トルシエ監督は「明らかに私たちのボール支配率が上回り、スウェーデンには厳しい場面が多かった」と試合を分析。確かに、支配率は58.2%としたが、それでもボールは、高い技術とスピードではるかに多く回しながら、一度もスウェーデンDFを崩した場面はなかった。
 一方、ラーゲルベック監督は「我々のDFが日本よりも強く上回っていた」とする。ユングベリは「日本のDFに特に脅威は感じなかったし、トップスピードにもって行こうとすると、ユニホームを引っ張る場面が何度もあった。フィジカルのコンディションは、我々よりは悪かったように見受けられる」とコメントし、得点をアシストしたラーションは「狙い通リ」と、このところ続いている失点の典型的なパターンである2列目からの飛び出しによるチャンスメークを口にした。

 よくわかった部分もある。
 川口能活(ポーツマス)、曽ケ端 準(鹿島)を除く全員が出場し、通し稽古はまさに、主役、脇役、全員の登場で幕を閉じた。誰のセリフであっても、全員がしっかりと覚えてきた、それはよくわかった。そして水面下で、どれほどの闘争心をもって、このことに臨んできたのかも。中田英寿は試合後、英字メディアに対して、「時間が流れ、4年前のチームと比べることはできない。しかし、若い選手もみなで卓球やビデオゲームをしていて、とてもリラックスをしている。ネガティブなことは何もなく、ポジティブなことを考えるだけだ」と話していたという。
 この日、これまで見なかった光景が見られた。ベンチに戻った選手全員が、監督と握手を交わし、再びベンチに座ったことである。チーム全体がまとまり、中田が言うようにポジティブな姿勢にあることは、十分想像ができる。
 中山が、ミックスゾーンで「ファンタジスタとしてはまだまだです」と言って、ドッと笑い声が起きるなど、こうした「明るさ」も、ムードを作ることの苦手だったチームに大きなプラス材料を与えている。

 試合後、5万5000人のサポーターに、舞台から全員が手をつないでカーテンコールの練習もして、とにかく舞台挨拶は終わった。
 さて、次にカーテンが上がる瞬間の配役と、驚きはいかに……。


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