2002年3月27日

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★☆★ 現地取材レポート ★☆★
国際親善試合
ポーランド×日本
(ポーランド・ウッジ、ビセウスタジアム)
天候:晴れ、気温:5度

ポーランド 日本
0 前半 0 前半 2 2
後半 0 後半 0
 

中田英寿:9分
高原直泰:41分

<交代出場>
●ポーランド
 H T:マイダン(デュデク)
 H T:カルバン(バウドホ)
 H T:ボンク(Mi.ジェフェブワコフ)
 H T:クシヌベク(シフィエルチェフスキ)
 H T:Ma.ジェフェブワコフ(クリシャウォビチ)

78分:ボンク(カウジニー)

●日本

53分:久保竜彦(高原直泰)
53分:福西崇史(稲本潤一)
70分:波戸康広(市川大祐)
79分:明神智和(戸田和幸)
 今年初めてとなるアウェー戦、日本代表は、右サイドにウクライナ戦で日本代表に4年ぶりに復帰を果たした市川大祐(清水)を置き、トップ下には昨年イタリア戦以来の合流となった中田英寿(パルマ)を入れる布陣でポーランド戦に臨んだ。新しいグループでの攻撃、また、市川の右サイドでの守備能力をもテストする格好となった。

 ピッチは、霜でぬかるみ、立ち上がりは思うようにボールが運べないなか、9分、中盤で相手のクリアミスを市川が飛び込んでカット。大きく動いてボールを受けに来た中田にパスし、市川はそのまま右サイドを駆け上がる。中田は、一度左サイドに軸足を向けるフェイントでDFを反対に振り切った後に、市川へパスを返す。市川は右サイドを突破して、このボールを再度中田へ送り、中田はこれを右足で低く強いシュートを放つ。これが決まり、アウェーの日本代表が先制した。

 この得点で落ち着いた日本は、鈴木隆行(鹿島)、高原直泰(磐田)が前線から積極的にボールを追い、アウェーながら、ポーランドを上回る運動量でプレッシングを続けた。
 この試合、左サイドに入った小野伸二(フェイエノールト)も、右サイドからの攻撃を支えつつ随所で頭脳的なプレーを展開し、この日前半のハイライトとなる、中田=市川のコンビネーションを演出してみせた。

「昨年のフランス戦を教訓にして、どれほど成長したかが重要な課題」と監督は前日の会見で話したが、アウェーのなか、中田、小野、川口能活(ポーツマス)、稲本潤一(アーセナル)らが欧州での経験を最大限に生かしてチームをリードする。前半41分には、中田が70メートルほどのロングボールを、またも右サイドを絶妙のタイミングで上がっていた市川へ。市川が思いきってこれを左に駆け込んできた高原に返すと、高原がゴール前での1対1に競り勝って、2点目を奪った。

 試合は前半でほぼ流れが決まる形となり、後半開始、メンバーチェンジなしで挑んだ日本は、試合を淡々と運び、終始危なげなくアウェーのゲームを掌握した。
 また、ポーツマスでは試合出場機会に恵まれない川口が、昨年10月のナイジェリア戦(2−2、サウザンプトン)以来の代表戦出場ながら、落ち着いたセービング、速いフィードでチームの守備を司り、勝利に大きく貢献した。
 終盤には、ボランチの福西崇史(磐田)、トップに久保竜彦(広島)といった身体能力にすぐれた選手を投入。ポーランドの体格に対して、優雅な身のこなしと、タイミングのよい「身体能力」をも存分に見せて、2−0で逃げ切った。

日本代表/トルシエ監督
「日本が欧州で勝利を収めて非常によかった。(市川は非常にアグレッシブに行っていたが、と聞かれ)非常にバランスがよかった。彼の攻撃的な力というのはわかっていたことだが、今日は守備的な力がどれぐらいあるかも確認したかった。右に市川がいて、左に三都主がいると攻撃的になりすぎるが、今日は小野が左に入ってバランスが非常によかった。小野は日ごとに成長している。中田のパフォーマンスは本当にすばらしかった。チームの戦術を守り、自分を犠牲にしても、チームのために献身的に動いてくれた。彼の動きによって、日本代表はオートマチズムが発揮された。稲本はコンディション的に厳しかった。やはり試合に出ていないので難しい面もあったと思うが、今日出られたことは大きかったと思う。
 今日の川口は私のように強運のあるGKだった。試合前、私からプレッシャーもかけた。イングランドで競り合いを覚えただろう。セットプレーもある。そこで君の存在感を存分に見せてくれ、と。今日の久保はとても面白い動きをした。今日、彼がなぜ自己表現が下手なのかわかった。彼は13世紀に生まれ、ある日突然見つけられたのだ。だから近代文明に慣れていないし、近代的なコミュニケーションを取ることができないのだ(※筆者補足:久保のことを悪く言ったのではなくて、久保に常に自己表現といい続けた監督が、彼のやり方を認めた、というポジティブな意味。終始笑っていた)」

ポーランド代表/エンゲル監督「日本は強かった。(一番印象に残った選手は、と聞かれ)もちろん中田だ。日本チームの強さを、ポーランドも、ファンも、よく知らなかった。日本はチームとしてプレッシングをかけ、非常にいいサッカーで戦っていた」


川口能活(ポーツマス)「久しぶりの試合で、2か月半ぶりですね。心の準備はできていました。最初からすんなり試合に入れてよかったと思う。今日は、自分が完封したというより、DFラインが非常によかった。ツネ(宮本)を中心に、直樹(松田)も浩二(中田)もよかった。ヒデがいい時間にいい形で点を取ったので、あれで落ち着くことができました。まあでも、危ない場面もありましたし、集中力を保ってやるようにしていた。ピンチのときにどれだけGK、DFがしっかり防げるかが大事だと思う。今回の遠征では日本語が話せるし、とても楽しく、やりやすかった。W杯に向けて、どういう状況であってもいいプレーをしていけるようにしたい。今日の試合でみんな自信がついた。大事なのはW杯で勝つことです」

高原直泰(磐田)「(2点目のゴールについて聞かれ、)ちょうどセンターリングが太陽と重なってしまい、相手のDFも自分も一瞬ボールが見えなくなった状態だった。ピッチも、これぐらいのだったら大丈夫かなと思いました(笑)。グラウンドが悪いといっても、そんなにひどくはなかった。練習グラウンド(ワルシャワ)のほうがよくなかったんじゃないでしょうか。
 今日は相手のDFを前戦からマークして早くプレッシャーをかけ、自由に、正確にボールを蹴らせないことを心掛けた。あわよくば高い位置でボールを奪ってしまおうという意識で、とてもよかったと思う。チームとしてもどんどんよくなってきているし、意識が高いなかでプレーをできていると思う。
(今日は中田英寿がいてやりやすかったか、と聞かれ)とてもやりやすかった。やはり、中盤にタメができることによって全体の流れができるし、フィジカル的に強い人がいてくれるとボールが安定して出てきます。この1年、気持ち的にも代表でよく集中できたと思う」

小野伸二(フェイエノールト)「アウェーで、とにかくDFをみんながんばったと思う。DFでの積極性がよく出ていたと思います。(イタリア戦に比べて低い位置だったが、と聞かれ)イタリア戦よりはボンボン奥に蹴ってくるサッカーだったし、自分の目の前に人がいるような状態だったので、低い位置でも別によかったのではないでしょうか。日本代表は1試合ごとによくなっているし、この1年、守備がよくなったかはよくわからないけれども、自分も守備にがんばっているとは思う」

市川大祐(清水)「積極的にやったことがよかったと思うし、ヒデさんが入っていたのでロングボールなども思い切り蹴ることができた。ウクライナ戦ではとにかく思い切ってやろうと思っていたが、今日は守備のこともしっかり意識に置いて、とにかくいい形で試合をしたかった。大事なのはバランスを保つことで、自分が上がっていけばいい、というだけの問題ではないです。
(高原のゴールへのアシストについて聞かれ、)高原直泰さんが言いスピードで上がってきてくれていたので、ボールを上げることができた。(ここまで4年間あったが、との問いに)いや、でもまだ2試合ですからね。(中田英寿と一緒にプレーするのは98年4月1日、市川の代表デビュー戦以来になる、と言われて)あぁ、もうそんなに経ってますねぇ。でも今日、中田さんから出してもらったパスは、そういう時間のブランクはまったく感じないものでした。
 本当に意識の高いところでプレーしている人たちと、こうして2試合プレーできたことはとてもうれしかったです。チャンスをつかめるように、Jリーグでもしっかりアピールしていきたい」


中田英寿 一問一答(ミックスゾーンで取材に応じた):

──今日は高い位置からプレッシングをかけていく形だったが、攻撃にうまくつながったか
中田 今日はピッチを見てもおわかりの通り、ボールがはやく回るような状況ではありませんでした。ですから高い位置からはやくプレッシャーをかけ、それによって相手のディフェンスラインもいいボールを回せなかったので、いい攻撃ができたと思います。

──市川とプレーしたのは98年4月1日(韓国戦、ソウル、2−1で負け)以来だが
中田 そうですねぇ。2点目もそうでしたけれど、特に前半はイチ(市川)のほうからの攻撃が多かった。クロスも何本かあって、よかったと思う。

──チームとのコンビネーションを高めたいと言っていたが
中田 徐々によくなっています。今日は相手のミスに助けられたところもありました。詰めて行かなければいけないところもあります。

──ユベントス戦で90分プレーしたが、今日は疲れというよりコンディションはよかったように見えたが
中田 そうですね。よかったと思います。動きがいいというより、今日はよく走れたと思います。周りをよく見て走っていたんですが、たまに重なるところがあったので、そこを改善していきたい。

──よく周りも見えていたようだが
中田 前半は相手が下がっていたし、後半は相手が上がってきていた。そういうことは周りを見ながら意識していた。

──得点については
中田 こぼれ球に詰めて行って、思い切り蹴っただけです。でも早い時間に決められたのはよかったと思う。ただ3点目が決められなくて、とても残念です。キーパーをかわすつもりでいたんですけれど、グラウンドの状況もあったし、イレギュラーもあった。あれを決めていれば試合は終わっていたかな。


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