2000年10月4日

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JOMO CUP 2000 Jリーグドリームマッチ
日本代表×WORLD DREAMS
(東京・国立霞ヶ丘競技場)
キックオフ:19時00分、観衆:40,486人
天候:晴れ、気温:23.0度、湿度:64%

取材/田中龍也

日本代表 WORLD DREAMS
2 前半 2 前半 0 0
後半 0 後半 0
13分:松田直樹
40分:高原直泰
 


中村俊輔とロベルト・バッジオ
 今年はこれまでの“日本人選抜×外国人選抜”という形ではなく、“日本代表×外国人選抜”の試合として行われることとなったJOMOカップが、この日、国立競技場で行われた。序盤、日本代表は慎重にやや引き気味に試合を進める。しかし、13分、左サイドでフリーキックを得ると、6月6日のハッサン2世杯ジャマイカ戦以来の日本代表での試合となった名波浩(磐田)がゴール前に正確なボールを入れ、これをディフェンダーの松田直樹(横浜)が頭で合わせ先制。その後は徐々に日本代表が試合を支配し始め、40分、高原直泰(磐田)がPKを決め突き放した。

 後半になると、川口能活(横浜)、松田、奥大介(磐田)に替わり、高桑大二郎(鹿島)、中澤佑二(V川崎)、三浦淳宏(横浜)、中村俊輔(横浜)が投入される。三浦、中村のドリブルでリズムは変わるかに見えたが、そのまま得点は動かずタイムアップを迎えた。日本代表の強化試合と位置づけられたものの、やや低調なパフォーマンスに終始し、試合後、トルシエ監督も不満顔を見せた。なお、この試合の敢闘賞にはロベルト・バッジオ(イタリア・ブレシア)が選ばれた。

◆トルシエ監督の会見より
「今日はたくさんの人が集まるお祭りなので、来てくれた人のためにもいい試合をしたかった。と同時に、アジアカップに向けて調整中なので、しっかりと細かい面を分析する必要もあった。
 結果については満足しているが、だからといって最高のもではなかった、──つまり、勝ったということである程度の自信にはつながったが、勝ち方については言いたいこともある。モチベーションに欠けるところはあったかもしれないし、今週はフィジカルの面でもきつかったと言えるかもしれない。しかし、はっきり言えば、この試合には私自身は満足していない。あと2週間でアジアカップが始まることを考えると、この状態ではまだまだ満足できない」

──五輪も終わったが、このあと2002年ワールドカップまで、A代表をどのように上積みしていこうと思っているのか、ビジョンを聞かせてほしい
トルシエ監督 たくさん言いたいことはあります(笑)。引き続き、ハイレベルな競争を日本の選手に与える機会を作っていこうと思っている。その意味では五輪やアジアカップはチームにとっても選手にとっても、競争するために大切なトーナメントだ。
 そして一番大切なのはサッカー協会と各クラブが親密な関係を持って、しっかりとサッカーというものを育てていく必要があるということ。いい代表チームを作るには、クラブとしっかりと賢明な形で連携を取って、スケジューリングやプログラミングにしても一緒になって取り組み、いい関係を保つことが必要だ。

──具体的に、どのあたりに満足できなかったのか
監督 そのことについては、ここで言うのは控えたい。自分自身としてもこれからしっかりと分析する必要があると思っているし、満足していないと言ったのはチームとしても、それから各個人についても満足していないところがあるからだ。しかしそれはここで言うべきことではなく、選手に言わなくてはならないことだ。パリでの最初のトレーニングで言っていくつもりだが、そのことでアジアカップに対する取り組みをきちんとしていかないとならないと思っている。
 もちろん疲れがあったとか、モチベーションに欠ける面はあっただろう。また、それらの理由によって今夜のパフォーマンスがあれだけのもでしかなかった、ということであってくれればいい。
 いずれにせよ私としてはいろいろな意味での調整をしていかなくてはならないし、そうした私の態度を見て選手にも反応してもらいたい。そしてパリ・サンジェルマンとの試合に備えていきたい。

──中田英寿がいなくてもアジアカップを優勝できるか。その可能性はどの程度なのか
監督 確率論から言えば100%というものがあるだろう。つまりアジアカップで優勝するということ。しかしそのアジアカップで優勝できる可能性は5チームにあると思う、──韓国、中国、イラン、サウジアラビア、そして日本がこの5チームであり、プレーのレベルも経験も非常に高いものを持っている。
 我々は五輪を戦ったということで、アドバンテージを持っているとうことはある。しかし、この5チームそれぞれが、アジアカップに勝つ、チャンスを持っている。残念ながら、この中から1チームしか優勝できないわけだが、我々はその中でも大変いいセン行っていると思うし、責任も果たしていきたい。そしてそれだけのものを我々は持っていると思う。


アルディレス監督「選手たちは本当にがんばってくれたのでうれしく思っている。日本代表チームは以前から練習もしてきてるが、我々は1日前に集合して試合に出た。それでもいい形で試合ができたし、日本代表にとってもいいテストができたのではないか。
 ロベルト・バッジオが来てくれて、そのチームの指揮を自分がとれたということは光栄だ。彼が来てくれたことは自分もうれしいし、日本の選手やお客さんも彼のプレーを見ることができて本当によかったんじゃないかと思う。自分としてはJOMOカップはこれで2回目の敗戦だが、これが癖にならないようにと思う。審判のことは聞かないでほしい。それには答えられない(笑)。
(今日の試合前に注意した点は)日本は特にセットプレーからの攻撃が得意だから、選手たちにもセットプレーのときには集中するように言った。しかし、そこで2失点してしまった。セットプレーでは、キッカーとして名波や中村など本当にいい選手がいるし、ゴール前にもいい選手がいる。セットプレーは本当に強いと思う。そしてそこで、うちのチーム(横浜)ではゴールを決めなかった松田が、今日の試合で決めたが(笑)。
 今日はできるだけボールをキープして取られないように心がけた。しかしタレント性のある選手が多く、そんなに簡単にはいかなかった。中盤には中村や稲本など自信をみなぎらせた選手が多い。自分の意見としては、日本で1番強いところは中盤だと思う」

ロベルト・バッジオ「今回の試合に関しては、前半の終盤のPKの判定が大変残念でした。1-0の状態で後半のスタートを切られれば、違う戦い方ができたと思う。
(日本代表の印象)当然ナショナルチームだから、きちんと組織的な素晴らしいサッカーをしているという印象を受けた。我々のチームは今回はじめて一緒にプレーし、組織立ったチームに対しいい結果は出なかった。もちろん日本のサッカーについては、これからもどんどんよくなるだろうという感触を得た。
(今シーズンの初戦をベンチ入りを果たせず迎えた中田英寿にアドバイスを)具体的なサジェスチョンをするのは大変難しい質問だ。とても一言で言えることではない。 彼の状況はよくわかるし、逆に彼の状況を考えると、気安いサジェスチョンを与えることはかえって無責任なことになるという気がする」


「伝家の宝刀」

 名波にとって、多くの観衆の前で試合にフル出場するというのは、6月4日のハッサン2世杯フランス戦以来、じつに約4か月ぶりとなる。所属するチームが決まらないという中途半端な状態のまま、過ごしたここ何か月、フィジカル、メンタルの両面を高くキープしていくのは、容易ではなかったはずだ。しかし名波は、少なくとも彼のフリーキックという武器を、磨き続けることは忘れてはいなかったようだ。

 ハッサン2世杯の第2戦目となったジャマイカ戦の後半13分、それまで中田英寿(ASローマ)、中村俊輔が蹴っていたゴール近くでのフリーキックを、名波は自らボールを取り、蹴りに行った。そしてそのフリーキックは城彰二(横浜)のヘディングでのゴールを生んだ。まさに一発必中、名波の意地が見られたプレーだった。

「流れの中からの得点がない」。日本の攻撃陣への不満の声としてしばしばこの言葉が囁かれる。しかし、“流れの中からの得点”はバスケットボールにおける3ポイントシュートではないし、セットプレーからだと得点が低いということももちろんない。日本はこの武器を誇りこそすれ、卑下することはない。

 試合後の会見で、外国人選抜のアルディレス監督は、試合前には「日本代表はセットプレーが得意だから、そのときは集中するように、と選手に注意を促した」と語った。しかし、開始わずか13分に、その集中した状態を打ち破ったボールコントロールの正確さは、中村俊輔の派手さ、中田英寿の豪快さとはまた違った、名波ならではの持ち味だろう。

 この日の後半、中村俊輔が登場してから、名波がフリーキックを蹴ることはなかった。日本の“オプション”の多さは、贅沢な悩みと言えそうだ。

試合データ
日本   WORLD DREAMS
20 シュート 9
8 GK 13
3 CK 2
15 直接FK 13
4 間接FK 2
4 オフサイド 2
1 PK 0


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