2001年10月7日

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◇◆◇日本代表欧州遠征 現地レポート◇◆◇

日本×ナイジェリア
(イギリス・サザンプトン)

日本 ナイジェリア
2 前半 1 前半 1 2
後半 1 後半 1
25分:柳沢 敦
56分:鈴木隆行
エジョフォー:27分
アガホワ:80分

<交代出場>
●日本
HT :服部年宏(波戸康広)
HT :廣山 望(小野伸二)
HT :鈴木隆行(西澤明訓)
24分:奥 大介(稲本潤一)
79分:福西崇史(伊東輝悦)
●ナイジェリア
53分:ババヤロ(ウデゼ)
53分:アガホワ(ババンギダ)
73分:ラワル(アガリ)
 今回の欧州遠征、初戦、セネガルに0-2で(ランス)敗れた日本代表はサザンプトンでナイジェリア戦に臨んだ。
 試合開始前から激しい雨が降り、ピッチには足首まで浸かってしまうような水がたまり、また強風に、鉄の重しをつけて立ててある看板4枚が吹き飛ばされる最悪のコンディションでキックオフ。前半強烈な向かい風に立ったはずのナイジェリアに対して日本は終始押し込まれてしまう。水を含んだ最悪のピッチを感じさせない速いパス回しと、強烈なキックに翻弄されるが、前半25分、日本は伊東輝悦(清水)の左からのセンタリングに、前試合でもセネガル相手に安定したボール捌きを見せていた柳沢敦(鹿島)が1対1の飛び込みからヘディングでシュート。ゴールを決めて、先制した。
 しかしその直後、ナイジェリアの右CKからゴール前混戦となり、このボールを押し込まれてすぐに同点とされてしまった。
 その後、攻撃の起点を作るのに苦心する日本は、左サイドの小野伸二(フェイエノールト)と、右サイドの波戸康広(横浜FM)をポジションチェンジし、前線の柳沢へボールを供給しようとした。しかしスリッピーなグラウンド、強風、目をあけていることもできないような激しい雨と、日本は今年の3月、フランスに0-5で大敗したときよりもさらにひどい「アウェー」にさらされての試合となった。
 前半を1-1で折り返し、トルシエ監督は後半の頭から、廣山望(セロ・ポルテーニョ)を右に、左には服部年宏(磐田)を入れ、またフォワードには西澤明訓(ボルトン)に代え柳沢とのコンビで安定している鈴木隆行(鹿島)の3人を投入した。
 雨、強風は変わらなかったが、この試合、前半から悪コンディションの中で一人、体を張った渾身のスライディングを見せるなどしてボールを奪い、見方をフォローしていた稲本潤一(アーセナル)がチャンスを作る。アーセナルのベンゲル監督も観戦に訪れる中、稲本は体を張ったプレーでここでファールをうばう。このプレーで得たフリーキックを左から服部が押し戻される風を十分に計算して丁寧に蹴り、これに後半から入った鈴木があわせてゴール。鈴木はカメルーン戦(6月コンフェデレーションズ杯)に続いて、アフリカからこれで3点目と、大舞台と、フィジカルには圧倒的な強さを実証した。
 2-1と再びリードを奪った日本だったが、その後ナイジェリアの猛攻は続き、80分には、中盤で獲られたボールを放り込まれ、これをDF松田直樹(横浜FM)が切り替えそうとしてミス。ボールを奪ったアガホワがそのまま走り込み、2点目を決められた。
 試合はそのまま2-2の同点で終了。日本代表は欧州遠征の2試合を1敗、1分けとした。


    ◆試合後のコメント

トルシエ監督「試合の目標は、勝ち、負け、引き分け、そういった話をするものではなく、明日、飛行機に乗る選手が1割の自信を持って帰ってくれればそれでいい。セネガルのほうがナイジェリアよりも強かった。今のセネガルはドイツよりも強いはずだ。宮本については真ん中しかできない選手だ。なので今日ぜひともテストしておきたかった。鈴木隆行も非常によかった。柳沢はすばらしかった。西澤のメンタリティにもっと期待していたんだが、残念だった。彼がなぜイングランドでスタメンを取れないのかがよくわかった。今日の試合、私たちのグァルディオラ(※スペインの中盤の要の選手。現在はイタリア・ブレシアに所属)は戸田だった。小野にはジダンではなくベッカムになってくれと言っている。フォワードは4点外しても批判されないが、ディフェンスは1点取られれば批判されてしまう。こういった厳しい試合は選手にとっていい経験になった」

ナイジェリア/アモデュ・シャイブ監督「今日の結果については非常に満足している。日本は非常に組織が整ったいいチームだった。私たちのほうはもちろんベストメンバーではなかったが、がっかりすることはまったくなかった。協会なり所属チームなりとのゴタゴタがあって、チームがまとまらないのではないかという声もあったが、私たちはプロフェッショナルだ。強い気持ちを持って、今日の試合のためにたった2日の練習でこうした試合ができることは結束力を示していると思う」

柳沢 敦(鹿島)「(移籍などを含め今後のことを聞かれると)今後ですか? 目標を持たなければ終わってしまいますからね。あのシュートはディフェンスの手に当たって入ったのではないかと思った。強い雨でも(プレーには)関係なかったし、まあ、一部ボールが止まってしまう場所があったけれども、他には支障はなかった。いかに自分のプレーをするかで、相手が誰であっても関係はない。今日は監督からもっと勝手なプレーをするようにと言われていた。それについてはだいたいチャレンジができたと思う。ただ、チャレンジだけではなくて、これからはそれを成功させていかなければならない。自分にも危機感がいつもある。日本代表の競争はワールドカップまで続くと思っている。いい意味でその競争がチームに影響すればいいと思う」


鈴木隆行(鹿島)「あのシュートは決まりましたけど、他の場面では外していたシュートもあったので、入れていればもう少し楽なゲームになった。監督からは(ディフェンスの)裏へ抜けろと言われていた。フリーキックの場面ではハットさん(服部)が蹴った時に自分のマークがずれていたというラッキーな部分があった。シュートは左足のインサイドでした。特にアフリカ勢だからと言って違うことはなかった」

松田直樹(横浜FM)「今回の2試合での失点シーンはディフェンスにとって最悪のパターン。点数を入れられなければ、もう少しよかったと思いますが……。ナイジェリアとの対戦はU-17、オリンピック、今回で3度目になります。相手の成長度がわかっていったと思うし、そんなにすごいなという感じもしなかった。カヌーともやってみたかったと思う。いずれにしても本番はワールドカップですから、今日のような試合を経験につなぎたい。ババンギダのサイドを、伸二が高い位置にいたので突いてこられた。今日の試合は自分の個性を出せと言われた」

宮本恒靖(G大阪)「個人的なミスがなければ勝てた試合だった。誰が入っても問題なく戦術が行われるチームだと思う。今日はエゴイストとしてプレーをしてくれ、そして試合にアクセントをつけろ、と監督には言われた。柳沢はそういうプレーをしていたと思う。今日はアピールする場であり、テストだからとプレッシャーを感じないでやってくれとも言われていた。カヌーがいて欲しかった。ワクワクするようなプレーがナイジェリアはなかった。後ろを取られてはいけないと、(いつもより)3メートル下がっていた」

稲本潤一(G大阪)「(ベンゲル監督が見に来ていたがと聞かれ)イングランドでやるときには、ベンゲルに限らずどこで誰が見ているかわからない。大切にしたいと思う。今日はセネガル戦と違って、足がつることもなかったし、1試合目よりははるかに体が動いた。ワールドカップはホームでやるので、アドバンテージをどう活かすか、こういう試合をアウェイで戦うとそれもよくわかってくると思う。ワールドカップで一番大事なのは初戦になるでしょう。今日は3ボランチだったんで、誰が前に行けば、誰かが下がる、そういった形のシステムを自然に作った。ナイジェリアはワールドカップに出るチームですから非常にすばらしいいいチームだった」

川口能活(横浜FM)「コンディションはセネガル戦よりはるかによかったと思う。こうした雨や強い風の中でやるイングランドの試合には、慣れることもあるしとても貴重だった。サザンプトンという、ポーツマスの隣の街で試合をできたことは自分にとって非常にいい経験でした。ナイジェリアはサッカーに緩急をつけていたと思う。対応しづらい部分があって、それが2点の失点になってしまった。これからも、どこでプレーをしようとも、自分のベストを尽くしていこうと思う。今日は地元のメディアの人と話ができたことはよかった」
(試合後のミックスゾーンでイギリスのテレビ局から声をかけられ、JFAの通訳が川口に『通訳しましょうか?』と聞くと、川口は『大丈夫です』と自ら対応し、英語で "Experience is important. I'm sorry, my English is no good." などと答え、イギリスのメディアからもこうした姿勢はすばらしいと好評だった)

小野伸二(フェイエノールト)「リスクをおかしたくないので45分で終わりと監督から言われていた。(後半も)やりたい気持ちもあったけれども、リーグのこともあるので納得している。こういういい経験をできたことを2002年につなげていくことが大事。あくまでも本番は2002年ですから」


宮本恒靖、試合前のコメント「ベンチから見ていてセネガルは個人技だけでなく組織もしっかりしていて、強いチームの要素を備えていると思った。ナイジェリアはフォワードの個人技が注目されるが、ディフェンスの強さも身体能力という感じがする。イングランド特有の観客席に近いグラウンドでプレーするのはとても楽しみです」


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