2001年10月4日

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◇◆◇日本代表欧州遠征 現地レポート◇◆◇

日本×セネガル
(フランス・ランス)
天候:晴れ、気温:13度、観衆:2,804人

日本 セネガル
0 前半 0 前半 0 2
後半 0 後半 2
 

ディウフ:76分
チャウ:89分

<交代出場>
●日本
HT :服部年宏(中田浩二)
HT :伊東輝悦(藤本主税)
HT :柳沢 敦(高原直泰)
71分:福西崇史(稲本潤一)
74分:廣山 望(奥 大介)
●セネガル
59分:Mu. エヌディアエ(Ma. エヌディアエ)
63分:カマラ(チャウ)
 2002年W杯に初出場を決めているセネガルとの一戦、日本はトルシエ監督が「ディフェンスでの課題が様々と出るはずだ」と、想定したように、相手の圧倒的なフィジカル面での優位を武器とした攻撃に、どこまで正確な守備ができるかをテーマとして挑んだ。
 前半開始直後から、セネガルの早いパス回しにDF陣が早くも大きく振られる。6分、まずは中田浩二(鹿島)のパスミスから、FWディウフ(ランス)に持ち込まれシュート。これを都築龍太(G大阪)がかろうじて凌いで、最初のピンチは切り抜けた。しかしその後も、中田、森岡隆三(清水)が、相手の速さに順応できないまま、パスミスを連続して守備からリズムを崩してしまう。
 また、これまで外国勢との対戦でも当たり負けすることのなかった松田直樹(横浜FM)も、抜かれた後にファールで止めるなど、今年はAマッチ10試合で7試合を完封してきた「フラット3」が、セネガルの攻撃に翻弄されてしまった。
 中盤には、中田英寿(パルマ)、名波 浩(磐田)、森島寛晃(C大阪)と攻撃の軸となる選手を欠いており、この日はトップ下に藤本主税(広島)を、左のアウトサイドに奥大介(磐田)を投入したもののうまく機能せず、高原直泰(ボカ・ジュニアーズ)、鈴木隆行(鹿島)へボールがまったく供給されなかった。
 前半、日本はシュートゼロと、もっぱら相手のシュート13本もの猛攻に耐え凌ぐ格好となった。
 後半、調子の上がらなかった中田、またきつい行程でアルゼンチンから合流した高原、攻撃の決定的形を作ることのできなかった藤本をそれぞれ交代。開始直後には代わって入った伊東輝悦(清水)が、ロングシュートを放つが、試合の流れを支配することはできないままだった。
 後半31分、ゴールエリアのわずかに外、絶好のポジションで松田がファールをおかす。セネガルはここで得たフリーキックを、この試合再三シュートを放ってきたディウフがゴール右上に決め、先制点を奪われた。さらにロスタイムにはカウンターからチャウが森岡を交わし、豪快にゴールに突き刺し試合を決めた。
 結局終始、セネガルのリズムとスピードに翻弄されたまま、試合は0-2で終了。日本は課題の守備にも破綻を来し、フィニッシュまでの攻撃の形もあまり作れずに終わってしまった。

    ◆試合後のコメント

トルシエ監督「セネガルの勝利はチャンスの数から考えて論理的なものだ。彼らが仕掛けた試合だった。全員がヨーロッパでプレーしていて、そのうち何人かがフランスのリーグでやっている。一体感、団結心、すべてが上回っていた。ワールドカップ出場で自信を深めていることもある。アフリカの象徴のようなチームだ。日本については、あいかわらずフィジカルで勝つことができない。スタミナに関しても勝負にならなかった。それでも貴重な体験であるし、選手にがっかりしたかと聞かれれば、そうではない。後半を見る限り、非常にいい部分も出てきたし、新しい力を試すこともできた。廣山はおもしろい働きをしたし、ポジティブに考えたいと思う。ナイジェリアよりもセネガルのほうが非常に強いと思う。こちらに来て3〜4日は時差も一番キツイし、今日の試合について厳しい指摘をしなくてもいいのではないか。海外移籍組を含めて集合させ、厳しい環境で試合ができたことが一番重要だった。ミスが多かったのは集中力の問題。ヒールパスや胸のトラップなどをしているのを見て、君たちはブラジルじゃない、と途中で言った。そんなことをしているとフランスの時のように5-0でやられるぞ、と話した。攻撃については確かにインパクトも仕掛けも足りなかった。ただ、この2試合を経験して、ホームで戦うのとほぼ同じイタリア戦で、いい試合ができればそれでいいのではないかと思っている」

セネガル・メツ監督「お互い知らないもの同士、初めての対戦ということで、それぞれがそれぞれのやり方でサッカーをやったと思う。私たちセネガルは敵が誰であろうが自分たちのやり方を変えることはない。私自身は選手を替えたり、ポジションを変えたりすることが好きではない。なぜならば選手が混乱してしまい、自信を失うことにもつながるからだ。我々はワールドカップを目指して大事な準備をしている段階で、フランスリーグに選手が多いことであまり練習できないことが悩みの種だ。日本のような相手に今日のような試合ができたことは、我々にとって非常に大きな進歩である。(日本について聞かれ)私はセネガルのコーチなのでセネガルしか見ていませんでした(笑)」


廣山 望
(セロ・ポルテーニョ)
「僕の持ち味はたとえ15分であっても得点を取ることだから、時間は十分だったと思う。センタリングを何本か上げることができたけれども、得点に結びつかなかったのが残念だ。(日本代表として)今日、出場できるまで非常に長かったので、ここまで応援してくれたファンの方々に感謝したい。監督からは出る時に、ディフェンスでさぼらないようにと言われた。セネガルはワールドカップ初出場でモチベーションも高く、身体能力、テクニックもあった」

森岡隆三(清水)「ボールを取られたあと戻るのがきつかった。いいポジショニングを取る前に早く仕掛けられてしまっていた。体を入れてドリブルのコースにきちんと入るべきところを、先に入られてしまい何もできなかった。セネガルの選手の切り返しはとても深い。
 最初はグラウンドにナーバスになっていたと思う。日本は砂だけどこちらは粘土質。ふくらはぎに来ました。前半は体と頭がボケッとしていて連動していない感じがしました。前半だけで3点取られてもおかしくなかった。ファンのみなさんには誤解して欲しくないんだけれど、はっきり言って僕たちはこういう試合をやりに来ているんです。こういう厳しい試合を肌で感じることができたのがとてもうれしい。後半、心と体が連動してきました。眠いとかはないんですが、やっぱりこちらに入って3〜4日は体がキツイ。カウンターが非常に速かった。ああいうチームは今まで対戦していない」

松田直樹(横浜FM)「今まで戦ったチームの中では最も完成しているチームだったと思う。そういうチームとの対戦は少ないから非常にいい経験になりました。やられて悔しいけれど、問題点ははっきりしていた。最後の集中力が足りないところだ。合宿の当初はいつもそうで、あまりいい動きができない。これから(ディフェンスの)3人で話してやっていきたいと思う」

服部年宏(磐田)「個人的にはパスのスピードを上げるべきだと思った。ベンチで見ていたら動きが悪いというよりパスのスピードが遅かった。後半から入る時には、とにかくやるべきことをしっかりやろうという気持ちだった。1試合目は正直なところ動きはよくないと思う。次の試合で今日の課題をどうやって活かすかが一番大事なのではないか。セネガルは思った以上にテクニックがあったし、非常にディフェンスがうまいという印象を持った。今日負けたことは少しもマイナスに考えることはないし、負けたとしても次への課題をしっかり見つければそれでいい。そういうための遠征だと思います」

都築龍太(G大阪)「セネガルは非常に強かった。個人的にも優れていたし、戦術的にも徹底していた、そういうチームだった。(フリーキックから先取点を奪われた場面では、相手が2枚、壁のところをあけたのではないかと聞かれ)いや、そんなことはありません。普通に、きれいに入れられました。(よく凌いだのではないか、との問いに)いや、やはり相手の詰めが甘いところに助けられました。いろいろな意味で課題が残る試合だと思う。どうしても前半から攻め込まれてしまってバタバタしてしまったことが反省点です」

藤本主税(広島)「45分間プレーができて、とても楽しかった。自分としては、持ち味を生かそうと思ったのでディフェンスラインの後ろを走るようにしたけれども、ボールが出てこなかった。そういう動きはやはりコンビネーションが大事なので、この1回の試合だけでどうこうと判断はできない。試合を経験していく中で作っていくしかないでしょう」

先取点を決めたディウフ「セネガルの国民にとっても、私たちにとっても、日本のようなすばらしいチームに勝てたことはとてもうれしい。自分が点を取ったからというわけではなくて、ほかの選手も非常にいいプレーをしたし、全体的に一体感があったと思う」

名波 浩(磐田)「あまり詳しいことは言えないけれども、試合をやれるようなレベルではないというように言われている。悪化はしていない。今までの回復ぶりと同じ様態です。ただ、(治療への取り組みを)どういう方向に進めばいいのかを示して欲しいし、そこに早く動き始めたいと思う。今でも80〜85%ではできると思う。2ndステージ、チャンピオンシップともに、現時点では無理だと思う。もちろん来年のワールドカップを目指して、早く治して万全な体勢を取りたいという気持ちがある。協会にも磐田にも迷惑をかけてしまった。飛行機の影響で多少(患部に)水がたまったけれど、今はもう腫れはまったくない。楽しくサッカーをやるレベルに、早く戻りたいと思う」

大仁邦彌技術委員長「いい経験になりました」


「名波が帰国」

 遠征の初日から、痛めていた右ヒザの状態がおもわしくなく、別メニューで調整を続けていた名波 浩(磐田)が明日5日午後、帰国することになった。なお、今日の試合は観戦する。
 名波はフランス入りしてから、今年手術をした右ヒザ半月板がプレー中に痛み出すことがあったため、トルシエ監督の知人でもある整形外科医ジャン=ピエール・パクレ氏に診断を仰いだ。状態を診察したパクレ氏からは「この遠征でプレーを続行するのは無理だろう」と言われ、2日間リハビリメニューをこなしていた。Jリーグでも無理をしてプレーをしていたことが、ここに来て積み重なって痛みとして出てきている可能性もあり、磐田側も日本サッカー協会のドクターと話し合いを行ったという。

名波の話「日常生活には支障はないがプレー中に痛みが出ることがある。(パクレ)ドクターに診てもらったら、今の状況でプレーを続けていても改善しないおそれがあると言われたので、今後の対応、処置を含めて相談している」

日本代表・月坂和宏ドクター(広島・マツダ病院)「選手のプライバシーに関わることなので詳しくは言えないが、100%のプレーをできる状態ではないので休養させている。今後の対応についてはジュビロ磐田チーム側と相談している」


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