2002年5月14日

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★☆現地レポート★☆
ノルウェー×日本
(ノルウェー・オスロ、ウッレヴォールスタジアム)
キックオフ:0時45分(=日本時間、15日)、天候:晴れ

ノルウェー 日本
3 前半 0 前半 0 0
後半 3 後半 0
72分:ルシュフェルト
76分:ベルグ

84分:スールシャール
 


 ◆試合後のコメント

<交代出場>
●ノルウェー
  H T :ルンデクバム(ヨンセン)
  H T :テッセム(ソーレンセン)
 73分:ルシュフェルト(イヴェルセン)
 85分:リーセット(レオナルドセン)
●日本
  H T :柳沢 敦(久保竜彦)
  H T :戸田和幸(福西崇史)
  H T :明神智和(市川大祐)
 81分:服部年宏(中田浩二)
 85分:三都主アレサンドロ(鈴木隆行)
 85分:小笠原満男(稲本潤一)
中田英寿(パルマ)「(立ち上がり、攻撃のリズムがうまく作れなかったように見えたが、原因は? と聞かれ)見ての通り、選手はみな疲れていた感じでした。相手のプレッシャーもなかなか強かったし、それと、なんだか自信がなかったようなところがあった。(自信というのはゲームにか、相手にか、の問いに)というか、もう少しミスをおそれずにやればよかったのにと思います。(こぼれ球を拾われていたようだが、コンディションが悪かったのか、と聞かれ)コンディションというよりも、それは自分も含めてポジショニングの問題だった。(0-3というスコアはチームにとってショックか? の問いに)この結果がいいか悪いかは置いておいても、レアル戦までずっと勝つか引き分けできたわけですから、気を引き締めるという意味ではいいし、これをいい方向へ持って行ければいいと思う。失点は、基本的に全部ミスからだった。流れの中からではありませんから。あと1か月(近く)ありますから、その中でもっと連携をうまく取れればいいと思います」

小野伸二(フェイエノールト)「攻撃のリズムを作れなかったことが0-3の原因だと思う。みんなメンタル的に疲れているのではないでしょうか。それと、足もと、足もと、とボールを狙って、僕もでしたが、やはりミスをしてしまうケースがあった。1点目は戦術のミスから取られた失点でしたね。攻撃のリズムをとれなかったことがすべてで、ディフェンスはよくがんばっていたと思います。ここまでいろいろな試合をこなして疲れも溜まっているし、0-3はショックですが、でもナーバスになることはありません。メンバー発表されて、スウェーデン戦でまたきちんとした試合をできればいいと思う。まあ、選ばれるかどうまだわかりませんけれども。
 勝ちに行ったつもりですが、気持ちとは別に体がついて行かなかった。トップ2人へのチェックは非常に強かったし、そういうところを抑えられてしまって切り崩すことができなかった。悪い形で取られた失点もある。そこを修正して、まず気持ちをリフレッシュしたい」

市川大祐(清水)「悪かったですね。リズムが非常にとりにくいグラウンドでした。競り合いでこぼしたボールをみな拾われてしまったのが今日一番大きな問題だった。セカンドボールをみな持って行かれてしまった。ヘディングでも、押し込まれるような形で崩されてしまった。勝てなくても、負けない試合をしたかった。ボールが落ち着く場所がありませんでした。今日は本当にアウエーで戦っているという感じがする試合だった」


服部年宏(磐田)「ダイレクトプレーがまったくなかったですね。止めて出す、という動きになってしまって、ちょっとゆっくりしずぎたかなと思う。日本に帰ってからもう1試合あるわけだから修正は可能だし。1点目は取られかたが悪かった。あれで試合も流れが悪くなってしまった。攻撃のリズムを作ることができなかったのが、今日はすべてだった」

川口能活(ポーツマス)「チームがまとまるということが今は一番、大事だと思う。誰が(代表に)選ばれるか、誰が試合に出るか、といったようなことにみなが集中してしまっているような感じで、まあ無理もないんですけれども、疲れがあると思う。今できる古都というのをきっちりやっていけば焦ることもありません。今日の敗戦も修正は可能だと思う。下が悪かったので、慎重にボールをさばいた。足の不安はありません」

戸田和幸(清水)「失点のしかたが悪かった。あのダメージが大きくて、結果的に策に溺れてしまうことになった。どこが悪いのか、(後半からの途中出場だったので)前半でよく見ることができた。いい時間帯もあったし、0-3はそう気にする必要はない。やらなければいけないことがたくさんあるということがわかった」

宮本恒靖(G大阪)「相手の2列目が狙っていたのはわかっていました。難しいのは、オフサイドの駆け引きをどうするかです。最後で体を張って止める場面もあったし、いい部分もありました。セットプレーの瞬間にラインをどうするか、僕が決めて、それを伝えている形です。あそこ(失点につながったセットプレー)では、2度目にラインを上げるところを狙われた。今日のテーマは、自由にヘディングをさせないことだった。その通りにチャレンジできたし、チームの意識は徹底していたと思う。ボールももっと回ればよかった。ラインを上げるのは僕らの戦術なのでやめることはできません」

中澤佑二(横浜FM)「自分の持ち味は出せたと思う。やるべきことはやったと思うので、あとはトルシエと神さまが(代表に選ぶかどうかを)決めることだと思う」

鈴木隆行(鹿島)「自分がここまで点を取れないでいることは不安ではありません。今日の失点もそうですが、修正できると思います。3失点はDFだけの問題ではなくて、前のほうからすべてが守るということです」

中田浩二(鹿島)「本番じゃなくてよかった。ディフェンスラインだけの問題ではないし、前からのディフェンスがすべて整っての守備です。もっともっと自分たちはいいチームだと思っているし、反省することがいっぱい出たので、前向きに修正していけばいい。最初の1点がなければ違うゲーム展開になったと思います」

日本サッカー協会/岡野俊一郎会長「縦に縦に割られて、スピードで持って行かれてしまった。そういう中では、ベルギーを想定していい試合になったのではないかと思う。ほとんどの場面は、日本がボールを持ったところからのミスだった。コンディションがよくなかったようですね。遠征の疲れもあったでしょう。帰って体調を整えてスウェーデン戦に挑んでほしい」

日本サッカー協会/森 健兒専務理事「Nothing to say」


「スタディ、一日で」

 こんな時は、対戦相手のコメントを教訓にするのがよさそうだ。それしかない。
 このコメントを、直訳するなら「一夜漬け」ということになるのだろうか。この日は10番で、試合後、中田英寿に真っ先に駆け寄ってユニホームの交換を求めていたマンチェスターユナイテッドのスールシャールが、日本の守備、得点のためのウイークポイントを聞かれて答えたものである。
「私だけではなくて、チームのみなが、日本のビデオ3本を見てDFラインの弱点を攻めようと思った。ビデオで勉強したんです、でも一晩だけですが」
 得点は後半となったが、前半にも、やはり右からのフリーキックの際、同じように、一端、間合いを取られてDFがラインを上げた瞬間、蹴り直しの動作をされ、そのとき、すれ違い様にノルウェーにゴール前に飛び込まれる場面があった。その際はオフサイドだったが、布石は打たれていた。4年もかけて磨いたはずの監督の「哲学」と言われるフラット3も、一夜漬けで突破できたと言われてしまう。
 これで2試合(Aマッチ)連続3失点。宮本は、ポジティブに「ラインを上げることは僕らの戦術なので止められない」と話している。しかし、これは何としても「止めなくては」ならないだろう。
 同格、もしくは上の相手に対して、ペナルティエリア内であれほど高いリスクを負ってオフサイドを取りに行くことも、信じられないほど多くのミスからボールを奪われることも、日本代表がストレスの高い日々を送ることも、どれも一刻も早く止めたほうがいい。

「日本の選手はどこか勢いが欠けていた。ビデオではもっともっと速く、中盤を支配してボールを取りに来るイメージだった。ポーランド戦は少なくてもそう見えたのだが」
 オフサイドで無得点となったが、ヘディングでゴールにしかけたキャプテン、ベルグは指摘していた。
W杯予選では、ポーランド、ベラルーシ、ウェールズ、ウクライナ、アルメニアと同組で、勝ち抜けなかった。その国に「勢いがない」と指摘された理由はどこにあるのか。

 小野は肉体的な疲労よりも「みなメンタル的にとても疲れているのではないでしょうか」と話している。川口はもう少し具体的だった。
「自分が選ばれるとか、自分が落ちたらどうするか、とか、試合に出られるのか出られないのか、そういうところに気持ちが行きすぎていたと思う。(4年前を思うと)今が一番難しいところかもしれません」
 今回の遠征ではじつに多くのハプニング、故障が起きた。スペインでは西澤明訓(C大阪)が盲腸の手術で入院し、中村俊輔(横浜FM)は結局ひざの回復が思わしくなく一度も合流せずに終わった。どしゃぶり、しかも真冬のような寒さの中で、レアルと試合を行い、柳沢 敦(鹿島)はギプスをしたまま出場。発熱して、松田直樹(横浜FM)も腿の痛みを訴えた。監督の身内の不幸から監督自身がこのノルウェー戦の合宿から離れ、最終選考を前に、これでもかというほどドタバタとする結果になってしまった。身体はむしろ休めているはずだが、ストレスは一向に減らず、むしろレアル戦よりも悪化していたようである。
 小野が指摘したメンタルの疲労は、本来ならば肉体が疲れ切っているはずの中田や小野が感じることのないものだったのだろう。
 実際のところ、ビデオでDFラインを修正するとか、攻撃のパターンの確認といったもので解決するような問題なのではないか。

 選手は明日オスロを経って、16日午後日本に到着する。監督はパリに戻り、18日のフランス×ベルギー戦を視察する。
 選手が「ホーム」で癒され、リフレッシュすることが、最後のテストマッチ、スウェーデン戦(25日、国立)に向けての唯一のトレーニングになる。


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